時の流れにIf−彼の鎖が増えた訳

 

第一話

 

 

月のよく映える夜にたたずむ一人の青年

ただ、何をする事もなくたたずんでいる。

 

「後10分といったところか、一度目に戻った時は」

 

そう呟き立ち上がる。

服装はあのときと一緒。すぐ側に一台の自転車が停まっている。

 

「やれやれ、十年か。前回は時間がなかったが今回は十分すぎるほどある。

 体は前以上に鍛えDFSも作ってある、ブローディアもディアとブロスも。イネスさんとの研究のおかげで簡単にできた。

 だから今度は何一つ失敗できない、なにが起こったとしても。」

 

そう言うとチラリと時計に目をやる

 

「あと五分、五分後に始まる。全てを白紙に戻し書き換えた歴史が」

 

そして目を閉じ待つ。新たなる歴史の始まる合図を。

 

(アキト!!)

(・・・ラピスか)

(うん!! 今、私は昔いた研究施設にいるの・・・どうしてなの?)

(・・・アキト、私の身体が6才に戻っちゃってる。)

(そうか・・・どうやら信じられない事だが、過去に跳んだらしい。)

(やっぱり、そうなんだ・・・)

(ラピス、 頼みがある、今の年月日と時刻を教えてくれ。)

(うん・・・えっと、今の年月日は2196年・・・)

(ラピス・・・必ず北辰より先に、研究所から助け出してみせる!!

 だからこれから頼む事を、地球で実行してくれないか?)

(・・・うん、解ったよアキト。

 私はアキトを信じる。)

(・・・済まない。)

 

そして俺はラピスにある計画を託した・・・。

本来ならこの計画は、この先にどうしても必要な事だった。

以前なら、だが今回はいろいろとバックアップしているから前回よりも大幅に時間が短縮されるだろう。

本人達は気づきもしないだろうがな。

 

(・・・以上だ、俺はこれからナデシコAに向かう。)

(うん・・・何時でも話しかけていいよね、アキト?)

(ああ、何時だって話し相手になってあげるよ。)

 

寂しいんだろうな・・・済まんラピス、今回もしばらくの間は話し相手としてしか接することができない。

 

さて、幕開けのファンファーレはなった。後はただ踊るだけだ歴史という舞台の上でな。

 

そして、俺はユリカとの再会の地に向かった。

 

ブオォォォォンンンン

 

ゆっくりと自転車を走らせる俺の目の前を、一台の車が走り抜ける・・・

そう、あくまでゆっくりと。全力を出すと車を追い抜くどころか

一漕ぎで自転車が壊れてしまう。

そしてその車のトランクから一個のスーツケースが、俺に向かって落ちて来る。

 

「やれやれ、やっぱり落ちてくるのか」

 

かなり歴史を改竄してもここら辺は変わらないといったところか。

 

ガラン、ガラン!!

 

凄い勢いで、スーツケースが俺に向かって落ちてくる。

俺は自転車をドリフトさせて急停止し、向って来るスーツケースを両手で受け止める。

 

キキキッッ!!

       バタン!!

           パタパタパタ!!

 

目の前の車が急停止し。

一人の女性が車から降り、俺に向かって走り寄ってくる。 

 

「済みません!! 済みません!! ・・・怪我とか、ありませんでしたか?」

 

「ああ、大丈夫だ・・・これ、君のかな?」

 

両手で受け取ったスーツケースを手渡す。

 

「・・・あの、ぶしつけな質問ですが。

 何処かで、お会いした事ありませんか?」

 

俺の顔を覗き込みながら、ユリカが話しかけてくる。

 

「気のせいですよ。」

 

「そうですか?」

 

「ユリカ、急がないと遅刻するよ!!」

 

・・・やっぱり気苦労が絶えないな、ジュン。

 

「解ったよ、ジュン君!!

 では、ご協力感謝します!!」

 

そう言い残してユリカとジュンは去って行った・・・

遠くへ去っていく車を見えなくなるまで待った後俺はナデシコAに向かって自転車を走らせた。

 

「はてさて・・・貴方は何処でユリカさんと、知り合いになられたんですかな?」

 

相手は交渉のプロだ・・・どうする?

