時は、未来。

場所は、意外に近所。

ある所に黒い王子様がいました。

王子様には、無理矢理責任を取らされた綺麗なお姫様がいました。

ですが、お姫様は、悪い蛇妖怪に攫われてしまいます。

その時、王子様もケガをしてしまいます。

王子様は、愛情でなく責任感からお姫様を助けようと悪い蛇を倒す決意をしました。

ですが、蛇は強大です。ケガをした王子様では、太刀打ちできません。

そこに小さな桃色の妖精さんが現れました。

妖精さんは、王子様を助けるお手伝いをすることにしました。

でも、妖精さんもまだ幼いので、王子様の身の回りの世話をしていた秘書さんにお世話になりました。

一緒に洋服を買ったり、お食事をしたり、お風呂に入ったり、眠ったり。

王子様は、幾多の困難を乗り越え悪い蛇妖怪を倒し、お姫様が助けられるのを見ました。

そいて、黒い王子様と小さな桃色の妖精さんは、何も言わず旅立ちました。

お姫様にも秘書さんにも誰にも何も告げず。

そして、時は後ろに流れました。

秘書さんが何も知らない時代に。

それでも小さな桃色の妖精さんは、秘書さんのことを覚えていました。

今度は、自分がなにかしたい。なにかできること。なにかあげたい。

考えました。





そして、自作の5匹の子猫をプレゼントしました。

これは、そんな時代の物語。

優しい黒い王子様と小さい桃色の妖精さんと秘書さんが生きる時代の物語。




















えりにゃんじゃー えぴそーど1『紅い月を追え!』





機動戦艦ナデシコは、宇宙を航行中である。

目的は知らない。壮大な理由があるのか、はたまた厄介払いか、何となくか…

そんな艦内の一室。某所。某組織私用…



「さて、急な呼び出しは何だい、作戦部長?」

おじさん一歩手前の男にも無駄に歯を光らせて聞く、ヘリウムよりもか〜る〜いロンゲ。

「それは、他でもない。例の件だ」

「どの例の件だい?」

「あの例の件だ」

「ほう。あれかい」

会話は成立しているらしい。

「……ところで、今回は僕達だけかい? 参謀とかは?」

「ああ、今、見張りを撒いて来るそうだ」

「にゅあ(そうにゃの?)」

「「ん!?」」

猫の鳴き声にそちらを見る二人。

そこには、二匹の子猫がいた。

「なんでぇ、こんな所に猫がいるんだ?」

「…あ、あれ、確かエリナ君が猫を飼い始めたって…」

「おいおい、まかりなりにも戦艦だろうが」

呆れた声を上げる某作戦部長。

「にゃん!(いいにょ!)」

一声鳴くと、某会長に近寄り手の匂いを嗅ぐ子猫。アメリカンショートヘアーの子猫だ。

シルバータビーの模様もかわいい。猫にしては人懐っこいようだ。

もう一匹は、少し距離を置いて二人と一匹を眺めている。こちらは、アビシニアン。

金色のアーモンド型の大きい目がクリッとかわいい。耳も顔の割りに大きい三角型。

「へ〜よく慣れてるね〜かわいいね」

「ったく、ペットを戦艦で飼ってどうするんだ。ネルガルさん、注意くらいしろよ!」

猫と遊ぶ某会長に文句を言う。

「でもね、注意するのは、エリナ君の役だよ」

「…その風紀委員が飼ってるのか…」

「にゃ〜あ(これは報告にゃね?)」

「にゃにゃん(うん、ベースさ〜ん)」

 

某会長秘書のお部屋、の一角。猫用ゲージ。

オモイカネの3%の能力で作られた仮想エミュレーションAI『諜報部長』に、

『ターゲット捕捉だにゃあ』

えりにゃあイエローから報告が入った。

『了解。引き続き監視せよ、イエロー』

『でもにゃ、某組織会議をやるようにゃあ』

『確かな情報か?』

『にゃあ!間違いないにゃあ!』

えりにゃあレッドからも熱い報告が入る。

『情報統括権限オーバー、『師団長』起動!!』

同じく仮想エミュレーションAI『師団長』が現れる。こちらは、7%の能力である。

諜報部長が日常を受け持ち、師団長は有事の際に起動される。

『話は聞いた!マスターに緊急連絡!!以降の作戦はマスター直属とする』

『了解。えりにゃあピンク、マスターに報告。レッド、イエローはマスター指示に従うように』

『わかったにゃ』

『了解にゃん』

 

