玄武戦記〜玄武搭乗〜
「そうだよね!ジュン君はユリカの一番大事な友達だもの!!」
「ユ、ユリカ……そうじゃなくて」
艦長が副長復帰の大切な話合いをしていた時、我、ミスター、ミナト、メグミ、ウリバタケは写真を見ていた。
前回約束をしたことになっていたらしい。
「へ〜これがウリバタケさんの奥さんなんだ〜きれいな人ね〜」
「ま、まぁな、これで口うるさくなけりゃあよ〜」
「きゃあ、娘さんはお母さん似だね、かわいい!」
「おう、ありがとよ」
「北辰さんは、娘さんが二人いるんだ?」
「おやおや、初めて見ましたよ。今までご家族の話をされませんでしたから」
「聞かれないからな。が、娘は一人だが」
「え、この大きいほうの娘は?」
「妻だ」
一瞬、静かになった。何だ?
「「えーー!?」」
「おい、そりゃあ犯罪といわねぇか!」
「何を言っているか分からぬが、妻は28、娘は15だ」
「「「………」」」
「良く見りゃ、この写真古くないか?」
「うむ、10年前のだからな」
「家族の写真はよ〜最新の物を持つべきだぜ、北辰さんよ」
かなり顔をひきつらせてミナトが聞いてきた。
「…ちょっといいかしら……娘さんは、あなたの本当の子? あ、前妻の子とか?」
「我に妻は一人しかいないし、その妻が産んだのだが」
「奥さんは、28歳?」
「うむ」
「娘さんは、15歳?」
「うむ」
「「「「…………」」」」
何が言いたいのだ?
「わたし、ご飯の時間だった、行って来る!」
「あ、ミナトさん、私も行く!」
「おっと、エステの整備溜まってるんでな、わりぃ、またな」
「本社に送る書類をまとめなければいけませんな」
脱兎の如くというのは、本当だと感じた。何を急いでいるのやら。
「北辰さんて…」
「ロリコン?」
「その前に犯罪だろ、それ」
「はて、扶養家族手当を出していましたかな?」
ブリッジで主要クルーと戦神の戦闘記録を見ている。相変わらずたいしたものだ。
ミスターは思う所があるらしいな。若干だが、普段より落ち着きがない。
「さてさて……テンカワさんの戦闘記録を今先程、ブリッジ全員で拝見させてもらいましたが」
「うむ、凄い腕前だな」
ミスターに続き、我が締める。
「やっぱりアキトは、ユリカの王子様だから!!」
「艦長は、黙っていて下さい」
「……はい」
艦長のはしゃいだ声をミスターが黙らせる。まったくだ、戦神は、北斗の王子様だからな!
「しかし……何故です? これほどの腕前を持ちながら、今までテンカワさんが軍に所属していた記録はない。
はっきり言って、テンカワさんの実力を持ってすれば、ナデシコなど簡単に落とせる。
装備が整えば、コロニーさえ……いかがですかな?」
ミスターの厳しい言葉にブリッジが静まり返る。戦神も下を向いている。
「ちょっといいか、ミスター?」
「何ですかな、北辰さん?」
「いや、ナデシコやコロニーなど誰でも装備が整えば落とせると思う」
「な、何を言われるのですか!」
「我でもできる。又、我も軍歴などない。一定以上の実力を持つ者には秘密がつきものというものだ、ミスター」
「……ふむ、それが味方である限りですな」
「そうだ」
「…北辰が俺を庇う……理解出来ない…」
「彼は、本当にあの北辰なのですか?見極めが必要ですね」
う〜むとあごに手をやり考え込むミスター。
「では、詮索は無しにしましょう。ですが、テンカワさんにはエースパイロットの実力がありますね?」
「え、ええ、まぁ、そうなりますね」
「丁度良かった。ヤマダさんがあの状態ですからね……パイロットが不足していたのですよ。
では、お給料はこの位で、こちらの契約書にはサインを…」
手回しがいいな、ミスター。最初からそれが狙いか。
だが、戦神を庇ったことで、我の好感度アップも間違い無し!!
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「ところで、北辰さん?」
「うむ」
「貴方もテンカワさんと同じことができると言いましたよね。たしか、オモイカネも追えなかったテンカワさんの
戦闘を貴方だけが確認できましたね?」
「う、うむ」
何を言いたいのだ、ミスター。我の戦闘能力など最初から知っておろうに。
「丁度良かった。では、北辰さんにもパイロットとして働いてもらいましょう!」
ズタン!!
