あれから三ヶ月・・
特に何も無い日が過ぎていった。
俺は今ボーダーの近くにある川に水を汲みに来ている。
あれから例の化け物が出る様子は無い。
たくやが言うには『いつボーダーから魔物が現れるかわからない。』だそうだ。
ユーノちゃんは変な鼻歌を歌いながら花を摘んでいたりする。
そろそろ何とかしなくちゃな・・・。
そんなことを思ってそろそろ帰るよと声をかけようとしたとき
突然頭上からバサバサと羽音が聞こえてきた・・・。
機動戦艦ナデシコ〜時の流れに続く道〜
アキト IN YU-NO
柳家本舗
第二話 死が二人を分かつまで
話は三ヶ月前にさかのぼる・・・。
あれからやっと人前に出られる格好になった俺は、たくやの家に向かうことになった。
『少し寄り道するぜ。』
そう言うとたくやは開けた道を歩き出し、丘の方に向かって歩き出した。
少し歩くと俺は丘の辺りに木の棒が突き立ててあるのを見つけた。
よく見ると、土を被せた様な後があった。墓のようだった。
『・・・誰の墓だ?』
『アイリアって人だって。』
俺がたくやに聞くと、ユーノちゃんが代わりに答えた。
『そうか・・。』
俺はそう言うと、黙って黙祷をささげた。
その様子を見てユーノちゃんも真似をした。
その後たくやは家に戻るまで一言も言葉を発する事はなかった。
『ま、遠慮しないで入ってくれ。』
そういって、たくやは俺を家の中に招いた。
どこか中世の感じのする家だ。
不思議なことに、明かりらしきものは無いのに家の中は光に満たされていた。
外は真っ暗なのにだ。石造りなので、石が発光しているのかとも思ったが
どうもそうではないようだ。いったいどうなっているんだろう?
俺が家の中を見渡していると、一人の女性が奥の部屋から現れた。
『ママ、ただいま!』
そういいながらユーノちゃんは女性に抱きついた。
『紹介するよ、俺の妻のセーレスだ。セーレス、こっちはアキト、ボーダーの近くで倒れてたんだ。』
たくやがそう言うと、セーレスさんは透き通る様な笑顔をしながら軽く会釈した。
『はじめまして、テンカワアキトです。』
(はじめまして、アキトさん。)
!?・・今のは?
『? もしかして、セーレスの「声」がきこえたのか?』
『ああ・・しかし、これは・・・?』
これは・・・まるでラピス?
『ああ、さっきセーレスは巫女と言ったな?
どうやら巫女と言うのはその力を得る為に、何か体の一部を神に捧げなきゃいけないらしいんだ。
そしてその体に神を降臨させ、帝都の神殿で
四百年に一度襲い掛かる大破壊を防がなきゃいけないんだとさ。
ま、俺はそんなこと信じちゃいないけどな。』
何か・・・気になる。
『それでセーレスは、その声を捧げたらしい。
アキトが聞いた「声」は、その代わり。ま、テレパシーみたいなもんだと俺は思ってる。
もちろん俺とユーノにも「声」は聞こえるけど、俺はたまにしか聞こえないんだよな〜。』
『ユーノはいつも聞こえてるよ!』
『はいはい。まあ、難しい話はこれくらいにして飯にしようぜ。』
その後裸で云々、たくやに凄まじくからかわれた。
と、言う感じで今にいたると言うわけだ。
話を戻そう。
「なんだ?」
その音に気づきふり仰いだ俺は、思わずたくやに借りた剣を構えた。
「ユーノちゃん!!」
叫んだ俺は、油断なく相手を見る。
黒い蝙蝠のような翼をもつ人間・・・そんな感じだ。
外見は大人の女性で、俺と同じくらいありそうだ。
胸に何か奇妙なものを抱えている。が、ここからでは良く見えない。
そいつはふらふらと空を飛ぶと、失速して地面に落下した。
その女(?)は怯えた様子で俺を見上げる。
こいつは・・・?ボーダーの怪物か?しかしそれにしては弱々しい。
俺の見た怪物とはあまりに違う。
俺がとまどっているとそいつは俺に向かって話し掛けてきた。
『助ケテ・・・・・クダサ・・イ。』
「・・・・今のは、君か?」
翼の女に聞く。
『ソウデス・・・オ願イ・・・コノ子ヲ・・助ケテ・・・・。』
そう言うと、抱えていたものを俺に差し出す。
よく見ると、深緑色の爬虫類のような生き物だった。
ドラゴンの子供のようなやつだ。
そいつは、俺のほうに首をもたげ、しげしげと俺を見つめている。
「・・・えっと、この子って・・・。」
俺はそいつをまじまじと見つめて言った。
「これ・・・?」
俺は自分で言って、そうだったらどうしようと思ってしまった。
さっきはドラゴンの子供と言ったが
そいつはカエルとトカゲを合わせて羽を生やしたような生き物だった。
どう見ても目の前の女からこんな子供が生まれてくるとは思えない。
『ソウデス・・・。私ノ愛シイ子・・・。』
どうやら本当らしい。
元の世界でもルリちゃんたちに追いかけられていたが
いきなり羽の生えた女からトカゲの子供を託せられるとは思わなかった。
「え、えーと・・。と、とりあえず、君はボーダーから来たのかい?」
どもりまくって話を変える。
笑顔で歯なんか光らせてしまった。
女の顔が少し赤くなっている。
『エ、エット。ボーダーシリマセン。私達、大キナ砂、越エテキマシタ。』
? たくやに聞いたラファエロ砂漠のことか。
ラファエロ砂漠とは、ボーダーの周りの森林を囲むように横たえている砂漠のことだ。
この砂漠のせいでここら辺一体は陸の孤島となってしまっている。
砂漠の向こうには帝都があるらしい。
「帝都の方からか?」
「ハイ・・。」
少し考え込むと俺はさらに質問をした。
「・・・砂漠を越えるのにどのくらいかかったんだ?」
『光ガ五回消エルマデ、ズット飛ビ続ケマシタ・・。』
つまり、五日かかったということだ。歩きなら倍はかかるだろう。
『オ願イ・・、私ハモウダメデス。コノ子ヲ・・・・。』
「・・わかった。」
『アリガトウ・・・サア・・・イキナサイ・・。』
そう言うと女は力尽きその身を大地に横たえた。
女の子供だと言うトカゲもどきは母親の体の下から這い出ると
女の顔をクンクンいいながらぺろぺろなめている。
俺は引き受けたはいいがどうしようと途方に暮れていると
後ろのほうから素っ頓狂な声が聞こえてきた。
「キャァァァァーー!!かわいいぃぃぃぃーーーー!!!」
!?△@¥
くぉぉ・・なんて大声だ。ユリカに匹敵するぞ?!
