<スレイヤーズ西遊記>




第一話 坊主、娘と出会う


第一章.二人の娘

 昔ゼフィーリアのある村で、一人の女性が娘を産みました。
 その女性は娘にルナと名を付けます。
 その4年後・・・女性は二人目の娘を産みました。
 その娘にはリナという名を付けました。
 しかし、実はこの二人・・・
 女性が身篭っている間に天地の気を吸収し、生まれながらにして神力を扱う事が出来たのです。
 特に姉のルナの力は凄まじく、その力は竜神の騎士と言われる程でした。
 そんな姉に、妹のリナはコンプレックスを抱いていました。
 そして自分の力を高めるべく旅に出ます。
「ねえねえ旅の魔導師さん!! あたしに魔術を教えてよ!!」
「お嬢ちゃん、魔術はそう簡単に習得できないんだよ?」
「大丈夫よ!! あたしの故郷じゃ手加減一発、岩をも砕くんだから!!
 そう簡単にへこたれないわ!!」
 そう言って目の前の岩を正拳で砕いて見せました。
 これ位なら天地の気を扱うリナにとっては、お茶の子さいさいです。
「ね!! 簡単でしょう!!」
「・・・それだけ強いのなら魔術が無くったって。」
「・・・あたしの敵は更に強いのよ。」
 そんな敵には会いたく無いし、なによりリナから逃げる為に。
 旅の魔導師はリナに魔術の奥義を教えました。
 リナは瞬く間に魔術を習得し、2週間後には旅の魔導師さえ追い越してしまいました。
「有難う旅の魔導師さん!! これからは自分の力で魔術を極めてみせるわ!!」
 旅の魔導師は思いました・・・
「俺は・・・もしかして取り返しの付かない事を・・・」
 彼の予感は一ヶ月後に現実となりました。

 一ヶ月後・・・自力で人間界最強の魔術を身に付けたリナは、故郷に帰っていました。
「姉ちゃん!! あたしの新しい力を見て!!」
「何よリナ? そんなに慌てて。」
 おもむろに呪文を唱え、ルナに向って解き放つリナ!!
「ドラグ・スレーイブ!!」
 ちゅどーーーーん!!!!
 ルナの周りの大地ごと、かなりの範囲が吹き飛ばされる!!
「いよっしゃ〜!! さすがの姉ちゃんもこれには驚いたでしょう?」
 ・・・驚かす為にそんな魔術を使うな!! と、旅の魔導師なら思ったでしょう。
「・・・そうね、私の服が汚れちゃったじゃない。
 ちゃんと洗濯してよねリナ。」
 煙が晴れた後には・・・ちょっと煤けたルナが立っていました。
「・・・汚れただけ? 一応人間界最強の魔術なんだけど・・・」
 敗北感に打ちのめされされながら、ルナの服を洗濯するリナだった。
「負けないもん・・・」

 そして運命の日・・・
 二人で台所に立ち夕食を作っていると。
「リナ・・・私は今、悟りを開いたわ・・・」
「は? 姉ちゃん一体何を言ってるの?」
 疑問符を頭の上に浮かべながら、ルナを見るリナ。
 ジャガイモを剥いていた手を止め、ルナがリナの手を取る。
「ど、どうしたのよ姉ちゃん!!」
「私は仏になる・・・」
 そう宣言して天上界に昇っていくルナ・・・と、それに引きずられていくリナ!!
「あたしを巻き添えにするな〜!! 行くのなら姉ちゃん一人で行って〜!!」
 じたばた暴れるリナ。
「あら? 私の言う事が聞けないのリナ。
 悪い子ね・・・お仕置きをしなければいけないわね。」
 仏の微笑みでリナに向って言い募るルナ。
「・・・顔は笑っていても、中身は姉ちゃんそのもじゃんか〜!!」
「ほらほら、天上界が見えてきたわよ。」
「あたしは行きたくないんだってば〜(泣)」
 そううして姉のルナはその実力から、いきなり最高位の釈迦如来として天上界に君臨し。
 その妹のルナは天上界で修行の毎日を送る事になったとさ。めでたし、めでたし。
「全然めでたく無い〜!!あたしの青春を返せ〜!!」



