アカツキの戦い、エリナの戦い<会長編>











「設備は最終段階に入ったわ」

いつもの通りの制服で身を包んだエリナが、会長室のアカツキの元へと報告に訪れていた。

それを受け、机の上に積まれた書類に目を通していたアカツキが視線をエリナに向け直す。


「なんとか間に合いそうだね」

「ええ」


アカツキはここ最近活発な動きを見せ、量産に備えた設備を整えようとしている。

言うまでも無く、それはイネスの開発した物を生産、販売するためのもの。

重役達には無断で行っているアカツキの独断である。




商品の試行錯誤、当初の少数生産といった従来の基本を無視した行動である。

イネスの設計と、ラピスの計算を信じているというのもある。

だが、最も効果的な方法を選んだと言う方が正しい。




「今日の会議が最初の山場だよ。準備は出来ているかい?」

「ええ。あの連中を押し切るくらいにはね」

エリナは自信を持ってアカツキの問いに答えた。


エリナに与えられた仕事。

それはネルガルを動かすための準備をすること。


アカツキは対クリムゾンに向けて動き出している。

ネルガルの会長としての地位を最大限に利用し、秘密裏の内に様々な命令を出している。

研究員が首を捻ったほどの新製品開発、それを量産するための工場施設の設置などである。


だがそれはアカツキが命じているだけである。

ネルガル自体はまだ動いてないのである。

アカツキにはそこまで手を回す余裕は無かった。

それを行うのがエリナの役目である。

正確に言えば重役達を納得させるだけの物を作り上げる事。


エリナはここのところその作業に没頭していた。

どんな反論をされても言い返せるだけのもの。

この計画がネルガルにとってもっとも得になるという証拠。

利益率などの複雑な計算はラピスの助力があった。

エリナはそれらの計算結果を元に様々な情報として組み上げていく。

証拠を見つけるのではない、作り上げていくのだ。


実際のところ、力を落としているとは言え未だ規模では世界最大を維持しているクリムゾンに正面から喧嘩を売って得などない。



重役達はそれを百も承知なはずだ。

彼等は無能ではないのだ。


それを納得させなければならない。

エリナはその難題の克服に挑んだ。



しかしエリナは難題であればあるほど喜んだ。

自分にしか出来ない仕事を求めていたのだ。


アキトの復讐の手伝い。

その過程においてエリナは自分にしか出来ない仕事というのを持たなかった。

重役達は基本的にアキト支援に賛同したため、説得の作業はいらなかった。

やった事と言えば物資の補給。

アキトとネルガルの繋がりとなること。

アキトの傍にいること。

どれも自分である必要を持たなかった。



アキトの秘密が守れれば誰でも良かったのだ。

エリナはそう考えていた。


ネルガルを動かす事はアカツキにしか出来なかった。

アキトの身体を治そうとするのはイネスにしか出来なかった。

アキトと共に戦う事はラピスにしか出来なかった。

アキトを鍛えるのはゴートと月臣にしか出来なかった。

アキトへ情報をもたらす事はプロスにしか出来なかった。


自分のやったことには代わりが居る。

それが辛かった。

アキトの傍に居たのも他にやることが無かったから。

補給を担当したのも他にやることが無かったから。

自分はアキトの役には立っていない。

そして何の役にも立てないままアキトは死んでしまった。


だが今の仕事は自分にしか出来ないとの自負があった。

自分とラピスの能力抜きには出来ない。

その自負はエリナを支える。


今のネルガルがどんな選択をするかによって変わる未来の利益。

考え付くだけの計算の全てを行った。

普通なら手間が掛かりすぎるとしてやらないであろう細かな計算まで行った。

ラピスへの負担もたくさん掛けたが時間がないと自分に言い逃れを行った。



エリナはもちろんアキトの復讐を目指している。

しかし一方で、他の皆とは違い自分とラピスが未来を前を向けるようにとも考えている。

だが、それはまだ早過ぎる。

エリナの目から見て今のラピスは何かしていなければならないように見えた。

今のラピスは復讐だけを見て生きている。

仕事を与えておいた方が精神の安定が果たせている。

イネスの診断でもそのような結果も出た。



エリナは得られた結果から重役達に見せる書類を作成していく。

ほとんど全ての計算結果を変えながら。

一部だけを大きく変えてはばれてしまう。

そこでほぼ全ての計算結果を変えるのだ。

少しずつ、少しずつ。

そして結論へ達する前に全く結果を別のものにする。

そうすれば重役達は全ての計算結果を導いた上でなければ疑いを持たない。

一つ、二つの計算では誤差としか思わないだろう。

そして、マシンチャイルドとオモイカネ級のコンピューターが揃っていなければその計算にはかなりの時間がかかる。

それで充分だ。

一度計画がスタートすれば簡単に止めることは出来ない。

それが企業というもの。


そして、クリムゾンとの戦いに関する彼女達の計画では、それで充分であった。





「結構。じゃあ行こうか」

アカツキは席を立ち上ると、会長室を出て行く。

エリナもそれに続いた。






「さて、始めようか」

