東方見聞録

『各務千沙の場合』




「百年前の恨みが許せないからと言って、地球に戦争を仕掛けて、沢山の人を死なせてはいけない」

「…そうだね、お兄ちゃん」

「…舞歌、人は許し合わなければいけないんだよ。そうしなければ、今に人は滅亡するだろう…」

「…昔からお兄ちゃんは同じ事を言ってるよね」

「そう。木連は、許すことを決断したんだよ。今度、地球に外交使節団が送られる。聞いていたかい?」

優しく妹に尋ねた。

「うん、聞いてる♪」

妹は、笑いながら答えた。

しかし、その瞳は決して笑ってはいない。僕には、その奥に氷壁が見える。

「許し合う事の大切さ…」

「それは、ともかく…」

ゾクッ

妹の言葉に部屋が一気に冷えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何かな?」

ようやく搾り出した僕に妹が答えた。

この写真で一緒に写っている女性は何方ですか?

部屋に阿修羅原が降臨した…

お・に・い・ちゃん!!

「……ごめんなさい


お兄ちゃんは、優良物件なんだよ!


 私、こんな女性を御義姉さんって呼びたくない!!


 気を付けないとダメでしょう!!!


妹の手には、軍の食堂で話をするウェイトレスと僕の写真があった。

何時の間に撮ったのだろう?

「…それは、ただ、世間話をしていたでけで…」

「駄目だよ。こういう女性は既成事実を作って、すぐ結婚まで持って行くんだから。
 でもね、ちゃんと私が断っていたから安心していいよ、お兄ちゃん♪」

…断るって、何を……?

…うう、妹の瞳が輝いている……卍字固めを喰らっているように全身に謂れ無き痛みが走る…

父上、貴方の教育方針を怨みます……

「相手も悪いけど、でも♪」

「…でも?」

「お兄ちゃんも悪いよね!だ・か・ら・お仕置きね♪(は〜と)」


……父上ーーーー!!(泣)

 

 

 

 

 

そして、地球と木連も同じように

交渉とも呼べぬ結果、決裂した。


相手のいう事を何も聞かない辺り、宇宙規模も家庭規模も大して変らない…

 

 

 

 

 

 

 

 

初めまして、こんにちは。

木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星小惑星国家反地球共同連合体、略して木連、

突撃宇宙優人・優華部隊参謀長の東舞歌よ。


は〜〜〜 私はどうしてここにいるんでしょうか?
私の計画では、旦那様と子供と共に仲良く暖かい家で暮らしているはずなのに…

それは、私の理想の王子様が現れなかったから。

私の理想の男性…

最低でも私より強い男性。木連式短杖術免許皆伝の私より。
最低でも私より頭の良い男性。お兄ちゃんよりとは言わない、お兄ちゃんは真の天才だから!
そして、何よりお兄ちゃんより、包容力があって頼りになる男性!

この三点だけは譲れないわ!!

現れなかったら探すまでよ♪ って、木連の優秀な人達が集まる軍の幼年学校に行き、士官学校に行き、
最精鋭の優人部隊に行き……なのに!たった三点を満たす人がいなかったのよ!!

それは、お兄ちゃんみたいに笑顔が素敵な男性がいいな(ポッ)って思ったけど……
でも、でも、それ以前に最低ラインの三点をクリアーできないのよね〜

あ〜〜〜ぁ

「どうしたんだい、舞歌? 溜息なんかついたりして」
「あ、あ、何でもありません、司令」
「舞歌、二人の時は、いつもと同じで構わないよ(ニコッ)」
「あ…(ポッ)、はい、お兄ちゃん」

うっ……お兄ちゃん、それ反則、何の準備もなくその笑顔はキツイわよ…

それに私がここにいるもう一つの理由を思い出してしまったわ。


私のお兄ちゃんこと、東八雲。

お兄ちゃんは、私が言うのも何だけど超優良物件なんだ♪

戦略戦術において百年に一人の天才。そしてね、誰よりも優しいの。

その上、背は高いし、顔も良いし、包容力はあるし、笑顔が素敵

だし、の良い事尽くめ。

名門東家の長男という事を置いておいても、言う事ないんだから。

おかげで私の苦労は絶えないの…


昔から、そうだったわ。

学校だけでも…

朝から呼びに来る近所の女の子。一方的に話し掛けてくる隣のクラスの少女。校門前でぶつかった上級生。

その上級生の妹の同級生。昔近所に住んでいたかもしれない留学生。クラスの女子の眼鏡委員長。

木連式柔大好き下級生。超能力が噂される年下女の子。運用試験のブース……コホン、それは別の話……

街を歩けば…

自称従兄妹が声をかけてくる。食い逃げ少女がぶつかってくる。不治の病と思い込んでいる少女が見惚れている。

仇を探す女の子に出会う。その子に昔の自分の思い出を重ねる子が言いがかりをつけてくる。

木連式抜刀術を極めた女の子の戦いに巻き込まれる。その親友まで出てくる。





本当にお兄ちゃんは、私がいなかったらどうなっていたんだろう?

