第十四話 Bパート
【通路:ハルカ・ミナト】
侵入者の彼、白鳥九十九って言ったかな。
彼が銃を構えたアカツキ君に連行されている。
それを通路の端から隠れ見ている私。
何でか、彼の事が気になるのよね。
出会いが強烈だったせいかしら。
……あ、あれは事故だったんだから、気にする必要無いわよね。
気持ちを切り替えようとして頭を振ったら、向こうの通路の陰にイズミが隠れているのが目に入った。
何してるんだろ、彼女?
そう思った時、彼女はアカツキ君の背後に忍び寄り、彼を殴り倒したのだ。
「あなた、この男を知っている?」
その驚きが薄れる間も無く、いきなり写真を白鳥君に突きつけるイズミ。
「な、何だと? 私に地球の知り合いなど居るはずが……これは、元一朗?!」
イズミが持つ写真を見た彼が、驚きの表情を浮かべた。
彼の表情と言葉を見聞きしたイズミは、何やらニヤリと笑みを浮かべた。
「そう、そうなのね。あなた、あの人を知っているのね。
……くくくくくく……見つけたわ。あの人の手がかりを……。
ふふふふふ……あはははははは………」
その笑みがだんだん大きくなり、とうとう彼女は高笑いし始めた。
……何なのよ。普段の駄洒落ばっかり言ってるのとは別人みたいだわ。
「な、何故お前が月臣を知っている?」
彼の質問にイズミは答えず、こんな発言をしてのけた。
「私を月臣さんの故郷に連れて行きなさい」
彼女のその発言は、彼にとってますます驚愕の展開みたい。
……私も驚いてるけど。
開いた口がふさがらないほど驚いた顔っていうのはああいうのかと思いつつ、これからどうなるのか、見守る私。
「……っと、ええい! お前と元一朗はどういう関係だ?!」
数秒後、戻ってきた彼はイズミに向かって叫ぶ。でもイズミの答は。
「理由を言う必要はないわね。
あなたは私を人質にすれば、ここから脱出できるのだから、悪い取引じゃないでしょう?」
イズミがそう言うのを聞いて、私もついその場に姿を現した。
「その人を助けるの、私も手伝うわ」
「あ、あなたは……? さきほどはどうも」
「そんな事はもういいんだってば。なんか照れちゃうわね」
生真面目に頭を下げる彼をみて、何かこそばゆい感じがして、こちらも頭を下げてしまう。
と、横のイズミがニヤケた顔でこんな台詞を言った。
「今の状況と掛けて流行り歌の連奏と説く。その心は。
ヒットメドレー……ひっとめおれー……ひとめぼれ……くくく」
「「な?!」」
「ちょっ、何言ってるのよ?!」
「そうでもなきゃ、こんな事手助けしようなんて言わないわ」
ニヤケていたイズミの表情が、そう言った後、優しげになった。
「別にいいわよ。私も似たような物だし」
「ええっ?」
それを聞いて驚く私。
じゃあ、さっきの写真の人とイズミの関係って、恋愛の関係なの?
……振られた男でも追いかけてるのかしら?