俺は軍の見張りに連行され、今はプロスさんと話をしている。

・・・ここまでは、以前と同じ展開だな。やはり同じようにするべきか

 

「実はユリカとは、幼馴染なんです・・・

 俺はユリカに聞きたい事があって、ここまで追い駆けて来ました。」 

 

「ふむ・・・おや? 全滅した火星から、どうやってこの地球に来られたんですか?」

 

俺のDNA判定をした結果を見て、驚くプロスさん。

前回と同じでちゃんと腕で判定をしてもらった・・・過去で舌にやられた時は、かなり痛かったからな。

 

「・・・記憶に無いんですよ。

 気が付けば、俺は地球にいました。」

 

俺の話を信じたかどうかは解らない・・・だがプロスさんは俺の料理道具を見てある提案をする。

 

「あいにくとユリカさんは重要人物ですから、簡単に部外者とお会いできません。

 ・・・しかし、ネルガルの社員の一員としてならば、不都合はかなり軽減されます。

 実は我が社のあるプロジェクトで、コックが不足していまして。

 テンカワさん・・・貴方は今無職らしいですね、どうですこの際ネルガルに就職されませんか?」

 

流石プロスさんだな・・・上手く話しを進めるもんだ。

一言もナデシコの名前を出さずに、俺をスカウトするか・・・

勿論、俺が火星の生き残りである事を知って、誘ってるのだろうがな。

 

「こちらこそ、願っても無い事です。実はこの先どうしようかと、困ってたんですよ。」

 

「では、早速ですがお給料の方は・・・」

 

こうして俺は無事ナデシコに乗船した。

 

やれやれ、第一段階は終了か。

もう少ししたらルリちゃんが来るだろう。

だがしかし、何時出会っても油断がならないな。

 

「こんにちわ、プロスさん。」

 

「おや、ルリさんどうしてデッキなどにおられるのですか?」

 

「・・・こちらは何方ですか?」

 

プロスさんの質問を無視して、ルリちゃんが俺に視線を向ける・・・

 

「ああ、この方は先程このナデシコに就職された・・・」

 

「こんにちわ・・・アキトさん。」

 

「おやルリさん、アキトさんとお知り合いですか?」

 

「ええ、そうなんですよプロスさん。」

 

「ルリちゃん、かい?」

 

俺も一様確認の一言を出す。

 

「ええ、そうですよアキトさん。」

 

微笑を浮かべながら、俺に返事を返すルリちゃん・・・お仕置きモードの時の顔とは偉い違いだ。

 

「どうやら本当にお知り合いの様で・・・私は邪魔者みたいですからここから去りますか。

 ルリさん、テンカワさんにナデシコの案内をお願いしますね。」

 

「はい、解りましたプロスさん。」

 

「・・・はて、あんなに明るい方でしたかね、ルリさんは?」

 

頭を捻りつつプロスさんは去って行った・・・

 

「・・・案内、しますかアキトさん?」

 

悪戯っぽく笑ってルリちゃんは俺に話し掛けてきた。

 

「必要無いのは・・・解っているんだろ?・・・驚いたよルリちゃん。

 まさかルリちゃんまで、過去に戻ってるなんて。」

 

「私も驚きました・・・気が付くとナデシコAのオペレーター席にいたのですから。

 でも先ほど驚かそうとしたのに、全然動じませんでしたね。

 久しぶりにアキトさんの驚く顔が見たかったんですけど、失敗してしまいましたね。」

 

「予想しないことでもなかったんでね」

 

一様詳しく話を聞くと。

過去でもオモイカネの調整の為に、皆より先にナデシコに乗り込んでいたらしい。

そして一週間前・・・自分が、気が付けば昔のナデシコの、オペレータ席に居る事を知った。

そして俺を待っていたそうだ。

一縷の望みを抱いて。

 

「・・・もう一度乗るのかいナデシコに?」

 

そして問うルリちゃんの決意を

 

「ええ、私の大切な思い出の場所・・・

 そして、アキトさんとユリカさん達に出会った場所ですから。

 それにアキトさんも必ず、このナデシコに来ると信じてましたから・・・」

 

信じる、か・・・。

 

「ルリちゃん・・・戦闘が始まる。」

 

俺はコミニュケの時間を見て、無人兵器の強襲が近い事を思い出した。

 

「そうですね・・・では私もブリッジに帰ります。

 気を付けて下さいね。」 

 

「ああ、解ってるよ。」

 

 俺はルリちゃんと分かれ・・・

 先程ガイが倒したエステバリスに向かって歩き出す。

 

「そういえば、ヤマダが人形を頼むって言ってたな・・・

 まあ、ハッチは簡単に開くから勝手に持ってきな。」

 

「解りました。」

 

 俺は整備員の人の了解を得て、ガイのエステバリスに乗り込む・・・

 さて、もうそろそろ時間だな。

 そう思った瞬間・・・艦橋内にエマージェンシーコールが鳴り響いた。

 

 ビィー!! ビィー!! ビィー!!