第二章.不良少女暴れる。

「どうしてあたしは、こんな所にいるんだろう?」
 戦闘竜の世話を任されたリナは、その飼育小屋の掃除をしながら呟きます。
 最早リナの実力は、天上界でも十本の指に入るほどまでなりました。
 しかし、それでも姉の釈迦如来には遠く及ばないのです。
「理不尽だわ・・・姉ちゃんはどうしてあたしにこんな役職をさせるわけ?」
 その理由が天上界に来る時、姉に逆らったからだとはリナは気付いてません。
 それ以前にあれから300年経っています・・・恐るべし釈迦如来・・・
(ちなみに彼女達の両親は、今では娘達と天界で幸せに暮らしています。)
 そして戦闘竜の世話を焼くリナを、皆はそろって「ドラまたリナ」と呼び恐れていました。
 あの戦闘竜でさえリナの前では借りてきた猫の様です。
 そして遂に、リナの我慢の限界がきました。
「だ〜!! こんな事やっとられるか!!
 あたしはあたしのやりたい事をするもん!!」
 そうして仏桃を盗み食いしたり・・・(九千年に一度熟し、食べると不老長寿になる。)
「いやあ〜、やっぱり噂になるだけあって美味しいわ!!
 もっと食べたいけどもう無いわね〜。」
 ちなみにリナは桃の熟す年数を一応知ってる。
 全部食べ尽くしてしまい。(また、九千年待つのかおい・・・)
 次に太上老君の兜率天宮(とそつてんきゅう)に入り込み。(太上老君=導師で一番偉い人)
 隙を盗んできん金丹を食べ尽くします。(金丹=これも不老長寿の秘薬)
「う〜ん、これはスナック菓子としては最高ね!!」
 その金丹も作るに凄く時間がかかる事を、リナは知ってる。
 こうして次々と略奪により力を付けていくリナ。
 その力は既に天上界でも五本の指に入るほどになっていました。
「でも・・・まだ姉ちゃんには勝てないや・・・」
 なまじ間近で見ているだけに、ルナの実力の凄さを知り尽くしているリナでした。
「もう・・・あの頃には戻れない・・・
 そう戻れないのよ家には・・・
 と、言うわけで。
 逃避行の旅にでよ〜っと!!」
 ・・・ただルナから逃げたかっただけかい!!

 しかし現実は甘く無い・・・
 直ぐに追っ手がリナに追い付きます!!
「くっ!! か弱い少女に対して、こんなにも大勢で来るなんて!!」
「誰がか弱い少女だ!!」×10万人の天兵
「ぜ、全員で突っ込む事無いじゃないの!!
 くらえ!! ドラグ・スレイブ!!」
 チュドゴォォォォォォォン!!!
「ぎぃや〜!! だから「ドラまた」の相手なんか嫌だったんだ〜」×10万人の天兵
 哀れ10万の天兵も、今のリナには敵ではありませんでした・・・
「ふん!! このあたしに喧嘩をうってただで済むわけないでしょ!!」
 その頃天上界では・・・
「う〜む、今やあの娘を取り押さえる事はかなり困難じゃな。」
 太上老君の言葉に皆が頷きます。
「しかもこの不祥事が釈迦如来様にバレたら・・・」
 更なる恐怖に震える一同・・・そう最早ルナは天上界の絶対君主(恐怖政治ともいう)
 彼女の不況を買う事は・・・すなわち死あるのみ。
 ここは平和な天上界では・・・という事は忘れましょう。
「よしここはかの有名な二郎真君レゾ殿に、御出陣を願おう!!」

