第一話Bパート








その事件はアキトが転校してから二週間経ったころに起きた。









ズガ、バシュ、ドゴ、ガズ



とある場所。


俗に廃工場と呼ばれる部類のである。


ただ御影町で廃工場と呼ばれる場所ではない。


ここは御影町の隣町である。


そこである暴行がおこなわれている。


一対多数・・・俗にリンチと呼ばれる行為が行われていた。



「なんでい、大したことねぇな。」



「腕っ節が強いと聞いていたがこの様か!!。」



「へ、所詮は噂、噂。」



「そうだ女はこんなヘタれのどこがいいのやら。」



「顔だろう。」



「だったら顔だけだな。」



そんな会話をしながら暴力をふるう者たち。


ある者は腹に蹴りをいれ。


ある者は思う存分顔を殴り。


顔を足でふんづけてる者いる。


無論手を足でふんづける者いる。


道具を使っている者もいる


手には、木刀、バット、角材、鉄パイプなど思い思いの道具が手に握られている。


さらに・・・・・・・・・。




「やめてーーー。」



「いい加減にしないとただじゃおきませんわよ!!!。」



そう言って叫び声を上げる女達。


その表情は切羽詰ったものがあった。


彼女達は後ろで縛られていた。


後ろの金属製の鉄パイプに縛られていた。


彼女達の表情、叫び声、彼女達の状況から彼女達が好んでそんな状態になっているとは思えない。





「くくく・・・・殺すんじゃねーぞ。殺したら洒落にならないからな。」



彼女達の傍らには笑いながら男達に指示をだしてる男がいる。


どうやらこのリンチを行ってる連中のボスのようだ。


そのボスは人質の少女一人にナイフを突きつけている。


その顔にはサディストの笑みが浮かんでいるようだ。


いやな顔をしてるだろう。。


なぜこのような表現をしてるかと言うと、この男を含めて暴行を行う連中は皆顔を隠すマスクをしているからだ。







そして・・・・・


男達から暴行を受ける人間。


彼は全く抵抗しようとしなかった。






暴行を受けているのが天川アキト。


縛られている二人少女が桐島カグヤ、綾瀬メグミと言った。













事件の発端はアキトの人気っぷりにあった。


アキトはとにかく人気があった。


彼氏なしの女性を殆ど虜にするほどに。


それは言うまでもなく他校へも伝播していく。〔言うまでも無くかい(汗)〕



しかし、そうなると回りに一つ感情が起きてくる。


そう嫉妬という感情が・・・・・・。


まあ、誰にも憎まれずに生きる事は不可能であろうからこれはこれで仕方がない。


誰からも好かれる事がすくないように。


アキトも例外ではない。




だがアキトは女にモテてもそれを鼻にかける事はなかった。


それどころか女子陣と積極的に交わろうともしなかった。


(向こうから迫ってくる事はあるが)


その事が男子達に過ぎた嫉妬心を持たせることにはならなかった。


またアキトに人徳でもあるのか、それがイヤミになる事もなかった。


聖エルミン学園は全体的にのんびりした所があり学校にありがちな陰湿なものとは比較的無縁であった。


無論学校である以上そういうモノに完全に無縁である事は不可能である。


だがエルミンでは比較的生徒に自由を与えているため、生徒が問題を起こすと厳罰をもってのぞんだ。


まあ、これは私立高校ではよくある事であるが。


(ヘタにその手の陰湿な事件が起きると学校経営そのものに響くからである)


だからエルミンにも不良が居るには居るが、私立だけに停学、退学を恐れる程度の存在である。


だが、この罰にも私立である以上成績による区別が存在する・・・・これはある意味仕方がない。


世間の私立高校の評価基準の大部分が有名大学への進学率なのだから。


(成績別に罰のランクがあるとも言う)


