玄武戦記〜玄武脇話〜
…僕はこの数ヶ月を振り返って、心に思う事はただ一つだけ。
どこで宣託を間違えたのだろう?
あ、選択の漢字を間違っているや。
僕の名前は、天空 ケン。
今は仮の親だけど、優しい両親の元で日々の生活をしている。
初めて自分が過去に戻っている、と知った時…
僕は歓喜の涙を流した!!
だって今ならあの子の心のスタートラインに、彼は存在しない!!
なら、僕が、その地点に立つ事も可能なはずだから!!
僕は、何も考えずに、あの子にコンタクトを取った。
『北ちゃん…いえ、北斗さん!!僕の話を聞いて下さい!!』
「君…どうしたの…?」
…僕の野望は開始10分にして始まった。
で、今は何故か舞歌さんの頼みで北ちゃんの手伝いをしている。
…しかし、北ちゃんと僕のやってることって…
バレたら、かなり危ないことじゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁ……
でも、僕は頑張ります、北ちゃん。
いつか胸を張って、貴方の隣で座れるようにね!!
「ケン……煩い」
『…ごめんなさい』
でも、近頃、思うんだ。
舞歌さんは、北ちゃんは昔の自分だ、って言うけど、
そんなの絶対嘘だ!北ちゃんが舞歌さんになるなんて嫌っ!!
「ケン、煩いですよ」
『…ごめんなさい』
今、僕の前には3人の人が座っている。
一人は、舞歌さん。
ストレートのロングヘアーに黒い大きな瞳。知的な美少女さん。
でも、目がもう悪戯大好きって常に煌いてるの。
一人は、さな子さん。
北ちゃんのお母さん。やっぱり黒い髪が素敵な女性。
いつもいつも穏やかな人。陽だまりの匂いのする人。
最後は、八雲さん。
舞歌さんのお兄ちゃん。舞歌さんが唯一頭の上がらない人。
この人も雲のように穏やかな人。喧嘩なんか似合わない。
うん、喧嘩は舞歌さんが担当だもんね。
それで、3人がお茶と月餅を手に会議をしている。
まず、舞歌さんが口を開きました。
「本日の議題は、『萌え』です」
「あら、そうですか」
「………頭痛い」
『萌え?』
「はい、萌え、です!」
舞歌さんがきっぱりはっきりと言い切りました。
「北辰殿は、私達に北ちゃんを託されました。そして、言われました。
北ちゃんは、木連の守護者になると。この遺言は何としても守らなければいけません」
「あら、まあ?」
「………遺言ではないよ」
そうなんです。この世界に北辰はいないのです。
北ちゃんと僕の関係に嫉妬して、僕を殺した北辰は既にいないのです。
僕は、もう過去に戻り、自分の使命を果たしてしまったのです。というか、果たされていました。
過去の僕は…
首を絞められ、首の骨を折られました。まだ、息のあるうちに、逆さに吊るされ、血管を断たれました。
朦朧とした意識の中、腹を裂かれました。その後、離れた所から自分を観察していました。
細かく切り刻まれ、一度、熱湯をかけられました。そして、切り口すべてに塩を揉み込まれました。
更に念を入れて、黒い液体とともに長時間火にかけられました。
ここまで念入りに僕を処分するなんて、北辰は嫉妬の塊なんだと幼心に考えていました。
そして、時間の経過が分からない程、経ったとき、僕は草原に寝ていたんです。
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あ、話が進んでいるようです。
「北ちゃんが守護者になる為には、木連の皆を萌えさせる必要があります!」
指をピシッと立てて、力説する舞歌さん。
感心しているさな子さん。
八雲さん……止めないのですか、止めないのですね、え、止まらない?止められない?
目で合図を送ってくれました。
「萌えには、幾つかの傾向があります。ですが、そのすべてを北ちゃんが使える訳ではありません」
「何故ですか?」
おっとりとさな子さんが聞いてます。非常にノリが良いのかも知れません。
僕は、天然と確信してますけど。
「いい質問です。何故なら、萌えの傾向というのは、本人の容姿、性格、言動、それにTPOが絡みます。
この中でも、性格以下のことは私達の行動次第でかなり自由度が効きます。
しかし、容姿というものは、細い太い以外、半ば決まったも同然です。もちろん、髪型を変えたり、
牛乳を飲むなど、細かくは修正可能かも知れませんが、基本は変わりません!!」
ここで一端休み、周囲を見渡しました。
「そして、容姿によって、萌えの為に使える武器が限定されるからです!」
パチパチパチパチパチパチパチ
さな子さんが拍手をしています。
八雲さんは、僕の背中を撫でてくれています。僕の疲れが分かったのでしょうか?
「好きというのは、時間が経つと淡白になり、積極さを失い、あの頃の無茶苦茶に求めてくれた貴方は
いないのね。という事態になりえます」
『……よく分かりません』
「ここに萌えが入るとどうなるか。萌えの基本、制服、チラリ、恥じらい、透け、白、しぐさ、……
フフフ、わかりますね? もう静まることのない萌え広がりとなるのです!」
「…よく考えたな」
八雲さん、士官学校はそんなに忙しいのですか? 疲れ切ってますよ。まだ、そんなに経ってませんよ。
「ええ、計画、実験、検証を何度も繰り返しましたから」
「…何処でだ?」
「もちろん、幼年学校です」
「………」
あ〜八雲さん、影を背負わないで下さい。
「そして、私は、萌え最終奥義に辿り着きました。
萌えはギャップがすべてです!!」
さな子さんは、目をキラキラされてます。
八雲さん、あなたの妹君の教育方針はどうなっているのですか?
「ここで、私は提案します!北…」
「ケ〜ン、走りに行くぞ!!」
舞歌さんを遮り、北ちゃんの声が響きました。
やった!今、行くよ!!
「わんわん!!」
僕は、喜び一杯で、尻尾を大きく振って、北ちゃんの元に向かいました。
八雲さん、駄目ですよ、そんな羨ましそうな目で見ても。僕だって、ここにはいたくありません。
ここで舞歌さんの前に座っているより、北ちゃんに僕の白い毛皮を撫でてもらいたいもん!散歩したいもん!
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確かに北ちゃんは変わったよ。
……怖いほどにね。
確かに僕との仲はよくなったよ。
……今じゃあ遊ばれているけどね。昔もだけど。
確かに舞歌さんは僕に言ったよ。
明るく、楽しく、勉強になるってね。
萌えを持ってくるとはね。
今はいいさ。僕だけだもん。
『もう数ヶ月か〜』
今、僕は痛切に願う。
もう一度過去に戻れますように、と。
<あとがき>
北辰パパ「…???…舞歌、何をしたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!教えろー!!!」
それは、さておき、代理人さまへ
『北斗異聞』のキャラ犬。天空ケン君を勝手に使いましたので使用許可を頂けますか?
たぶん、本編では、宇宙戦闘犬四陣のメインAIでしか使いませんけども(大嘘)
よろしくお願いします。ちなみに紀州犬がイメージです。
代理人の「承認!」のコーナー(爆)
と、ゆー訳で許可させていただきます(笑)。
それにしても・・・・なるほど、こう来ましたか。
ケンで来るとはねぇ(笑)。
紀州犬・・・実はどんなのかしらないので教えてぷりーず。
それはさておき、舞歌は実は強度のブラコンなわけですが、
今回は八雲がかなり押され気味。
再登場の時にはどうなってるんでしょうねぇ。
非常に楽しみです(笑)。