火星と言う星がある、太陽系第4惑星に位置するこの星は、旧世紀には人が住める様な地ではなく、土地には栄養は無く、空気は薄く、水も凍り付いていて、とても人が住めるような場所ではなかったらしい
だが新世紀になり、技術の革新によって、人類の英知はこの不毛の土地をも自らの領土にすることに成功した。
虫型機械による大地への栄養分の補給によって、味は保障できないながらも作物を生産することが出来、空気中に散布されたナノマシンによって酸素が作られ、大気が作り上げられ、水生成プラントによって居住区に常に水が補給される…、かつて不毛の星と呼ばれ、人間が住むことなど夢物語であったこの星は、開拓者の手によって第2の地球として、これからも発展し続ける、、、筈だった
だが西暦2195年、地球に住む人間にとっては忘れられない年、そして火星の民にとっては思い出したくても思い出せない年、その努力の全ては無慈悲な暴力の前に木っ端微塵に砕かれた...
木星からやってきた謎の異星人の軍隊による火星の侵略、文字にすれば馬鹿馬鹿しく、小説の中でも使い古されて手垢の付きすぎた馬鹿げた事態、現実にそんなもの想定している人間はいるわけも無く、火星の民は抵抗といった抵抗ができずに、彼らの攻撃を為すすべも無く許容することしか出来なかった...
三ヶ月、長くも無く短くも無い時間、だがそれだけの時間で開拓者の精神を持ち、希望に満ち溢れていた数十万人の火星の民達は圧倒的な暴力の前に屈し、殲滅され、殺害され、絶滅の危機に瀕していた。
白旗を持ったまま心臓を貫かれその活動をとめたヒト、機械に圧死され悶え苦しみながら死んだヒト、銃によって暖かい家族のことを回想する暇も無く一瞬にして殺されたヒト、爆発に巻き込まれ原型を留めないほど木っ端微塵になったヒト、ヒト、ヒト、ヒト
西暦2195年のこの大地を表現するならたった一言でいい、「死の星」---------それが「開拓者の楽園」と呼ばれた星の成れの果てだった...
「正義の名の下に」 第一話
作・ヤマ猫
この赤き大地に存在する理想郷の名を冠した都市、ユートピアコロニー
今、その都市は理想郷とはかけ離れた地獄と化していた。
大戦初期、地球連合軍の宇宙船の決死の突撃によって一部損傷をうけた謎の敵生体の母艦と思われるものの1つ、その質量がそのまま大気圏突入の重力エネルギーを加算してこのユートピアコロニーに落下した。
その日、ユートピアコロニーで地表にいた人間はその圧倒的な爆発による熱量の前に自分が死んだことも分からずにその意識を絶ち、消し炭となって大地に還元されていった
だが、この時地表で死んだ人間は幸せだったのかもしれない、この先の地獄を見ずに逝くことが出来たのだから...
◆ ◆ ◆
落下した敵の母艦、後にチューリップと呼ばれる花びらの形をしたそれは、これまでにない新しい機能を有した舟だった。
チューリップは母艦であって母艦でない、なぜなら、その内部に戦艦を搭載していないからだ、だが、チューリップは無尽蔵ともいえる兵器、戦艦を展開することが可能だった。
ボソンジャンプ発生装置、これがチューリップに搭載された新しい戦略兵器、チューリップは敵が生息する星と思われる木星から直接占領地域に軍隊を派遣することが出来る、これまでに無い画期的な転送装置だった。
補給も移動時間もかけずに戦場に実働部隊を転送し、占拠する事が可能な舟、侵略者はこの機能をフルに使い、考え付く最も残虐な作戦を使った。それが大量に動員された無人の対人兵器による、地表にのこる人間の虐殺という作戦--------地球に住む昆虫に似ていることから後に「バッタ」と呼ばれる鉄で出来た侵略者の尖兵は、入力されたプログラムの通りにただカメラアイに映った人間と思われる生物を、慈悲を請う者、闘おうとするもの一切関係なく、効率的に命令どおりに殺していくモノだった。
コロニーに堕ちたチューリップは、その衝撃にも屈せずシステムを正常に起動させプログラム通りにその作戦を開始した。ユートピアコロニー市民のうち、侵略者の情報を軍から聞かされ地下に潜っていた避難民は、真っ先にその無慈悲な殺戮者達の餌食となろうとしていたのだった。
避難民を守る為に必死に抵抗し、鍛え抜かれた戦闘能力で着実にバッタを破壊していった軍の陸戦部隊も、無尽蔵にチューリップから排出される圧倒的な物量と地球からの補給が来ないという絶望から各個に撃破されていき、殺戮者たちは軍人の死骸を踏み越え市民が存在する地下シェルターに向かって進軍していった。
爆発音が聞こえる、「大丈夫だ、任せておけ」と言って戦場に走っていた俺と同じ年位のあの新兵達は無事だろうか?