このように陰湿な暴力沙汰にはうるさかった。


だからと言って正当防衛的なモノまで否定してはいないが・・・・。


むしろアキトに対して何かしように出来ないにはも校風よりもこのような現実的な要因が大きいのであろう。



そのような訳でアキトが学校内で被害を受ける可能性は低かった。





しかしそれはエルミン校内の中での話である。


校外に出ると話は別である。





無論アキトは校外でも人気がでた。


以前に述べたように他校でファン倶楽部が出来る程である。


しかし、それによってアキトは睨まれるようになる。


他校の不良によって。


他校ではエルミンのような、現実的なブレーキは存在しない。


また停学、退学を恐れるようなタマでもなかった。



しかし、不良達はすぐには手をださなかった。


なぜならアキトは腕っ節が強いという噂があったからだ。







その噂の発端は体育の授業で起きた。


エルミンでは体育で武術を教えていた。


その時の授業は剣術であった。


その時アキトはある男と戦った。





その男は名は南条三郎太。


エルミンが誇る、東西の大関スケコマシの一人である。(オイオイそうじゃないだろう)


また南条コンチェルンの御曹司でもある。


そして彼はエルミンの中で一番の剣の使い手と呼ばれた。


ちなみに二番目はカグヤである。


そしてアキト、三郎太はその授業で戦う事になったのである。


その時は光景は凄まじいの一言であり全く勝負がつかなかった。


その時に二人に勝負をさせた剣術師範の感想。





「真剣でやらせれば面白かったな。」




・・・・・・・・・・・・まあとにかくそんな試合であったと言う。





三郎太の剣の腕前は御影町どころか隣町まで響いていた。


何しろ不良などに絡まれている女子を助けるためにそんな連中をブチのめすなんて一度や二度ではない。


(無論その助けた女子は皆上玉であり、助けた後は・・・・説明するまでもないだろう)


そう言う訳で南条三郎太と互角に戦った男としてアキトは一気に不良に一目を置かれる存在になった。


ただ、三郎太本人いわく



「アイツは本気じゃなかったよ。」



だそうだ。







となると正面からアキトと戦うとなれば例え大人数でも勝てても痛い目には合う。


またアキトを狙うようになった不良連中は強い奴と戦って勝つ事に喜びを見出すようなタイプではなかった。


楽して勝ちたいという連中であった。




となるとますますアキトと正面から戦うわけにはいかない。



そしてこの連中が選んだのが〔人質〕という手段であった。







「くくくく。ざまーねーな。」


そう言ってアキトがボコボコにされるのを人質(カグヤ&メグミ)の傍から眺めてる男。


覆面をしてるから表情は解らないがその口ぶりから状況を楽しんでる事はわかる。


相当いやな性格の持ち主のようだ。







「あなた、いい加減にしなさい!!。」



人質にされながらも果敢に吼えるカグヤ。


何故カグヤとメグミが人質に選ばれてしまったかと言うと。


女性陣のファンの中で一番積極的にアキトにアタックしていたのが彼女達だからでもある。


更にカグヤはアキトの幼馴染である事からアキトの食いつきがよいだろうと判断されたからだ。


そして何故メグミもさらわれたかと言うと、カグヤを捕まえる時の段取りであったと言うモノと言えるであろう。




「く、私が人質でさえいなければあなた達なんて・・・・。」



「そうだろうな人質がいなければアンタを捕まえる事も難しかったな〜。」




悔しがるカグヤにそんな嘲笑を浴びせる男。


もともとカグヤはエルミンで二番目の剣術使いと呼ばれた者である。


大人数で囲まれてもそれらを全てを返り討ちにする事は無理でも難なく安全な場所に逃げる事は軽く出来たはずであった・・・・・。


だが、カグヤの前に現れたのがメグミを引き連れたその連中であった。


そうなるとカグヤもどうする事も出来ず捕まるしかなかった。


そうメグミはカグヤの戦闘力も封じる為に最初に捕まってしまったのである。



そしてその結果が現在の惨状である。




そしてメグミはと言うと・・・・・・



(この声、やっぱアイツね・・・・)