戦神が盛大にこけた。そして、俺を見つめてくる。
ふむ、我の実力を感じ、頼もしいとでも思っているのだろう。ふふ、なら引き受けるか。
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我は、ナデシコ戦闘指揮担当官兼パイロットになった。
歴史はこんなにも簡単に変わってしまうものなのだな。我がナデシコパイロットとは…
「北辰がパイロット!?」
「アキトさん…」
「ルリちゃん…後ろから間違って撃墜してもいいかな?」
「そ、それは……まずいです!」
「だめかな?」
「アキトさんのナデシコでの信頼が失われます」
「くそ!奴の狙いさえ分かれば!!」
「今は我慢です。私とオモイカネで24時間監視していますから」
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ふと考えたが、今、木連では誰が影を率いているのだ?
北斗を舞歌が抑えている以上、ろくな人材が残っていないはずだが… 使い捨て六連の誰かか?
まー我はこの頃、木連内部の粛清その他に忙しくナデシコなど知らなかったから、関係あるまい。
ナデシコは、無事サツキミドリ2号に到着。パイロット3名とエステバリス0G戦フレームを補給した。
しかし、0G戦を宇宙で補給するとは… それまで襲われたらどうするつもりだったんだ!
計画責任者の関節を一つづつ破壊して、質問したいものだ。
「サツキミドリ、何故、無事なんだ!?」
「…北辰に気を取られて、すっかり忘れてましたね…」
「ああ……俺達の知らない歴史だな…」
「変って行くんですね…」
「おう、北辰さんよ、あんたのエステも入ったが何色にするんだ?」
ウリバタケ・セイヤ嬉しそうだな。科学者だの技術屋だのは、どこも同じということか?
「2色でも構わんか?」
「なんでぇ面倒くせえのは駄目だぞ。ヤマダの奴はゲキガンカラー三色上中下だから許したが、
どうしたいんだ?」
「濁った赤でこう禍々しい感じに…」
「ほうほう…」
「肩に『外法道天』と入れて…」
「ほ〜う…」
「で、接近戦用に殴れるもので……片側にこう輪をいくつか……」
「あんた、通だな。……よおっしゃあ、任せろや!」
「はじめまして!新人パイロットのアマノ・ヒカルで〜す!」
「おおおおおおおお!!!」
「蛇使い座のB型18才、好きな物はピザの端っこの固い所と醤油煎餅が少し湿気ったもの!」
「おおおおおおおお!!!」
「よお、俺の名はスバル・リョーコ。特技は居合い抜きと射撃。好きな物はオニギリ。嫌いな物は鶏の皮。以上だ」
「おおおおおおおお!!!」
やかましい奴等だ。この二人でこの騒ぎでは、北斗ならどうなるんだ。今の内に殺るか?
「愛想ないよ、リョーコちゃん」
「へん、パイロットが愛想出してどうするんだ!」
「じゃあ、代わりにあたしがリョーコちゃんの秘密ばらしちゃいま〜す!何でも聞いてね」
「何だと、てめぇ、勝手なことするんじゃねぇ!!」
こうるさい……うん、たしか補充パイロットは3名のはずだが……
ベベベベン!ベン!!
な、動けぬ……誰だ!誰が、我の後ろにいる!!
「どもども、新人のマキ・イズミです」
気配を感じさせないとは……しかも、振り返って見たいのだが、それを遮る我の予感がある…なんだ?
