ルリの戦い<アカツキ編>






漆黒の闇が広がる広大な宇宙。

その宇宙の一角で白亜の戦艦が複数の敵との戦いを繰り広げていた。

ナデシコC。それが白亜の戦艦の名前である。



「終了です。」

連合軍大佐ホシノ・ルリはウインドウ・ボールに囲まれたまま静かにそう言った。


そしてルリの視線の先にはシステムを掌握された敵艦だけが残っていた。

「卑怯だぞ〜!!」

「正々堂々戦え〜!!」

そんな戯言が通信から聞こえてきたが誰も気にしていない。

というか誰も聞いていない。

もはや皆慣れっこなのだ。


三郎太に至っては敵艦発見後も女性乗組員をナンパしている。

バチーン!

・・・どうやら振られたようだ。


「宇宙軍の護送艦は間もなく到着します。」

ハーリーだけはきちんと仕事をしている。


火星の後継者を退治し続けているルリの戦いは、いつも同じパターンである。

問答無用でシステム掌握後、無理矢理武装解除させて宇宙軍に引き渡す。

その繰り返しである。

火星の後継者がマニュアル操作していようと関係無しである。

マニュアルとはいえ、空気の循環システム等は確実に生きている。

そこからハッキングすればルリにとっては容易い仕事だ。


「うるさいですね。貴方たちのおかげで私は、私は・・・」

火星の後継者の言葉を聞いていたルリが身体を震わせながら呟く。


(アキトさんと一緒に住めないじゃないですか〜〜!!!)






ネルガル会長室。

「ドクターイネスの研究室」から戻ってきた6人はそこで今後の展開を話し合っていた。


「どうして私がアキトさんと住めないんですか!!」

ルリの怒声が会長室に響き渡る。

「か、火星の後継者を無くすまできみは軍を辞められないでしょ。」

ルリの雰囲気に押されながらもアカツキは言った。

「だったらアキトさんにナデシコCに来てもらいます。」

「テンカワ君は指名手配中なんだからそんなの無理だよ。」

ルリの言葉をアカツキはあっさりと言い返した。

その態度には自信が満ち溢れている。

どうやら得意の会談に移ったことで元のアカツキに戻ったようだ。

「大丈夫です。ナデシコCは私一人で動かせますからばれません。」

ルリは自信満々に言い切った。


(二人きりで宇宙を旅行・・・まるで婚前旅行です。)

そんなことを考えているルリの頬はうっすらと赤みを帯びていた。


旅行じゃなくて戦いに行くのだがまったくもってルリには関係なかった。


「いや、ナデシコCは宇宙軍の所属だからそんな勝手は・・・」

アカツキが正論で対抗しようとする。

「ミスマル提督に頼みます。」

ルリは父親の権力までを持ち出した。

「いくらミスマル提督でもそれはちょっと・・・」

なおもアカツキは縋る。

先程までの自信は霧散しているようだ。

アカツキ・ナガレ・・・得意の会談でも負けつつある男である。


「大丈夫です。『パパ』と呼べばミスマル提督はなんでも聞いてくれますから。」

ルリは自信を持って答えた。


ミスマル・コウイチロウ・・・娘には弱い、弱すぎる男である。


それを知って利用するルリも立派な悪女かもしれない。


「ルリちゃん、落ち着いて。今回はアカツキが正しいよ。」

アキトが見かねてアカツキのフォローに入る。

その後ろではアカツキが「やっぱり僕等は親友なんだね」などとのたまっているが気にしてはいけない。


「どうしてですか!アキトさんは私と一緒に住みたくないんですか!」

ルリは涙目になっている。


(アキトさんにはこういう態度が効果的です。)