会議室の自分の椅子に座ったアカツキは揃っている重役達を前に宣言した。

その顔は全ての感情を押し隠した「ネルガル会長」そのものである。

アカツキとエリナにとっては、まさに開戦宣言。


「では前期の決算報告をさせて頂きます」

その言葉を切っ掛けとして重役達から次々と報告が開始される。



「クリムゾンと競っていた市場においてはかなりシェアを拡大しております」


この時期クリムゾンの動きはかなり鈍っている。


アキトに与えられたヒサゴプランの損害から立ち直るのに懸命なのだ。

もちろん地球圏最大の企業である。

そう簡単に潰れはしない。


「また、ナデシコD、着装型フレームの正式採用によって、わが社は莫大な利益を得る事が出来ます」


それに反し、ネルガルの株式はかなり上昇を見せている。

順調そのものといってもいい。


「しかしながら現在クリムゾンはかなり強引な建て直しを行っており、かつての競争力を取り戻すのもそう遠くは無いと思われます」


クリムゾンの対応はロバートを始めとする経営陣の手によってかなりの苛烈さを極めている。

人件費削減のための新会社設立、大幅なリストラ、救済不能と判断した子会社の早期切り離し。

内部からも不満の声がかなり上がっているほどである。



「ですから結論としまして、クリムゾンが立ち直る前に拡大したシェアを確実なものにしておくべきだと考えられます」


最後の報告者は、発言をそう締めくくった。


「皆同じ意見かい?」

「まあ、当面の運営方針としては妥当なものかと」

重役の1人が皆を代表する形で答えた。


「それでどうするんだい?」

いよいよ始まる戦いを前に、アカツキが重役達の顔を1人1人睨み付けるように見回す。


「クリムゾンが力を取り戻したら再びこちらの市場に食い込んでくる」

「ですから今のうちに確実なものにしておくのです」

「確実な市場、そう言っておいてクリムゾンに奪われた市場が幾つあると思っているんだい?」

アカツキの言葉に出席者一同が押し黙った。


かつて、エステバリスの独壇場だった機動兵器部門はクリムゾンに奪われた。

他にもネルガルのお家芸と言われていた部門のいくつかがクリムゾンに奪われた。

ネルガルが一時期落ち目とまで言われた原因である。


「ならば会長の意見をお聞きかせ下さい」

「一気にクリムゾンの市場を可能な限り乗っ取る」

「これはこれは何を言い出すかと思えば・・・」

間髪を入れずに発せられたアカツキの言葉は、会議室のそこかしこから起こる嘲笑によって迎えられた。


「そのための製品がこれですか?」

そう言って重役の1人は持っていた書類の束を取り出した。


そこには、アカツキの指示によりイネスが開発した商品の詳細が書かれていた。

他の重役達も内容を把握しているらしく、取り立てて驚いた表情は浮けべない。

本来は秘密のはずなのだが、あっさりとばれているようだ。



しかし、そんなことは当然予測済みのアカツキに動揺は見られない。


「分かっているなら話が早い。エリナ君、全員に書類を配ってくれ」

「はい」

エリナが立ち上がり、書類を配り始めた。


「全員まずは書類に目を通してくれ」

アカツキの言葉に全員が書類を読み始める。

中にははめんどくさそうにしていた者もいたが。



一時間ほどして重役達は顔を上げる。


「これが僕の立てた計画を担う製品だよ」

書類にはイネスの開発した製品の詳細が書かれている。

それに比較する形でクリムゾンの製品の詳細も書かれていた。


「確かにクリムゾンの物よりも高性能です」

重役の1人が書類を投げ出しながら言う。


「だが、これでは価格がクリムゾンのよりも高くなってしまう。これでは市場を乗っ取る事など夢物語に過ぎません」

他の重役達も同意見とばかりに頷いてみせる。


価格が高い、それは新規の市場に入っていく場合大きな弱点となる。


しかもその市場が特定の企業に独占されている場合はさらにである。

高性能というだけでは押し切れない。

やはり民衆はまず値段を気にするのだ。



「そんなことわかってるよ。誰もクリムゾンより高く売るとは言ってないでしょ」

「これだけの品々をクリムゾンの物より安く売れると?そんな魔法のような手段があれば、是非ともお聞きしたいですね」

「そうだね・・・あえて言うとすれば、ちょっとした勇気と決断かな」

「・・・つまり、あえて赤字を出しながらやる。そういうことですか?」

「その通り」

胃が痛くなりそうなやり取りが続く。


「お話になりませんな。そんな馬鹿なことしてどうなると言うのです?」

「そうです。折角の利益をお捨てになるつもりですか!!」

「会長はネルガルを潰したいのですか!」

「エリナ君、説明をよろしく」

怒声を浴びせ掛ける重役達など全く意に返さず、アカツキはエリナに指示を出した。


「はい」

エリナは再び立ち上がると、先ほどとは別の書類を重役達に配り始めた。


「それでは説明させて頂きます」

それに目をやる重役達を見ながら、エリナの戦いが始まる。


「まず最初のページには前期のネルガルの利益、後期に予想される利益を書き出してあります」

「そして、会長の計画されている製品を安く、クリムゾンの製品と比べほぼ1割ほど安い価格に抑えた時の赤字額となっています。生産量は仮定として現在の市場の半分の量を目安としています」

