イネスの戦い、ラピスの戦い<会長編>
「完成したわ。持っていって」
イネスは完成させたばかりの設計図を傍に居た研究員に手渡す。
「次の資料をちょうだい」
イネスは何か言いたそうな研究員にそれ以上の視線を向けることなく、別の研究員に指示を出した。
「待ってください」
イネスの指示を受けた研究員が異議を挟む。
「あなたは最近全然休んでないじゃないですか!いい加減休みを取るべきです」
「休みたければ休みなさい。私はいいわ」
自分の身体を気遣う研究員の言葉に、イネスはにべも無くそう答えた。
「しかし!」
「自分のことぐらい自分で管理出来るわ」
イネスは既に研究員の言葉に煩わしさを覚えているようだ。
イネスは自分のことは自分で考える。
余計な口を出されるのは好きではないのだ。
そこまで言われては研究員もそれ以上口を出せなかった。
イネスの要求する資料を捜す為研究員は部屋から出て行った。
同時にイネスから設計図を受け取った研究員も部屋を出て行く。
この部屋はアカツキがイネスに与えた個室なのだ。
そのため、イネスが呼ばない限り他の研究員は入ってこない。
もちろんわざわざ個室にしたのにはわけがある。
「しかし、これって何の設計図なんでしょうね?」
部屋から退室後、イネスから設計図を受け取った研究員がもう一人に話し掛けた。
「そんなこと知るか!」
こちらの研究員はわざわざイネスを気遣ったにも関わらず、逆に批難の眼差しを受けたことで機嫌が悪くなっているようだ。
「毎回毎回極秘の封がなされているなんて、気になりますね」
「会長の印入りの封だ。開けるわけにはいかんだろ」
会長の印入りの封。
それは、その物が会長の命によって極秘とされている物である事を示す。
つまりそれを無断で開封するということは会長命令に逆らうに等しい。
そこまでして研究員に設計図を届けさせる事はない。
そう思う者もいるだろうが、イネスの場合それが出来ない。
イネス程の人物の場合、何もしていない方が怪しまれるのだ。
またイネスが誰にも知られない様に何かしていると知られた場合、その活動内容を知りたがる人間がどうしても多くなる。
結果、ネルガルの秘密の仕事をしていることにしておくのが最も有効だと言う事になる。
一種の有名税とも言えるだろう。
企業であるネルガルには秘密の事業と言うのは少なくない。
社内で特に気にとめる人間はいない。
さらにイネスを個室にするというやり方で対クリムゾン製品という秘密を守っているのだ。
「無駄な時間を過ごしたわね。」
研究員達が出て行った後、イネスはそう呟くと再びデスクへと向かった。
本来であれば研究員が言うほうが正しい。
そんな生活をイネスは送っていることは確かだった。
イネスはここ一ヶ月、通常では考えられないスピードで開発を行っているのだ。
イネスはかなり無理をしている。
それは誰が見ても明らかだった。
イネスの身体が徐々にやつれていっている。
顔色も良いとは言えない。
それもそのはず、イネスはほとんど寝ていないのだ。
食事も最低限の栄養摂取を目的とする物以外摂取していない。
そんな生活はアキトの死亡、そして対クリムゾンを聞かされてから今までの約二ヶ月に及ぶ。
(残された時間はあと僅かね。)
新たな商品の開発に取り掛かろうとしたイネスの脳裏をそんなことがよぎる。
残された時間。
それはアカツキがイネスに与えた時間である。
期限は二ヶ月。
アカツキが火星の後継者退治のためにルリに与えた期日と同じである。
ルリが軍をやめた時、それが対クリムゾンへの本格的な狼煙を上げる時である。
ルリとアカツキの要請を受け、コロニーでの戦いにてナデシコDをジャンプさせたイネスにはその時が近いとはっきりわかる。
アカツキを始めとする対クリムゾンに関わる人間はそれに備えて全ての準備を行っている。
当然その中にはイネスも含まれる。
そしてイネスの役割は言うまでもなく、新製品の開発である。
それも現在クリムゾンが支配している市場に参入し、シェアを支配出来る物。
常識的な考えればあり得ないほどの短期間での開発。
しかも大量に、そして無理難題な物を、である。
しかしイネスは辛いとは思わなかった。
