玄武戦記 〜玄武馬幌〜





白い……

北極海は白い……

見渡す限りどこまでも白い…

雪と氷が風に乗り、ブリザードと化している…

まるで……我の心の内を写したかのようだ……

……さな子よ……

……北斗よ……

 

 

 

 

 

 

 

 

弱いお父さんを許してくれぇーー!!


10年、いや11年……


…つい…こう…フラフラっと……


…その…何だ……男として……いや、漢として…


済まぬ、さな子!!許せ、北斗!!


我は、生涯一人と決めていたのに…




 

 

 

事は遡る。

件の月付近での戦闘の後、ナデシコにネルガル会長と会長秘書とキノコが合流した。
そうキノコは無事合流したのだ。

我が極めし技の数々を喰らいながら、全治10日間であったそうだ。
この人外めぇ!!

今後は一応の敬意を込めて、ナメコと呼んでやろう!
あれは美味いからな…成長早いし…



そのナメコから作戦の指示が出された。

救出作戦よ! この北極海域ウチャツラワトツスク島に取り残された親善大使を救出するのよ!!」

「救出作戦?」
「親善大使?」

ブリッジ全員がナメコの予想外の言葉に驚いている。

「そうよ。戦うだけが作戦じゃないのよ。地球の平和を護るナデシコだから、割り振られた作戦よ!
 アタシに感謝することね!!」

ナメコよ、偉そうだな…

「実験体のクマを助けるのが作戦か?」

我の言葉にブリッジが静まり返った。
ん? 言ってはいけない事だったか……遂、ナメコ如きに対抗心を燃やしてしまったが…

「クマ?」

艦長が確認するように我に聞いてきた。

「はい。北極クマです」

妖精が割り込んで答えた。
ほっ。問題ないらしい…

「何で分かるの?」
「軍のデータベースにハッキングしましたから」

ミナトの問いにあっさり妖精が答えおった。
戦神よ、今更何だが……子供の教育方針を一度心行くまで話し合わぬか?
我の愛娘の北斗の爪の垢でも飲ませた方がよいぞ?

「…ムネタケ提督、これはどういう事ですか?」

艦長が少々殺気だった口調で問いかけた。

「さぁ、何の事かしらね。アタシにはさっぱりだわ?」

ナメコがとぼける。

「……では、この作戦は拒否します。ナデシコには、理不尽な命令を拒否する権限がありますから」
「軍の指示に逆らうって言うの!」
「当り前です。クルーの安全と実験体のクマを比べたら当然の結論です」
「何ですってぇーーー!!」

艦長とナメコが白熱しておる。
醜いな……狩るか…?

「北辰さん、貴方はどこでクマと聞いたのですか?」
「ん、ミスター、裏では有名な話だぞ」
「おや、そうでしたか?」
「ミスター、たまには働かないと腕が鈍るぞ…」
「いえいえ、貴方やテンカワさんを見ると、私の引退も間近かと思いましてね」

ミスターの引退……正面からならともかく、互いに制限無でやればどうなるか……
ドクターイネスの成果共々一度はやってみたいものだな、完全に制限無くな。

だいたいクマじゃないわよ!クマは昔の話なのよ!!

ぬう? 我とミスターが話しているうちにどんな話になったのだ?

「クマじゃない?」
「そうよ。確かにあそこは研究所だけど、今、あそこにいるのはクマじゃないわよ」
「では、何だというのですか? ペンギンですか?」

ナメコの反論に艦長が馬鹿にしたように聞いている。

「そんな訳ないでしょう!」
「では、何ですか?」
それは……」

艦長の剣幕にナメコが黙る。
今更嘘を並べても無駄だろうに、何を言うつもりだ。

「もう!何でも構いません!ナデシコは行きませんからね!!」
……ばっほろよ……
「…何か言いました?」
「…ばっほろ
はい!?

だから、ばっほろって言ってるのよっ!!

ばっほろ!?


我を含むブリッジ全員の声がハモった。
ばっほろだと……何だそれは?