どうやら、このグループの犯人に心当たりがあるようだ。



メグミはこの声から以前自分にしつこく迫ってきた男であると判断した。


この男は近隣の町の不良のボスであった。


暴力団の後ろ盾をもっているという噂まである存在であった。


以前からそのような危ない噂がありさすがのメグミもこの男とどうこうしようとは思わなかった。


そしてメグミは相手にしようとはしなかった。


この部類の男は下手に関わるとろくな事がないからである。


だがこの行為がこの男のプライドを傷つけたようだ。


そして現在メグミはアキトに執着していた。


その事がこの男にアキトに対する敵対心を持たせたのかもしれない。


少なくともメグミが人質として選ばれてしまった要員の一つである事は間違いない。




(とにかく早くなんとかしないとまずいわ・・・・)




そう心の中であせるメグミであった。







その時


「ボス。」



「なんだ?。」



「コイツ動かなくなりやしたぜ。」



「何・・・。」



「し、心配しないでくれ、ただ意識を失っただけのようだから・・・・。」



「そうか・・・、よしもう止めろ死んでしまったら元も子もないない。」



「へい!」


そしてアキトに対するリンチを止める男ども・・。







「しかし、つまらんな・・・・・・」


そう言って考えこむ男・・・・


そしてニヤと一笑い。


「くくく・・・ここで一つ面白い事をしよう・・。」


そう言って下卑な表情をする男・・・・


どうやら面白い事を思いついたようだ。


しかしだいたいこんな男が思いつく面白い事なんてろくな事がない。


その表情のままカグヤに視線を向ける。


そしてカグヤに覆い被さる。


「な、何をするつもり!!!。」


「へ、まずその妙に高い鼻をへし折ってやるってことよ。」


そう言ってカグヤのブラウスに手を伸ばす。



そして・・・・




ビリリリリリ




「キャアアアアアアーーーーーーーー」



ブラウスを引き千切る男。


そのため手入れの行き届いた柔肌と真っ白なブラに包まれた豊かな胸が男の目の前に出てきた。


「ヒュー、いい眺め。」


その言葉を聞いて果敢にも男を睨みつけるカグヤ。


頭は羞恥心と怒りと屈辱で混乱して仕方がないのに、である。


「くくく・・・・オイあれをセットしろ。」


そう子分に命じる男。


そういって一つのビデオカメラを用意する子分。


まさか・・・・・・




「これから記念すべき記録映画を撮るのさ。」






そう言ってカグヤの豊かな胸に触ろうとする男。



「な、何を!!!。」



その行為に焦るカグヤ。



「!!!!!!!!!」



そしてカグヤの胸を揉みくだす男。


必死に声を抑えるカグヤ。


嫌悪感の余り言葉も出ない。


しかし腕をを後ろに縛られているので抵抗も出来ない。



「くくくく、ではこう言うのは。」


「やめなさい!!!!!!。」



と、下の方に手を伸ばす男。


その表情は笑いに満ちている。


そうサディストの笑みに・・・・。


必死に抵抗するカグヤ。


しかし、手を後ろで縛られそこを金属性のパイプにそれを固定さてているが為にやはり抵抗しようにも抵抗できない。


だがその瞳に抵抗の意思はなくならない。


だがそれこそが男の望むシュチュエーションであった。


やはり、このような行為をする場合、相手は最後まで抵抗してくれないと面白くない。


さんざんに嬲り、そして最後に相手が見せる絶望の表情・・・・。


それこそがこの男の最高の快楽である。



「どんなに頑張ったって、所詮女なんて男のアレをいれたら大人しくなってしまうもんだよ。」



「!!!!!!!」



そんな男の言葉に怒りの表情で対抗するカグヤ。



だがそんなカグヤの表情を見事に無視する男は、意識を失ってると思われるアキトに話し掛ける。


侮蔑のこもった口調で。



「あとでたっぷり見せてやるよ、このビデオを。」




その表情には愉快で仕方が無いと出ている。



「そして刻むんだな。


テメーのせいで幼馴染が俺たちによって汚される過程を。


 絶望の表情を。」




これ以上ないという嘲笑をアキトに浴びせる男。




「そしてアキトくんにもこいつ達を味あわせてやるよ。

 
 無論俺たちの後にな〜。」



そう言って、カグヤへの行為を再び行おうとしたその時、














「やめろ・・・・・・・。」












地の底から呪っているような声が聞こえる。


声の主はアキト・・・・。


まだ意識があったのかそれとも今目覚めたのか・・・・・。


「やめろ・・・・・・。」



「この野郎まだ意識がったのか。」



カグヤに対する行為をやめ、めんどくさそう見る男。




「オイ、そいつを黙らせろ・・・。どうせなら骨の二、三本折ってやれ。」



「へい!。」



返事をした男がアキトに近づく。



「まったくしぶといね〜。」


そうサディストの表情で喋る子分A。


そしてアキトに殴りかかる。


しかし・・、



ガシ!