開発に携わっている間は自分を認められる。
自分が、自分の知識が役に立てているという実感が持てる。
遅まきながら、アキトの復讐の力となれることを実感できる。
アキトの復讐鬼時代は辛かった。
苦しんでいるアキトを目の前にしながら何も出来なかった。
アキトが苦しんでいるのを見ても何も出来なかった。
イネスに出来たのはただアキトの痛みを和らげるための薬を打つ事。
痛みで眠りにつけないアキトを無理矢理眠らせる薬を打つ事。
たったそれだけだった。
それさえも常に薬を使い続けたために段々効きが悪くなる。
打つ量は増え続け、常人では死に至るぎりぎりの量を注射した。
それでも最終的には何も効かなくなった。
そしてイネスに出来る事は何もなくなった。
その時のイネスは泣きながら研究を続けていた。
初めて研究が辛いと思った。
今まで様々な実績を生み出してきた自分の才能は今回ばかりは何の解決策も与えてくれなかった。
自分の知る限りのナノマシンを研究した。
アカツキの協力を得て、ネルガルが手に入る限りのナノマシンを調べた。
それでも何も分からなかった。
そこで自分で新しいナノマシンを開発してみた。
そのナノマシンが役に立つかどうかなど関係なかった。
ただ思いつくままに製造した。
時にはランダムに任せて作ったこともある。
その過程において人類の役に立つナノマシンも発見されたこともある。
しかし、アキトの治療法に関しては何一つわからなかった。
アキトの心を救ってやる事も出来なかった。
多少は学んでいた心理学など何の役にも立たなかった。
アキトの抱いている闇はイネスが救うには余りに深過ぎた。
それに触れる事さえ、闇をあまり知らないイネスには辛かった。
イネスに出来たのは復讐を思いとどまるように説得、いや頼み込む事だけ。
それ以上身体を酷使しないように泣いて頼むだけ。
だが、それはアキトに届く事はなかった。
イネスに出来る事は本当に何も無くなった。
そしてイネスは一つの結論に達する事が出来た、いや達してしまった。
自分ではアキトを治せない。
自分ではアキトの役には立てない。
自分はアキトの傍にいても仕方ない。
悔しかった。
アカツキはアキトに剣と盾を与えた。
エリナは常にアキトの傍にいた。
ラピスはアキトにとっていなくてはならなかった。
プロスはアキトに情報を与えた。
ゴートと月臣はアキトに力を与えた。
自分だけは何も出来なかった。
それに気付いた時、イネスは絶望の渕に立たされた。
人類トップクラスの技術者としての自負は彼女の中で瓦解した。
そして彼女は自分を見失った。
自分は今まで何をしたかったのだろう。
自分は知識欲を満たしたかっただけなのだろうか。
自分は技術者として名を馳せたかっただけなのだろうか。
いや名誉欲はなかった。
そんな物は望んでいなかった。
では知識欲は?
否定は出来ない。
確かに自分は貪欲に知識を求めた。
知識ではだれにも負けたくなかった。
それが目的だったのかもしれない。
それを目指していたのかもしれない。
その事自体は技術者として間違っていない。
そう考えていた。
しかし今となっては別の考えが浮かんでしまう。
知識を求めたから自分はアキトを助けられなかったのだろうか。
人を助けるためではなかったから。
人類の発展のためでなかったから。
だから人を救えなかったのだろうか。
だとしたら自分の人生はなんだったのだ。
ようやく見つけた大切な人。
それが救えない技術。
自分が貪欲に求めたにも関わらず役に立たなかった事実。
技術以外に取り得の無い自分の技術が役に立たなかった事実。
それはイネスの人生の意味を無くした。
イネスの人生は虚なる物になった。
イネスの人生には何もなくなってしまった。
アキトを殺したとアカツキに聞かされた時なぜか怒りは浮かばなかった。
自分は何も言う資格はない。
自分がアキトを治せていたらこんなことにはならなかった。
自分がアキトを殺したのだ。
自分が治せなかったから。
自分がただ知識を求めただけだったから。
自分がアキトの役に立てなかったから。
自分が・・・
自分が・・・
自分が・・・
自分が何も出来なかったから!!
