女達の戦い?<アカツキ編>
漆黒の宇宙を行く白亜の戦艦。
その戦艦のブリッジでは一人の男が頭を抱えていた。
「・・・もう一度言ってくれ」
アキトが疲れたように声を絞り出す。
「あいつらはなんなんだ?」
アキトの視線の先にはスクリーンに映し出されている一隻の宇宙船に向けられていた。
「だから、取材だって言ってるじゃない」
エリナはそんなアキトに向かっていとも簡単に答える。
それを聞いたアキトはさらに疲れた表情になった。
「エリナ、この船は今から戦いに行くんだよな?」
「ええ。」
エリナはすっかりアキトの副官役になっている。
ちなみに、本来の副官であるジュンは自室で書類書きに追われていた。
本来は出発前に行っておくべき書類の確認等をアキトがまったく行っていなかったせいである。
頼まれると断れないジュンの性格ではそれを断ることはできなかった。
もっともエリナとイネスに半脅迫され、ラピスに涙目で頼まれたのでは断れる人間はいないであろう。
出発前に見せたあの心意気はどこへいってしまったのだろうか。
「なのになぜ取材がついてくるんだ?」
「「私たちは今キャンペーン中なんで〜す」」
エリナの代わりになぜかブリッジにいたホウメイガールズが声を揃えて答えた。
ナデシコDの乗組員は多い。
当然ホウメイガールズ以外にも調理要員は乗っている。
また、多くの乗組員が食事を取る時間にアイドルのホウメイガールズが調理場に居てはパニックに陥る可能性すらある。
そこでホウメイガールズは深夜などの人が少ない時を見計らって調理場に入るようになっているのだ。
実際のところ、ホウメイ・ガールズを乗せたのは第一にアキトのため、第二に宣伝のためなので彼女
達が働かなくても別に問題視はされない。
ただ彼女達がホウメイと一緒に働きたいと希望しているだけだ。
そのため、自動的にホウメイの勤務時間も人の少ない時間帯となっているため、ホウメイには物足りないようだ。
もっとも、その分アキトをしごく時間が増えるためホウメイも納得している。
SSの修行もしなければならないアキトは大変である。
その分雑用をジュンに回しているので問題ないのかもしれない。
・・・結局一番大変なのはジュンなのかも知れない。
ちなみに、アキトの修行の過程でかなりの材料を使うのだが、ホウメイは料理の材料を無駄に使うのを許さない。
そのためどうにかして処分する必要があるのだが、ラピスやエリナ、
イネスは喜んで食べるであろうから何の問題も無かった。
ついでに言うと、ホウメイのことを「食堂のおば○ゃん」と言うのは禁句とされている。
何の話かはわからない。
「私達地球では結構人気があるんですよ」
ホウメイ・ガールズに続いてメグミが必要以上に満面の笑顔で言った。
(アキトさんはこういうのに弱いはずです。アキトさんの心を掴んでおいて損はありませんからね)
・・・自然とこういった行為が出来るあたりさすがである。
多くのメグミファンを魅了した笑顔を目の当たりにし、アキトが照れたように視線をそらす・・・
ことはなかった。
それどころか何でもないように流す。
なにせアキトは一年中笑顔でいるユリカと2年以上も一緒にいたのだ。
さらに復讐に身を費やしていた時には身近にエリナとイネスがいた。
いまさら女性の笑顔で照れを見せることはない。
メグミとの再会の時は雰囲気に流されたからであり、単発では通じない。
(アキトさん・・・変なところまで成長しましたね・・・)
必殺の笑顔を流されたメグミは心持ち悔しそうだ。
人気アイドルであるメグミもまたブリッジから極力出ないように言われていた。
なにせその気になれば隠し通路を使って、ブリッジから食堂、さらには自分の部屋にまで直接いける。
ブリッジから出る必要性も少ないのだ。
もっともそうなってくると、部屋にいても鍵が掛からない扉を平気で通過されるためジュンは全然気が休まらない。
しかし、もちろんそんなことは誰も気にしない。
なお、プロスは今回一流の人材をスカウトする際にメグミやホウメイ・ガールズも乗ることを全面に
出していたため、それにつられた男性クルーも多い。
にも関わらず、出来るだけ見られないようにするというのは詐欺に近いのだが、食事と酸素という生殺
与奪を握っている以上文句を言われてもちっとも怖くない。
世間ではそれは脅迫などというのだが気にしてはいけない。