「さ、行くわよ。ぐずぐずしない」
でも、それを聞く前に、イズミは行動を始めてしまった。
「え、ええ、そうね」
とりあえず白鳥君の事もあるし、それは後回し。
ま、乗りかかった船だし、そのうちわかるわよね。
【通路:アカツキ・ナガレ】
彼女らが去っていくのを見届け、僕は体を起こした。
まったく、イズミ君、いきなり後ろから一撃なんて、ひどくないかい。
僕の立場からすれば、彼の存在が今の時点で公になるのは拙いんだから、協力してあげない事もなかったのに。
まあ、こっちの方が手っ取り早いのもわかるけど。
代わりに君達の意外な一面見せてもらったから、チャラにしておくけどさ。
でも、彼女たちが、あんな行動に出るなんて。
この艦の人間は、なんか皆、色恋沙汰が好きだよね。
……でもそういうの、僕も嫌いじゃなかったようだ。
おっと、参ったね。この艦にいると、なんか調子が狂うよ。
さて、彼女達が彼と一緒に木連に行くなら、艦長達は救出したがるはずだね。
どうやるのかな? できる事なら、敵の目をできるだけ引き付ける様な行動だといいんだけどねぇ。
これから色々と面白くなってきたよ。
【ゆめみづき艦橋:高杉三郎太】
「新たな任務です、月臣少佐」
本隊から届いた任務は、月で建造されている新型相転移炉式戦艦の破壊だった。
「そうか、地球人は、またもその様な物を作っているのか」
月臣少佐は任務の内容を聞くと、なにやら考え込んでしまった。
少佐は厳しい人では会ったが、優しさも、男気もある人だった。
だが、先日の出撃、地球拠点の破壊任務を行ってから様子が少し変わってしまった。
なにかに迷っているような、吹っ切ろうとして吹っ切れていないような、そんな雰囲気だ。
自身の事を「私」から「俺」と呼ぶ様になったのも、そのためだろうか。
白鳥少佐が行方不明になった事も、影響しているのかもしれない。
少々心配に思いつつも、報告を続ける。
「報告がもう一つあります。増援の部隊がやってくるそうです。専用機体の調整のための様ですが」
「それは誰だ? アララギか?」
「そ、それが……」
正直言って、このような相手はやってきて欲しくないといえる種類の人間である。
「何だと、つまり草壁閣下は潜入破壊活動や暗殺も辞さないという事か。
それで、こちらが正義といえるのだろうか?」
二つ目の報告を聞き、ますます考え込んでしまった月臣少佐。
「なあ高杉。俺達木連の人間は、娯楽といえばゲキガンガーだったが、他の物も見るべきだったとは思わんか?
たとえば漫談とか、せめて駄洒落とか……?」
「はぁ?」
考え込んでいた月臣少佐からそんな言葉が発せられ、思わず聞き返した自分。
「いや、何でもない、忘れてくれ」
軽く腕を振る月臣少佐。
そのまま、気合の入った声で命令を下した。
「新型相転移炉式戦艦の破壊のため、ダイマジンで出る!」
【ネルガル月ドック:テンカワ・ラズリ】
ナデシコ、早く来ないかなぁ。
ドックで建造中のシャクヤクを見ながら、ボクはそんな事を思った。
ここではボク、遊んでいるのも何なので、とりあえずシャクヤクのメインコンピュータや月面フレームの調整を手伝っている。
でも、ナデシコの方大丈夫かな……。
此処にこんなに長居する予定じゃなかったから。
予定だったらイヤリングのCCで往復するつもりだったのに、月臣さんたちのせいで使い切っちゃってここで足止め。
とりあえず何かあったら連絡くれるようにオモイカネに頼んでおいたけど。
白鳥さん、大丈夫かな。
提督は木連の事知っているはずだし、ユリカ艦長が、彼にひどい事する訳無いよね……。
……いざとなれば、奴は犠牲になったとしても仕方ないな。
白鳥さんの処遇がどうなるか考えていた時、こんな思考が頭をよぎった。
くっ、余裕が無くなってきたせいか? こんな事考えるなんて。
ラピスとここで会ったせいで、ボクの正体の可能性が絞り込まれてきたせいもあるんだろうけど。
「ラズ姉ーー」
ラピスの事に考えが及んだとき、ボクを呼ぶ声がした。
向こうからラピスがとてとてとやってくる。
「「あ」」
何かに躓き、いきなり転びそうになったラピスを慌てて抱きとめる。
「ラピス、だいじょうぶ?」
「うん……ありがと、ラズ姉」
抱きとめたラピスが、照れた様な笑顔を浮かべて答えた。
「あはは、よかった」
そのままボクはちょうど胸元にある彼女の頭を撫でてあげる。
ラピスは目を細めて嬉しがっている。
うーん、子猫みたいで可愛いな。
その時、撫でている手のIFSが目に入った。
「ねぇ、ラピス、あまり思い出したくないだろうけど、もう一度聞かせてくれる?