アキトはそれを手で簡単に受け止めた。



「てめー。」



男は激怒する。しかし・・・。




ボキボキボキボキ





いやな砕ける音がした。



「うぎゃー。」



手を抱えこんでのたうちまわる子分A。



その状況からこの男の拳がアキトに砕かれた事がわかる。



「おい大丈夫か○○。」



「野郎、よくも○○を!!。」




(何かが違う・・・・)



回りの不良どもが騒いでる中自分が乱暴されそうになってた事を忘れて呆然と思うカグヤ。



そう今のアキトは何か違う。


そう、気配が全然違うのだ。


今のアキトはアキトであってもアキトでない、そんな感じに・・・・・。



「てめーこれが見えねーのか!!!。」



そう叫んでカグヤの喉元にナイフを当てる不良のボス。


だがそれに反応しないアキト・・・・


彼の目は・・・・・・



(やべえ、目が逝ってやがる。ボコボコにしすぎたか・・・。)



(アキト様・・・・。)



(アキトさん・・・・)



そう、彼の目は何も見てないようだった。


俗に言う逝ってしまった目である。


そしてなにやらブツブツと呟いてるようでもある。


はっきり言って今のアキトの状態はドラックで逝ってしまった人間と大差ない。


アキトが普通の状態ではない事を読み取る3人。


回りの下っ端達もアキトの不気味な変化に気づきアキトから離れて遠巻きにアキトを囲んでいる





「てめーらさっさとそいつをとりおさえろ。」



「でも・・・・・・・・」





あきらかに動揺する子分たち。


それほどアキトに状態は普通でなかった。


誰だってえたいの知れないモノに手をだしたくない。


さらに○○の拳を破壊した謎の握力。


逝ってしまった、怪力野朗・・・・・だれだって近づきたくはない。




「てめーらここまで来て何寝ぼけた事言ってやがる。

 
 もう、俺たちには、後がねんだよ。この女に手を出してしまったからよ。」




この連中はカグヤをレイプしかけてしまったが為、後がない。


もはや残された手段はアキトをボコボコにし、人質にしてるカグヤとメグミを犯り尽くし、それを二人の弱みにして強請る。


それしか無いと男は思った。


この男の頭ではそれしか無いと思ってしまったのだ。


そう、子分達を嗾けた。


自分の汚い欲望のせいでカグヤをレイプしかけたために、こんの状況に追い込まれてしまった事をおくびにも出さずに・・・・・。



「こいつ、こいつはどうするんです。」



アキトに対して構えながら自分たちのボスに質問する子分B。



「へ、そいつは俺たちがこの女どもを犯ったあとに、そいつと女どもの特別なツーショット写真を撮ってやるのさ。」



特別なですか・・・・」



「そうすれば、こいつも俺たちの共犯者、同じ穴のムジナとなるのさ。」



子分の問いに気持ち悪い笑いでその問いに答える男。



その男の言葉の意味を正確に汲み取り、邪な笑いをする子分。






だが・・・・・・


アキトは呟いていた。


「同じ穴のムジナ、同じ穴のムジナ、同じ穴のムジナ、同じ穴のムジナ、同じ穴のムジナ・・・・・・」



と・・・・・。



「なにやら呟いてるようですよ・・・」



冷や汗をかきながらそう言う子分C。



やっぱり人間不気味な奴には近づきたくないものだ。



「それにさっきの・・・・・。」



そしてアキトが○○の拳を砕いた事をまだ気にしてるのだろうが。



「ばかやろー。

 
 こんな事もあろうかと用意してた道具を使えばいいだろうが!!!!。


 まったく、てめーらが手に持ってるモノはいったいなんだ 


 それにアイツはもう限界だ。

 
 立ってるのもやっとのはずだ、見ろあのふらふらした姿を。」




そう言ってふらふらしているアキトを指差す男。




その男の言葉に自分たちが持っているものを思い出す連中。


そして思い出す、


自分たちは有利なのだと。


自分たちの方が大人数なのだと。


自分たちは得物を持っているのだと。


そう、油断さえしなければ自分たちは痛い目をみないですむのだと。



そして男達は動きだした。



「「「「「「「「「「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」」」」」」」」」」




その目にはもう恐れはない。


目には恐怖の裏返しの歓喜があった。


自分たちを恐れさせてた存在を叩きのめせるのだと・・・・。





「・・・・・・・・・・・・・・・」



だがアキトはまだ呟き続けている。



