炎が燃えている。
炎のそばには二人の人影。
パチパチッ
「どうするんだ?」
影の片方が言葉を発した。
空は暗い。漆黒の闇だ。
そして、三つの月が顔を出していた。
機動戦艦ナデシコ〜時の流れに続く道〜
アキト IN YU-NO
柳家本舗
第四話 襲撃
あの後、アマンダとディアとブロスとで収容所に向かったのだが・・・。
結果だけ言うとたくやはいなかった。
どこかに逃れたのか、死んでしまったのか・・・。
とにかくたくやの足取りはこの時点でぷっつりと途絶えてしまった。
今、これからどうするかを近くにあったオアシスで話し合っている。
ディアとブロスはもう寝てしまっているが。
どうも肉体を持った所為で普通の生理現象も持ってしまったようだ。
当たり前だが。
「じゃあ、帝都に行くのか?」
二人が寝ているのでこれはもちろんアマンダだ。
「ああ、たくやの足取りが途絶えてしまった以上、
情報を入手するためには町とかで聞いたほうが確実だからな。」
アマンダは顎に手を当てて渋い顔をしている。
「・・・今帝都には人はいないよ、神帝とその親衛騎士団がいるだけだ。」
「何故だ?いくらレジスタンス狩りがあったからって
普通の人々まで捕まえたりするなんてことは無いだろう?」
「帝都が大破壊で滅びるからさ。現にもう帝都は地震の影響で建物が崩れてめちゃくちゃだ。
誰もこれから滅びる町に住もうとはしないだろ?」
ふむ、確かに。
しかし、そもそもこのたびの目的はユーノちゃんを救出することだ。
帝都に神帝がいるのだからユーノちゃんも帝都にいるだろう。
神殿に侵入した男がたくやだとすると、
たくやはそのことを知っていて神殿に侵入した可能性が高い。
収容所にいないのだから捕まっていないのだろう。
捕まっていないとすると、たくやは帝都から離れないはずだ。
どのみち、帝都に行くしかない・・・。
俺はアマンダにそのことを伝えるとその夜はそこで寝ることにした。
夜・・・・
俺はあまり眠ることができないでいた。いろいろ考えることが多すぎる。
遺跡の老人・・・。いったい何者だろうか?
ジャンプでここに飛ばされたこともその老人の仕業なのだろうか?
ディアとブロスの話を聞く限り敵という事は無さそうなのだが。
・・・俺に何をさせようとしているのだろう。
それにこの世界、デラ=グラントと言うらしいが・・・。
あまりにもバランスが悪すぎる。まるで剣と魔法の世界だ。
最初のときの化け物・・俺は神を信じちゃいないが謎の地震、世界が崩壊するらしいが・・
そして裁きの塔・・あれは決定的だった。
収容所に潜入したとき大地震が起きて塔が崩れたのだが
なんとその中身は機械としか思えない代物だった。
そしてその機械に俺は見覚えがあったのだ。そう・・・遺跡の機械のデザインにそっくりだった。
さらに、たくやが言うには、たくやが持っていたリフレクターという装置は
隣りの並列世界に行くぐらいのエネルギーしかないはずなのにたくやはここに飛ばされてきた。
そのリフレクターも聞いたところによるとやはり遺跡のデザインに良く似ているのだ。
そして、俺とディア、ブロスもこの世界に飛ばされてきた。
偶然というにはあまりにもおかしい。
デラ=グラントは火星遺跡を作った連中と何か関係があるのだろうか?
「ふう・・・・。」
俺は寝返りを打ちながら空を眺める。デラ=グラントには月が三っつあるんだな・・・。
赤・白・青の淡い輝きを放つ月が漆黒の闇の中に浮かんでいる。
たくややユーノちゃんもどこかでこの月を見ているのだろうか・・・。
そんなことを考えながら俺はまどろみの海に沈んでいった。
・・・・・・・・!!・・・・・ガバっ
・・・・なにかいる・・・。
寝ていたにもかかわらず俺はその気配を感じ取った。
昂氣が使えないといってもこういう部分は昂氣とは無関係だ。
しかし、こいつは・・・・?
気配は俺の目の前十メートルほどの場所にあるというのにそこには何ももいない。
光学迷彩・・?いや、馬鹿な。いくらなんでもそんなものまであるとは・・・
いやあの塔のこともある、油断はできない。
「おい、三人ともおきろ。」
のそのそとおきだす。
「な〜に?アキト兄。」
「しっ・・・何かいる、すぐにここから離れるんだ。アマンダ頼んだぞ。」
「わかった。」
アマンダは二人の首根っこをつかむと一目散に走っていく。
三人がいなくなったのを確認すると俺は気配と向かい合った。
ここは迂闊に動けない。
こいつの存在自体が謎過ぎる。どんなことをしてくるか解ったもんじゃない。
それに対してこっちは剣一本、さらに昂気も使えないときている。
警戒しすぎて損ということは無いはずだ。
俺は感覚を全方位に向けて放つ。
雲に隠れていた月がその姿を再びあらわした。
それと同時にその気配はゆっくりと移動を開始した。
そいつはだんだんスピードを速め始めると俺に向かって何かを繰り出した。
俺は剣を構え、迎え撃つ。
ブンッ
体をかがめ気配をかわすと何か重いものが頭の上を通り過ぎる音がした。
と、同時にそれは俺の後ろにあった樹にぶつかり、一抱えもあるような大木を叩きおった。
バギィン! メキメキ・・・ズズゥゥゥーン
金属音!?
