機動戦艦ナデシコSEED

PHASE01. 「その名はナデシコ」


 

 

 

 「はてさて…貴方は何処でユリカさんと、知り合いになられたんですかな?」

 

 前回と同じように警備の連中と揉め事を起こし、プロスさんが来るのを待つ。

 そして思惑通り今はプロスさんと話をしている。

 

 「こっちにミスマル・ユリカっていう女性がいるはずなんです。

 オレ、その女性にどうしても用事があってきました。聞きたいことがあるんです」

 

 正確にはナデシコみんなに用があるんだが・・・。

 ・・・でもユリカに用事があるのは確かだ。アイツを…、守るためにも・・・。

 

 「なるほど…、しかしですねぇ。

 ま、何はともあれ、まずは個人データ照合ですな」

 

 う、アレか・・・。

 そう思って腕を差し出す。

 

 「どうぞ、お願いします」

 「はいはいっと、ではあっなたのお名前探しまっしょと」

 

       プシュ

 

 採取したサンプルでデータ照合のためにライブラリを開く。

 

 「ほら出た。ふむ・・・おや? 全滅した火星からどうやってこの地球に!?」

 

 俺のDNA判定をした結果を見て、驚くプロスさん。

 今回はちゃんと腕で判定をしてもらってよかった。

 舌にやられた時は、けっこう痛かったからな・・・。

 こんな事に過去での経験が生きるとは。2度目って便利だな・・・。

 

 「・・・あの前後のことは…、よく覚えてないんです。気が付けば、俺は地球にいた」

 

 俺の話を信じたかどうかは解らない…

 

 「ユリカさんとはどういったご関係で?」

 「火星で、アイツと、アイツの家族とはご近所付き合いがあったので。

 それに、俺の両親がなぜ死んだのか知ってるはずなんです」

 

 どうだ?嘘はいっていない。

 

 「そぅですか・・・、あなたも大変ですねぇ」

 「・・・・」

 

 ダメか?

 

 「あなた、コックさんでしたっけ?」

 「はい」

 「あいにくとユリカさんは重要人物ですから、簡単に部外者とお会いできません。

 ・・・しかし、ネルガルの社員の一員としてならば、不都合はかなり軽減されます。

 実は我が社のあるプロジェクトで、コックが不足していまして。

 テンカワさん、貴方は今無職らしいですね?」

 「あ、はい。佐世保の食堂で働いてたんですけど、クビになっちゃって・・・」

 「ふむ。なんでまた?」

 

 ・・・どうする。IFSのことは話しておくか?まぁ大丈夫だろう。

 

 「その、これのせいなんですよ」

 

 そういって俺はIFSを見せる。

 IFS、イメージ・フィードバック・システム。

 火星ではポピュラーなこのシステムも、地球ではかなりマイナーなシステムだ。

 確か、これを身につけるためにナノマシンを注入しなければいけないのだが、

 それにかなり抵抗を感じるとか。

 ・・・おそらくコーディネイターに対する印象と似たようなものなのだろう。

 プロスさんはそこらヘン大丈夫なのだろうか?

 

 「やっぱ気持ち悪いですか?」

 

 伺うように尋ねる。

 

 「いえいえ、ご安心ください。我々ネルガルはそのような偏見はあまりない企業でして。

 それにわが社はIFS対応商品を扱っております。大丈夫ですよ」

 

 どうやら杞憂だったみたいだ。

 確かにIFSを使った商品があったな。

 ならあまりコーディネイターに対する偏見は少ないのかもしれない。

 

 「しかしテンカワさんがIFSを持っていらしゃるならあれも使えますな・・・。

 失礼ですが、IFSを使った操縦などのご経験は?」

 

 なるほど・・・。

 確かに前回はたまたまエステに乗って成り行きでパイロットになったが・・・。

 この流れでは最初からあまり変な流れにならずパイロットとしてもいけるか?

 

 「ええまぁ、火星では必須だったもんで・・・」

 「どうです?この際ネルガルに就職されませんか?