「だからといって非武装の船でついてくるか、普通・・・」
無謀なのか勇敢なのか、それはアキトにも判断つかない。
「取材をなめちゃ駄目ですよ」
そんなアキトの心底呆れた言葉をメグミが訂正した。
「そうそう、取材って怖いんです」
「常にスキャンダルを狙ってるし」
「一日中ビルの前に張り込んだり」
「尾行だって探偵より上なんですよ」
「一瞬だって気を抜けないんだよね〜」
ホウメイ・ガールズに一斉に畳み掛けられアキトも少しひく。
「そうよ。彼等はハイエナなんだから」
隣からエリナも口を出した。
企業のトップに近い者として、マスコミ対策には色々苦労しているのだろう。
「それに、ナデシコDの宣伝をしてくれるんだもの。こちらにとてもありがたいわ」
「だがあの船が沈められでもしたら・・・」
アキトは最大の懸念事項を口にする。
常識で考えれば、戦闘に赴く戦艦についてきた非武装艦が悪いのだが、マスコミに常識は通用しない。
取材陣の乗った船が沈められるようなことがあれば、ナデシコDを役立たず呼ばわりすることは想像に難しくない。
「アキト君なら上手くやるでしょって会長が言っていたわ」
アキトの反論にもエリナが平然と答えた。
(アカツキ・・・覚えてろよ)
アキトは、自分に付けられている足枷を隠していたアカツキへの恨み言を漏らす。
「じゃあハルカ・ミナト、お願いね」
「りょ〜かい」
アキトが黙ったのを見てエリナが進路の指示を出す。
といっても進路ははっきりとしているわけではない。
ナデシコDの宣伝をするにはなるべく戦闘を重ねる事が望ましい。
しかし火星の後継者がどこに潜んでいるかはわからないのだ。
もっとも、怪しいところというのはある程度絞り込める。
そこまではアキトの指示なく進み、最終的には火星の後継者を追い続けてきたアキトの勘ということになる。
いい加減と言えばいい加減だが、宇宙広しと言えど艦隊を隠せる場所は限られる。
ある程度の範囲さえ絞り込めていればなんとかなるだろう。
「じゃあ俺は訓練室に行く。何かあったら知らせてくれ」
「じゃあおれも行くぜ」
しばらく自分の役が無いと分かり、訓練室へ向おうとしたがアキトをリョーコが呼び止める。
「アキトと戦えるって約束だからな」
リョーコは心底楽しそうにしている。
ようやくアキトに再戦を挑めるのでわくわくしているのだろ。
アマテラスでの雪辱と、強い者と戦えることの両方がリョーコにとっては嬉しいのだ。
それは部屋を決めるときに聞いた話であったためアキトも特には気にしなかったが、リョーコの次の言葉に反応した。
「まっ、プロスさんに許可を貰ってることだしな」
ピタッ
リョーコの言葉を聞いたアキトの脚が止まる。
「エリナ・・・」
アキトの雰囲気が尖がる。
「プロスさんが契約の餌にしたみたいね」
プロスから話を聞いていたエリナはすぐさま答えを返した。
自分には影響ないのだ。
気楽なもんである。
(プロス・・・お前もか・・・)
アキトの中でプロスの評価が下がった。
どのみち戦うことに変わりはないのだが、自分で決めるのはいいが他人に決められるのは嫌らしい。
「アマテラスの借りは返すからな!」
そんなアキトとは裏腹にリョーコはやる気満々だ。
「は〜い。じゃあ私も行きま〜す!」
ヒカルが元気のいい言葉で参加を表明する。
「じゃあ私も・・・」
イズミはいつもの通りだ。
「なんでお前らも来るんだよ」
突然の参戦表明にリョーコが聞き返す。
「だって〜私達もアキト君と戦ってみたいし」
「ブランクもあるからね」
「ブランクったって一ヶ月ぐらいだろ!」
ヒカル達の言葉に、なおもリョーコが言い返す。
「リョーコこそどうしてそんなに反対するの」
「ひょっとして・・・」
「「二人きりがよかった〜?」」
しつこく聞き返してくるリョーコにヒカル達の中の何かのスイッチが入ったようだ。
何のスイッチかはわからないが、相変わらず見事なコンビネーションである。
「バ、バッキャロウ!何言ってんだ!」
二人の冷やかしにリョーコの顔が一面真っ赤に染まる。
「まあいい・・・」
賑やかなリョーコ達の一方で、アキトは気を取り直した。
「訓練には相手がいた方がいいからな」
それだけ言うとアキトはさっさとブリッジを出て行った。
といってももちろん隠し通路を使う。
ちなみに訓練場はブリッジから三番目の部屋の真向かいにある。
部屋で言うならばラピスの部屋の向かいである。