「にゃ〜あ、なぁ〜にゃあ(マスター、緊急報告だにゃあ。某組織会議だにゃあ。会長おさぼりだにゃあ)』

エリナの膝で寝ていたチンチラが鳴いた。

チンチラ。大きく丸い緑の目。なにより、そのふわふわした薄いピンク色の毛が自慢である。

「あら、それは大変ね」

「エリナさん、猫語わかるんですか?」

エリナにそばかすのある女の子、メグミが不思議そうに聞いた。

「ふふ、違うのよ、これはね…」

説明しましょう!!

エリナを遮り、白衣の美女イネス・フレサンジュが登場した。

「にゃむ?(どこから…?)」

「深く考えたら駄目よ」

「あ、また、猫さんと話してる」

無視する二人と一匹。

説明しましょう!!!

「「「…はい(…にゃ)」」」

イネスの説明が始まった。

「まず、エリナの耳を見なさい。見える? 紅いピアスをつけているでしょう? それがね、通信機なの。
 猫語翻訳機でなくて、通信機。だから、猫と話せるわけではないわ。待ちなさい。まだ説明中よ。
 そう、この猫はただの猫じゃないのよ。子猫型のAIロボットなのよ。ラピスが作ったのよ。で、この子達は、
 ベース基地を通して、お互い通信できるの。ベース基地には、普段この子達が変な事をしたりしないように
 監視のAIがオモイカネの一部の機能を使って待機しているわ。AIのマスターは、エリナね。ラピスがね……」

にゃあ、にゃん!(ハーリーが来たにゃ、だそうだにゃあ)」

チンチラ、えりにゃあピンクが大きく鳴いた。

ドクター!ストップ!!某組織会議よ。妖精に連絡して。私は先に行くわ!」

「…む、…仕方無いわね。すぐ召集かけさせるわ」

不満顔のイネスだが、一応納得した。少しは、しゃべったし。

 

「お待たせしましたー!」

元気良くハーリー君がやってきた。

「おう、待ってたぜ。で、尾行は大丈夫か?」

某作戦部長が聞いた。

「任せて下さい。泣きながら走って来ましたから、誰も気にしていません!」

「「………」」

情けないことを胸を張って答えるハーリー君の未来を想う二人。

「にゃむ…(情けにゃー…)」

某会長の手元からヒラッと飛び降りハーリー君を見て、アメショの子猫、えりにゃあレッドが一声鳴いた。

途端、顔が真っ青になるハーリー君。

「おい!どうした?」

「おや、ハーリー君は猫が苦手かい? こんなに可愛いのにね」

二人の声にギギと擬音を立てて、顔を向けるハーリー君。

「お二人は、この猫をご存知なんですか?」

「あ〜エリナ君の飼い猫だろう? ほら、あっちにも一匹いるよ。あっちもかわいいけど人見知りするみたいでね」

お気楽な某会長に渋面になるハーリー君。

違います!これは猫ではありません!!

「にゅ〜!(失礼にゃあ!)」

「にゃあん!(猫だにゃ!)」

アメショとアビシニアン、えりにゃあイエローは、ハーリー君を抗議するように見ている。

「……猫だろ。こいつら」

違います!この猫達は、ラピスの作ったAIロボットです!!

ハーリー君の言葉に沈黙する二人。

レッドとイエローは、静かに入口に後退さっている。さすが、猫、気付かれない。

そして、某作戦部長はハタと違うことに気が付いた。

「…って、おい!AIってことはだな。もしかして…」

「…もしかしません!間違いありません!」

きっぱりと某作戦部長の言葉を切り捨てるハーリー君。普段からそうであれば周囲の評価も変わるだろうに…

「撤退…いや、転進しよう!」

しかし、某会長の言葉は遅きに失した。

「あら、お出かけですか、会長?」

にこやかに氷の微笑みをうかべる黒髪ショートの美女が入口に立っていた。

 