そしてどんどん近づく下っ端達。



「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、・・・・」



「「「「「「「「「「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、死ねーーーーー!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」




下っ端達がアキトのそばに着いた。


これから凄惨なリンチが起こる。


まさにその時、



「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」





アキトの叫び声が轟く。


そして、




ズギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!





ブハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!






「「「「「「「「「「「「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァ」」」」」」」」」」」



「何!、のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」




当然起きた轟音ととも起きた疾風。


それに吹き飛ばされる下っ端連中。


そしてその一人がこの連中の一人が二人を人質に取っていた連中のボスに当たった。


手下の体当たりをくらいふっとぶ連中のボス。


カグヤ、メグミの二人の人質は金属製の細いパイプに手を縛られたままだったので事なきえた。


そして不気味な沈黙に包まれる廃工場・・・・・・。



その中ただたたずんでるアキト・・・・。


その光景を呆然と見つめるカグヤとメグミ・・・・・・。


まだアキトは正気にもどってないようだ・・・。


その証拠に目はまだ虚ろであった。


いや、〔あの出来事〕の時よりも酷くなっているような気がしてしまった。




そしてアキトをリンチしようとした連中は・・・・・・


皆、血を流して倒れていた。


まるで刀でばっさり切られたような傷跡が所々に存在している。


衝撃波はまるで疾風のようだった。


風と切り傷から連想されるもの、カマイタチでも起きたのだろうか。


しかし、カマイタチにしては傷が大きく深い・・・・・。





「く、くそう・・・。」



その時、連中のボスが気がついた。


どうやら吹っ飛ばされはしたが怪我はないようだ。


アキトの傍から吹っ飛ばされた子分の連中のように刀傷のような切り傷はない。


まあ、コイツの傍にいたカグヤとメグミにも傷がないだから当たり前と言えば当たり前だが・・・・・


しかし何故・・・・・。




そして、アキトは気づいた。



憎むべき、蔑むべき、そして自分が否定しないとならない存在に・・・。










アキトは近づく、ゆっくりと、確実に、その存在に・・・・。






「ヒ、ヒ、ヒ、ヒーーーーーーーーーーー」



逃げようとする、男。


この男も不良グループの頭になった男だ、それなりに修羅場は経験している。


それ故にこの男にもそれなりの力、精神、知能、運があった。


しかし、権力に溺れたモノは精神を衰亡させる。


精神だけでなくそれ以外のモノも衰亡させる。


このような不良グループにだって権力は存在する。


子分からの上納金。


子分をつかって王様気分を味わえる。


また喧嘩も子分を使って・・・・・・・エトセトラ、エトセトラ・・・・・


頭になって安全な場所から見物している内に以前はあった反骨精神は完全に萎えてしまっていた。




「来るな、来るな!!!!!!。」



後ずさりながら逃げようとする男、だがさっきの衝撃で腰を打ったのか立ち上がることは出来ない。


だがコイツが立てないのは精神的なモノがるかもしれない。


何故ならその表情にはさっきまであった傲慢なサディスティックなものは無い。


あるのは純粋に恐怖だけである。


さっきまでの絶対的な有利な立場から一気に窮地に追い込まれたのである。


それで醜態を見せるなという方が無理がある。


また男の精神は恐怖で完全に混乱していた。


また、男が恐怖するのはアキトの雰囲気から来たものだろう。







アキトの状態は正に幽鬼と言ってよいものである。


目は相変わらず逝って・・・・・・いなかった!!!!!。


いつのまにか正気に戻ったのだろうか?