 現在、ネルガルではIFSでの操縦経験ある人物も足りないので」

 

 流石プロスさんだな・・・上手く話しを進めるもんだ。

 一言もナデシコの名前を出さずに、俺をスカウトするか・・・

 勿論、俺が火星の生き残りである事を知って、誘ってるのだろうがな。

 しかし、なんの操縦か教えないのはまずいのでは?

 素人にいきなりエステを操縦させる気か、コノヒトは(苦笑)

 

 「あの、聞きたいんですが。なんの操縦するんですか?」

 

 ピクっとプロスさんの眉毛が動く。

 

 「これはこれは。私としたことが、

 何の操縦なのかお教えしてませんでしたな。よろしい。

 お教えしましょう。とりあえず、コックの件は了承ということでよろしいですかな?」

 「ええ、それでお願いします」

 「とりあえず、契約書サインの方はコックで行きましょう。こちらに・・・」

 「わかりました」

 

 とりあえず、契約書の方をさっと読む。

 ・・・やっぱりあったか。

 

 「あの、プロスさん。ここなんですが・・・」

 「おや?気付かれましたか~。珍しいですなぁ、

 今時契約書をきちんと読む方などいらっしゃらないのに。

 いいでしょう。お気づきになられた特典として、ここはちょちょっと」

 

 そういってプロスさんはその項目に2重線を引く。

 ちなみにその項目とは男女交際に関する項目である・・・

 なぜ変えるのか?それはまぁなんとなくだ・・・、なんとなくだよ。

 

 「では参りましょう」

 

 プロスさんが格納庫の方に向かう。

 俺はその後に続く。

 さぁ、サイは投げられた。これから俺はナデシコに乗る・・・。

 

 そして・・・。

 

 「ご紹介しましょう!これがナデシコです!!」

 

 ナデシコ。

 ナデシコ級一番艦。 NERGAL ND-001 NADESICO。

 民間企業である『ネルガル重工』が計画した、

 火星奪還作戦『スキャパレリプロジェクト』のために建造した戦艦の一番艦。

 ネルガルが火星で発見した相転移エンジンを搭載。

 相転移エンジンは『インフレーション理論』で説明される真空の『相転移』を利用し、

 カラの空間をエネルギー順位の高い状態から低い状態へ相転移させる事でエネルギーを取り出す。

 また同艦はAIである『オモイカネ』によって管理が自動化されていて、通常の航行は艦橋の数人で対応できる。

 最大の特徴はこの相転移エンジンから生み出されるエネルギーと、

 先端ブレードから発生するディストーションフィールド、主砲となるグラビティーブラストだろう。

 

 「変わった形ですね」

 「あいやごもっとも!!しかしこの艦はわが社の最新の技術が使用された戦艦です。

 おそらく現存する全ての戦艦を凌駕しているといっても過言ではないでしょう!!」

 

 ・・・違う。

 

 そう・・・。

 このナデシコは俺の知っているナデシコと外観、武装が目に見えて違った。

 ナデシコの特徴である先端両舷側から突き出してるブレード部分。

 

 ※ココら辺を詳しく描写するのは、私の描写技量不足から書きません。
   アークエンジェルとナデシコが合体したもんだと思ってください、あしからず。脳内補完してください!

 

 「それで、操縦するものは?」

 「あちらです」

 

 プロスさんの指差す方向に目を向ける。そこには・・・。

 懐かしいあの機体があった。

 

 「ご紹介しましょう。我が社が開発した人型機動兵器、エステバリスです!」

 「すごいですね・・・」

 

 一応初見っぽい反応をしておく。

 

 「はっはっは、あまり驚きませんか。それもまぁしかたありませんな。

 今現在ザフトが使用している機体モビルスーツに外観は似ていますからいたしかたない。

 しかし!エステバリスの操縦の特徴であるIFSとのリンクでこの機体は操縦者の意のままに動くのです」

 「なるほど」

 「どうでしょう?先ほどもいった通り、IFS保持者はまだ少ないのが現状でして」

 「でも・・・」

 

 よくよく考えてみれば、エステバリスなど目立つ行為はまずい・・・

 ああしまった、軽率だな・・・

 

 「ではこうしましょう!目的地は今申し上げられませんが、途中でパイロットが補充されますので。

 それまで臨時ということで引き受けていただけませんか?」

 「まぁ、・・・それなら」

 「ではこちらの契約書に・・・」

 

 どこからともなくプロスさんは契約書を出す。

 昔もつねずね思ってたんだが、この人はいったいどこからだすんだろうか?