 その頃リナは・・・下界で荒れ狂っていた・・・もう、やけになって。
「このままじゃ絶対姉ちゃんが来る!! それまでに準備を整えておかないと。」
 そうして竜宮に押し込み・・・
「この棒貰った〜!!」
 如意棒を強奪し・・・
「もうやけじゃ〜!! 斉天大聖って名乗っちゃる!!」(斉天大聖=天にも等しいと言う意味)
 そう・・・手負いじゃないけど、手負いの獣状態だった。
 そして現れる第二の刺客・・・レゾ。
「貴方がリナさんですか、斉天大聖とは大きくでましたね。
 釈迦如来様はご存知なのですか?」
 いきなりのレゾの口撃。
「ぐはっ!! い、いいでしょ別に!! あたしはあたしよ!!
 姉ちゃんは関係ないわよ!!
 そうよ今日の晩御飯なんていらないもん!!」
 ・・・手負いの獣は既に現実逃避モードに入っていた。
「これは・・・早期治療の必要がありますね。
 精神的にかなり追い詰められています。」
 目を異常に光らせているリナを見て、レゾはそう判断した。
「では計画道りに行きますか・・・」
 後ろの兄弟(ちなみに七人兄弟)に手で合図を送るレゾ。
 そしてリナとの戦闘に入る。
 やけ状態のリナは手強く、かなりの苦戦を強いられるレゾ・・・しかし。
「あっ!! 如来様!!」
「え!! 姉ちゃん!!」
 後ろを振り向くと誰もおらず・・・
「おひ・・・」
「もちろん嘘ですよ、えい。」
 周りから一斉に縄を打たれ、動きを止められるリナ。
「あたしは獣か〜い!!」
「そのとおりですよまったく、この不良少女は。」
 そしてお縄についたリナは、釈迦如来の前に引き出されるのであった。

「で、リナ? 何か言い分けでもあるかしら?」
 優しい微笑でリナに問いかけるルナ。
 しかしその微笑こそが恐怖の代名詞として、今では天上界に広まっている。
「ね、姉ちゃん!! ほんの出来心だったのよ!!
 反省してるから許して〜!!」
 ルナの事を熟知しているリナは心底恐怖に震えていた。
 しかし後悔は先には立たない・・・それを知ってて暴走するなよリナ。
「今回のお仕置きはちょっとキツイからね♪
 頑張るのよリナ。」
 ・・・この時だけは、周りの神仏達もリナに同情したらしい。
 そしてリナは・・・余りの恐怖に失神していた。

「はっ!! ここは何処!!」
 リナは気が付くと山の中に封印されていた。
「ねえ、誰かいないの?」
「一応いますけど・・・」
 そこにいたのは小さな土地神だった。
「ここは何処なの? 姉ちゃんは何処に行ったの?」
「えーとですね、ここは五行山と言って今さっき釈迦如来様が、お造りになられました。」
 今さっき造ったって・・・この山を!! さすが釈迦如来さま(笑)
「それでですね伝言が一つありまして。
 お腹が空いたら鉄丸を食べさせて、喉が渇けば銅の煮汁をやれとの事です。
 それからこの刑は執行猶予無しの、永久刑らしいです。
 ちなみに脱走が不可能なように、封印のお札も貼られています。」
 気の毒そうにリナに告げる土地神。
「・・・姉ちゃん、あたしに鉄骨娘になれとでも?」
 リナは自分の未来に絶望したそうな・・・



第三章.観音菩薩、仲間(もしくは足手まとい)を集める。

 ある日釈迦如来が仕事場に皆を呼んで会議を行った。
「何だか近頃は人間界の東大陸が騒がしいそうね。
 そこで私の持つ有難いお経を、人間界にひろめたいのだけど・・・
 人間界に誰か適切な人材はいないかしら?」
 ・・・それは質問の口調だが、言い表せぬ程の強制力を神仏達に与えた。
「私に一つ考えが有ります。
 どうか私におまかせ下さい。」
 その時、観音菩薩のフィリアがそう言って前に進み出ました。
「ああフィリアさん、貴方なら安心して任せられるわ。
 普通の人間にこの旅はキツイだろうから、この便利な宝物を渡してあげて下さい。
 いい退屈凌ぎになる予定だから。」
(退屈凌ぎなんかい!!)神仏一同心の中での突っ込み。
 しかし言葉では言えない・・・言える筈がなかった。
 フィリアは冷や汗を流しながらも、その宝物を受け取ったのだった。
 ルナが差し出した宝物は・・・今は秘密です。