・・・どうやらルリは涙をある程度自由に扱えるようになったようだ。


「そ、そんな事あるわけないじゃないか!」

ルリの態度を見て慌ててアキトはフォローした。


「でも、火星の後継者は出来るだけ早く倒さなくちゃいけないんだ。ルリちゃんなら彼らを殺さずに制圧出来るだろ?」

アキトはルリに優しく語り掛ける。


アキトはクリムゾンとの戦いを決めたものの、出来るだけ人を殺さないことを決めていた。

復讐鬼時代に無関係な人間を多数殺したのがいまだに心に重く圧し掛かっているのだ。

「アキトさん・・・」

アキトの優しい言い方にルリはすっかり大人しくなっている。

「わかりました。アキトさんの願いはが叶えて見せます!」

アキトに向かってルリは力強く宣言した。

「ありがとう、ルリちゃん。」

アキトも満面の笑みを浮かべている。


「アキトさんも一緒に来てくれますか?」

ルリは笑顔で居るアキトに向かってそう言った。

「え、でも俺は・・・」

自分は指名手配中なのだ。

そう簡単に人前に出るわけにはいかない。


「傍に居てくれるだけでいいんです。アキトさんが傍に居てくれれば火星の後継者達にも負けません。」

ルリはなおも真摯な態度でアキトに頼み込む。

「ルリちゃん・・・」

そんなルリの真摯な態度にアキトは思わず考え込む。


(もう少しです!このまま行けばアキトさんは絶対着いてきてくれますね。そうすれば二人で・・・)

・・・ルリはアカデミー賞級の演技も身に付けているようだ。

ルリがアキトの性格を見抜いていることもあって、効果は抜群だ。


「まああなたの妄想は置いといて、アキト君はネルガル所属なんだから勝手に持って行ってもらっちゃ困るわね。」

陥落寸前のアキトを守るためにエリナが出てきた。

(さすがルリちゃん、ちょっとの隙も見せれないわね。)

エリナはルリの攻撃ぶりに感嘆すると同時にさらなる闘志を燃やしていた。


「主治医としてもいますぐの活動は禁止ね。」

イネスが続く。

(アキト君の弱いところを的確に突く。やるわね、ホシノ・ルリ。)

イネスはルリの行動を的確に分析していた。


「アキトは私のだよ!」

ラピスも負けずに言った。

(ああするとアキトは言うことは聞いてくれるんだ。今度マネしてみよ。)

ラピスはルリから学んでもいた。



「くっ・・・」

ネルガル三人衆(ルリ命名)の口撃にさすがのルリもたじろぐ。

ラピスの発言はまったく説得力を持たないのだが、大切なのは勢いなので気にしない。


「そういうわけでルリさん、あなたがテンカワさんと一緒に暮すには火星の後継者を退治して、
 軍を辞め、ネルガルに入って頂くまでは無理というわけでして。」

プロスがそう言って締める。

アキトも家族であるルリと暮せないのは残念そうだったが、今の自分の状況を考え諦めた。


アカツキはもはや会談に参加していない。

アカツキ・ナガレ・・・居場所をも失いつつある男である。


「・・・わかりました。」

ルリが本当に残念そうに呟く。

「すみませんな。こちらとしても出来る限りのお手伝いはさせて頂きますので。」

プロスが申し訳なさそうに言った。


しかし、ルリの目はエリナとイネスが笑っているのを捕らえていた。










(せっかくアキトさんと暮せると思ったのに・・・)

そう考えるとルリの苛々は募っていった。

(少しくらい苛めてやりましょう。)