 

 来たか。

 

「・・・アキトさん」

 

「そっちはまだかい、ルリちゃん?」

 

「今、ユリカさんが到着して、ナデシコのマスターキーを使用しました。」

 

「了解・・・俺は今から地上に出る。」

 

「今更、バッタやジョロ如きに、アキトさんが倒されるとは思いませんが・・・

 気を付けて下さいね。」

 

「ああ、解ってるよ・・・先は長いからな。」

 

そう言って俺は通信を切った。

 

「俺は・・・テンカワ・アキト、コックです。」

 

昔通りの言い訳・・・

 

「何故コックが、俺のエステバリスに乗ってるんだ!!」

 

「もしもし、危ないから降りた方がいいですよ?」

 

「君、操縦の経験はあるのかね?」

 

「困りましたな・・・コックに危険手当は出せ無いのですが。」

 

それにしても、相変らず・・・騒がしい人達だ。

俺は余りの懐かしさから、顔が笑みに崩れそうになるのを、必死に堪えていた。

そして・・・

 

「アキト!! アキト、アキト!! アキトなんでしょう!!」

 

「・・・ああ、そうだよユリカ、久しぶりだな。」

 

「本当にアキトなんだね!!あ!! 今はそんな事より大変なの!!

 そのままだと戦闘に巻き込まれるよアキト!!」

 

・・・今、俺がいる場所を何処だと思っているんだ?

 

「パイロットがいないんだろ?俺も一応IFSを持ってるからな・・・

 囮役くらい引き受けてやるよ。」

 

本当は囮より、殲滅する方が簡単なんだがな。

 

「本当? ・・・うん、解ったよアキト!!私はアキトを信じる!!

 やっぱりアキトは私の王子様だね!!」

 

「絶対怪我しないでねアキト!!後で会おうね!!」

 

「ああ。」

 

「・・・テンカワ機、地上に出ます。」

 

ルリちゃんの声を合図に。

俺は再び、あの無人兵器達の群れと出会った。

俺の目の前には、バッタとジョロの群れ。

殲滅する事など、今の俺には簡単だが・・・

 

「今回も俺の実力は隠しておくほうが賢明、だな。ここは過去と同じく、囮役と誘導に徹するか。」

 

そして俺はバッタとジョロの攻撃を紙一重で避け。

たまにワイヤーフィストで攻撃をしかけて、確実に敵を殲滅していった。

結局俺は、実力の1%程を披露し・・・

ナデシコの初戦闘はグラビティ・ブラストの一撃で勝利を収めた。

俺はナデシコのデッキに帰りながら、今後の事を考える。

父さん達とも連絡とらないといけないしな、これからどんどん忙しくなるだろう

 

そう考えて思う、歴史というなの舞台で踊っているのがルリちゃん達ならば

さしづめ俺は踊らされているピエロといったところか

 

 

                        続く

 

 

 

あとがき

どうもみなさんyukiです。

今回は時の流れに第一話のアキト覚醒から戦闘までを書きました。

ほとんどがコピーアンドペーストでらくらく、という作家の風上にも置けない

ことをしてしまいました。すいませんBenさん。

さて、次話ですが、今回とほぼ同じ改竄版ですが今度はペースがとても速くな

り4、5話あたりで北斗登場、と言うところまでいきたいです。

では、さようならーーー。

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

yukiさんからの投稿です!!

マッドなお父さんは元気にしてますかね?

しかし、お父さんはマッドだとしてもお母さんはどうなんでしょうか?

・・・両親揃ってマッド?

そして、幼馴染はユリカ?

・・・そりゃあ、幼少の頃から人生の厳しさを実感するでしょうね(爆笑)

 

ではyukiさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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