避難民達もだいぶ憔悴してきている、最初の頃は避難民の一部がこのシェルターを守る兵士に情報などを求めて食ってかかっていたが、徐々に大きくなっていく戦闘音の恐怖に、もはやそんなことをする元気も無く、あの軍人達が侵略者を見事倒してくることを祈りながらひたすら耐えていた
「姉さん、あの軍人さん達、大丈夫かな・・・」
俺は隣で特に恐怖に怯えているわけでもなく泰然としている姉に声をかける、よくこんな状況で落ち着いていられるものだと、少し頭が痛くなった
「大丈夫よ、きっとあの人達がなんとかしてくれるわ、それに私達には......があるじゃない」
「そうだね、俺達には...」
【ドンッ!】
俺が返事を返そうとすると突然、シェルターの入り口を誰かが体当たりするような音が聞こえ、俺達は口を閉ざし入り口を凝視した。シェルター内が静寂に包まれる...
徐々に音が大きくなってくる、シェルターと言っても別に戦争や核を想定したわけでもない薄い鉄の扉は、その体当たりの音が起こる度に少しずつこちら側に圧迫され変形していく
数時間前に会話して励ました避難民の小さな女の子も恐怖に引きつった様子で、母親に縋りついていた
変形が大きくなって少しずつ音も大きくなってきた。
俺は近くに止めてあった整備用の小型ショベルカーに向かって走った。乗り込むとすぐさまIFS制御装置に手を置き訓練学校で習ったとおり意識を集中させる。
扉が破られおそらく眼であろう不気味な2つの光が俺達の視界に入ってきた
その瞬間、俺は小型ショベルカーのスピードを全開にしてその2つの光目掛けて突っ込んだ
何かにぶつかった手ごたえはあった。そしてそのまま、それを壁に向かって押し付けスピードを全開にして圧迫する
「アキト君!!」
姉さんが俺の無謀な行動に、慌てた様子でこちらに向かって走ってくる
「キーーーーーーーキーーーーー」
粉塵が収まった。ショベルカーの前で不気味な虫型機械がもがいているのが見える
「リミッターを解除してっ!」
姉さんの声が頭に響く、そうだ、リミッター解除だ、俺はIFSで車を制御しながら左手でパネルを操作する。エンジンの音が変わり焼け付く位大きな音になる、代わりにこれまで以上の圧力がこの機械の化け物にかかった。
「キイイイイイーーーーーーーーーーー」
不気味な断末魔をあげながら、虫型機械の両目から光が消えた
「お兄ちゃん、すごーい」「坊主、良くやった!」
後ろのほうに居る避難民から賞賛の声を浴びせてきた。
「姉さんっ、やった・・」
【ドンッ!!!!!!】
大きな爆発音がして振り返ったその先には黒煙が立ち込めていた。あそこは、避難民達が寄り添っていた場所なんじゃ・・・
黒煙の中にさっきみた昆虫機械と同種の化け物の眼であろう不気味な2つの光が3つある、たださっきのとは違い光の色は赤色をしていた
「姉さんっ!?姉さん!!!」
俺は慌ててショベルカーを乗り捨て、無謀にも黒煙に向かって走り出す
と、走ってる途中で左手をつかまれそちらを見る、そこには見慣れた姉さんの姿があった。
「姉さんっ!無事だったんだね」
「アキト君、逃げるわよっ」
俺は姉さんに引っ張られるように数十m先の扉が無い壁に向かって走る、
「確かこの壁の向こうに通路があるはずね」
この地下シェルターのマップを思い出す。確かにこの先には通路があったはずだ
そして、姉さんは走りながら、何かをぶつぶつ呟き始めた。
システム スタンバイ
「-------------大源、吸引」
姉さんの体に光が満ち始める、こんな状況なのに、俺はこの光がきれいだと魅入ってしまいそうになった。
データ サーチ
「-------------素子、解析」
姉さんが走りを止め、何も無い壁に手をかけ詠唱を続ける。光が徐々に姉さんの手に集まり、壁に侵食していく
数秒もたたないうちに、光は壁に移り、人が通り抜けるくらいの大きさまで光が広がる
プログラム ラン
「-------------物体、分解」
その瞬間、光が浸食していた壁が突然崩れ落ちさらさらの砂のような物になっていった
「成功、したみたいね...」
そう自分に言い聞かせるように言うと、姉さんは穴をくぐり通路側に行った、俺もそれを追いかけて通路に出る。
「確かこの先には水生成プラントに続く地下水路があったはずね、アキト君、急ぐわよ!」
そういって姉さんが走り出す。俺もそれに続いて走り出した。
◆ ◆ ◆
俺の姉、イネス・フレサンジュは2つの顔を持っている、1つはネルガル重工の研究所に勤務する研究員としての顔、そしてもう1つは代々続く魔術師の家系としての顔だ
魔術師、別に俺は怪しげな宗教に入ってるわけでも、危ないクスリに手を出してるわけでもない、事実、この世界の裏側にはそう呼ばれる者たちが存在する。魔術、と言ってもそれは、一般的に持たれている様に何でも出来る万能な力と言うわけでも無い、数百年前までは魔術で出来ることは科学には出来ず、逆に魔術で出来ないことは科学には出来た。しかし科学が異常進歩し人の力で火星に移住できるようになった今日では、魔術の力は科学の力にはとてもじゃないがかなわない、基本的にリアリストである彼ら、魔術師の中には、先端の科学を勉強し魔術に応用しているものも少なく無いと聞く、かく言う俺の姉も魔術師から科学者に転向したその一人だ。
姉さん曰く、「魔術師の目標に達成できるなら、手段なんてどうでもいいのよ」ということらしい
既に長い通路を走り始めてから数分がたった、どうやら追跡していたあの機械の化け物達から大分引き離したようだ、奴らのあの駆動音も聞こえなくなった。それとも仲間を集めてこの一本道をゆっくり追い詰めるつもりなのだろうか...