超優良物件という自覚の無いお兄ちゃんは、笑顔を振り撒き、優しく応対してたわ。

私が皆丁寧にお断りして、後で、お兄ちゃんにお仕置きしたけど…


私が御義姉さんと認めるのは、

最低でも私より強くて、私より頭が良くて、私より……え〜と、その、同じ位でいいけど美人で優しい女性。
これが最低条件ね。もちろん、お兄ちゃんを愛してくれるのは当り前だけどね♪
でも、この最低条件を満たす女性が中々居なくて、仕方なくお断りしてきたんだから。


それに、今や木連の突撃宇宙優人・優華部隊総司令官。私の直属の上司。

レベルアップして、最高優良物件になったからには、私の苦労を分かって欲しいな。

まさか、地球との開戦がこんな形で私に不幸を運んで来るとは夢にも思わなかったわ。

いくら世紀の大天才といっても、普通ならこんな異例の昇進抜擢劇があるわけがない。私も含めてね。
でも、木連は何と言っても人口が少ない、人がいない、無駄に殺していい人なんて一人もいない。
それ故の異例。人材を失うわけにはいかない有人の優人部隊を護る為の。
お兄ちゃんが望んだ事とは、正反対のことだけど…

まったく搦め手から攻めてくるなんて、地球もやるものよね。

はぁ〜〜〜

「舞歌、本当にどうしたんだい? 心配事なら相談にのるよ、話してごらん?」

のうわぁ!!

あ、はしたない……失礼しました。

いえ、お兄ちゃんが急に至近距離でアップで迫り、私の顔を覗き込んできたものですから…

「…本当になんでもありません」

お兄ちゃんの事を考えていたと言える訳がありませんので答えると、お兄ちゃんが真剣な目で私を見詰めます。

ポッ

「顔が赤いよ。熱があるのかな〜?」

お兄ちゃんの手が私の額に伸びます。

ポポポポポポポッ

急接近です。

いけません!
禁断モードに入ってしまいます!!

「…お兄ちゃん、大丈夫です。…あっ、私、仕事がありますから…」

もったいないですがお兄ちゃんの下を退出する事にしました。舞歌のバカ、グスン。

でも、仕事があるのは本当…

木連はまだまだ女性の軍部進出が遅いけど優華部隊があるからね♪

お兄ちゃん、私、頑張るから!

 

 

皆様、はじめまして。

私の名前は、各務千沙(かがみ・ちさ)。第一期優華部隊に配属になったばかりです。
特技は、射撃と戦闘時の采配です。よろしくお願いします。

優華部隊とは、端的に言うと木連のエリート女性部隊の事です。多分に実験的な部隊である事は否めませんが、
その第一期生は誇りに思っても良い事だと思っています。

それに、私達、木連軍人の女性の憧れであり天才兄妹の一人である東舞歌様が直接の上司と伺っています。
私は、一軍人としても女性としてもこのような機会に恵まれ、幸せだと感じています。

本日は、その舞歌様に呼ばれました。


「失礼します。各務千沙参りました」
「入りなさい」

穏やかながら凛とした感じの声です。想像通りの声です。

「はい」

私は、部屋に入り敬礼をしました。
黒い髪を背中まで伸ばした女性、舞歌様が返礼をし、私も敬礼を解き、直立不動に戻りました。

「こちらに座りなさい」
「はい、失礼します」

ソファに案内されます。

「零夜、お茶をお願いね」
「はい」

舞歌様の側に仕えていたかわいい感じの少女、零夜、がお茶を用意をしています。
少し長くなるのかもしれません。

「では、改めまして、私が東舞歌です。優華部隊の総指揮は東八雲少将が取りますが、
 直接の指揮は女性で少人数と言う事もあり私が任されています」
「はい。優華部隊配属になりました各務千沙です。よろしくお願いします」

私の挨拶にニッコリと微笑むと舞歌様は話し始めました。

「今日呼んだのは、他でもありません。貴方にやって貰いたい事があるからです。……」

舞歌様のお話は、ある程度予想通りでした。

今後の展望から始まり、優華部隊のリーダーとして私を指名されました。
優華部隊7人のメンバーを見るとおそらくそうなると思っていました。個々の分野ではともかく、総合力では
私が一番と自負していましたから。最年長の空飛厘は、リーダータイプではないと思うしね。マッド系ですから…





「ところで、聞きたい事があります」

ある程度話した舞歌様の雰囲気が突然変りました。
今までは、和やかな感じでしたが、真剣です。これも舞歌様なのですね。

「貴方の男性のタイプは何かしら?」
「はい、私の……」

はい!?