「うおおおぉ………?」
整備員どもも何かを感じたようだ。
「ふふふふ……ヒカルとリョーコ…ふふ……」
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何があった!分からぬ、何があったんだ!!頭の中にはウクレレの音のみが残っている…
要注意危険人物の中に奴の名は、無かったはず。
しかし、こやつ、危険人物と警戒するよりも……いないことにして無視するに限ると我の直感が告げる。
そう山崎並にやばいと。
パイロットと主要メンバーが集まり、顔合わせが行われた。
「ねぇねぇ、この船に乗っている二人のパイロットって誰なんですか?」
眼鏡っ子が聞いてきた。
そういえば、六連の中に眼鏡好きがいたなと思い出し感慨にふける。眼鏡マニアなど不健康な奴だった。
漢は浪漫を求めてこそだ。敵ではあったが、たしかアララギとかいう奴は立派に宣言しておったな。
「え〜と、一人は名誉の負傷の為、療養中です。
もう一人は、ナデシコの誇るエースパイロットのテンカワ・アキトです!!」
艦長がフニャアとした表情で戦神を紹介する。とても木連の連中に見せれる顔ではない。気が抜ける。
「そして、なんと私の王子……モグモグ」
「はい、艦長、話が進まないから静かにね」
ハルカ・ミナトが艦長の口を押さえ、にこにことしている。うむ、ミナトよ、北斗への貢献ポイント+3。
「お前がテンカワか」
「そうだよ、リョーコちゃん」
「けっ!なれなれしい奴だな」
「気に障るなら、スバルさんって呼ぼうか?」
「…リョーコでいい。で、お前の地球圏脱出の戦闘記録を見せてもらったが、凄腕のパイロットだな!」
「そうだよね〜とても人間業と思えない腕よね〜」
「…同感」
「褒めても何もでないよ」
戦神の冷めた言葉に、ニャ〜アとした顔でアマノ・ヒカルが言った。
「ふふふ、そうでもないのよね〜リョーコちゃんはそれはもう楽しみにしてたんだから!」
「そうそう、テンカワ・アキト、テンカワ・アキトと検索しまくり」
「自分より強い人と結婚するっていうし…」
「ば、馬鹿ぁ!!例えばの話だ!それに、け、けっ、けっこんなんて言ってない!!」
「リョーコちゃん、真っ赤」
「うるせぇー!!」
「真っ赤……悪魔のお金…魔貨……マッカ…くくく…」
そうか、そうなのか、スバル・リョーコ!やはりお前も危険人物なのだな。第何位だったかな?
はて、比較的初期に出るのに上位でなく穴系だったと記憶するが…
まあ、どちらにしろ、パイロットとしては北斗に敵せず!若さでも勝てず!
もう一人御大層な二つ名の奴と一緒で我が愛娘の敵ではない!!
「コホン、艦長、もう一人パイロットがいるのですが」
「あ、忘れてました。この人もパイロットをすることになりました。北辰さんで〜す!」
ふむ、抹殺ポイント最上位登録!
「し〜つも〜ん、そのお面はなんですか?」
「顔に酷い火傷があるのだ」
「さては、キャスバル兄さん?」
「???」
訳の分からない質問をしてくる眼鏡っ子。
「じゃあ、じゃあ、あたしが作ったお面もしてくれる?」
「駄目だ」
「え〜〜そのお面にこだわりがあるのぉ?」
「いや、この仮面は、防弾防刃暗視スコープにガスマスクの付いた優れ物なのでな」
「嘘!?」
「へ〜伊達じゃないんだ」
「うむ、ウリバタケが作ってくれた」
キラ〜ン
「北辰さん、いつ頼んだのですか?」
ミスター、眼鏡を光らせて聞くことか。
「頼んでなどいない。勝手に持って来た。余り物で作ったとな」
「…そうですか…まぁ、いいでしょう」
「まぁ、同じパイロットが変態でなくて良かったよ」
ほう、『赤い子猫』よ!所詮、大穴と放って置こうと思ったが、今の一言で気が変った。
我を山崎の同類として扱うとはな……この誇り高き外道をさして変態とは……
北斗の当て馬風情がぁ!!!
<あとがき>
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなちゃい、ごめんしゃい……
スバル・リョーコさんファンのみなさん、ごめんなさい。
ええ、あれは、北辰の言ったことです。そう北辰です。悪いのは北辰パパです。
代理人の「パパは仮面の犯罪者」のコーナー(核爆)
え〜、「時の流れに」本編の設定ではさな子さんが北斗を産んだのは十八歳と言うことになっています。
あくまでもこれは「北辰パパ」の設定だと言うことをご理解下さい(汗)。
それはさておき・・・・・
犯罪者ですねぇ。
ええ、それはもうきっぱりと。
しかも誇ってるし。
それにしても、「当て馬」発言といい、「もう一人の」発言といい、
ちゃくちゃくと同盟を敵に回しつつありますな(笑)。
え? 誰の事かって?
そりゃもちろん(ぴ〜〜〜)さんに決まってるじゃないですか(爆)。
とりあえずご冥福をあらかじめお祈りしておきましょう(大爆発)。