「さてと、まずは人材の確保だけど・・・
 ここは彼に頼りましょうか。」
 フィリアには一人の人間の男性を候補に考えていました。
 その男性は一切の過去が不明な上、金髪の長髪でなぜか坊主をやっている男性です。
 普通なら怪しさ大爆発物ですが・・・
 フィリアの慧眼には、彼の徳の高さが見抜けたのです。(腐ってるんじゃないか?その目・・・)
 そして彼の旅の為に、その旅の道筋の確認に人間界におもむきます。
 第一の難関・・・いきなり はば三千里(一里は三分の二キロメートル)の河がありました。
「・・・何故いきなり河? しかも三千里?(約2000キロ(笑)) どうしろというの。」
 しかし一度引きうけた以上、この任務を完遂しなければ・・・
「私の存在はこの世界から消されてしまう・・・」
 誰に消されるかは・・・皆さんご想像にお任せします。
 その時、河から一人の男性が出てきました。
「おい!! 貴様何者だ!! ここは俺の領地だぞ!!」
「あら? 貴方はゼルガディスさんじゃないですか。
 どうしてこんな所におられるのですか?」
「ぐっ!! き、貴様はフィリアか!! 何故貴様が人間界にいる!!」
 そうゼルガディスという人は、実は天上界から追放された天人なのです。
 それが釈迦如来のお気に入りの杯を、不注意で割った為に合成獣にされ・・・
 人間界に追放された悲劇の人なのです。
「ちょうど良かったですわ!!
 ゼルガディスさん、この河を渡るある方の手助けと。
 その方の旅に同行されれば、天人に戻れますよ。」
 そう言ってゼルガディスを餌でつるフィリア・・・
「何!! 本当か? もしそれが本当ならその人に従おう。」
(これで第一関門突破ですわ!!)
 心の中でフィリアはガッツポーズを取りました。
 ・・・結局巻き込まれるのは、ゼルガディスの運命だったのか。

 そしてフィリアが先に進んで行くと・・・
 第二の難関・・・とても高い山が現れます。(どれだけ高いかは秘密(笑))
 しかも凄い瘴気付きです。
「うーん、これは人間には越せませんわ・・・どうしましょう。」
 取り敢えず山の周りを調べる為、空を飛んで偵察をするフィリアに・・・
「敵機発見!! これより迎撃に移る!!」
 と言う掛け声と共に、一人の少女が空から落ちてきました。
「たあ〜〜〜〜〜!!」
「むっ!! 殺気!!」
 その殺気を感じたフィリアは備え付けのメイスを取りだし・・・
「甘い!!」
 かっき〜〜〜〜ん!!!
「きゃ〜〜〜〜!!!」
 ドッコォォォォォン!!!
 フルスイングで山肌に叩き付けました。(観音菩薩だよな確か・・・)
 そして結果の確認に下に下りてみると・・・
「痛いです〜!! 酷いです〜!!」
 一人の少女が頭を押さえて泣いています。
「あれ? アメリアさんじゃないですか?
 ここ最近姿が見えないと思ったら、こんな所で何をやってるんです?」
 そう、その少女もまたフィリアの知り合いでした。
「あ!! フィリアさん!!
 実は昔リナさんにお酒を呑まされた時、酔っ払ってしまって。
 釈迦如来様の大切な壺を割ってしまったんです。
 その罰としてこの山の見張りをさせられているんですぅ〜」
 ・・・ここにもまた、リナ・ルナ姉妹の被害者がいたわけです。
「・・・それなら良い方法が一つありますよ。」
 フィリアの頭の中では既に二人目ゲットの文字が輝いていた・・・
 ・・・その通りになった。