ルリはそう考え付き、邪悪に笑う。

その笑みを見た乗組員もいたが、今のルリに関わってはならないと思い忘れることにした。



「な、なんだ?」

「艦が勝手に・・・」

「う、うわ〜〜!!」

通信から火星の後継者達の悲鳴が響き渡った。

その悲鳴に慌てて、火星の後継者の艦隊を見たナデシコ乗組員は呆気に取られた。


火星の後継者艦隊が動き始めたのだ。

それもまったくの出鱈目に。


二つの艦が真正面から突っ込んでいる。

しかし激突する直前で急制動が掛けられる。


他の艦からはミサイルが放たれこれまた他の艦に命中する。

しかしミサイルはディストーションフィールドで防がれいている。

もっとも衝撃までは防ぎきれず、艦を大きく揺らしている。


一連のことを行っているのかはだれか、システムを握っている人間を考えればすぐわかる。

しかしナデシコCの乗組員は敢えてわからない振りをしているらしい。


さらにその人物はご丁寧にも重力制御を全く行っていない。

つまり、火星の後継者艦隊の内部では無重力状態でシェイクされているのだ。

乗組員のうちの何割かは既に気を失っている。



「か、艦長!何をしているんですか!」

ハーリーが勇気を持ってルリを問いただす。

ハーリーの勇気にナデシコC乗組員の多くは心の中で拍手をし、冥福を祈った。

「私は何もしていません。」

ルリは白々しくそう言った。

しかしウインドウ・ボールに囲まれてそう言っても説得力は無い。


「艦長しかいないじゃないですか!」

「証拠はあるんですか?」

ハーリの言葉にもルリは冷静に言った。


「・・そうだ!オモイカネが知っているはずです!」

少し悩んだハーリーであったが、名案を閃いたとばかりにルリに自信を持って言った。

「知っていますか?」

ルリは態度を変えないままオモイカネに尋ねる。


オモイカネの答えは多数のウインドウによってもたらされた。。

「知らない」「感知せず」「わからない」「何のこと」等など。


「そんな・・・」

ハーリーはショックを受けて、おちこんだ。

どうやらハーリーはオモイカネに捨てられたようだ。


「証拠がありませんね。ハーリー君、上官侮辱罪で謹慎を命じます。」

言葉の根拠を失ったハーリーに向かってルリが言い渡す。


「う、うわ〜〜〜〜〜ん!!!!」


ルリの言葉に、御存知ハーリーダッシュが披露された。



「ハーリー君にも困ったものです。」

去っていくハーリーを全く気にせず、ルリは言った。

あまりと言えば、あまりの言葉にハーリーへの同情の想いが多数寄せられた。

しかし口に出すものはだれもいなかった。

ナデシコC内のハーリーの立場が窺えるものである。



その後しばらくしてようやく宇宙軍の護送部隊が到着した。

火星の後継者艦隊の動きは宇宙軍の到着直前に止まっている。


これで何が起こったのか知る者はだれもいない。

ナデシコC乗組員ももちろん知らない。

こうしてハーリーの犠牲を残し、事実は闇に葬り去られていくのだ。




宇宙軍へ火星の後継者艦隊を引き渡したルリは艦内放送を始めた。

「本艦はこれより補給と休息を取るためネルガルの補給コロニーへ向かいます。」

ルリの声は非常に落ち着いている。


こういったルリこそが、乗組員達が絶大な信頼を寄せるルリである。

先程のルリは乗組員達にとっては対ハーリー用ルリとして気にしないことにされている。

ハーリーの泣き声を残してナデシコCは飛び立っていった。





そんなナデシコC内での状況が知らされない外部ではルリの評判はどんどん高まっていった。

火星の後継者を死者を出さずに制圧していっているのだ。

「電子の妖精」の名は高まる一方だ。


民衆の間ではルリグッズも多数販売されていた。

ちなみにもっとも売れているグッズは原型師ウリバタケのフィギアである。

限定生産の物は「電子の妖精親衛隊」に買い占められるほどだ。

「電子の妖精親衛隊」会長はもちろんアララギ大佐である。


また、これらのグッズの販売権はネルガルが独占しており、莫大な利益を上げていた。

アカツキ曰く、「クリムゾンとの戦いの軍資金」だそうである。


ルリグッズの利益を元に倒されるクリムゾン・・・気にしたら負けである。









ルリが向かった補給用コロニーは岩石群に囲まれている。

一見すると小惑星帯にも見えるほどである。


わざわざ岩石群を巡らせている理由は今は関係ないので言わないことにしよう。



そんあ岩石群に囲まれているコロニーへナデシコCは速度を落とさないまま向かっていた。

非常に危険であるが、なんとか岩石をかわし続けている。


もっともナデシコC内は先程の火星の後継者に負けないぐらい阿鼻叫喚の様相を呈していた。

気絶していない者の方が少ないくらいだ。


そんな中で、ルリは一刻も早くコロニーにたどり着くために奮闘していた。


(ようやくアキトさんに会えます!待っていてくださいアキトさん!)

実はこのコロニーはアキトとの待ち合わせの場所なのだ。

火星の後継者退治を強いられているルリに取っては待ちに待った再会である。


(アキトさんに会ったらまず胸に飛び込みましょう。その後は・・・)