「そこに上げられている数字を見ていただければお分かりの通り、全体的に見れば黒字を維持出来ることになります」

「それが何だと言うんだ!」

「そうだ!わざわざ黒字を減らしているだけではないか!」

「話は最後まで聞きたまえ」

湧き上がる重役達の批難の声を、アカツキが止める。


「説明を続けさせて頂きます」

重役達の批難など意に介さず、エリナの説明が続く。


「次の項目をご覧下さい」

「そこに挙げられているのは、仮にわが社が会長の計画を実施した場合に予想される、クリムゾンの受ける損害です」


ネルガルが高性能製品を安く売れば、クリムゾンはそれに対抗しなければならなくなる。

ネルガルと同じ性能を持った製品を出せば、値段が高くなる。

値段で対抗しようというのなら価格を下げなければならなくなる。

結局クリムゾンの利益は減ることとなる。



「これがどうしたと言うんだ!」

「クリムゾンが損したところでわが社には何の得もないではないか!」

「得が無い?きみこそ馬鹿なことを言うのはやめたまえ」

感情に任せた発言を行なった重役に、アカツキの冷たい言葉が突き刺さる。


「なっ!!」

「エリナ君続けて」

アカツキはそれを無視して先を促す。

怒りに顔を赤く染めた重役であったが、周囲の人間にも窘められ、渋々矛を引っ込めた。


「続けます」

エリナも今更この程度では止まらない。


「さらに次の項目をご覧下さい」

「これは先の項目の通りの損害をクリムゾンに与えた場合に予想されるクリムゾン立て直しの遅れです」

重役達が徐々にエリナの説明に聞き入り始めた。


「さらに次の項目にはその間に現在の競合市場を独占出来るかどうかの判断が書かれています」

そこには様々な情報の解析、今後の確率等様々な数字が並んでいた。

いかに百戦錬磨の重役達とはいえ、やや眩暈がしそうな数字の羅列である。


「つまり短期的には損しても長期的には得になると言いたいのですか?」

「そうだ。「損して得取れ」は商売の基本だからね」

「わが社の社訓は「得して得取れ」ではありませんでしたか?」

「場合によりけり。そう理解してもらえるとありがたいねぇ」

「本当にそれだけならばよろしいのですが」

ここで初めて重役達の代表格、すなわちアカツキにとって社内における最大の敵とも言える人物、が口を開いた。


「何が言いたい?」

「これはどう見てもクリムゾン叩きではありませんか」

「悪いかい?」

アカツキの表情もそれまで以上に警戒したものに変わる。


「火星の後継者とクリムゾンは繋がっていた。会長はテンカワ・アキトの仇を討ちたいだけではないのですか?」

「何を馬鹿な。彼を殺したのはネルガルなんだよ」

「疑わしいですな」

一見柔和そうに見える老人の視線が、アカツキを貫き続ける。


「きみもしつこいね」

「ネルガルの命運がかかっていますからな」

「では仮に僕の目的がテンカワ君の仇だったとして問題あるのかい?」

ここで、アカツキが反撃にうって出た。


「当然です。企業のトップが個人の感情に流されては困りますからな」

「では僕の意見を潰してみたらどうだい?」

「・・・なんですと?」

男の表情がピクリと動く。


「僕の計画が駄目だという証拠を示してごらんよ」

「僕の計画がネルガルに取って良い物であるなら僕の感情がどうであれ問題ないはずだ」

アカツキの言葉を理解した男、デュリックス・スコットは一息ついてから続けた。


「・・・明日香インダストリーが動き出すと考えられませんか。」

「可能性は低いね。それぐらいきみにもわかっているでしょ?」


明日香インダストリー。

クリムゾンとネルガルに匹敵するグループである。

しかしながらかなり独自の方針を持っている。

基本的に自分から喧嘩を売ってくるような企業ではない。

堅実な経営が社訓になっているのだ。

そのため今までネルガルやクリムゾンと正面からぶつかったことはない。

とはいえ、三社の規模からして全く競合がないわけでもなかったが。


もちろん、たったそれだけの事でアカツキが明日香インダストリーを無視しているわけではない。

ネルガルがクリムゾンへ攻勢を仕掛けた場合、明日香インダストリーの取る手段は、動かないという選択肢を別にすれば、二つ。

