星の数ほど人がいて
星の数ほど出会いがある
そして別れ…
地球、火星間にあるアステロイドのひとつ。
岩石とガスに周りを囲まれたたずむ、巨大な人工建造物。
ヒサゴプラン第13番ターミナルコロニー『シラヒメ』
トカゲ戦争終結後に設置された、次世代移動手段の一角を担う中継基地である。
そして其処は今、まさに戦場だった。
***
怒号と絶叫がとびかうシラヒメオペレーションルーム。
完璧に空調が制御されながら、汗をかいていない人間はいない。
「第一次、第二次警戒ライン、突破!!」
「オレンジ、バーミリオンはそのまま、レッドはポイントRまで後退!」
『うわあぁぁーー!!』
絶叫とともにまた1つのウィンドウが掻き消える。
シラヒメの警戒網を表示した別のウィンドウには、ほとんど一直線に突き進む怪鳥のようなシルエットの機動兵器が映っていた。
機動兵器や戦艦、ミサイル衛星などから成る4重の防衛ラインをもってしても、その進攻を遅らせることすらできていない。
本丸に取り付かれるのは時間の問題だった。
***
死と破壊が生産されている外の宇宙と同時刻、その攻められているコロニー内部においても、ひっそりと殺戮が行われていた。
乾いた銃声。
倒れる白衣の科学者。
「ひぃぃー」
部屋の隅に追い詰められ、怯えるほかの科学者たちにむけ、編み笠をかぶりマントを羽織った7人の男達が歩を進める。
「ま、待ってくれ! 我々がいなければ研究が…」
必死の命乞いに対し、7人の中央に立つ若い男が口元を吊り上げ、
「機密保持だ」
あっさりと引き金を引いた。
***
極わずかの後、編み笠たち以外、すべての人間が倒れ伏した部屋の天井を、黒い巨人が突き破った。
「遅かりし復讐人、下等生物め」
嘲笑。
編み笠ごしの視線にはそれのみがあった。
巨人がその身をのり出そうとした瞬間。
「滅」
声とともに広がる光。
爆発は、『シラヒメ』全区画の実に2割近くを消滅させた。
***
「シラヒメ? 応答してください、シラヒメ!?」
連合宇宙軍第三艦隊所属、リアトリス級戦艦『アマリリス』。
偶然シラヒメ近くを航行していたために、単艦にて救援に向かう所だった。
「負傷者の救助が最優先、フィールドを展開しつつ接近!」
ブリッジ中央の艦長席では、青年がキビキビと指示を出していた。
灰色がかった銀の髪、青く鋭いまなざし、野性的とまでいえる精悍さ、身にまとう知的な雰囲気、
そして猫耳。
強力なリーダーシップによって艦内は見事なまでに統率がとれていた。
今まさに、シラヒメの警戒ラインに入ろうとしたその時、
「ボース粒子、増大!」
「何!?」
声に反応し、ピクンと耳がオペレーターの方向を向く。
思わず身をのり出す青年。
ウィンドウには爆発しているシラヒメの全景。そのそばにボソン反応表示。
「センサー拡大」
反応地点にズームするにつれ、ノイズが多くなっていく。
「えッ!?」
ノイズに乱され、ほとんどシルエットのみの画像
「何だ…何だあれは…」
緊張のあまり青年の黒髪が膨らみ、耳がぴん!とたちあがる。
「あれは一体?!」
そこに映る姿は、黒い悪魔か幽霊のような、禍々しい姿をしたナニカだった。
「自分は見ました。確かにボソンジャンプです」
奥行きのある広間にて、アマリリス艦長モリ・ジロウは、査問会にかけられていた。
彼を囲むようにして座る査問委員の面々は、皆一様にやる気が無い。
「コロニー爆発の影響で付近の艦、センサーの乱れイチジルシ、との報告もあるが?」
「誤認だと?」
自己に対する批判も、あからさまな蔑視も、眉一つ動かさず静かに直立不動を保つ。
並ならぬ胆力の持ち主であるが、
「その通り」
「考えてみたまえ!」
「第一、ボソンジャンプの可能な全高6メートルのロボットなど、地球も木連も現時点では作れんのだ」
自分の上に立つ者たちの愚鈍さに、見えないところで拳を強く握りこんだ。
***
「くそッ!」
査問会場をあとにしたジロウが、苛立ち紛れに壁に爪を立てる。
ギャリッ!と奥歯に響くような音を立て、5本の爪痕が刻まれた。
「あー、ジローちゃんいけないんだよー」
ベンチに腰掛けウィンドウ新聞を読んでいた小さな女の子が、顔を上げてたしなめた。
もっともあまりに可愛すぎて全然効果は無かったが。
薄茶色の髪を頭の両側でくくり、あどけなさと知性が同居する瞳をくりくりさせ、だぶだぶの制服は着ているというよりも制服に着られていると言ったほど。
全体的におもわずナデナデ、もしくはお持ち帰りしたくなるほどの可憐さだ。
「あいつら、はなからやる気が無いのだ。何が事故調査委員会か!」
「かくして連合宇宙軍はカヤのそと。じけんは調査委員会と統合軍の合同調査とあいなりました」
「タカマチ参謀!」
あまりにのん気な口調で新聞を読み上げるタカマチ・ナノハ連合宇宙軍参謀に向かって、さすがのジロウも声を荒げる。
「あははー」
しかし、返ってきたのは朗らかな笑い声。
「まぁ、確かに仲間はずれはよくないからね。だからお願いして行ってもらったの」
ニッコリと笑って、
「サザナミにネ♪」
「サザナミ?」
ジロウの眉根が開かれる。
それは、彼には忘れられない、
そう、決して忘れられない名前だった。
あいさつ
どうも、祐樹です。
この作品は、ストーリーを劇場版ナデシコで、キャスティングを別の作品で、というパロディものです。
「この場面で、このキャラに、この台詞を言わせてみたい」
と言う衝動から来ており、話そのものに手を加える積もりはあまりありません。
ですから、元ネタ知らないと面白く無いと思います。
また、人物の相関関係は両作品ともある程度無視させて頂いてます。
まったく無視と言うわけではなく、このキャラとこのキャラの絡みを書きたいから、ほかのキャラとの関係は無視、と言うものです。
(例えばジローはユリカ役のキャラに原作では恋愛感情を持っていません。)
書きたい場面までがんばって書きたいなと思っています。
いや、もちろん完結させるつもりですが。
ただ、SSは初めてに近く、ペース配分なんか全然だめです。
遅筆な上に、アマテラス攻防戦だけでかるく5話を超えそうで、戦々恐々としています。
さて、元ネタに関しては、わかる人はわかると思います。
ですので、次回まで一応秘密にしときます。
ヒントはシリーズもののPCゲーム。
シリーズに必ず一人は獣耳少女がでる特異な作品でもありますな。
それと、18歳未満の良い子のみんなは、知っているという事実は保護者の方にばれないようにしませう。
では、どのキャラがどんな役を演じるのか。
言ってみればそれだけがキモですが、予想してみてはどうでしょうか。
配役をひねったキャラ、ひねってないキャラ、いろいろです。
なかには納得できない配役もありましょうが、ご容赦を。
次回であいましょう。
代理人の感想
「猫耳」ッ!?
シリアスな場面でこれは中々……ぐわぁんっ! と来ましたねぇ。(笑)
できれば次回以降もこの「ぐわぁんっ!」が持続することを望みます。
頑張って下さい。
追伸
HTMLは大丈夫でした。