演出の計画もバッチリである。

・・・もはや何も言うまい。



そんなルリの考えを邪魔して通信が開かれた。

「草壁中将の仇、電子の妖精よ、覚悟しろ!」

「!!待ち伏せ!」

さすがにルリも驚きを見せる。

「でもなぜ・・・」

このコロニーに来ることを知っているのは極一部である。

「我等に賛同する者より連絡があったのだ。ナデシコCが単艦でこの宙域に向かうとな。」

通信をしてきた男は明らかに優越感を持っている。

「貴様は我等火星の後継者皆の敵。わざわざ残っている全艦隊で待ち伏せしていたのだ。」

男の言葉を聞いたルリはふと思い出した。


「火星の後継者を倒すのに時間が掛かりすぎませんか?」

ネルガル会長室での会談中、ルリはアカツキに向かって問い掛けたことがあった。

「ああ、それなら大丈夫だよ。僕も奴らを一網打尽に出来るような手を打っておくからね。」

アカツキは自信を持ってそう言っていた。

あの時はよくわからないまま終わらせたが・・・



アカツキならこのコロニーに来ることを知っている。

そして火星の後継者の残党は全てここに集まってきた。

確かに一網打尽のチャンスである。

結論・・・犯人はアカツキである。


(アカツキさん!!帰ったらただじゃ済ませませんよ!!!)


ルリは怒り心頭だ。

これではチャンスの前に絶体絶命のピンチだ。



アカツキは火星の後継者を倒す策を考えて、彼らよりも怖い敵を作ってしまったようだ。

アカツキの未来は暗そうである。



アカツキの弁護をすれば、彼とてルリをピンチに陥れるつもりはなかったのだ。

いつものルリならば危機に陥る前に発見出来ていたはずなのだ。

アカツキは見落としてしまっただけなのだ。

アキトを前にしたルリの暴走を。



「時間を置いて貴様にシステムを掌握されるわけにはいかないからな。今すぐ死んでもらおう。」


(このままじゃ・・・)

ルリは焦っていた。システムを掌握するにしても時間が足りない。

しかも乗組員は皆なぜか倒れている。

それが自分のせいだとはまったく気が付いていない。



そんな焦るルリの前にジャンプアウトの光が溢れた。

しばらくすると光の中から一人の男が現れた。

「アキトさん!」

現れたアキトを見てルリが思わず叫ぶ。


「ルリちゃん、跳ぶよ!」

アキトはそれだけ言うと再びジャンプの体勢に入る。

ナデシコC全体がジャンプフィールドに包まれた。


ルリはと言うと、艦ごと飛ぶためまったく必要ないはずだがアキトにしがみついている。

敵に囲まれているこの状況は、さすがのルリも怖いのだろう。



(よくわかりませんがチャンスです。この状況はまるで王子様に助けられるお姫様ですね。)