 そしてフィリアは旅路を急ぎます・・・
 平地では空を飛び確認をショートカットしてます。(・・・手抜きじゃん)
 そんなある日、中空に宙吊り(?)になっている竜を発見しました。
「空中で宙吊り・・・器用な竜ね。
 ・・・関わらない方が無難だわ。」
 シカトモード全開で脇を通り抜けるフィリア・・・
 もちろん竜は声を大にして呼びかけます。
 でも、シカト・・・(本当に観音菩薩かこいつ・・・)
 しかし・・・
「そこの婆ぁ!! 人の話しを聞けや!! コラ!!」
 瞬間移動をしたが如くのスピードで、竜の前にフィリアが現れます。
「何かおっしゃいまして? 私ちょっと気がたっていますの・・・」
 そのプレッシャーに自分の最後を予感する竜。
「あら? あなたよく見たらザングルスじゃないの?
 何故こんな所で遊んでるのですか?」
「・・・その知人をシカトしてたのは何方ですか。」
「誰でしょうそんな神仏の道に劣る輩は。」(お前だろ観音菩薩・・・)
「・・・もういいです。
 それより助けて貰えませんかね・・・」
 最早疲れ切った声でフィリアに哀願するザングルス。
「その前にどうしてこんな目に会ってるんですか?」
「実は・・・竜宮で護衛をしている時にあのドラまたが現れて。
 竜宮の宝物である如意棒を強奪された時に、俺は震えて何も出来なかったんです。
 その為罰としてこの宙吊りの刑と、鞭うちの刑にされたんです。
 ちなみにこの後は斬首刑で終わりだそうで。」(死ぬってキミ・・・)
「なんだかやけに明るいわね貴方・・・」
「・・・もうここまで追い込まれたら自棄にもなるって。」
 ここでフィリアは閃きます。
(ザングルスに彼を運ぶ馬になってもらいましょう!!)
「ねえ、一つ提案があるんだけど・・・」
 そして三人目をゲットするフィリアだった・・・(でもこれって脅迫じゃないか?観音菩薩よ)

 そして真打登場・・・
「ここが五行山・・・全ての災厄が眠る場所ね・・・」
 さすがに緊張を隠しきれない様子で、慎重に歩を進めるフィリア。
 そして・・・
「誰が災厄の元だ〜!!
 こら〜フィリアここから出せ〜!!」
 そう・・・この500年もの間五行山に封じられていた者の声が響き渡る。
「ああ!! とうとう見つかってしまった・・・
 私の運命もここまでなのね。」
 ・・・封印されてるのを知っててそこまで言うかフィリア。
「・・・何て冗談は置いといて。
 お久しぶりですね、リナさん。」
「・・・あんた、あたしで遊んでない?」
 だんだん表情が険悪になるリナ。
「ひとつ良い話しがありますが・・・乗ります?」
 それじゃ悪徳商法の勧誘だよ・・・
 そしてリナすらもその口車に乗せるフィリアだった。
 それより仲間全員、リナに怨恨を持ってる事考えたか?フィリア・・・
「あ!! 忘れてました!! まあ何とかなるでしょう♪」
 ・・・最早何も言うまい観音菩薩よ。
 そして仲間集めの旅も終わり、フィリアは例の坊主に会いに行くのでした。



第四章.坊主、後悔先に立たずを知る。

「あんた何者だ? 人間じゃないみたいだけど。」
 突然目の前に現れたフィリアを見ても、全然動揺して無い男が聞く。
「私はある使命を貴方に伝えにやって来ました。」
 そこは菩薩・・・仏の笑みで男=ガウリイに答えを返すフィリア。
「・・・使命? 何の事だ。」
「貴方にはこの東大陸を救う為の経典を取りに、天竺までいかなけれ・・・
 最後まで人の話しは聞きなさい。」
 バコッォォォォォォォン!!
 フィリアの正拳突きが、立って寝ているガウリイの鳩尾に決まる。
「うごぉ!! ね、姉ちゃん、良い物もってるな・・・」
 ばたっ!!
「あっ・・・・」
 腐っても菩薩・・・その力の前にガウリイは倒れ伏したのだった。
「事後承諾としましょう・・・この宝物をあげますから頑張って天竺まで来て下さいね。
 これが道順を書いた地図と、お仲間の特徴を書いた手紙です。
 それでは、天竺でお会いしましょう!!」
 そして気絶したガウリイを残して、フィリアは天上界に帰ってしまいました。
 ・・・フィリア、君がやった事は辻斬りと何ら変わらんよ。