隙を見せたネルガルを攻めるか、弱ったクリムゾンを叩くかである。

弱っているクリムゾンと勢いをやや盛り返したネルガル。

どちらを叩いた方が良いかは一目瞭然である。


「・・・わかりました。会長の仰る事にも一理あります。とはいえ・・・」

突然出された案件だけに、即座に反撃するのも難しい。

そう悟ったデュリックスはここは一時引くことにした。


「賛成するにしろ反対するにしろ、もっと検討時間を頂かないと話になりませんな」

「駄目だね。この計画は今すぐ行動を起こす事が要求される」

だが、アカツキはその道を強引に絶った。


「私は反対です」

別の方向から上がった声に、アカツキが態度で先を促す。


「いまここで危険を冒してクリムゾンに喧嘩を売る必要性が感じられません。出来る事ならば市場の確保を終えた後、クリムゾンに交渉を持ちかけた方がいいのではないですか?」

「クリムゾンが応じると?」

「それはこの書類と会長の計画、そして交渉の仕方次第でしょうな」

「ふっ。クリムゾンが約束を守ると思っているのかい?」

アカツキを乗せるような言葉を、アカツキは鼻で笑った。


「僕の計画に反対したいがための反対か!無駄な意見を述べるんじゃない!」

アカツキが怒鳴り声を上げる。


「会長は市場の確保が難しいと仰いましたが、証拠でもおありですか?」

形勢の不利を感じ、別の重役が口を挟んで来た。


「そんなものあるわけないでしょ。僕は過去の実績、未来の予測を出来る範囲で行って意見を述べているだけさ」

「それでは私は市場の確保を目指した方が良いと思います」

「きみもかい?」

「はい。かつて市場を奪われたからこそ奪われないための手が打てるはずです」

先程よりはまともな意見に思える。


「具体的には?」

「いえ、それはまだ・・・」

「いつまでに出来る?」

「そ、それは慎重に検討をしまして・・・」

「それじゃあ話にならないよ。クリムゾンが立ち直るまで時間が無いって言ったのは君たちでしょ」

その男を軽くあしらうアカツキに


「そう言う会長こそすぐに対応できるのですかな?」

さらに別の方向から馬鹿にしたような口調が投げ掛けられた。


「そうです。新製品をこれだけ同時に発売しようとすると、時間がかかるでしょうし」

「工場での量産体制は整っているよ」

「それはどういう・・・」

「今のネルガルには閉鎖したっきりの工場がたくさんあるからね」

その言葉を、アカツキが自嘲気味に言った。


いくら現在勢いを増しているとはいえ、最盛期には及ばない。

ネルガルほどの大企業。

一部の工場を閉鎖したとしても、数は莫大になるのだ。

それら全てをすぐに売却しきる事など出来なかった。

そのため閉鎖工場や土地は余っている。

だからこそ、アカツキとエリナもここまで準備を勧めることが出来たのだ。


「そんな話聞いていませんが」

「極秘だったからね」


「私たちにも教えられないほどですか?」

「教える必要が無かっただけさ」


「会長の独断専行・・・困りますね」

「僕の計画が駄目になっても他の製品で使えば良い。君達の主張する市場の確保にも製品がたくさんいるでしょ」

次々と投げ掛けられる言葉に、アカツキは淡々と答えていく。


「テンカワアキトのためによくやりますな」

「まったくです」

そんなひそひそ話が部屋の一部で囁かれる。

もちろんアカツキに聞こえるよう、嫌味たっぷりにである。


「無駄口はやめたまえ」

それでもアカツキは表情を全く変えず、会長役に徹する。


「まあ会長の行動がネルガルの得になる限りは従いましょう」

「結構」


結局最後はデュリックスの言葉で、会議は締めくくられた。





「やれやれ、まだテンカワアキトに拘っているのか」

アカツキが出て行った会議室で重役達の話が繰り広げられる。


「困ったものだ」

「まったく」

「いよいよ会長にも御退陣願わないといけませんな」

「いや、まだ早い。能力だけは確かだからな。これを機会に少しでもネルガルの力を高めてもらうとしよう」

「しかし、存在が邪魔になるようであれば・・・」


アカツキの立場はネルガルの中でも危ういものと化していた。





バン!!