・・・ユリカのようなことを考えているルリであった。







「ルリちゃん、俺が時間を稼ぐからシステムの掌握を急いで!」

アキトにしがみついて喜びに浸っていたルリにアキトがそう言った。

何時の間にかジャンプアウトしていたようだ。


「・・え?」

ルリが今ひとつ状況を飲み込めていない間に、アキトは再びジャンプしていった。


「え?え?」

ルリの混乱は増していく一方だ。

そんなルリの目に一隻の戦艦が入ってきた。

ナデシコCと同じく白亜の戦艦。



ルリは知らないことだが、それはネルガルの最新鋭艦ナデシコDである。



その戦艦はナデシコCの前に立ち塞がる形となっている。



「・・!ボーっとしている場合じゃありませんね。」

ルリはようやく自分を取り戻すと艦長席に戻り、システム掌握を開始する。


どうやらナデシコCは完全に敵の包囲の外に出ているようだ。

敵艦隊は慌ててこちらに旋回しようとしている。

ナデシコCと敵艦隊の間には謎の戦艦が立ち塞がっている。

アキトの言葉からすると、あの艦にはアキトが乗っており時間稼ぎをしてくれるようだ。


そこまでは把握出来れば充分だった。

アキトが時間を稼いでくれるのであれば安心してシステム掌握に専念できる。

後は一刻も早くシステムを掌握するだけだ。


ちなみにナデシコCの乗組員達はいまだに誰一人として行動を再開していなかった。

それを見たルリは彼らのボーナス査定を低くしようと決心した。

ルリのせいだということはもちろん頭にない。



ルリがシステム掌握に乗り出した頃、ナデシコDと火星の後継者艦隊の戦いが始まった。

旋回中の敵艦隊の中央を目掛けて収束型グラビティーブラストが放たれる。

その攻撃は収束型の名に恥じず、戦艦のフィールドすら易々と撃ち抜き、撃沈した。

最初の一撃で旗艦を落とされた敵艦隊は統率の回復が遅れる。

その間に、今度は拡散型グラビティーブラストが発射された。


しかし、拡散型の威力は低い。

敵艦隊に目に見える被害は出ていない。


だが、実被害は出ていないものの、考えられないほどの広域攻撃に敵艦隊の統率は再び乱れ始めた。

その隙に敵戦艦を収束型で確実に撃ち抜いていく。

主力艦を次々と落とされた敵艦隊の建て直しはますます遅れる。

たまにグラビティーブラストが放たれてくるが、単発ではナデシコDの強力なフィールドに何の損害
も与えられない。


僅か五分の戦い。

その五分間敵艦隊はナデシコD対策に追われ、ナデシコCを攻撃出来ないでいた。



そしてそれはルリにとって充分すぎる時間だった。

システムの掌握は完了した。

こうして火星の後継者最後の艦隊はあっさりとルリの手に落ちた。




「お疲れ様、ルリちゃん。」

システム掌握が終わった後、(ルリからすれば)謎の戦艦であるナデシコDから通信が入った。

そこに映し出されたのはルリの予想通りアキトであった。



「アキトさん!おかげで助かりました。」

「家族を助けるのは当然でしょ?」

軽い口調で言うアキトに思わずルリの目が潤む。

アキトが戻ってきてくれたという実感が次々と沸いてくるのだ。


(このまま潤んだ瞳で上目遣いに見れば男の人は落ちると書いてありましたね。)

・・・こんな状況でも演出を行おうとしているとは、さすがルリだった。


しかし一体、何を読んだのだろうか。

あながち間違っていないあたり怖い気がする。





「アキトさ・・・」

潤んだ瞳でアキトを見つめるという必殺技を放とうとルリの動きが途中で止まった。


「お疲れ様アキト君。」

「少ない疲労で済むいい戦いだったわ。」

「やったねアキト!」

映像の向こうで、アキトに対してエリナ、イネス、ラピスが話し掛けていたのだ。

ということは一緒の艦に乗っているということである。


「どうして貴方たちがいるんですか!!!」

ルリの怒声が通信を通して伝わる。


「あら、ネルガル製の船に私が乗っているのは普通のことでしょ。」

エリナは平然と答える。


「主治医は常に患者の傍にいないとね。」

イネスもまったく気にしていない。


「オペレーターがいないと艦が動かないよ。」

ラピスは胸を張って答える。


「くっ・・・」

ルリは物凄く悔しそうだ。

自分が早くアキトと暮すために懸命に戦っている時に、彼女たちはアキトと同じ艦に乗っていたのだ。

しかしルリの怒りはまだまだ上がっていくことになる。


「通信士も必要ですよね。」

突然、声と共にメグミの姿が映像に入ってきた。

「メ、メグミさん。」


「「「コックも必要で〜す。」」」

ホウメイガールズの五人の姿も映ってきた。

その後ろにはホウメイの姿も見える。

ルリはもう何も言えなかった。


「やっほ〜。ルリルリお久しぶり〜。」

今度はミナトである。

相変わらずルリに対する笑顔は柔らかい。


「当然パイロットも必要だよな。」

リョーコが。


「ネタが詰まっちゃってね〜。逃げてきちゃいました〜。」

ヒカルが。


「再会・・・ビリになった、それは最下位。」

イズミが。


「通信士の予備も必要でしょ。」

ユキナが。


次々と登場してきた。



「ど、どうしてみなさんいるんですか!」

さすがにこれにはルリも驚いたようだ。

「俺との再会と、ナデシコDの訓練航海のためにプロスさんがスカウトしてきたらしいよ。」

代表してアキトが答えた。

その表情は笑っている。

ルリがみんなと会えて喜ぶと思っているのだ。



(みんなで私の計画を邪魔するんですね・・・)

そんなアキトの気持ちとは別にルリの怒りは膨れていった。

ミナト相手にも怒りが増しているあたり、余程のことなのだろう。


(この一ヶ月なにがあったのか・・・)



「きっちり説明して貰いますからね〜〜!!!!」





余談ではあるがルリはシステムを掌握したまま怒っている。

そんなルリがまともにシステム掌握出来るわけもなく、火星の後継者の艦隊は

上に下にと乱れた行動をしまくっていた。

当然中の乗組員は壁や天井に頭を打ち付けており、酷い目に会っているのだが

誰にも気付いてもらえずにいた。











地球のとある病院の一室。


「私の出番はまだなの〜〜!!!」



アキトの生存すら知らされずに、ユリカはすっかり忘れ去られていた。










<続く>










<後書き>
おっす!おら「やまと」(笑)

六作目に突入して勝手に新人脱出宣言をしている「やまと」です。

そんなわけで挨拶も変わったわけです。(笑)


こちらは<会長編>に比べて短いですね。

本編なのに・・・

次回はスカウトの模様を書くので長くなる・・・はず?


