たくやが俺たちがすごした家を見つめている。
その目にはガンとした決意の色が宿っていた。
「いくぞたくや。」
「ああ。」
俺たちはマントを翻し歩き始めた・・。
ラファエロ砂漠へ・・・。
機動戦艦ナデシコ〜時の流れに続く道〜
アキト IN YU-NO
柳家本舗
第三話 日常の終焉・旅の始まり
「たくや・・・。」
たくやはセーレスさんの亡骸を見つめていた。
俺はセーレスさんが死んだ悲しみよりもたくやの心を心配していた。
そう、俺にもかつて今のたくやと同じような事があったからだ。
復讐は何も残さない。そう俺はたくやに諭そうとしたがそれより早くたくやは呟いた。
地獄の底から聞こえるような底冷えする声で・・・。
「殺してやる・・あいつ等・・。」
「たくや・・・。」
俺はもう一度呟いた。
「たくや。駄目だ・・。」
たくやは俺のほうを見るとこういった。
「アキト・・止めないでくれ・・・。協力してくれとは言わない。だが・・・。」
「たくや、つらいのは解る・・・・だけど・・。」
「何が解るって言うんだ?!!
今の俺の気持ちをわかる奴などいやしない!!たとえそれがアキト!!お前でもだ!!」
バキィ!!
「ぐあ!!!」
その言葉を聞いたとき俺はたくやを殴り飛ばしていた。
殴られたたくやは吹っ飛んで家の壁を突き破り地面に転がっていった。
俺はそのままたくやのほうに歩いていった。
「ぐぅ・・・。」
たくやは頬を押さえ唸っている。昂氣を使わかったとはいえ、気絶しなかっただけたいしたものだ。
そんなことを思っているとたくやが叫びながら殴りかかってきた。
「っ痛・・・この野郎何しやがんだ!!」
俺はそれを少し身を沈めとかわすとカウンターで腹に崩拳を叩き込む。
「がっはぁ!!」
たくやは膝をつき、口からよだれを垂れ流す。
だが、その目は獲物を狙う野獣のように光っている。
俺はその目を見ると静かに話し出した。
「たくや・・・よく聞け。」
「聞く・・・ことな・・んてねぇ!!」
息も絶え絶えにそうたくやが吼える。
だが俺はその言葉を無視して話し出した・・・遥か時空の向こうでの昔話を・・・。
「俺はな、昔・・一万人以上殺した殺人者だったことがある。」
「!?」
たくやの顔が驚きに歪む。
・・・この話は流石にしなかったからな。
「・・いや、今もそうだが・・俺はなたくや、そのとき復讐に狂っていた。
・・細かいことは省くが・・たった二人の人間を殺すため、そしてある一人の人を助けるため
俺は全てを捨てて戦った。そして、俺は目的のために手段を選ばなかった。」
「・・・・。」
たくやは何も言わない。俺の独白が終わるまで待つつもりなのか。
それとも、突然の話に面食らったのか。それは解らないが・・・。
「そして・・・一万もの人命が失われた。全ては俺の復讐のためにだ。
・・・・わかるか?それだけの覚悟が必要なんだよ復讐ってのは。
たくや、それだけの覚悟がお前にあるか?それに・・・」
俺は決定的な一言を言った。
「もし・・ユーノちゃんがその道に立ちはだかったらお前はユーノちゃんを殺せるか?」
「!!」
そう・・・ユーノちゃんはさらわれた。セーレスさんが巫女と言うのなら恐らく
巫女の娘と言うことで連れて行かれたんだろう。
そして・・たくやが復讐を果たすには恐らく帝都へ行かなければならないはずだ。
たくやの目的が神帝を殺すにしろ、さっきの騎士の奴等を殺すにしろ
たくやがユーノちゃんをほうっておけるはずが無い。
そうなったら・・・ユーノちゃんはたくやのことを止めるだろう。命をかけて・・。
たくやに言った「殺すかどうか?」というのは単なる脅しに過ぎないし卑怯な物言いだ。
俺はたくやに俺と同じになって欲しくなかった。復讐の後にあるのは後悔だけだから・・・。
「くっ・・セーレス・・・ユーノ・・うううぅ・・うおおおおおおおおぉぉぉ!!!!」
悟ったのかたくやはセーレスさんの亡骸を胸に号泣した。
俺はリビングにいた。
まだ、たくやはセーレスさんのところにいる。
ふと机の上を見た俺はそこにあるものに気がついた。
「・・・手紙?」
セーレスさんからだった。それにはこう書かれていた。
『私の家族へ
たくや、ユーノ、アキトさん、勝手にいなくなってしまってごめんなさい
私は今まで巫女の運命から逃げていました。でも、もうやめようと思います。
私が戻らないと世界は滅んだしまうでしょう。私は私が死んでもあなた達を失いたくないのです。
こんなことでは巫女失格ですね。でも私は私に嘘をつきたくありません。
だから戻ります。もう帝都当てに手紙も出しました。
たくや、ユーノ、私がいなくなっても悲しまないでください。
私は自分の愛する者のために行くのですから。
アキトさん、私がいなくなった後、二人のことよろしくお願いします。
最後に 私はとても幸せでした。
セーレス』
「セーレスさん・・・!」
俺は涙した。けして恥ずかしいとは思わなかった。
これを見て「馬鹿な奴め」なんて言うやつがいたら俺が滅ぼしてやる!