大木が倒れる音の前に金属のぶつかるような音がした。
大木の倒れた影響で辺りにはかなりの煙が舞っている。
さらに、煙が渦巻いたかと思うとそいつはなんとミサイルのような円筒形の物体を発射した。
「くぅっ!」
俺はそれを回転するようによけると、そのままやつのほうに向かって飛び出した。
そして、気配に向かって渾身の力を込めて剣を振り下ろす。
「ふっ!!」
ズバァ!
何かを切った手ごたえを感じたがその直後・・
ギィン!!!
やはり金属音がして振り下ろした剣が弾かれた。
「くっ!!駄目か!!」
無駄だったと悟ると同時に俺はそいつにとび蹴りを食らわしその反動で空中回転して
そのまま四〜五メートル後方へ離れた。
すぐにやつに視線を合わせると・・・・そいつはその姿をあらわした。
「馬鹿な!!!??」
それは黒いカラーリングのエステバリスだった。
そいつは光学迷彩マントを羽織っていたようで、機能しなくなったマントを力任せに破り捨てた。
見たところ俺より頭一つ分大きい。2メートル前後といったところか。
黒いエステバリスは眼光鋭く目を光らせると何も無い空間から筒のようなものを取り出した。
あれは・・・DFS!?
まずい!ただでさえ歯が立たないってのに・・・!
鉄の剣VSDFS
受け止めたりすることができないのだ。勝負になるはずも無い。
「こうなったら・・・。」
俺は決断した。
「逃げる!!」
誰が何て言おうと逃げる。
即座に振り返るとそのまま全力疾走、その場から逃げ出した。
ギュィィィィィィン!!
もちろん、そのまま逃がしてくれるはずも無く、黒いエステバリスも
踵のキャタピラを回し追いかけてくる。
走りながら俺は考える。
どうする!?どうすればいい!!?
とか考えているうちに、俺は砂漠に出てしまった。
くっ!万事休すか!!
見晴らしも良くなったことだし、俺は覚悟を決めて黒エステと向かい合った。
と、そのとき上空から大声が聞こえてきた。
「アキト兄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
「はっ?」
俺が上空を見上げるとそこには・・・・・天使がいた。
その天使はほうけている俺をかっさらうと、そのまま空に向かって上昇した。
地上では黒エステがミサイルを発射してたりするが、
ホーミングではないようで、すでに上空50メートル程にいる俺までは届かない。
というか当てられない。
そんな感じで、ボーっと地面を見ている俺に天使が話し掛けた。
「大丈夫?アキト兄?」
天使の顔をよーく見てみると・・・。
「あ、あれ?ディア!?」
「んふふ〜、どう?びっくりした?」
純白の羽を生やしたディアは、その年齢、容姿とあいまって、なんともいえない・・
げふっ、げふっ・・いやなんでもない。
不覚にも見とれていてなんてことは無いぞ・・・たぶん。
「ああ・・・あのとき、ニヤニヤしてたのはこのことだったのか。」
「んふふ、まあね〜。それより、あのエステバモドキ、あきらめた見たいだけどこの後どうするの?」
気がつくと、黒エステは消えていた。
しかし、ニヤニヤしたりシリアスになったり忙しいやつだ。
「そうだな、とりあえずこのままアジトに戻ろう。」
「オッケー!」
ディアはそう返事をすると羽を羽ばたかせ加速した。
「こら〜、俺達を忘れるな〜!」
「ううっ、なんか、僕、扱い悪いなぁ。」
・・・なんか聞こえたような気がするが、当然、無視無視だ。
まあ、こうして俺たちは危機を回避したのだった。
あ・と・が・き
ちわっす柳家本舗でっす
いかん・・・収拾がつかなくなってきた。
DFS装備のエステに対して昂氣仕様不可のアキト・・・
どうやって相手させよう・・・
下手するとブラックサレナとか、ブローディアとか出てきてしまうかも
ああ〜、もうなすがまま;;
次回は・・・どうしようかな〜
代理人の感想
・・・・・■リコン。
ここまではっきりアレなアキトッてぇのも珍しい(笑)。
あ、反論は不許可(爆)。