それはさて置き、ルリの戦いです。

火星の後継者はただ遊ばれているだけのような気もしますが、まあ一度ルリを追い詰めたので満足でしょう(笑)

ハーリーと三郎太も出番が少ない。ハーリーは今後活躍の機会があるのですが三郎太は・・・

まあいいか(笑)


ナデシコDに乗っていた人達の様子は次回です。

ちなみにこちらのアカツキは名実共に主役の座を奪われそうです。

アカツキ君ピンチ!

ほのぼのお笑いですので後はそれほど言うことはナッシング!




以下共通の後書きに入ります。「ルリの戦い<会長編>」のネタバレも入りますので
まだそちらを読んでいない方は先に読んでいただけると幸いです。










<共通の後書き>
いや〜ギャップが・・・

書いていて大変です。

後書きの雰囲気も一応変えていますし。

対クリムゾンの軍資金の出所も違いすぎです。

片やナデシコDの儲け。片やルリグッズ。クリムゾンって一体・・・(笑)

両方ともユリカの「話題」は次回です。


しかし・・・書いてしまいました。<会長編>のことではありません。

<アカツキ編>アナザーの<会長編>のアナザー作品「ルリの戦い<ルリ編>」です!

いや投稿はしないんですけどね。

これ以上分けたらマルチエンド小説になってしまいそうだし(笑)

自分で三次創作書いてどうするんだよ!という突っ込みを自分で入れてしまいました。

まだあまり変化していないですし。変化が激しくなるようであれば投稿するかも。


ところで前作で言っていた事なのですが・・・

頂いた感想は代理人様の感想と掲示板、メール合わせて6つです。

その中で<会長編>と<アカツキ編>どちらが人気があったのか・・・

皆さんの言い方を見ていると6対0で<会長編>ですね(泣)

評価して頂いて嬉しい反面・・・なんか泣けます。シクシク・・

お笑い作家希望の道は遠いです。

というわけで今後は「<アカツキ編>の方が好きっす!」という感想を頂くまで

<会長編>を続けます。頂いたらその後考えます。でもこんなこと書いたら

余計に貰えない気が・・・


最後に、黒サブレさん、kazucqiさん、亀の万太郎さん感想有難う御座いました。

そしてベスさん、第一話で貰ったにも関わらず今まで言うタイミングが掴めないで

お礼が言えていませんでした。申し訳ないです。

でもアカツキの決断<会長編>じゃなくて、アカツキの判断<会長編>です。


それでは今回はこの辺で。

それでは代理人様今回も感想楽しみにしております。






 

代理人の感想

・・・・・そりゃまぁ、前二作からの流れだとどうしても会長編の方が正当続編っぽく見えてしまいますので(爆)。

話の展開はアカツキ編のままでもシリアスさを保ちつつ書いたならどうだったかわかりませんが。

つまり、問題は雰囲気なんですね。

「決断」と「会談」のニ作はかなりシリアス度の高い作品でした。

加えて笑いも入ってません。

しかるにアカツキ編はまぁ、ごらんの通りのアレですから雰囲気がガラリと変わってしまっているわけです。

で、その時アカツキ編の横に「決断」「会談」と同じ雰囲気を持ったシリアス度の高い続編があればどうなるか?

と、まぁそう言うことです。

 

作者がどういう意図で出そうと、読んでる方には関係無いんですよね。

作者にとってオマケであろうと、シリアスな「決断」の続編はやはりシリアスな「会長編」な訳です。

作者の方で誘導したいなら、まず読者の反応を読みきった上で

(羊の群れを追う羊飼いの様に)一歩一歩作者の望む方向に顔を向けさせなければいけません。

上手い人と言うのはそれが極違和感なくできるものなんです。