もっとも今はそんなこと関係ない。
プシュッ
鍵の掛からない隠し扉が開かれた。
「わっ!なんだテンカワいきなり・・・」
ガタガタ
部屋から何かが崩れ落ちた音がする。
慌てたジュンが何か落としたのだろう。
「悪い。鍵が掛からないからな」
「なんでこの部屋は鍵も掛からないんだ・・・」
「迷惑かけるな」
プシュ
すまなそうなアキトの声が聞こえた後、再び扉の開く音がした。
アキトが先に進んだのだろう。
「なあ?」
置いてけぼりをくらった感じのリョーコが口を開く。
「アキトのやつ性格変わってないか?」
心底不思議そうにしている。
再会当初のアキトはやや性格が変わっていたとはいえ、昔の雰囲気も漂わせていた。
しかし、今のアキトは明らかに昔のアキトと変わっている。
よく言えばクールか大人の雰囲気、悪く言えば無愛想と言える。
「あれが今のアキト君の本当の性格よ」
エリナがリョーコの疑問に答える。
「さっきはもっと明るかったですけど・・・」
業務連絡を行っていたメグミが話に加わる。
「あれは会長がいたからよ」
ちょうど扉から入ってきたイネスが答える。
今まで医務室の整理を行っていたためブリッジにはいなかったのだ。
「アカツキ君が?」
ある程度の進行方向を固定し終わったミナトも話に加わる。
「アキトは極楽トンボの前だと変わる」
オペレーターの仕事をしていたラピスまで話に加わり始めた。
「ねえねえ、詳しく聞かせてよ!」
興味深々とばかりにユキナが身を乗り出す。
「詳しくというほどじゃないわ。」
エリナが冷静さを崩さない。
「アキト君は会長にだけ心を許していたのよ」
呆れるような口調だ。
「まったく不思議なことにね」
「納得いかない」
イネスとラピスも不満そうな表情をしている。
アキトが自分たちよりもアカツキに心を開いていたのが気に食わないのだろう。
「へぇ〜、アカツキ君もやる時はやるのね〜」
エリナ達の話を聞いたミナトが感心したような声をあげた。
「ホント、ホント。ジュン君にも見習ってほしいよな〜」
ユキナが追従する。
ジュンがいないと思って好き放題だ。
もっとも、ジュンがいても同じ事かもしれない。
「しっかし、ほんとかねぇ〜」
リョーコがいまいち納得できないようだ。
「でも萌え萌えだよ〜」
ヒカルは嬉しそうだ。
なにが萌え萌えなのか。
男には踏み込んではいけない領域もあるのである。
「でも分からなくもないね」
イズミが何時の間にかシリアスモードに入っている。
「わかってるわ。私たちも散々聞きただしたんだから」
エリナがため息をつきながらイズミに答える。
アキトがアカツキにのみ心を開いていた。
その言い方は少し間違っているかもしれない。
ただ、アキトがエリナやイネス、ラピスに対して最後の一線を引いているのは確かだった。
そしてアカツキに対してはそれがなかったのも事実である。
だがそれはアカツキとエリナ達への信頼の差ではない。
アキトはエリナ達を自分の復讐の全てには付き合わせたくなかったのだ。
アキトはエリナ達に復讐を手伝わせたが、それとて物資に限る。
ラピスに関しては子供を無理矢理使ったという言い訳も成り立つ。
自分が捕まったときのにそのような言い訳をすることを考えて無意識的に壁を作っていたのだ。
今回、アカツキがわざわざ元ナデシコクルーを集めたのもそんな壁を取り払おうという狙いなのだ。
アキトも生きると決めて以来、無意識に張っていた壁を取り払おうと努力はしている。
だがすぐには無理なのだ。
少しづつ、改善していくしかないのだ。
ちなみに、アキトが壁を取り払おうと決めた陰にはエリナ達の説得があった。
説得といっても、アキトを手伝うために今まで何をして来たのかを見せ、今更言い訳が出来ない事を示しただけである。
・・・エリナ達曰く「誠意ある説得」だ。
なにはともあれ、アキトは少しづつ前進しつつある。
だが過去の自分の行いを忘れたわけではない。
過去を克服しての前進。
それが今のアキトの目標であり、アカツキ達の望みなのだ。
クリムゾン潰しなどは目標へ向っての一手段に過ぎない。
人類圏最大の企業も形無しであった。
ところで、アカツキにはなぜ無意識下の壁がなかったのか。
ネルガルのトップであるアカツキを無関係と言い張る事は出来ない。
結局のところアカツキは巻き添えにすることが決定済みだったのだ。
そのため何の遠慮もなかった。