俺は耳を押さえて唸っていたがユーノちゃんは気づいた様子も無くまくしたてる。
「ねえねえアキト!!この子飼ってもいい!!!?」
「くぉ!・・・・ああ!いいよ!いいからちょっと声を・・・!」
「やった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「はう!」
訂正、ユリカ以上だ・・・。
俺は女の墓を作るとふらふらしながら這這の体で家まで帰り着いた。
その間もユーノちゃんは騒ぎ続けていた。
名前はクンクン鳴くからクンクンだそうだ。
家で「審美眼とネーミングセンスを鍛えなおさなきゃな。」とか
たくやが言っていたような気がするが目が覚めた時には覚えていなかった。
さらに三ヶ月後・・
俺とたくやは森に狩に来ていた。
ここでの生活は完全に自給自足なので自分達で獲物をとらなければならない。
とった獲物で俺が料理をしたら、たくやは俺が料理ができるのが悔しいのか
「料理のレパートリーが増えるってのはいいことだ。」とか言っていた。
ユーノちゃんやセーレスさんも声を大にして(ユーノちゃんは文字どうり)おいしいと言ってくれた。
話を戻そう。
野生の動物ってのはすばっしこいもので、素手で捕まえられると言うことはあまり無い。
特に俺の場合はかすかに残った気配でも逃げられてしまうので
俺たちは、基本的に罠を使って狩をしていた。
「よし!捕まえたぞ、たくや!」
俺が捕まえたのはウサギに角の這えたやつだ。
こいつは丸焼きにしてもうまいし、角は薬にもなる
めったに捕まえることのできないやつだ。
「おお?角ウサギじゃねーか!でかしたアキト!」
そんなことをやって帰ればうまい夕食が食べることができた。
いつもとかわらない日常・・。それが続くはずだった。
しかしどんなときも現実は残酷だ。異変は俺たち二人に突然降りかかった。
(パパ!!アキト!!)
突然俺たちの頭にユーノちゃんの叫び声が響き渡った。
「ユーノ!?」
「ユーノちゃん!?」
呼び返したがそれきりユーノちゃんの声は聞こえなくなってしまった。
家にはユーノちゃんとセーレスさんがいるはずだ。
二人に何かあったのか!?
そう思うと俺とたくやは示し合わせた様に駆け出した!
くっ!無事でいてくれ!!
家までの十分やそこらの道がとてつもなく遠く感じる。
しばらくすると家が見えてきた!
! 家の前に誰かいる!!それに・・・ユーノちゃん!!
ユーノちゃんはその騎士の様な格好をした奴等に捕まっている。
力無く、ぐったりしているところを見ると気絶しているようだ。
そいつらはユーノちゃんを肩に担ぎ
家の前にとめてある全長5メートルはありそうな鳥の背にまたがると
颯爽と大空に飛んでいってしまう。
「たくや!!お前は家のほうを!!」
「解った!」
そう言うと俺は猛然と追いかけ始めた。
初めのうちは良かったが、やがて足場が砂になったかと思うと
一気に離されてしまう。
「はあ!はあ!・・・くそ!!」
俺は十分も経たないうちに奴等を見失ってしまった。
ユーノちゃん・・・!!
俺は自分の力不足に憤慨し砂を拳で叩いた・・・。
・・・仕方なく俺は家に戻ると家はめちゃくちゃに荒らされ、ところどころに血の後が残されていた。
そして・・・セーレスさんの部屋で見つけたものは・・・ずたずたに切り裂かれ殺されているセーレスさんと
その体の前で立ち尽くしているたくやだった・・・・・・。
第二話完
あ・と・が・き
ちわっす柳家本舗でっす
しばらくかかりそうとか言いながら書き始めたらノリで終わってしまった う〜ん
今週の懺悔
1・この後どうするべ
あんまオリジナルにしすぎると終わらせる自身が無いし・・・
次回
平和の終わり、旅の始まり
でわでわ〜