ラピスの体は、この時間のものなんだよね」
「うん、そう思う。「アキト」と出会った時よりも私小さいし、あの研究所でも、私の体については何も気にしてなかったもの」
つまりラピスは「記憶」のみが逆行してきているんだ。
リンクシステムとボソンジャンプが組み合わさったら、「記憶」つまり「情報」だけを過去の人間に送る事はできるんじゃないか。
「アキト」と「ラピス」の関係や、火星の後継者が「ユリカ」さんにジャンプイメージを送った事とか、少なくともあの「記憶麻雀」の様に、ナノマシンによって人間同士で「情報」の移動は可能なんだから。
それなら、ボクにも、そしてアキトにも「アキト」の「記憶」が有る様なのが説明できそうだ。
どちらがマスターなのか、両方コピーなのかはわからないけど。
次に、「記憶」を保持していた「肉体」はどうなったのか?
その答えの一つがこのオペレータ用IFSなんじゃないか。
でも、ボクの体はラピスのそれだけじゃない。
ラピスの背中に回していた右手を持ち上げ、髪の毛に触れる。
パイロット用IFSと、腰まで伸びた黒髪。
そして、ボクの中にある、「あの男」の記憶。
……何か、鍵が欠けているような気がする。
結局、ランダムジャンプが起きた状況がわからないから、答えが出ない。
でも「あの男」も絡んでいるはずの状況だから、下手をしたら木連に潜入する必要まであるかもしれない。
だけど、ここまでの推測が正しいとしたら。
ボクがいつも考えている疑問、その答えは……。
「ラズ姉、どうしたの?」
ラピスの呼びかける声で、ボクは我に帰った。
「何だかラズ姉、何処かへ行っちゃいそうだった。私、ラズ姉にも、何処か行って欲しくない」
ボクを見上げるラピスの顔は、心細そうに、寂しそうに見えた。
「大丈夫だよ、安心して」
だからボクは、ぽんぽんと彼女の頭を軽く叩きつつ答える。
「……うん」
安心した表情になり頷くラピス。
と、そのせいかラピスのお腹が、くう、と音を立てた。
「……あ」
「あはは、仕事の後だし、お腹がすいたんだね。じゃあボクが腕によりをかけてご馳走しちゃうから」
「ラズ姉の料理は、とても美味しいから好き」
「ありがと、ラピス。じゃ、行こうか……って、そこに居るのはハーリー君?」
通路の角から、黒いツンツン髪が覗いている。
「こーら、女の子同士の会話を覗くなんて、趣味悪いぞ」
「えっ、いいえ、そんな事するつもり無かったんです。ただ、聞きたい事があっただけで」
と、ハーリー君が何か落ち込んでいるみたいなのに気づいた。
「どしたのハーリー君? 何かあった?」
「い、いいえ別に……」
「ハーリー、今日私とシステム構築の競争をして負けたから」
二人とも、ここではシャクヤクのメインコンピュータの設定をしている。
「……そ、そう」
微妙に自慢げなラピスと落ち込み気味なハーリー君を見比べて、どう言っておくべきか悩むボク。
(ラピス、経験の差が有るんだから、あんまり意地悪しちゃ駄目でしょ)
(だって、ハーリーの方からやろうって言ってきたんだもの。それに、勝負に手は抜けないよ)
ハーリー君男の子だから、いい所見せたいとでも思ったのかなぁ。
でも、ラピスはユーチャリス時代にかなり経験積んでるし、失敗したらまずい事ばかりやってたから手加減って言葉知らないみたい。
まぁ、実際の仕事中に手を抜いていたとハーリー君に気づかれるよりましだから、ラピスの方は置いておくとして。
「ハーリー君、ちょっと負けたぐらいで落ち込まないの。良い経験になったでしょ?」
「そ、そんな、僕、落ち込んでなんか居ません!」
「うそうそ、見てればわかるもの」
誤魔化そうとするハーリー君に、言葉を掛ける。
「負けたその気持ちを知っておくの、悪い事じゃないよ。
ハーリー君は、他人の作ったプログラムに攻撃を仕掛けたりもするんだから、そこら辺、ちゃんと理解して置いた方が良いよ。
そうしたら、だんだん、負けないようになってくからね」
「……は、はい」
しゅんとしたハーリー君を見て、少しからかってみたくなって、こう付け加える。
「それに、ハーリー君、ボクにだってまだ一回も勝ってないじゃない。まだまだ修行が足りないよ」
「うわーーーーーん、ラズリさんの馬鹿ーーーー!」
涙目で走り去って行くハーリー君。
あはは、参ったね。
「ハーリー、どうしたの?」
「男の子には色々あるの。だからラピスもあんまりいぢめちゃ駄目だよ」
「……うん、そうする」
こくりと頷くラピスの頭を撫でてあげようとした時、建物が揺れた。
な、攻撃?!