 ・・・永遠の謎だな…

 

 「お給料のほうもほいほいっと」

 

 金額も提示される。中々な額だな・・・

 苦笑しながら俺は契約書にサインした。

 

 「では。・・・そうですね。出航まで時間ありますから。艦内をご案内しましょう」

 「ええ、お願いします」

 

 そういってプロスさんに艦内を案内してもらうことにした。 

 そうして・・・、俺は思いがけない再会を果たす・・・

 

 「どうも。こんにちわ、プロスさん」

 「おや、こんにちは。ルリさん」

 

 俺と、俺を案内するプロスさんが艦橋にさしかかった時に声がかかった。

 

 「おや、ルリさんどうしてデッキなどにおられるのですか?」

 

 ホシノ、ルリ・・・

 ナデシコのオペレーターにして、トカゲ戦争の後、共に家族となった子。

 俺とユリカ、・・・そしてミスマル提督の家族であった女の子。

 …ジャンプの暴走に巻き込まれたルリちゃん達は・・・、どうなったのだろうか?

 プロスさんの質問を無視して、ルリちゃんが俺に視線を向ける・・・

 

 (?おかしい・・・。この頃のルリちゃん…、こんなに明るかったか?)

 「ああ、この方は先程このナデシコに就職された・・・」

 

 プロスさんの説明を聞きながら、俺は疑問を感じていた。

 この時期のルリちゃんはこんなに明るかったか?

 

 「こんにちわ・・・、アキトさん」

 

 思いがけないルリちゃんの一言に、俺は衝撃を受ける!!

 

 「な!!」

 「おやルリさん、アキトさんとお知り合いですか?」

 「ええ、そうなんですよプロスさん」

 

 俺の知り合いだって!?

 ルリちゃんがその呼び方をするのは長屋生活の後、俺がラーメン屋台を始めた頃からはず!!

 

 「忘れちゃいました?アキトさん」

 

 まさか・・・。

 俺は…、ひとつの可能性を見落としていた。

 俺やラピスがこの時代、この世界に来てしまったように・・・。

 巻き込んだナデシコCの搭乗者も来てるかもしれないということに・・・。

 

 「ルリ・・・・・ちゃん、かい?」

 

 少し震える声で俺は確認する。

 

 (プロスさんに変に思われたかもしれないな・・・)

 

 「ええ、お久しぶりです」

 

 微笑を浮かべながら、俺に返事を返すルリちゃん・・・

 イネスさんの3回忌の時の・・・、墓参り以来だな。こうやって面向かうのは・・・

 

 「どうやらお知り合いの様で・・・。

 ルリさん、テンカワさんにナデシコの案内をお願いできますか?積もる話もあるでしょうし」

 

 プロスさんが気を使い、ルリに案内を薦める。

 

 「ええ、せっかくなので。そうさせて貰います」

 「では、おねがいします」

 

 そうして、プロスさんはクルっと体を向けてどこかへ向かう。

 

 「・・・はて、あんなに明るい方でしたかね、ルリさんは?」

 

 頭を捻りつつプロスさんは去って行った・・・

 

 「…案内、しますかアキトさん?」

 

 悪戯っぽく彼女は笑いながら、俺に話しかけてくる。

 

 「必要無いよ・・・。それより…、驚いたよ」

 「私も驚きました・・・気が付くとナデシコのオペレーター席にいたのですから。」

 