アキトがアカツキのほうに心を開いていたのは確かだが、エリナ達がそれに劣るというわけでもなかったのだ。
「まあいいか。俺は全力で戦えれば文句はないからな」
リョーコは話を切り上げる。
「私たちで勝てるかな〜?」
「やってみなきゃわからないわよ」
何だかんだ言ってヒカルとイズミもやる気満々だ。
「よっしゃぁ!行くぜ!」
「「オ〜!!」」
体育会系のノリを見せながらリョーコ達はアキトの後を追った。
プシュ
「うわっ!」
ガタッガタッガタッ
扉の向こうからジュンの悲鳴と何かが崩れるような音が聞こえてきた。
「悪いな。通るぜ」
「おっ邪魔しま〜す」
「悪いわね」
一応口では謝っているが、全然心がこもっていない。
プシュ
リョーコ達ははとっととさっさと先へ進む。
「せっかく元に戻したのに・・・」
ジュンの悲しそうな声が響いた。
(こんなことならテンカワを逮捕しておけば良かったかな・・・)
ジュンは早くも自分の決断を後悔しかけていた。
「ちょっとユキナ。手伝ってきなさいよ」
ジュンの悲しそうな声を聞いたミナトがユキナをせかす。
「大丈夫、大丈夫。ジュン君なら慣れてるよ。」
しかしユキナは全然気にしていなかった。
「私も頑張らないといけませんね」
突然メグミが自分に気合を入れていた。
「何を頑張るのよ?」
なにか怪しげな雰囲気を感じ取ったエリナが聞く。
「さっきの話を聞くと、アキトさんには心を許せる人間がアカツキさんしかいないんですよね?」
「私たちにも開いているわ」
メグミの言葉にカチンと来たのか、エリナの口調が多少きつい。
「でも完全にってわけじゃないんですよね?」
「何が言いたいのかしら?」
イネスもややキツイ口調で口を挟む。
「やっぱり他にも心が許せる人間が欲しいかな〜って」
「私たちがなる!」
ラピスが声をきっぱりと言い切る。
「そうね。まさかあなたがなるとでも言うのかしら?」
エリナが逆に聞き返した。
「さあ?それはまだわかりませんね」
メグミはそれ以上自己主張することなく、エリナの追及を交わした。
(今はまだ全面対決するときじゃありませんね)
メグミの策は続く。
しかも、今のでまだ全面対決ではないらしい。
それにしても、いつの間に策略家になったのだろうか?
(要注意だわ)
(だてにアイドルやってないわね)
(アキトはわたしのだよ!)
エリナ達ネルガル三人衆も警戒心を増していた。
「ねえねえ、なんか怖くない?」
それを傍で見ていたサユリが他の四人に小声で話し掛ける。
「た、確かに・・・」
「でもサユリはあの中に入っていかないといかないから大変よね〜」
「ほんと、ほんと」
「だ、大丈夫よ。負けないんだから」
「あ〜やっぱり〜!」
「その気だったのね」
「え、えっ、違うわよ。今のは・・・」
「隠さない、隠さない」
「そうそう。私たちは協力するわよ」
こちらはとことん明るかった。
「一応私も行くわ。まだまだアキト君は完調とは言えないから」
メグミとの静かなる戦いを終えたイネスもアキトの後を追った。
プシュ
ガタッガタッガタッ
「邪魔するわね」
言葉とは裏腹にイネスは堂々と通っていく。
「せめてノックくらいしてくれてもいいのに・・・」
三度書類を崩す羽目になったジュンのもっともなセリフは当然の如く皆に無視された。
「なんか面白そう。私も行こっと」
ユキナはそう言うと副オペレーターの席から跳びおりる。
出航に関わる仕事をメグミと共に終了させた以上、これから交代の時間まで暇なのだ。
「ちょっと、ユキナ・・・」
ミナトが呼び止めようとするが、ユキナは気にせず行ってしまった。
プシュ
「あ、ユキナ。ちょっと手伝って・・・」
「あ、ジュン君頑張ってね」
プシュ
「・・・くれないのね・・」
ジュンの泣き顔が見えるかのようだった。
よくよく考えて見れば、アキト以外の連中はわざわざ隠し通路を通る必要がないため、ジュンの苦労は完全に無駄である。
「まったく、みんな勝手なんだから」
「みんなずるい」
イネスとユキナがアキトを追いかけたのを見て、席を離れる事が出来ないエリナとラピスが不満を漏らす。
エリナは特にやることはないのだが、名目上艦長となっている以上ブリッジを外すわけにはいかないのだ。
ラピスは唯一と言っていいオペレーターのため当然席は離れられない。
行きたくても行けないためにいらいら感は募る。