今、何て仰ったのかしら? 男性? タイプ? …舞歌様がそんな事聞く訳ない……聞き間違いね…

「申し訳ありません。もう一度お願いします」
「だから、貴方の好きな男性のタイプは?」

はい。そうですよね。舞歌様が好きな男性のタイプなんて聞く訳が…

…ん!?へ?あれ?うにょにょ?

「…好きな、男性の、タイプ、ですか?」
「そう♪」

舞歌様は楽しそうに肯いてくれました。
優しそうな良い笑顔です……じゃなくて!!

「どう言う事ですか!!」
「落ち着きなさい、千沙」

はい。落ち着きます。はーぁふーーぅはーぁふーーぅ

「いい、優華部隊は最精鋭部隊であり、軍事機密の宝庫なの。ここを管理する者は、それだけにあらゆる事態を
 想定しておかなければいけないのよ。わかるわね?」
「…はい」

「これもその一環。但し、プライベートにかなり入り込む事だから、軍や情報部のデータの中には一切残らないわ。
 あくまで、指揮官だけが有する物になるから、安心しなさい」

そ、そうですよね。安心しました。
舞歌様が世間一般の女性のように興味思い付きで聞く訳がありませんものね。

「はい、失礼しました。そういう事であれば構いません」
「分かってくれて、嬉しいわ。では、早速、いいかしら?」

舞歌様は笑顔です。緊張をほぐそうとしてくれています、ですよね?

「私は、精神的にも肉体的にも強い男性が好みです。木連軍人らしい真面目さも好きですね」

ピクッ

舞歌様のこめかみの辺りが一瞬引きつったかのように見えましたが……気の性のようです。

「……精神的に強い……真面目……他には?」
「はい。家族と友人を大切にしてくれる方です」

ピクッ

「……家族と友人……ちなみに年収は?」

ね、年収ですか? こ、項目が細かいですね〜

「あの人並みにあれば…」
「家事、料理、洗濯、掃除はできるかしら?」
「人並みでしたら…」

私の返答に舞歌様は考え込まれてしまいました。
私は、何かおかしな事を言ってしまったのでしょうか? ごく普通の事を言っただけなのですが…

「…あ、あの〜舞歌様?」
「…ん、あ、もういいわ、千沙。…今日はこれ位にしておきましょう。これからもよろしく頼むわね(ニコッ)」
「はい。私の方こそお願いします」

最後に又、素晴らしい笑顔で私を送り出してくれました。
舞歌様は本当に笑顔の素敵な女性です。

 

 

「……各務千沙……今後接する機会が増えるわね。当然、お兄ちゃんとも…
 …在庫から当て嵌まる人は……精神的にも肉体的にも強い……あの二人は打たれ強いわね。
 真面目…まぁ、融通が利かないわね。家族と友人…家族は……シスコンね……」

舞歌様が何かブツブツ言っています。はい、こういう時は近づいてはいけませんね。昔からそうなんですよ。
ですから、今はお掃除に励みましょう!

あ、失礼しました。

私は、紫苑零夜(しおん・れいや)といいます。得意なことは……お料理とお裁縫、かな?
優華部隊の隊員で舞歌様のお手伝いをよくしています。

「零夜? 舞歌様はどうかしたの?」
「あ、気にしないで下さい。いつものことですから」

今のは同じ優華部隊の天津京子さんです。京子さんは、珍しい碧眼をした小柄な女性です。
でも、私より背も高いし、プロポーションも上です。私は小さいですから……

ちなみに今は京子さんとお掃除をしています。

「ふ〜ん、いつもの事なんだ〜?」
「はい、今にわかりますよ」

はい、いつもの事ですよ。舞歌様があの瞳をなさる時は、下手に近寄ってはいけません。
一番良いのは声の届かない所に逃げ去る事ですが、今は逃げ場がありません。
ですから、視界から外れておくのがベストになります。

お掃除好きな京子さんは、私の言葉に納得したのか鼻歌を歌いながら雑巾がけをしています。
本当に綺麗好きですね。でも、たまに廊下で気合を入れてモップ掛けで爆走するのは止めて欲しいです。
跳ねられそうになりました、リングを駆けるリキラリアット的にとっても危ないですよ。