これはもしかして、「記憶」と同様に、月臣さんが攻撃にやってきたんだろうか。
状況を聞こうと通信を繋げようとした時、ネルガル社員の人が息を切らせて向こうから走ってきた。
「君、新型の月面フレームで、迎撃に出てくれないか。
木星蜥蜴が、ここを狙っている。敵は大型の機動兵器で、守備隊だけでは相手出来そうに無いんだ」
やっぱり、そうなんだ。だとすると目的はシャクヤクだから。
「あれ、動かないんですか」
シャクヤクを指さす。
「艤装がまだ完全じゃないはずだから、今すぐ動かす事は……。」
(大丈夫。あれ、動かせる)
手を繋いでいるラピスからのリンクが伝わる。
それを聞いてボクはネルガル社員に頼んだ。
「動かすだけなら何とかなります。だからラピスをシャクヤクに連れていって」
「何だって?」
「責任なら、ナデシコに乗ってる会長秘書さんが何とかしてくれます。だから早く。あれ、壊されたいんですか?!」
「わ、わかった。だが、君も迎撃には出てくれるか」
【月面フレーム:テンカワ・ラズリ】
月面フレームで出撃したボクは、ダイマジンと対面していた。
このロボット、「記憶」通りなら月臣元一朗さんが乗っているはず。
「ちょっと、そのゲキガンロボの乗組員、返事しなさい!」
「お、女だと!」
通信に出たパイロットは総髪の男性。
やっぱり、月臣さんだ。
よし、説得してみよう。
「貴方自分が何やってるのかわかってるんですか!」
「何だと?」
「このコロニーには民間人の女子供も沢山居るんですよ! そこを攻撃なんて卑怯な事、ゲキガンガーだって許さないと思います!!」
「貴様ら地球人がゲキガンガーを語るな!! それに、俺の目的は新型の相転移炉式戦艦だけだ!」
う、説得失敗?!
せめて周りに被害が出ないようにしないと。
「そんな事させない! やるならボクを倒してからにしなさい!」
「よかろう! 勝負だ!」
それっぽい台詞を言ったら思った通り乗ってきた。
だんだんと戦闘場所をドックから離していく。
……決闘とか、好きじゃないけど、今はやらなくちゃ。
ボクが心を決めたその時、ゲキガンロボの頭部が、こちらに飛んでくるのが見えた。
「……ザザ……聞こえ……返事をしろ……。
そこのダイマジン、……えるか……こちらは木連優人部隊……白鳥九十九少佐……」
「九十九か?! 生きていたんだな! 俺だ、元一朗だ!」
頭部からの通信に、驚きの声を上げつつ呼びかける月臣さん。
「……元一朗か! 助かった! こちらには民間人の女性が二名乗っている。援護を頼む」
「民間人の女性だと? どういう事だ?!」
白鳥さん、ナデシコから脱出してきたんだ。
でも、二人の女性って。やっぱり「記憶」と同じ様にミナトさんとメグミさんかな?