そう思ったとき人の気配がした。
「・・アキト?」
何時の間にかたくやが部屋にいた。
俺が何も言わずに手紙を見るようにたくやを促すとたくやの目から一筋涙が零れ落ちた。
「セーレス・・・・。」
「・・・・たくや・・。どうする・・・?」
俺は少し待ってから尋ねた。が、聞くまでもなかった様だ。
「ユーノを追う。」
「・・・復讐の為か?」
俺がそう言うとたくやは少し笑っていった。
「フフッ・・・そんな事したらセーレスに会わす顔が無いよ。」
どうやらもう大丈夫のようだ。
「セーレスさんの墓を作らなきゃな・・。」
「・・・ああ。」
それから俺たちはセーレスさんの墓を丘の上にひっそりと作った。
騎士・アイリアの墓のすぐ横だ。
たくやが「ここならセーレスも寂しくないだろう」と言ったからだ。
しかしそのとき俺には気づいたことがあった。
セーレスさんの髪の毛の色が・・・薄くなっている気がしたのだ。
・・・極度の疲労に陥ると太陽の光も黄色くなることがあると言う。
俺はそのときセーレスさんの死で少し憔悴していたのだと思った。
なにか・・・ひっかかったが。
それから一週間、俺たちはラファエロ砂漠を越えるための準備をした。
乾燥食料の作成、水の確保などやることはいくらでもあった。
何せたった二人で十日はかかるような灼熱の砂漠を踏破しようと言うのだから
心配しすぎて損と言うことは無い。
しかしどんなときも時間のたつのは早い・・。
瞬く間に日は過ぎていき、とうとう出発の日になった。
「クンクン、もう俺たちはお前の面倒を見ることはできない・・・行くんだ。」
クンクンはやはり野生に戻すことにした。
少し躊躇っている様だったが俺たちの気配を察したのか翼を翻すと森のおくに走っていった。
「これで・・本当に俺たちだけになっちまったな・・。」
たくやがそう言うと少し寂しそうにクンクンの走っていった森を見つめた。
「ユーノちゃんを助けるんだろ、最初からそんなんでどうする。」
「ああ、そうだな。」
そう言うと俺たちは帝都に向かってラファエロ砂漠にその一歩を踏み出した。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
俺たちは無言で歩き続けている。
もう三日は歩き続けているだろうか、とりあえずいまだ何事も起こらずに旅は続いている。
ラファエロ砂漠の日は強く日中は岩壁に身を置きその暑さをしのぎ
夜、日が落ちて温度が下がってきてから動くことにしている。
日のあるうちは砂漠の温度は四十度以上にも達するのでこうする他無かった。
かといって夜が快適と言うわけでもない、夜は夜で一気に十度以下に温度は下がり
普段着とマントだけではいささか無理があった。とりあえず日中よりましと言うだけだ。
ラファエロ砂漠の感想はこのへんにしておこう。
しかしいつまでも順調に旅が進むはずも無かった。
五日目、まず食料が尽きた。
人間は食料が無くても水さえあれば一週間は生きていられると言うが
この出来事は俺たちの焦りをさらに加速させた。
そして七日目、最後の水も尽きようとしていた。
そして事件はおきた。
今までもたびたび襲っていた地震が起きたのだ。それもかなり強い、立っていられないほどだった。
ピキ・・・ピキピキピキ ゴガァァァアアンン
岩場を歩いていたのがまずかったのか、そのゆれに耐えられず岩盤が砕け散った!
「アキト!!!」
俺は突然のことに反応できず、なすすべなく亀裂の奥に落ちていく!
「くっ!たくや、俺は大丈夫だ!先に行け!!」
「アキトォォォォォオオーーーーーーーーー!!!!!!」
岩盤の下は地下水脈だったのか俺はそのまま水の激しい流れにさらわれ意識を失った。
「う・・・・ごほっごほっ・・・・うう・・ここは・・・・・?」
気がついたのは下水道のように整備された通路だった。
俺はその端の所に運良く引っかかっていたようだ。
とりあえず奥に行ってみようと思いみずから這い出す。
・・間接良し・・骨良し・・神経良し・・。
とりあえず体の損傷の有無を確認する。が、そのとき突然明かりが俺の姿をとらえた
「誰だ!!」
俺はそちらを見ると、燃えるような赤い髪を散切りにした女がこっちを睨んでいた。
第三話完
あ・と・が・き
ちわっす柳家本舗でっす
ええ〜少しオリジナルっぽくなってきました・・・恐ろしいことに(笑
これからどうなるんでしょう・・・
次回
懐かしき人(?)
てなかんじで サービスサービスゥ!!
ちがう!
ばかばっか