否、その目はとてもじゃないが正気とは言えない。


その目には恐ろしい事に感情がなかった。


怒りに我を忘れてるとは到底思えない。


だが、マトモな意識があるとも思えない。


そんな目である。


言うなら職業的殺人者の目・・・・・。


人をモノとの区別をつけない。


そんな目だ。


そんな冷たい目で見られるくらいならさっきの逝った目で見られる方がまだマシだろう。



アキトは歩いている。


それもたんたんと・・・・・・。


それがさらなる恐怖を誘った。



「来るな、来るな、来るな・・・・・・・・」



後ずさり続ける男だが、


ドン


とうとう壁に背中をぶつける。



そしてついに・・・・・・・、アキトは男の前に立った。


アキトは見下ろしていた。



「同じ穴のムジナだと・・・・・・・・」



アキトは男に対して言った。


その口調は淡々としたものである。


まるで事実を確認するだけだ、という感じに・・・・・。



「お前が俺といっしょだと・・・」



ん?



「しょせん俺はお前が同じだと・・・・」


ん、ん?


おかしい?どうい事だ?



「俺が貴様と同じ存在だと・・・・・」



おかしい、おかしい?


たしかにコイツはアキトに対して「同じ穴のムジナ]とは言った


だがそれ以降の言葉は言ってない。


どういう事だ?


記憶が混乱しているのか?


だとしたら、以前そのような言葉を言われた事があるのか?



「貴様と俺は・・・・」



そしてアキトは足を振り上げ・・・


「俺と貴様は・・・・・」


その足を・・・・・


「違う!!!」


振り落とした。


グシャ!!




「ウガガガ〜」


その足が男の膝を直撃する。



その痛みに悲鳴にならない悲鳴を上げる男。


また、非常に鈍い音がした。


どうやら膝を砕いてしまったようだ・・・・。



「アキト様!!!!」



そのアキトの行為に悲鳴を上げるカグヤ。


それはあたりまえだ。


武術でも喧嘩でもなんでもそうだが、膝関節への打撃攻撃などは基本的に禁じ手である。


何故なら膝を折られると、一生足を引きずって生きて行くことになるからだ。


今は整形外科が発達したから治る可能性もあるが、それでも五分五分。


不良などが相手の顎を折るという行為がある。


無論それは非難さられるべき行為だろう。 


だが顎を折られるなんていうのはクセにはなるかも知れないが、別に一生障害者として生きていくなんてことはない。


早い話、アキトの行為は暴挙以外のなにモノでもない。












それを表情一つ変えず実行するアキト・・・・・・・・・



「ウギャ!、ウリャ!、ウグ!」



痛さでのたうち回る男・・・・


そこへ・・・アキトが・・・・・



「いっしょだと・・・」




バキ!!!




「アギャ!!!!!」




「いっしょだと・・・・」




グショ!!




「ノガ!!!!」




「いっしょだと・・・・」




ダガ!!




「アギョワ!!!!」





「いっしょだと・・・・」




ズガ!!!




「ンギョ!!!!」




呟くたびに拳をいれ、蹴りを入れる。


拳も足も血で染まっている・・・・。


相手には・・・・



「いっしょだと・・」




バコ!!!




「ノゴ!!!」





「いっしょだと・・・」




ギコ!!!




「ウガ!」




「いっしょだと・・・」





ドカ!!!




「・・・・・」





とうとう相手は意識を失ってしまったのか?。


となると・・・・・相手は非常に危険な状態であるという事だ!!!。


この男だって酷い事をしてきた。


自業自得の側面はたしかにある。





だがアキトのやってる行為は絶対的強者による弱者のいたぶり・・・いやそのレベルを超えようとしている。




「やめて!!!、アキト様!!!!」



思わず叫ぶカグヤ。


さっきまで自分に乱暴しようとしていた男の為に叫ぶカグヤ。


だが、そんな事を言ってる場合ではない。


このままでは相手が危ない!!。


アキトが殺人者になってしまう!!。


その事がカグヤを必死にさせていた。



「桐島さん!!!」



「綾瀬さん?」



何時の間にか隣にメグミが立ってることに驚くカグヤ。


どうやって縄の締めを解いたのだろうか?