「・・・はっ!!」
そこでイネスは目を覚ました。
身体中に汗をびっしりとかいている。
(寝てしまっていたようね・・・)
イネスとて人間。
寝ずに頑張ろうとしてもいつか身体が限界を迎え寝てしまう。
逆に言えば、そこまでならないと寝ないのだ。
それほどの生活を今のイネスは送っている。
それでもイネスは思う。
あの頃に比べて今はなんと幸せなのだ。
今のイネスは人生は意味を取り戻している。
今の自分は対クリムゾンの中核を担えている。
何も出来ないということが一番辛いとわかっているイネスにとって、出来ることがあるというだけで
何の苦痛にもならない。
一つの設計が完成するたびに、これがクリムゾンを倒す一因となることに喜びを感じる。
研究者達の心配は必要ない。
常識で考えればアカツキの指示はおかしい。
クリムゾンを潰すためのクリムゾンの独占市場に食い込める製品を作らせるのはわかる。
しかし、そんな物そう簡単に出来るはずが無い。
後から参入する以上、クリムゾン製品よりも高性能でなければならない。
かといって値段が高くなっては売れない。
それだけ新規参入は難しいのだ。
しかし、アカツキからの要求された製品コストはかなり余裕がある。
コストぎりぎりで作ればクリムゾン製品よりも高くなることは間違いない額であった。
これでは折角の新製品も意味をなさないのではないか。
だがそんなことイネスには関係ない。
自分が開発した物をどう使おうともアカツキの勝手だ。
いや、アカツキに任せている。
自分の仕事は製品を開発する事だ。
他のことは他の人に任せる。
アキトのことで自分の無力さを感じたイネスは自分に出来る事、出来ない事を見極めている。
アカツキの能力も知っている。
エリナの能力も知っている。
他の人の能力も知っている。
みんな信じて任せられるだけの能力を持っている。
そして自分には任せるという選択肢しかない。
それならば余計なことを考えるのはやめよう。
自分の出来る事に集中しよう。
そう考えてイネスは開発に邁進していた。
再び開発に新製品の開発に向っていたイネスの手が止まる。
「・・・ここはラピスに頼んだ方が早いわね。」
そう言って、イネスはラピスへと通信を繋いだ。
ラピスは現在、以前アキトの置かれていた隠し部屋にいる。
そこはネルガルの重役達でも知らない。
そこでラピスはシナツヒコと共にラピスの戦いを繰り広げている。
シナツヒコ。
本来であればナデシコC二番艦に積まれるオモイカネ級コンピュータである。
しかし端末を使うというそのシステムを生かし現在はネルガルで使われている。
ナデシコC二番艦にも端末が繋がれているため、完成の暁には端末を本体へ付け替えればいいだけなのだ。
その作業自体は二、三日で終わる。
ならばそれまではネルガル内部で有効に使わせてもらおうと言うのだ。
もちろん最上級の秘密事項であり、重役達にも知られていはいない。
かなり広い隠し部屋に置いてあるのはシナツヒコの端末だけであり、その他の物は置いていない。
だがラピスはまったく気にしていない。
ラピスは最低限生きることが出来ればいいのだ。
それ以外のことは何も望んでいない。
ラピスの己の全てを掛けた戦いはイネスにも劣らない厳しい物だった。
もっとも重要な情報と言う分野を一人で切り盛りしているのだ。
ラピス役目、その一つにイネスの開発の補助がある。
いくらイネスとて短期間で多くの優れた新製品を開発する事は出来ない。
それを可能にしたのがラピスの能力なのだ。
マシンチャイルドであるラピスの能力と、オモイカネ級コンピューター、シナツヒコ。
それを使っての様々な演算作業を行っていた。
どんな素材を使い、どんな形状であれば、使い方によってどのような結果が出るのか。
通常企業が多くの時間と予算を使って行う事をラピスは段違いの速さで計算していくのだ。
その結果を参考にしながらイネスが決定稿を出す。
それがあってこそのイネスの開発スピードなのだ。
もっとも、いかにラピスの補助があったとしても一ヶ月で二桁に及ぶ製品を開発しているイネスは
やはり天才と言えるだろう。
残念ながらその才は本人が最も望んだ事には生かせなかったのだが。
ラピスは他にもエリナやプロス等の補助、クリムゾンの監視など様々なことを行っている。
ルリが軍をやめ、本格的に打倒クリムゾンに動くまでハッキングの類は行わないようにしているが、
それでもまだ幼いラピスには過剰な仕事であろう。
だが誰も止める者はいなかった。
ラピスも弱音は吐かなかった。
いや、辛さなど微塵も感じてはいないのだ。