そう思った瞬間。
「月臣さん! 月臣さんですね?! また会えるなんて、貴方が生きているなんて! 私、嬉しいです!!」
胸の前で手を組み、瞳を潤ませたイズミさんが大写しになった。
…………。
えーっと。
どうしてイズミさんが居るのかな?
しかもその何処かのお嬢さまみたいな雰囲気は一体……?
確かにイズミさんは長くて綺麗な黒髪だし、ちょっと垂れ目だけど顔そのものは美人だと思うけどさ。
纏う雰囲気と、何かというと出てくる駄洒落とかで、台無しにしている人だった訳で。
双子の姉妹とか、二重人格とかじゃないよね。
「ま、まさか?! 本当に、イズミさんなんですか?!」
「ええ、私です。でも、まさかこんな所で会えるなんて!
これは、「美味しい料理を食べた時の声」ですね」
「それはいったい?」
「それは……うんめぇ……運命……くくくっ」
……………………。
あー、やっぱりこの人イズミさんだぁ。
そのお嬢さま然とした雰囲気から繰り出された駄洒落に、ボクだけじゃなく、皆固まってしまう。
「……くくくくく、ははははは、あっはっはっはっは!」
って、月臣さんは爆笑してるし。
「本当に、イズミさんなんですね。もう、会う事は無いと思っていたのに」
発作を起こした様に笑っていた月臣さんが、いきなりその笑いを止め、しばらくイズミさんを見つめた。
その表情は何かを思い返している様で。
数秒の後、彼は何かを決意したように頷くと、白鳥さんに向かって叫んだ。
「この空域から離脱する! 九十九、お前はイズミさんを丁重に扱えよ!」
「あ、ああ。木連男児として女性は敬うべきものだからな。
だが元一朗、お前とこの女性の関係は一体……」
そんな事を言い合いつつ二機は退却していった。
……あ、イズミさんとミナトさん、連れて行かれちゃった。
どうしようかと思った時、戦艦が一隻こちらにやってくる。
シャクヤク、壊されなかったんだね。良かった。
ラピスからの通信が入る。
「ラズ姉、シャクヤク、準備できた。この艦、ラズ姉の命令で動かせる様にしたから」
つまりそれって、ボクがシャクヤクの艦長って事?
じゃあ、シャクヤクで追いかける?
でも、ネルガルに黙ってシャクヤク(しかもYユニット付き)を乗り逃げしちゃう訳にも……。
というかラピス、ここまでシャクヤクを動かしてきちゃうなんて、結構無茶するね。
ドックが潰れて下敷きにならない様、退避させるだけで良かったのに。
ボクの事が心配だったのかな?
まぁともかく、あの様子じゃ二人の安全は確保されているみたいだし。
あっちは何とかなる、かな。
「ラピス、着艦するよ」
「了解、ラズ姉」
【シャクヤクブリッジ:テンカワ・ラズリ】
「はいはい、ラズリですー!」
ナデシコからの通信に出ると同時にエリナさんの叫び声が飛び込んできた。
「ちょっと! 何でシャクヤクが動いてるの!! あれはコンピューターの調整が終わってないんだから動く訳ないのよ!!」
「マシンチャイルドが三人もいればそのくらい何とか出来ますよ」
本当は、ラピスがユーチャリスがらみの「記憶」を持ってたから、それも使って動かしたんだけどね。
「でもこの艦凄いですね。やろうと思えば一人だけでこの艦動かせそうですよ」
ボクの言葉にエリナさんは自慢げな表情になり、答える。
「それは当然よ、シャクヤクはワンマンオペレーションシップのプロトタイプなんだから」
なるほど、ユーチャリスとかの原型なのか。
「ラズリちゃん、今三人って言ったけど、それって?」
自慢げなエリナさんの横で、ユリカ艦長がさっきの言葉を疑問に思ったらしく聞いてきた。
「紹介します。ラピス・ラズリにマキビ・ハリ君です」
「……はじめまして……」