「……すると、作戦は、将を得んと欲すれば馬を射よね!」

まだブツブツ言っています。あ、そうだ、あらかじめ謝っておきましょう。

「ごめんなさい、千沙さん。無力な零夜を許して下さいマル」





「零夜、お使いを頼まれてくれるかしら?」

始まりました。千沙さん、ご愁傷様です。







今、私の前では、神楽三姫さんが舞歌様と話しています。
先程の千沙さんの前半と同じ感じです。

「いい、優華部隊は最精鋭部隊であり、軍事機密の宝庫なの。ここを管理する者は、それだけにあらゆる事態を
 想定しておかなければいけないのよ。わかるわね?」
「はい」
「これもその一環。但し、プライベートにかなり入り込む事だから、軍や情報部のデータの中には一切残らないわ。
 あくまで、指揮官だけが有する物になるから、安心して質問に答えてね」

嘘です。舞歌様の瞳が異様にキラキラ輝いています

ごめんなさい、三姫さん。やっぱり零夜は弱い子です。

「三姫、貴方は高杉三郎太君に興味がありますね?」

ドン!

三姫さんはテーブルに額を打ち付けました。
舞歌様、アニマル的に直球勝負ですね。

「な、な、なんばしとっと!?」

慌ててますね。浜口的ですから無理ありません。でも、すぐ慣れますよ。

「ここでの会話はすべて秘匿となります。正直にお答えなさい」
「……そ、そげん…こと…」
「私は、貴方を苛めたくて聞いているのではありませんよ。優華部隊のメンバーには皆聞いていることです。
 貴方だけ特別扱いする訳にはいかないのです。わかりますよね?」

舞歌様は優しく笑っていらっしゃいます。…なんですね…

「……分かりましたと。……その…」
「三郎太君が好きなのですね?」

ポッ

三姫さん、真っ赤です。
いいですね、三郎太さんという方は。三姫さんは、セミロングの黒髪が美しい女性です。
しかも、舞歌様と比べられる位凹凸があって……羨ましいです。思わずバットを握り締めてしまう位…

「…わかったわ。もう、いいわ。貴方の顔を見れば、一目瞭然ね♪」

ボンッ!

あ!今度は耳まで真っ赤です。

それより、舞歌様。そんなに女性に想い人がいるのが嬉しいのですか。
八雲様以外の想い人であることが…丁重にお断り申し上げずに済むことが…

「その話はここまでにします」
「……ありがとうございます。……はぁ〜

三姫さん、甘いですよ。舞歌様の瞳はまだキラキラ輝いています。

「そう、それと、貴方と零夜にやってもらいたい事があります」

舞歌様!私もやるんですか?……常に視界から逃れるようにしていた私の苦労って……
いけません。へこたれてはダメです、八雲様も言ってました、ラッシャー木村は打たれ強い!って。
見習わなければいけません。

 

 

私は、何故ここにいるのでしょうか? 

一体何をしているのでしょうか?


優華部隊に正式配属されて一週間。

発足間もない部隊は、やる事が多く休む間もないはずなのに…

訓練でも事務処理でも今が一番忙しい時なのに…

リーダーとして寝る暇も惜しむ状態なのに…お肌に悪いけど




何故、私は庭園にいるのでしょうか?


しかも、何故、男性と二人きりなんでしょうか?


更には、何故、部屋には私の両親と男性の妹さん

待っているのでしょうか?




舞歌様!千沙は大変不思議です!


「どうかしましたか、千沙さん?」
「…あ、いえ、何でもありません……九十九さん…」

九十九さんが心配そうに尋ねてくれました。
優しい男性です、本当に…




…じゃなくて!説明を求めます!!
……飛厘、出なくてもいいわよ

…事の起こりは、三姫と零夜と外食に行こうとしたのが最初でした。

軍基地の前で押し問答をしている活発な少女がいました。
お兄さんが優人部隊員で怪我をしたと聞き、飛んできたらしく、門の守衛と喧嘩をしていたのです。

私が仲裁に入り、少女、ユキナちゃんを案内して、お兄さん、九十九さんの所に行く事になり、
三姫と零夜は先に食事に行きました。
ところが、行ってみると九十九さんは怪我などしてなく、ユキナちゃんは憤慨してしまいました。
何でも女の人からの電話だったそうですが…


「誠に申し訳ありません。妹が大変ご迷惑をおかけしまして…ほら、お前もちゃんとお礼を言うんだ」
「わたし、悪くないよ。でも、ありがとね!」

礼儀正しく頭を下げる九十九さんに、元気なユキナちゃん。

「いえ、構いません。お気になさらずに」
「はい、そう言っていただけますと…」
「ねぇ、お兄ちゃん、ユキナ、何も食べずに来たんだよ。お腹減った?」
「……ユキナ、分かった。では…」