それはクリムゾンへ対する恨み故なのか。
そう聞かれればラピスは頷く事は出来ない。
ラピスにはそこまでクリムゾンを憎んでいるとは言い切れないのだ。
いや、正確に言えばアキトを死に追いやる実験をしたことに関しては憎しみを覚えている。
しかしそれを除けば、アキトで実験を行ったことに関してでさえ個人的感情では感謝していたとも言える。
クリムゾンが火星の後継者達がアキトを攫い、実験を行わなければアキトは自分と出会う事は無かった。
自分がマシンチャイルドとしての能力を持っていなければ、アキトに必要とされることはなかった。
それは今のラピスには想像するだけでも恐怖そのものである。
他人から見れば間違った考え方。
だがラピスにとっては、それこそが全てであった。
ラピスが現在戦っている理由はひとえにそれがアキトの望みであったからである。
他にはない。
必要とも思わない。
ラピスにとって自分を確立出来ている部分はいまだ少ない。
そしてその数少ない部分のほとんどはアキトによって占められていた。
ラピス自身はそれに満足している。
ラピスにとって自分のことなどいらないのだ。
アキトの考えこそがラピスの考え。
アキトの望みこそがラピスの望み。
アキトの憎しみこそラピスの憎しみ。
アキトのために何か出来ることこそがラピスの最大の喜び。
いつかラピスと別れる事がわかっていたアキトはそんなラピスの考えを改め、自分を確立させようと
したが、最後まで叶うことはなかった。
そんなラピスにとって、アキトの死は自分の全てを喪失したに等しかった。
それが数週間に渡って、ただひたすらに呆然として過ごす日々に繋がったのだ。
そんな時、自分の中で一つの区切りをつけたエリナはラピスの支えになることを望み、
ラピスもわずかながらにそれに応じた。
だがアキトへ依存していた部分全てを向けられるほどの存在とは到底成り得ない。
いまだラピスの大部分はアキトによって占められているのだ。
そんな状態で残されたアキトの遺志。
クリムゾンを滅ぼす事。
自然な結果としてラピスの感情は打倒クリムゾンへと向けられた。
それは恨み、憎しみ、復讐などではない。
そんな種類の感情ではない。
ラピスがラピスである以上まさに当然のこと。
まさに必然。
なればこそラピスは辛いなどとは思わない。
アキトのためにどんなことでもしてきた。
アキトの五感の支えとなり、アキトの剣になって人を殺し、軍を敵に回し、火星の後継者を敵に回した。
アキトのためにそこまで出来たラピスだ。
アキトへの依存が転化された打倒クリムゾンを辛いと思うはずはなかった。
無感情にシナツヒコを操作していたラピスにイネスからの通信が届く。
「ラピス、これをお願い」
イネスの言葉と共に、シナツヒコに新たなデータが映し出された。
映し出されたのはバリア装置に関する物だ。
バリアなどの軍事産業を基盤としているクリムゾンの足元を脅かす物。
イネスはディストンションフィールド発生装置の小型化、高出力化に挑んでいたのだ。
これが完成すればバリアに関しては大幅なシェア獲得が予想される。
対クリムゾンに関しては大きな武器となる。
これがイネスの考えていた対クリムゾンに向けた製品の最後の一品である。
このバリア装置開発を持ってイネスの役割は一段落する。
もっとも、その後に休んでいられる保証は何処にも無い。
「期限はあとわずかよ。出来るだけ早くね」
さも当然とばかりにイネスが言う。
イネスがラピスに対して冷たいというわけではない。
打倒クリムゾンを誓った以上、各自自分に出来る限りの事をする。
自分に出来ない事は他人に全て委ねる。
アカツキ達はそう割り切っているのだ。
そこに余計な遠慮を挟んでいては円滑な作業に支障を来たす。
各自自分に出来る最大限のことをしている以上他の人間に対しても気遣い無用。
それが彼等の暗黙の了解なのだ。
これを実行しないのは二人。
一人目はアカツキ達を守るために戦っているゴート・ホーリー。
二人目は自分の正義を探している月臣元一朗。
彼等は彼等なりの考えで動いているためである。
「・・・わかった。20時間でやる。」
ラピスも短く返事を返す。
それと同時に製品の重要度を理解し、作業の優先順位上位に入れる。
彼女も自分の役割を分かっている。
イネスの言い様に不機嫌になることはない。
ラピスの返答は常に一定の時間で示される。
ラピスが調査に要する時間は、分刻みで動くイネスやエリナ、アカツキ、プロス達の貴重な睡眠時間となるのだ。
特にイネスに至っては、ほっとけば何日も徹夜で作業をする。