「ばっほろって何ですか?」
「アタシだって知らないわよ!」
「そんな知らない訳の分からないモノを救出しろって言うんですか!」
「仕方ないでしょう!そう書いてあるんだから!!」

再び、ナメコと艦長の戦いが始まった。

「ルリルリ、『ばっほろ』って何か分かる?」
「オモイカネ、お願い」

ミナトの言葉に妖精が検索を開始する。





5分後、該当項目なしと結果が出た。
論争中のナメコと艦長以外はその結果に押し黙る。

だが、オモイカネの検索に出ないとはどう言う事だ?

「ホシノ、ナメコへの命令書を見る事はできるか?」

もうあのナメコが見間違いをしたとしか思えず、仕方なく妖精に我は尋ねた。

「……ナメコって、提督の事ですか?」
「他に誰がいる」
「…食用はちょっと……毒キノコにしませんか?」
「そうね、私も毒キノコがいいと思うな〜」

我の命名に妖精とミナトがいちゃもんをつけたきた。

「そうですねぇ〜、毒キノコと言うと、ワライタケが定番で、特に猛毒系ではタマゴテングダケ、ドクツルタケ、
 タマシロオニタケ、コレラタケが一般的かな。でも、有名所なら、ベニテングダケね♪」

楽しそうに笑いながら、通信士が言った。

……おい!

「……メグミちゃん、詳しいのね?」

ミナトもいささか引きながら尋ねた。

「え? いやだなぁ〜、私、看護婦の資格があるから、これ位常識ですよぉ〜」

…非常識だ…

たぶん、皆同じ事を考えたであろうが、誰も口には出さなかった。

これか!これがそうなのだな!!
ふっ、こんな所でその本性の一端が垣間見えるとは僥倖だな。
過去の情報とは余りに違うその普通の姿にあやうく騙される所であったわ。

 

この策謀脳しかナイ乳No.1めが!


ギラリ

ズキン!!……いや、その今後も成長可能性ありということで……

フッ

痛い気配は消えた……

木連情報に一点の誤りもないようだ。
それでもお父さんは頑張るからな、北斗…


「では、ベニテングダケ…長いです…への命令書を表示します」

ピッ

妖精の言葉と共に軍の機密命令書が表示される。
ベニテングダケか…確かに長いな、略してベニテンと呼んでやろう。

それはともかく、う〜〜む、たしかに『ばっほろ』だな。どう見ても『ばっほろ』だな。

相変わらず口論を繰り広げる艦長とベニテンを尻目に、
我、戦神、妖精、ミスター、ミナト、メグミは顔を見合わせた。

「ミスター、これは行くしかないのでは?」
「北辰さんもそう思いますか?」
「うむ、念の為、我自ら行こう」

我の言葉に戦神がギョッとした感じで振り返った。
ん? 自分で行きたかったのか?

「お願いできますかな?」
「任せておけ」

ルリちゃん、北辰が何故ここで動く?
…大丈夫だと思いますよ
あいつが救出なんて…
たぶん、大丈夫です。北辰の目的が大体掴めてきましたから…
何かわかったのかい?
ええ、まだ確証はありませんがはっきりしたら……ただ私たちの邪魔はしないと思います。
「そう…」
「わたしには邪魔ですけどね!」
「え、何か言った?」
「いえ、何でもありません」

戦神と妖精は相変わらず仲が良いようだな。
まぁ、北斗の登場までの話よ。

 

 

そして、トレーニングルーム。

何故か、北極海までの移動中にバトルロイヤル模擬戦をやると呼ばれてしまった。

まぁ、暇をしていたから問題無いが、我の相手など戦神以外出来まいに。逆もまた真だがな。

そして、我、戦神、スバル、アマノ、マキ、アカツキの6人のバトルロイヤルが始まった。

何か足りない気もするが構うまい。

今夜の夕食を賭けて。



まずは…

北辰!覚悟!!

…戦神のエステが突っ込んできた。
おい!バトルロイヤルの基本は強い奴を集中的に倒しにいくか、逃げて弱い奴から間引くかだろうに。

ビューン!

ダン!ダン!

接近からの射撃。まだ余裕だな。……くっ!

エステで格闘戦をやろうというのか!

掴みに来た腕をスウェーでかわし、その勢いのまま体を回転…

した先には、既に戦神がいない……ハッ!!