前方に光が見えた、まだ動力は生きているらしい、俺達は地下水道に続く予備コントロールルームに入った。ここは不測の事態などに備えていくつか作られているコントロールルームの一つで、ここのシステム俺たちがいるブロックに対する優先的な制御権を持っている
姉さんは部屋に着くなりコントロールパネルを操作し始めた、IFSによって瞬時に命令を理解したシステムが俺達が通ってきた通路にいくつか点在する隔壁を下げていく、それを横目で見ながら俺は部屋の片隅にあるハッチのハンドルに手をかけた。
「これで暫くは時間が稼げるわね」
そう言って姉さんは俺のハンドルを回している手の上に自分の手を重ねて手伝う
【ガキッ】
そう言う音がしてハンドルは始めの固さが嘘のように回すことが出来た
ハッチが開き、底が見えないくらい深い闇が見える、ここを進むのかと思うと眩暈がする
【ガンッ!ガンッ!】
遠くで、壁に何かが体当たりするような音が聞こえてきた
「姉さん急いでっ!!」
俺はのんびりとした様子(に見える)で辺りを見回している姉に叫んだ
「待って、落ち着きなさいアキト君」
そう言って姉さんは壁に吊ってあったヘルメットタイプのライトを俺に投げる
どうやら俺も冷静なつもりでかなり混乱していたようだ、恥ずかしさに引きつった笑みを浮かべながら俺はそれを付け、梯子に足をかけた
◆ ◆ ◆
何処までも続く深い闇、足はすねの部分まで水に浸かって気持ち悪かったが、そればっかりはどうすることも出来ない。俺と姉さんはライトの光だけを手がかりに先が見えない水路を歩き続けていた
「さすがにあの化け物もここまでは追って来ないようね」
姉さんが明るい口調でそう話す
「みたいだね、それにしても奴らは一体何なんだ・・」
問いかけても、答えが出るわけでもない、嫌な沈黙が場を支配した。
「あれ・・・」
なぜか俺は妙な違和感を感じ。姉さんの前に手を出して動きを止めさせ、頭のライトを調節して数瞬前に照らした地面を再び照らした。
「どうしたの?アキト君」
姉さんが怪訝な顔をして、俺に問いかける、だが俺の照らした地面を見てその違和感に気づいたらしい、顔が青褪めていた。
その地面には3つの影が揺らめいていた、ただ、影ができるならあるはずの物がそのあるべきであろう場所に存在していなかったのだ…
突然、影が広がり俺たちの前方で起き上がった。徐々にその影達は"人の形"をとり始める、俺達がその異常な状況に硬直している間、ほんの数秒の間にその影達は人間の形になった、肌の色は地球上の生物にありえない位、完全な黒だったが...
同時にその3匹の影人間の目に当たる部分が光る、赤い光、俺はさっき避難所で見たばかりのあの光を思い出していた。
「魔道・・・生物・・・」
姉さんが青褪めた様子で呟いた声を、得体の知れないものに対する恐怖に支配された俺は理解することが出来なかった。
あとがき
初めまして、Actionは何度か見てるんですが、投稿するのは始めてです。
巷で人気のFateをやっとクリアしたんで感動がさめないうちにSSを書こうと思ったまでは良かったんですが、検索してみると出るわ出るわ、二番煎じは嫌なのでとりあえず絶対ありえない設定で書こうと思い立ち基本的な世界観が違いすぎるActionのメイン素材?のナデシコと掛け合わせて見ました
なんかイネスさんが魔術師になってるし、滅茶苦茶ですね、どっから電波が飛んできたのかな・・・
とにかく、時間をかけても完成させてみせるので、こんな作品でも面白かったって言う方は、感想・突っ込みメールよろしくお願いします
ちなみに魔法の文面はイネスさん→説明→情報→パソコン、と無理やりな連想ゲームで作りました
代理人の感想
むー、やっぱFateでしたか。w
しかし、アキトとイネスが姉弟でイネスが魔術師・・・・面白そうではあるんですが、さて。
このまま突っ切っていくことを期待してます。