「よろしくお願いします! ハーリーって呼んで下さい!!」
二人の返事に少しびっくりした様な表情をするユリカ艦長。
「何か、対照的な子達だね」
「あはは、そうですね。でも二人ともとってもいい子達ですよ」
せっかく二人を紹介するんだからちゃんと誉めとかないとね。
大事なボクの兄妹達だから。
【ナデシコブリッジ:ホシノ・ルリ】
ネルガルの月ドックが攻撃されているとの報告を受け、慌ててやって来た私達。
途中であの木連の人が逃げ出していたりして大変でした。
なのに、私達が着いた時には敵は退散した後で、しかもナデシコ級戦艦がお出迎えでした。
その上、それに乗っていたのはラズリさん。
「それでつまり、ラズリちゃんがそこにいるって事は……?」
「はい、ですから……」
艦長の質問に、嬉しそうな顔になる彼女。
「テンカワ・ラズリはこのシャクヤクの艦長さんなんです。ぶい!!」
「「「「「「ぶいぃ?!」」」」」」
何だかラズリさん、行動が艦長みたいです。
艦長の行動は艦長だからだと思ってましたけど、もしかしてナデシコ級の艦長になるとそうなるんでしょうか。
私はナデシコ級の艦長にはなりたくないですね……。
【後書き:筆者】
第十四話Bパートです。
ちょっと時間がかかってしまったかもしれないですね。
Aパートを投稿した後、分けたせいか色々と修正したい事が出てきてしまったので。
さて、いきなりですが、外伝2で使ったネタ「マリみて」こと「マリア様がみてる」、あれをナデSSを読むような人が知っているとは思わなかったです。
嬉しかったんで、ナデキャラで「マリみて」、「マルス様がみてる」(笑)とか書いてみようかと思っちゃいました。
話を進めたほうが読者は嬉しいと思ったので止めましたけど。
つーか、このせいでイズミがこんなまっしぐらな人になっちゃったんですよね。
ああ、「マリみて」はカトリックの女子高を舞台にした小説なんですけど、私の話が気に入った人なら読んで損は無いと思います。
それはそれとして、今回の話です。
ラピスとハーリー君、登場ですね。
ラズリにラピスがやたら懐いてたりしますが、そこら辺は次回以降に。
でも、ラピスはともかく、ハーリーはノーマルハーリー(小ハーリーと言うんでしたっけ?)なんでまだあまり役に立たないような気が。
きっと、事有る事にラピスなんかにいぢめられるだけのような。
……ま、ハーリーだし、いいか(笑)。
女の子の成長に、弟とか後輩とかは欠かせない物ですし、弟は姉からの被害を避けようとする事で成長するものですし(苦笑)。
あ、後、シャクヤクとユーチャリスの関係とかは私の推測です。
シャクヤクの設定、あまり見つからなかったんで。
それで、シャクヤクはYユニット装備艦で、Yユニットには、大きなレドームと中枢コンピュータ「サルタヒコ」、相転移エンジンが載っているから。
シャクヤク≒戦闘力(防御力や電子戦能力含む)高めのナデシコB≒ユーチャリスって感じで。(戦闘力高目なのは戦争中だから)
カキツバタが武器が多くて攻撃力があるなら、シャクヤクは守備系かな、という気もしてますけど。
でも、味方の戦力増えすぎですね……どうしましょ。
けど、戦力ってのは増やすのは大変でも、減るのはすぐですし、何とかなりますよね(苦笑)。
それでは。
代理人の感想
やー、でも姉が余りに元気すぎると弟はねじくれて育ってしまうものですよ。
何せ実例を一人・・・・げふんげふん。
まぁ、ラズリという優しい長女がいればどうにかバランスは取れると思いますが。
ただ、一人の男の子としてハーリー君が成長する話ってのは中々貴重(というか希少)なので
そう言うのも見てみたくはありますがw