落ちろぉうぅぅ!!

スシャー!!

確認せずに前方に逃げたおかげで、戦神の廻し蹴りを回避できた。

が、来る!

ダン!ダン!ダン!

三点掃射で追い込まれ…

ガシィ

予想通りの一撃を受け止める。

ズサッ  シュン!

すぐさま退く。目の前を踵落しが通り過ぎる。好機!

いや!!

きえぃ!

シュン!!

攻撃を急遽止めた我の前を今度は下から逆脚が走った。

今のはやばかった…

一度間合いを…


ドドドドオドドドッドォドドドッドンン!!
ダダダッダダダッダダダッダン!!
ババッババババババアババンバン!!!


スバル、アマノ、マキのエステバリスに……

三方から一斉掃射を喰らった……







最後に残ったのは戦神であった。

あの戦神との至近距離で我だけが狙われたのだ……何故に?

「テンカワは俺が護る!」
「北海道のお土産……」
「それは、マリモ…」

しかも、それに呆けた戦神を狙ったアマノ機は、スバル、マキの攻撃で瞬殺。

「テンカワ!危ない!!」
「敵ね」
「…酷いよ、二人とも…」

更には、その二人が一騎討ちをし出し、ボロボロでスバルが生き残ったが戦神の相手になる訳がなかった。

「どっちがテンカワにふさわしいか白黒つけようか…」
「テレビ?写真?」
「シリアスかギャグかはっきりしろ!!」
「…リョーコ、邪魔よ!」
「ちっ!」

不本意だ……我があのような者共にやられるとは……

「不本意は、僕…」

ちなみに夕食は、最初に三人の集中攻撃を喰らったアカツキが奢る事になったが…

チキンライスにしとこうか?

 

 

時が経ち、北極海作戦領域に入った。

そして、昼休み休憩中に、グラビティ・ブラストが突然発射された。

初めて知ったぞ、陽動作戦でなく、勝手に艦長がやってしまった事だと。

奴は、無意識にさえ天才ぶりを発揮するのか…

それとも、敵を欺く為には味方からという事か…

もしや、普段のボケボケぶりも…

くっ、流石は危険人物第一位よ!





ともかく、ナデシコが敵を引き付けるうちに、我が親善大使を救出に向かう事になった。
戦神はナデシコの守りとして外せないからな。



ブリザードが吹き荒れる中、低空飛行でレーダー網をかいくぐり、目的地に付く事が出来た。

耐寒用研究用小型ドームという所か。

さて……








研究用ドームで我を待っていたのは、フード付防寒服を着込んで丸くなったインド人だった。





はい〜?

「さぁ、帰ろ♪」

インド人少女が言った。

「…貴様がばっほろ?」

我の声に元気良く答えが返って来た。


うん、私がバッホロ・シュミネだよ、パパ♪

パパだぁ!?

うん♪





いかん!いかんぞ!!

こんな事で真っ白になってどうする!汝は誇り高き外道であろうがぁ!!

「待てい!ばっほろはともかく、何故、貴様が我をパパと呼ぶ!!」
「私を迎えに来てくれる人がパパって聞いたもんねぇ♪ 何でお面付けてるかしらないけど別に構わないもんね♪
「我に娘は一人しかおらんわ!!それにお面ではない仮面だ!!
「うん!私だよねぇ♪ どっちでもいいよお面は


怒怒怒怒……こ、この馬鹿娘がぁ〜〜!!


「さぁ、パパ、帰ろ♪」


ふざけるな!我の娘は最強の真紅の羅刹なり!!

 貴様のようなか弱い娘ではないわぁ!!!


ちゅうねんぱいろっとふんさいきっく!


ズゴシィ!!

インド人少女のドロップキックが我に決まった。

ちっ!油断したが、たいした威力ではない。

「貴様、いきなり何をする?」
「えっ? だって私が強ければ娘なんでしょう?」

ふっ、浅はかな…

「その程度、蚊に刺された程にも感じぬわ!」
えーーーーーーー!?
「未熟者めが、所詮は子供よな!我が愛娘北斗の比ではないわ!!」
「わかった!じゃあ、本気でいくね♪」

笑止!!