実はメグミは男が傍から居なくなってある事をしていた。


それは隠し剃刀で手のロープを切っていたのである。


どこに隠していたかと言うと付け爪の中。


だったら何故動かなかったと言えばチャンスを狙っていたからである。


メグミもカグヤもなにかしないか見張られていた。


それ故にメグミは慎重にならざるえなかった。


捕まってる時やアキトがボコボコにされてる時は、常に見張られてたが故迂闊なまねが出来なかったからだ。


さすがにカグヤが暴行を受けようとしたその時さすがに焦り、行動に移ろうとした。


しかし、このような惨劇が起きてしまった。


またメグミもアキトが行っている事が非常にやばいレベルに達している事に気づき急いで縄を切ったのだ。


幸い縄と言ってもビニール製だったが為に、隠し剃刀で簡単に切る事が出来た。





「綾瀬さん・・・」



「早くアキトさんを止めないと!!!」





カグヤの縛めを解きそう言うメグミ。


メグミがカグヤを助けたのは、アキトを止める為でもあるのだ。


とてもじゃないがメグミは一人でアキトを止める自信はない。


それどころか止める算段すらついてない。


となると学園内二番目の剣の使い手と呼ばれるカグヤの力を借りるしかない。




「解っているわ・・・」



頷くカグヤ。


彼女もメグミの意思を理解したようだ。




「アキト様!!!」



「アキトさん!!!」




急いでアキトに近づく二人。


意識が無くなった相手に対して拳をふりあげるアキト。


アキトはまさに相手に止めをさそうしている。


そのように見えてしまう。



ガシ!!!


だがその腕はかろうじて止まった。


カグヤとメグミがアキトに抱きついたのだ。



「アキト様、いい加減にしてくだい!!!!。」



「アキトさんこれは酷すぎます!!!!。」



必死の表情で止めに入る二人・・・・


だが・・・・・



アキトが振り向く・・・・


その表情に驚愕する二人・・・。




その表情はよくある拒絶のようなものではない。


サディストの歓喜の表情でもない・・・。


またさっきのような職業的殺人者の目でもない。





一言で言うなら




そしてただ悲しみ・・・・・憤り・・・・疲れ・・・・・欲求・・・・・そして絶望・・・・






そうまさに悲しみ、そして絶望








いったいアキトは


何について悲しんでいるいるのか?


何に対して憤っているのか?


何に対して疲れているのか?


何を欲しているのか?





そして何に対して絶望しているのか?









カグヤもメグミもそんな人間の表情を見た事がない。


いったいアキトに何があったのだろうか・・・・・。


ただアキトを見つめるだけの二人・・・・


それは危ない甘い蜜。


一度見たら心から離れる事はない。


それがどれほど危険であっても・・・・


そう食虫植物に入る虫のように・・・・


それほど強烈な闇をアキトは放っていた・・・・・・


もはやカグヤとメグミはそれを見つめることしか出来なかった。




そして唇を動かすアキト。



その言葉は・・・・・




「こんどは・・・・守れた・・・・のか・・・・・・・・・。」


であった。


その言葉を言って心底安堵した表情を浮かべるアキト。


そして・・・・




バタ!!





「!、アキト様!!!」




「アキトさん!!!!!」




そして糸が切れた操り人形のように倒れるアキト。



それで我に帰り、急いでアキトに駆け寄る少女達・・・・。


それが終わりの光景であった。














ただここに居る人間は誰一人気づかなかった。


そこに金色の蝶がいた事を・・・・・・・それが人知れず飛び立った事を・・・・








(Cパートへ続く)

 

 

代理人の感想

・・・・つまり、黒アキトが乗り移った?

それともそう言う過去があったのか・・・わからないなぁ。