会長室へ戻ってきたエリナが机を思いっきり叩く。


「あの俗物!!」

「落ち着きたまえ」

いつもの椅子に腰を下ろしたアカツキが面倒くさそうにそれを宥める。


「あなたは平気なの!」

「平気なわけないだろ」

エリナに詰め寄られたアカツキの表情は大人しいままであったが、その言葉は迫力が満ちていた。

「出来る事なら殴り倒してやりたいよ」



「だけど今はテンカワ君への感情は隠さなければならない。まだ彼等の力は必要だ」

「・・・そうね」

エリナも頷くと、本来の道へと話を移した。


「これで予定通りネルガルは動き出すわ。後はクリムゾンが貴方の予想通り動いてくれるかどうかね」

「動くさ。今回のネルガルの動き、今のクリムゾンに正面から対抗する術はない」

潰れてもいい覚悟で動くネルガルと、企業理念に従い利益を求めるクリムゾンでは元々勝負にはならない。


「だがあのロバート翁のことだ。叩かれっぱなしで満足するはずがない」

「ならば彼らお得意の非合法な分野で、というわけ?」

「そっ。その時こそ彼らを叩く絶好のチャンスさ」

動かない敵を倒すことは容易ではない。

しかし、動く敵には必ず隙が生まれる。


アカツキ達はそこを狙っていた。

彼らが求めているのは、クリムゾンを潰す事ではないのだ。

あくまで火星の後継者と繋がっていたクリムゾン上層部を叩き潰す事。



「うちの重役達もいつまでも大人しくはしていないわよ?」

「さっきも言った通り、今は放っておくさ」

ここでアカツキは椅子を回転させ、窓の外へと視線を向けた。




「だけど僕の計画を邪魔するようなら彼等には退場してもらうよ」



アカツキの言葉に何ら容赦は感じられなかった。














<後書き>

どうも「やまと」で御座います。


一体2年も何をしていたのか?と自分を問い詰めたい気持ちではありますが、久しぶりの作品です。


本来はメールアドレス変更の御挨拶を兼ねて、と書いていたのですが、変更の必要がなくなったので予定より早く投稿させて頂きます。



・・・などと思ったのが一ヶ月前(汗)


作品が久しぶり過ぎて頭がナデシコに戻らず、こんな作品だったかと自問自答を繰り返したり、久しぶりに頂く代理人様の感想に私の心臓が耐えられるか心配だったり、単純に忘れていただけだったりで随分遅くなってしまいました。



〜〜〜(そんなわけで以下後書き本文)〜〜〜



今回はエリナとアカツキの話です。


アキトの傍にいたことに関してのエリナ自身とイネスの思いの違い。

しかし劇場版にて二人とも無力さを味わったことに違いはないと思います。

ただ、リンクや僅かでもの治療を考えるとエリナの方が無力さを感じたのではないかと思います。



あ、ちなみに企業間の戦いやら何やらに関してはノータッチでお願いします(汗)

企業にも利益を求める以外に、技術の継承やら何やらあるのはわかりますが、そこまではさすがに(滝汗)

ネルガルの重役が無能だとか、いくらなんでもアカツキが強引過ぎるとか、その辺は全てスルーでお願いします。


とりあえず、これで強引に話を企業から離して復讐組VSクリムゾンに持っていけます。

ネルガルという会社の役割はもう終ったようなものだったりして(笑)






それでは代理人様、今回も感想楽しみにしています。


・・・後書きで全くアカツキに触れてないことに気が付いた(笑)

 

 

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代理人の感想

んー、別に赤字を出しても市場独占ができるなら重役連中も反対はしないんじゃないでしょうか。

例えばS○NYが赤字覚悟でPS(ピー)の価格を二万円ポッキリに設定したみたいに(笑)。

シェアを得さえすれば、その後でいくらでも儲けることは出来るわけですからね。

 

後、どう考えてもアカツキの方が分が悪いなぁ、とは思います。

実際私情で動いてるわけですしね(笑)。