「来るがよい」

 

 

 

真中年ぱいろっと粉砕キィーック!


ドゲガシャァーーン!!


我は、ドロップキックを喰らい、顔面から氷の大地を滑って飛んだ……

決して油断していた訳ではない。

速いのだ!こ奴のドロップキックはとてつもなく速いのだ!!
ノーモーションからのキックは当然の事、殺気はなく、初動からすべてが速すぎるのだ!!

我が成人してから地を這った事など、戦神と北斗しかおらぬというにこ奴は…


「私も娘だよねぇ♪」
「…………」
「真中年ぱい…」
はい…
「よしっ!じゃあ、パパ帰ろ♪」


















済まぬ、さな子!許せ、北斗!


我は、生涯一人と決めていたのに…


娘がもう一人出来てしまった!!


強い娘が好きなのだよ、パパは…
この娘も戦神との間の子ならば最強になれるかもしれんし…






我がナデシコに帰艦した時、

何故か誰も出迎えがなくブリッジからも指示が出てこない上、何やら騒然としているので、
インド人少女バッホロ・シュミネは我の部屋に連れて行った。


それにしても疲れた……

今日はもう寝るか……

おやすみ……

うん♪

ん!?何か聞こえたような……いや、もう寝よう……パタン

パパ、お休み♪











………………………………ん!?






<あとがき>

え〜NPCじゃない、オリキャラ登場です。
出しても良かったのかな? よく分からないけど、出してしまいました。
外見とかは次回にでも挿絵を付けるとして……でも、玄武戦記にオリキャラなんかいらない!と言われれば、
次回早々にでも軍にでも引き渡します。一応設定考えてはいますけど、皆さん、どう思いますか?

やっぱり地球編は楽しいですね。時ナデもここからドンドン歴史が変りましたし、
玄武戦記も北辰がここにいる影響で歴史が変る姿を少し?づつ出していこうと思います。



<おまけ>

しかし、何か忘れているような気がするな〜

「そうね、私もそう思うわ」

やっぱりそう思いますか?

「ええ、激しくそう思うわね」

そうなんですよね〜何か忘れている気がするんですよ、エリナさ……エリナさん!?

エリナ「私の出番は何処かしらね?」

あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっつ!!!!

エリナ「何処かしらね?(ニコッ)」

ううう、氷の微笑ですか……

エリナ「貴方のお名前は何と言うのかしら?」

白い鉄です…

エリナ「役職は?」

エリナ推進団体実行部隊諜報部長です…

エリナ「それで?」

……あの、北辰主人公ですし、その、出すと北辰の罵詈雑言考えないといけないし、
愛のあるキャラ相手には辛いな〜とかと…

エリナ「本当は?」

忘れてました……てへ♪

エリナ「へぇ〜私の応援団体の幹部がね〜」

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!

エリナ「ごめんで済んだら?」

…警察要りません。

エリナ「はい、よくできました(ニコッ)」

………

エリナ「お仕置きね♪」

ふっ、無駄なことを!

エリナ「あら、生意気ね」

ふふふ、この白い鉄!伊達や酔狂で希少金属を名乗っている訳ではない!!我にお仕置きなど無意味!!!

エリナ「ほほほ、例え鎧を纏おうとも、心の弱さは…」

げげげ!!

エリナ「隠せないのよ!!貴方の罪状を暴露しまーーす♪」

うにぃ!

エリナ「一番、身分証明の偽造!!二番、印鑑の偽造!!三番、(以下とんでもなくマズイので後略)」

…………(真っ白け)

エリナ「ふふふ、悪は滅びたわ!次こそ、私を出すことね(ぴしっ!)」

某M嬢「ククク、作戦通りね(ニヤリ)」

 

 

 

代理人の「パパは仮面の浮気者」(超爆)のコーナー

 

おお、真っ白け。

これが本当の白い(核爆)。

 

それはともかく・・・・

いきなり北辰粉砕!

物凄いインパクトだぞ新キャラクター!

しかもインド人だ!(謎)

 

ついでに代理人はノリノリだ!

 

 

それでは次回もこのチャンネルに、

 

真中年ぱいろっと粉砕キィーック!