 すぐ近くにあった自販機のそばにある椅子に座りながらお互い状況を確認する。

 どうやら今日から1週間前。

 気が付けば昔のナデシコのオペレータ席に座っていたらしい。

 やはり驚いたらしい、ルリちゃんのほうも。自分が知ってる世界とだいぶ違うことに。

 しかもナデシコのブリッジの内装も少し違うそうだ。

 

 ※アークエンジェルみたいな座席配置になっていると、お考えください。
   といっても、ここは基本的にナデシコのブリッジを中心に想像して補完お願いします。

 

 そして俺を待っていたそうだ。

 その胸に一つの誓いを・・・、家族と守るという誓いを・・・。

 

 「色々と状況も違うけど・・・。そういえば、乗員はどうなんだい?だいぶ違う?」

 「いえ、ほとんど変わらないみたいです。多少の違いはあるみたいですが・・・」

 「まぁとにかくがんばろう!」

 「はい。ココは私たちの大切な思い出の場所・・・。

 そして、アキトさんとユリカさん達に出会った場所ですから」

 「うん・・・」

 

 それから又、色々お互いに話をした。この世界のこととか、今後のことを…。

 あと、ラピスに頼んでおいた計画について、ルリちゃんに話しておく。

 

 「それじゃルリちゃん…そろそろ俺格納庫に行くよ」

 

 俺はコミニュケの時間を見て、無人兵器の強襲が近い事を思い出した。

 

 「そうですね・・・では私もブリッジに帰ります。気を付けて下さい」

 「ああ、解ってるよ。それじゃ」

 

 彼はルリちゃんと分かれ・・・格納庫に着く。

 そこで彼は久しぶりにウリバタケさんに会った。

 

 「おまえか?エステの補充パイロットって」

 「ええ、て言っても正規パイロットが来るまでの臨時ですけど」

 「なるほどな。ま~それまで俺たちは顔を合わせるわけだ。よろしくな!」

 

 そういってウリバタケさんは手を差し出す。

 

 「オレたちゃパイロットの命預かってるからな。整備はまかせてくれ」

 「はい・・・、こっちこそ」

 

 差し出された手を握る。

 グローブに握ったその手はエステの整備で汚れていたが、不思議な心地よさがあった。

 こういったひとつひとつに懐かしさを覚える。

 

 「そういえば、ヤマダが人形を頼むって言ってたな・・・。ハッチは簡単に開くから取ってきてくれねぇか?」

 「ええ、解りました」

 

 俺は他の整備員の人達に軽く会釈しながらガイのエステバリスに乗り込む・・・

 ガイの人形を見つけた瞬間・・・艦橋内にエマージェンシーコールが鳴り響いた。

 

 ビィー!! ビィー!! ビィー!!

 

 来たか。

 

 「・・・アキトさん」

 

 ウインドウが開く。

 

 「そっちはどうだい?ルリちゃん」

 「先ほどユリカさんが到着しました。もうすぐナデシコのマスターキーを使用しますので」

 「了解・・・俺は今から先に地上へ出る」

 「了解しました。今更バッタやジョロ如きにアキトさんが倒されるとは思いませんが・・・

 気を付けて下さいね。」

 「ああ、解ってるよ・・・先は長いからな。あ、そうだ。モビルスーツとかはいる?」

 「いえ、襲撃の中にモビルスーツなど、ザフトの機影は確認されていません」

 「そうか。よかった。いきなり対人戦闘はキツイからね。それじゃ」

 「はい。御武運を」

 

  そう言って俺は通信を切る。

 

 「ウリバタケさん!こちらから出ます!エステ動かすんで離れてください!!」

 「テンカワ!わかった!おい、ヤロウ共!エステ一機でるぞ!」

 「!!うっす!!」

 

 なんかウリバタケさんかっこいいな。前回の時はもっとハッチャけてたからな(苦笑)

 

 「テンカワ!!搬出用エレベーター、準備OKだ。いつでもいいぞ!!」

 「了解!」

 

 ウリバタケさんの合図と共にエステを動かし搬出用エレベーターに乗る。

 

 「テンカワ・アキト、エステ行きます!」

 「おう!行って来い!」

 

 そうして俺は出る。戦場に・・・

 

 

 

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