本当に仲の良い兄妹なんでよね。微笑んで見ていると、ユキナちゃんは話を私に振りました。

「お姉ちゃんも一緒ね♪」
「え、私?」

ちょっとびっくりして変な声を出してしまいました。恥ずかしかったです。

「こら、ご迷惑だろうが…」
「いえ、別に構いませんが…」

三姫と零夜は何処に行くと言ってませんでしたからね。

「ね♪ じゃあ、お礼にお兄ちゃんが奢って上げるからね!」
「ユキナー! あ、ですが、よろしければ、本当にお礼もしたいのでご一緒ににいかがでしょうか?」

どこまでも生真面目な九十九さんが微笑ましくて、私は了承しました。

食事中は、ユキナちゃんが主に話し役で元気一杯でした。
私が優華部隊で舞歌様直属であるという話に九十九さんは大変驚いていましたね。


その日はそれで終わりましたが、翌日、又、九十九さんが会いに来てくれました。
昨日のお礼といって、花束を頂きました。
そんなに気を使わなくてもいいのに…
嬉しかったですけど…
ちなみに舞歌様が側で笑っていました…


更に翌日はユキナちゃんが来てくれました。
その次の日は、ユキナちゃんの相手をしてくれたお礼と九十九さんに食事に誘われました。
私が気にする必要無いと言うと、舞歌様から『お礼は絶対にしなさい!』と言われていると何故か冷や汗をかいて
言われますので、了承しました。

更に更に次の日も……又又、翌日も…

そして、昨日…

「千沙、明日正午から大事な会合があります。フォーマルな服装で○○ホテル、朱雀の間に来るように。
 くれぐれも失礼があってはいけませんから、必ず正装で来るようにね」

フォーマルな服装? 軍人は軍礼服が正装ですよね? 私は聞いてみました。

「いえ、これは非公式なものですから、軍服ではなく、普通に華やかなフォーマルでお願いね♪」

普通に華やか?……難しいです…

「…わかりました。零夜に用意させますので貴方は必ずそれを着て、出席するように」

私の困惑を見てとった、舞歌様が言ってくれました。
はぁ〜助かります。そういう服は実家にしかありませんからね。

「ありがとうございます。それでは、舞歌様、明日は何時に出発なさいますか?」
「え? あ〜私は先に行くから、千沙は一人で来てね♪」

舞歌様は、笑って仰いました。あの素晴らしい笑みでです。



そして、用意された服…朱色系の着物と同じ暖色系の帯を零夜に着付けして貰い、ホテルに来た訳ですが…


部屋に架けられた札…『白鳥家・各務家


部屋には、舞歌様の痕跡は欠片も見えず、


何故か、正装した私の両親に、白鳥ユキナちゃん。


そして、紋付袴姿の白鳥九十九さん


私が着席すると、お父さんが話し始めました。


本日は大変お日柄もよくお集まり頂き大変あり……





いえ、九十九さんは嫌いではありません…

むしろ、大変好感が持てる方だと想っています…

責任感が強く、しっかりしていて、優しく、それでいて強くて、妹さんを大切にして、ご友人もいっぱいいて…

アニメにはドップリはまっていますけど…

それを補って余りある魅力ある殿方だと思いますよ。


でも…

でもですね…

私は思うんです…



















結納の日程が決まったお見合いと


いうのはあんまりではないですか!


舞歌さまぁーーーーーーー!!(怒)



仲睦まじい二人が正式に婚約をしたのは、この後一ヶ月後の話であった。






<あとがき>

代理人様曰く。『舞歌は凶度のブラコン!』

なるほど、わかりました。つまり『あにいもうと』を解釈すると、こういう事(上記)なんですよね(爆)

尚、ユキナのブラコンは、舞歌様が責任持って強制、もとい、矯正しました。とさ。

 

 

代理人の感想

 

・・・・いやまぁ、私も同じネタは考えておりましたが(核爆)。

やはりギャグにしろぎゃるげにしろ素養の違いでしょうか。

ここまでのものは私にゃ到底書けません。

(注:褒めてます)

 

しかしこれで八雲のイメージも大きく変わるだろうな〜。

というか、ブラコン妹を持った兄はみんなこんななのか(爆)?

 

ちなみに私の中の舞歌はなぜか黒髪をポニーテールにしていたりします(爆)。

(要はロードス島戦記のカーラのイメージな訳ですが)