「…エ、エリナ君…」

「会長、お仕事溜まっているんです。決済が必要な書類がどれだけあるかご存知かしら?
 勿論、知っていますよね? 会長ですから。それは、もう、たくさんあるんですよ。はご存知ですよね?
 山脈はご存知かしら? ふふふ、人跡未踏の山脈は? こんな所ですっかり英気を養ったようですし、
 もう休憩はいいですよね? だから、余計な休息なしに72時間働いてみましょうね♪」

コクコク。某会長は、某代理人を彷彿させる言葉の前に肯くしかなかった。例え、どんなに涙を流していても。

「では、会長をもらっていきますがよろしいかしら?」

それはにこやかに笑うエリナに、やはり首を前後に振るだけの某作戦部長とハーリー君。

「よろしい」

そう言うと、エリナは二匹の子猫と某会長を連れて部屋から出て行った。



「ふ〜う、助かったのか、俺達は…」

「…みたいですね…」

「会長には気の毒だな……しかし…」

「はい……でも…」

「「お前の(あなたの)犠牲は無駄にしない(しません)!!」」

「誰の犠牲ですか?」

萌える、いや燃える二人に後ろから絶対零度の声がかけられた。二人は振り向く事が出来ない。

感じる。嫌になるくらい感じる。それは、もう何度夢に見て、うなされ、枕を濡らしたことか。

「エリナさんから伝言です。『風紀委員』がお仕置きしてあげる!だそうです」

嫉妬の妖精プラス13人の氣を感じた。氣が感じられた。ご冥福をお祈りする。



こうして、今日の悪は滅びた。だが、すべての悪が滅びたわけではない。

悪が滅びるその日まで。負けるな、エリナのえりにゃんじゃー!頑張れ、エリナのえりにゃんじゃー!

明日が君達を待っている!!



「にゃ〜にゃにゃあ(今日、晩御飯何かにゃあ?)」

「にゃあ、にゃあ(カ○カンかにゃ?マ○ーかにゃ?)」

「にゃ、なぁ、にゃむ(金缶にゃ、ねぇ、金缶にゃ?)」

「む〜にゃ、にゃ、にゃあ〜(無理だにゃあ、アキトさんのお仕置きネタだにゃあ、集めないとダメだにゃあ)」

「にゃむ…(出番にゃー…)」





<あとがき>

エリナ推進団体実行部隊諜報部長……長いな…打つの疲れるな〜…よし、略そう……う〜む……!!

『エリナ推進団体実行部隊』、略して、『えりにゃあ』!!

となると私は、『エリナ推進団体実行部隊諜報部長・白い鉄』、略して、『えりにゃあ2・白い鉄』だな。

う〜ん、せっかく名前に色がついてるから、『えりにゃあ・ほわいと』か。

……レッドとかブルーとかでなくホワイト…うーん……師団長には色がないな〜……

5人揃えば、戦隊物ができるな。えりにゃんじゃーか。いや、5匹の猫か………!!!

猫、ねこ、ネコは、戦艦で飼っていいのか? ☆界ではOKだな。でも、ナマモノはまずいか。

猫型ロボット、却下! 子猫型四足歩行AIロボット!

誰が作る? イネスさん、ウリバタケさん、ラピラピ、妹。戦隊物には、悪の組織が不可欠だな。

では、悪の大幹部ウリバタケさんは削除。妹は、影薄い却下。イネスさんかラピラピか。どっちも絡めるよな〜

イネスさん製……使わんぞ。ラピラピ製……使いたくないぞ。でも、上目遣いで涙目で……

使うしかないな。全面降伏。


以上、完全な実話である。短編です。短編。えぴそーど1でも短編です。別名気刊。

 

 

代理人の感想

「うにゃにゃにゃにゃにふみにゃにぃ!」

(猫の毛揺らす自由の風に!)

「ふみににににぃにゃににゃん!」

(獣の野性が炎と燃える!)

「えりにゃににゃにゃにゃみ!」

(エリナに仇なす不浄の悪を!)

「みゃにぃふみにににゃおおにゃお!」

(見付けチクるが至高の使命!)

「みぎゃぁっ!」

(我ら!)

「「「「「みゃにゃにゃににゃおにゃあえりにゃんにゃあ!」」」」」

(((((マタタビ戦隊エリニャンジャー!)))))

 

どかーん!

 

 

・・・・電波です(爆)。