ちなみにイネスも本来は医務室にいなければならないのだが、気にしてはいないようだ。
「でもでも〜サユリって結構有利じゃない?」
ホウメイ・ガールズはまだその話をしていたようだ。
「え?どうして?」
「だって〜、料理の時は誰にも邪魔されずに近くにいられるじゃない」
「あっそっか〜」
「サユリ、良かったね〜」
「だ、だから違うって!」
「いまさらそんなこと言っても駄目なんだから」
「そうそう」
こちらは相も変わらずマイペースで賑やかだった。
ちなみにホウメイ・ガールズの会話を聞いていたエリナとラピスの目が鋭くなっており、それを感じて
いるサユリは他のメンバーに追われながら冷や汗を流している。
(不味いですね・・・)
同じくホウメイ・ガールズの話を聞いていたメグミが考え込む。
(アキトさんと同じ時間が持てないのは痛いです)
ネルガルの三人はアキトと元々繋がりがある。
リョーコはパイロットとして、武道をたしなむ者として時間が持てる。
ホウメイ・ガールズは料理という点で繋がりがある。
自分だけ二人の時間が持てない。
(・・・今考えても仕方ないですね。これからの状況次第です)
とりあえず保留になったらしい。
(なんか、面白くなりそうね)
一人話の輪から離れていたミナトが皆の反応を見て一人微笑んでいた。
何ら邪さを感じさせないその笑顔の奥で、何を考えているのかはもちろん謎である。
「おお、ここが訓練室か〜」
アキトに続いて訓練室に入ってきたリョーコが声を上げる。
ナデシコDの訓練室は戦艦の中故、広さはそれほどでもないがかなり設備が整えられている。
その中にはアキトが乗ることになってから取り付けた設備もあるが、元々他の艦艇に比べれば充実していたのだ。
従業員のメンタル面、身体面を考えているのだ。
さすがは民間企業であるネルガル製とでもいうべきか。
「最初のナデシコより色々あるんだね〜」
リョーコに続いてヒカル、イズミ、そして少し遅れてイネスとユキナも入ってきた。
先に来ていたアキトは既にウォーミングアップを始めている。
ちなみにこの訓練室に来るまでには廊下を横切らねばならず、
そこでは誰にも見られないように注意しなければならない。
そのためアキトはドアから少しだけ顔を覗かせて廊下の様子を探ったりしたのだが、
アキトの名誉のため細かい描写はさける。
「手加減はしない。ウォーミングアップはしっかりしておいてくれ」
「へっ!言うじゃねぇか!言われるまでもねぇよ!」
アキトの言葉にリョーコが威勢良く返す。
「私たちも負けないんだからね〜」
「手加減はしないわよ」
口ではアキトの言葉に反応しながらも、三人は入念なウォーミングアップをしていく。
この辺はベテランのパイロットとして身についているのだろう。
イネスは一人壁際に向かい、アキトを見守るようにしている。
アキトに異常の欠片でも見せればすぐにでも医務室へと連れて行くつもりなのだ。
心底アキトの事を心配しているだろうこと、想像に難くない。
(ふふふ、医務室なら二人きりになれるわね。)
・・・心配してのことだと想像に難くない。
ちなみにユキナは様々な設備が珍しいのか、あちこちを興味深そうに見て回っている。
「おっしゃあ〜!始めるか!」
アップを終えたリョーコ達がアキトのほうに近づく。
「最初はエステでの模擬戦でいいか?」
「ああ。絶対勝ってみせるからな」
リョーコにとっては雪辱戦となるアキトとリョーコの模擬戦が始まった。
<続く>
<後書き>
どうも「やまと」で御座います。
うむ、終わり方が微妙だ(汗)
さて、最近投稿しない間他の方の投稿&後書きを読んでいました。
そして思いました。
>初めての人が連載は無謀、最後まで考えて書き始めること、短編で実力をつけるべし。
(色んな処から抜粋)
ごめんなさいm(_ _)m 無謀の極みでした(笑)←笑い事ではない。
だって短編のつもりがオチがつかなくて連載になっちゃったし、分岐までしちゃったし、会長編は予
定すら何もなかったし(汗)
一応この一ヶ月ちょっと、ていうか二ヶ月(汗)最後までの構想を練っていましたのでどうぞ最後ま
でお付き合いのほどを平に平にお願い申し上げます。
それでは代理人様、今回も感想楽しみにしています。
代理人の感想
いやまぁ、男は男同士で話したいこともいろいろあるわけで。
友情というヤツは、ある意味愛情よりも遥かに強いんではないでしょーか。