＜あの刻、あの場所で＞

アキトさんの一言で大混乱するユリカさん

煩いですよ？

もう、アキトさんは私の騎士なんですからさっさと諦めてください！

そんなブリッジを見つめながらアキトさんは呟きました


『ただいま、ナデシコ…』


と、ただ一言だけ…

四章　『俺は見た！神の世界を！！』

「お帰りなさい、アキトさん。」


「おかえり、アキト。」


戦闘が終わって自分の部屋に戻った俺をルリちゃんとラピスが笑顔で迎えてくれた


「ただいま、ルリちゃん、ラピス。」


よかった、まだユリカは来てないみたいだ


「アキトさん、どうですか？ブラックサレナの性能は？」


「う〜ん…まだまだだね。

アレをブラックサレナと呼ぶにはまだまだ性能が低いよ。

まだ、俺の全力に全然ついてこないし…。」


「でもアキト、あのサレナでもスーパーエステバリス並みの性能なんだよ？」


「ま、技術は段階的にしか上がらないし、仕方ないかな。」









しばらくして俺の部屋に誰かが訪ねて来た


「アキト、誰か来たみたいだよ？」


やっぱり来たか…ユリカ

あれだけハッキリ言ったのにまだ俺に自分の王子様を重ねるか？

まあ、それでこそミスマル・ユリカなんだが…

大騒ぎになる事に溜息をつけながら俺は扉を開けた

……が、其処には俺の予想に反してゴートさんが立っていた


「テンカワ、少しいいか？」


ゴートさんが俺に訊ねてくる

ゴートさんが俺に用？…まさか！！


「ナデシコ内で何かあったんですか！？」


まさか、もうムネタケの叛乱が！？


「いや、個人的な話だ。入っていいか？」


「は、はぁ…。」


個人的な話？ゴートさんが俺に？一体なんなんだ？

自慢じゃないが俺とゴートさんの共通の会話なんて諜報関係のことしか思いつかないぞ？


「おお！ルリ君にラピス君も一緒か丁度いい！ふふふ、これで私の評価値も急上昇だ！！」


？なんだ？ゴートさん何か言ったのか？？









「で、何の話っスか？」


「テンカワ…」


神妙な面持ちで話し始めるゴートさん

ゴートさんがこんな顔するなんてよほどの事なんだろうか？


「テンカワ、お前は神を信じるか？」


「「「………………………はい？」」」


「そう！半年前、俺は見た！神の世界を！！

諜報戦でミスをしてしまい死の淵に追いやられた

だがその時！俺は戦乙女ヴァルキリーの導きで

ヴァルハラに逝ったのだ！そう！その時！

俺は神の為に戦う戦士、エインフェリアとなったのだ！！」


呆然とする俺たちを他所にゴートさんは話を続けていく


「我が主神オーディン様は俺にこう仰った！！

『ラグナロクに備え、多くの勇者の魂を集めよ！』…と！」


この人はいったいどうしてしまったんだ！？


「テンカワ！お前には類稀なるエインフェリアの資質がある！

どうだ？俺と一緒に神の為に戦わないか！？」


ヤバイ…この人はかなり危険だ！

ある意味、北辰よりも…


「ふふ、テンカワあまり信じていないようだな。

だが安心しろ！既にこのナデシコには我が同士がいる！！

その名はムネタケ・サダアキ！

ナデシコが発進してからすぐに神の世界に連れて逝ったのだ！

そして、あの漢もまたエインフェリアとなったのだ！！」


ゴートさんの演説を聞き終わる前に

俺はルリちゃんとラピスを抱えて逃げた


ゴートさん…辛い事でも会ったんですか？相談してくれれば良かったのに…

俺は自分の持つ身体能力の全てを使って部屋を抜け出した俺は

ブリッジの近くで二人を降ろした


「アキトさん…ゴートさん、一体どうしてしまったんでしょうか？」


「アキト、ゴートさんってあんな人だったの？」


二人が俺に訊ねてくる


「解からない…『前回』とは全く違うキャラクターになってしまってたけど…

とりあえず、プロスさんに事情を聞こう。」


俺たちはプロスさんの部屋に向かった









「おや？どうかなされましたか？」


自室でお茶をすすっているプロスさん


「あの……ゴートさんの事なんですけど…。」


その言葉を聞いた途端、プロスさんはお茶を吹き出した


「か、彼がどうかしたんですか（汗）？」


「い、いえ、さっき俺の部屋に来て『俺は神の世界を見た！』

とか『エインフェリアとなったのだ！』とか言ってたんですけど…。」


俺の言葉に思いっきり顔を引きつらせるプロスさん


「実は彼、半年ほど前に諜報活動の最中にミスをしまして

意識不明も状態にまで陥ったんですよ。かなりの怪我をしていましてね

ナデシコ出航には間に合わないと思ったんですが…意識を取り戻してからは

驚異的な回復を見せてわずか一ヶ月で回復してしまったんですよ。

彼によるとそれは『我が神のご加護だ』との事ですし…

まあ、作戦行動に支障が出るわけではありませんし今まで黙認していた、

と言うことなんですよ（汗）」


「だ、大丈夫なんですか？」


「おそらくは…（汗）」


「ま、まあゴートさんもナデシコクルーだった、という事ですか…。」


ル、ルリちゃん、確かにその通りだけどね…


『能力は一流でも性格･素性に問題あり』だからね、ナデシコは…


「アカツキは知ってるんですか？」


「ええ、会長もエリナさんも勧誘されたといってました。」


「「「「……………………………………」」」」


「ま、まあ、注意しておきますので…。」


「お、お願いします…。」

俺はこの時、ゴートさんを戦力に数えない方がいいと心底思った


そんなことでナデシコは（一部を除いて）順調に航行していた

何か『前回』と微妙に変化している気がするが…気にしないでおこう！

きっと気のせいだ！気のせいだと…思いたい（汗）

でも……こんな事で大丈夫なのか？俺たち？

つづく

あとがき

ゴートの壊れ度大幅ＵＰ！（笑）

本当に神の戦士になってしまいました（爆笑）

彼はナデシコにいる不死者のあの男との戦いが待っている事でしょう（核爆）