そんなイネスが自分から眠るのはラピスに調査を依頼している時だけだと言える。
さすがのイネスも一人で複数の製品の同時開発は出来ない。
それは頭を混乱させ、余計に作業に遅れを来たす。
一方のラピスの睡眠時間はシナツヒコに単純作業を行わせる僅かな間だけであった。
皆無理をしていることには変わりないのだ。
「じゃあ20時間後にね」
たったそれだけのやり取りを終えるとイネスは躊躇いもなく通信を切断する。
ラピスの邪魔をしないため、とは言える。
しかし、正直なところイネスにも他人を気遣う余裕はないのだ。
いまだ体験した事の無い企業間戦争に身をおいているのだ。
自分の役割を果たすのに精一杯。
イネスが通信を切ってから僅か七秒後、イネスの研究室から寝息が聞こえてきた。
そこには死んだように睡眠を貪るイネスの姿が誰にも見られることなく横たわっていた。
人類で有数の科学者であり、天才の名をほしいままにするイネス。
彼女の行いを間違っていると批難する者が居る。
彼女の行いを無謀と呼ぶ者が居る。
彼女の行いを馬鹿げていると笑う者も居る。
しかし、彼女の耳にそんな言葉は聞こえない。
自分の存在を賭け行っていることに他人の意見など挟む余地は無いのだ。
彼女はその人生において、初めて自分の知識に感謝しながら過酷な戦いを行っていた。
イネスからの通信が切れたことを気にとめるでもなく、ラピスは再び目の前のデータに集中する。
シナツヒコによって地球圏のみならず、人類圏全てから集められた情報に必要な処理を行っていく。
膨大という言葉では言い表せないほどの情報を休む間もなく扱う。
マシンチャイルドとオモイカネ級コンピューターの本領発揮である。
何もない部屋。
その部屋の真ん中には巨大なシナツヒコの端末だけが置かれていた。
それに向かい合い、身体に微かな金色の光を帯びる一人の少女。
その光景は見る者に何を思わせるのか。
ある者は余りの神々しさに敬愛を覚え、
またある者は余りの神秘さに畏怖を覚える。
しかしその光景は誰にも見られることは無い。
誰にも知られない部屋で
誰にも知られない少女が
誰にも知られない戦いを
余りにも過酷な戦いを
行っていた。
<続く>
<後書き>
どうも「やまと」で御座います。
企業間戦争なんて書けない〜!!←題材選択ミス
というわけで、イネスやラピスのやっていることが正しいのか全然わかりません。
てか多分違うでしょう。
まあ小説なのでそれなりに説得力を持っていればいいかな〜っと・・・←しっかりやれ!
企業間戦争について書くのはそんなに多くないので何とか乗り切ろう・・・
ところで、作品を書いていてラピスについて考えました。
彼女はどこまでアキトに依存していたのか。
ラピスの数少ない言葉からはかなりの依存が見受けられる気がします。また、ラピスの環境を考えても
そう考える事が出来るでしょう。
彼女はなぜ戦っていたのか。
ラピスがクリムゾンや火星の後継者の恨みから戦っているとは思えませんでした。
そういった感情があるのかさえ疑問です。となればやはりアキトのためでしょうか。
だとすると、ラピスのアキトへの依存は計り知れなくなってきます。
そこまでアキトに依存していたとするのならば、ラピスはクリムゾンや火星の後継者に感謝していたかもしれません。
おかげで彼女はアキトに出会えました。アキトに必要とされています。アキトの力となれています。
もちろんこれらはラピスの感情をほとんど考えていない勝手な意見です。彼女は激しい憎しみを感じて
いると考えるほうが自然ですから。
また仮に私の言っていることが正しかったとしても、そう考えてしまうこと自体ラピスの不幸であることには変わりありません。
他にも考えました。
ラピスはなぜSS界ではよく壊されるのか(笑)
ラピスはアキトに洗脳されているのではないか(笑)
両方とも考えていけないことだと思ったので途中でやめました(爆)
それでは代理人様、今回も感想楽しみにしています。
代理人の個人的な感想
う〜ぬ、鬼気迫りますね。
狂気というのは一般に思われているほど感情的な状態ではありません。
むしろ理性的論理的な状態であり思考であるとさえ言えます。
ただ、その思考の元になる前提が大多数の人間とは違うため、
(前提が食い違ったままの議論が決して決着は着かないように)
他人にはその論理が理解できないのではないかと思います。
つまり狂人というのは「他人と『前提』が違う人」のことなんだと思いますね。
ラピスもイネスもアカツキも、少しずつ他人と『前提が違う』のでしょう。