 そしてガウリイが気が付くと・・・
 目の前に立派な杖と袈裟、そして金の髪飾りがありました。
「・・・夢じゃ無かったのか?
 それ以前に、あんな菩薩がいる天上界に行く価値があるのか?」
 もっともな意見を述べつつ、手紙を読むガウリイ。
 そこには・・・
「貴方の旅の従者として不死身の不良娘と、超合金娘、合成人間が一緒に旅をします。
 それから旅の足ように、変な帽子をかぶった白馬も用意しました・・・」
「・・・本当に旅に必要なのか? この面子は。」
 最早やる気は全然ないガウリイでしたが、手紙の最後の文を見て考え直します。
「本当だろうな菩薩さんよ・・・取り敢えずこの話し乗ってみるか。」
 そして無謀にも決心を固め。
 自分の師匠を説き伏せて法名として三蔵法師の名を貰い。
 一人天竺へと旅立つのでした。

 さて、旅が始まりいろいろな困難に遭いながらも彼は進みます。
 そして三蔵法師は遂に五行山へと踏み入ったのでした。
 そこには運命の出会い・・・みたいな物が待っているとも知らず。
「ちょとあんた!! もしかして天竺にお経を取りに行く坊さん?」
 突然の声にビックリするガウリイ。
「何処から聞こえるんだこの声は?」
 好奇心が旺盛な彼は面白く思い、その声を頼りに声の出所を探します。
 彼がその声の持ち主に出会った時・・・
「あ、あんたが坊主!! どうみても遊び人じゃん!!」
 岩の牢屋の中からリナがガウリイを見付け、そう言い放ちます。
 しかしガウリイには牢屋の中が見れません。(真っ暗なんです)
「・・・いきなりそれかい。
 本物の坊主だよ法名も持ってるんだぜ。」
 かなり不審の目でガウリイを睨むリナ。
 リナには神通力が有る為、暗闇からでもガウリイが見えるのでした。
(でも、こいつって凄い美男子綺麗な金髪だし・・・って何で坊主が髪を伸ばしてるんだ?)
「ちょっと・・・どうして坊主が髪をそんなに伸ばしてるのよ?」
「うちの宗派は髪を剃らなくていいんだよ。」
「・・・あっそ。」
 最早何も言う事のないリナであった・・・
「じゃあな俺は旅を急ぐんだ。」
 そう言い置いてその場を去ろうとするガウリイ。
「ちょっと待った〜!! あたしの話しを聞いてよ〜!!」
「何だようるさい奴だな・・・一体何を聞いて欲しいんだ?」
「実はね・・・」
 そして長い長い物語が語られ・・・
「・・・な訳であんたの護衛をしないとここから・・・って寝るな〜!! 坊主!!」
「はっ!! すまんすまん熟睡してしまった。
 ああ、もうこんな時間かそれじゃあな。」
「・・・またんかい。」
「ん? まだ何かあるのか〜俺急いでるんだけど。」
「もう何も言わないから、行きがけの駄賃に山の上のお札を取って頂戴。」
 ガウリイが山を越える為の道の途中に、なにやらお札らしきものが見えます。
「ああ、あそこに見えてる奴か。
 まあそれ位ならお安い御用だ。」
 そう言って通り抜ける時に、軽く封印のお札を剥がしてしまいます。
「剥がしたぞ〜〜お札〜〜それじゃあ元気でな〜〜」
 最後に山を降りてから後ろを振り返り、そう言い残して旅立とうとすると・・・
「有難う坊主!! 消え去れ封印の山!! 500年ぶりのドラグ・スレイーブ!!!」
 チュドゴ〜〜〜〜ンンンン!!!!
「な、なんだ!! この爆発は一体!!」
 突然響き渡った先程の彼女の声と・・・
 目の前から突然消えうせた五行山を、信じられない思いで見ながら・・・
「俺はもしかして取り返しのつかない事をしてしまったのか?」
 自分の所業に後悔するガウリイがいました。
 そして・・・その災いの元凶が自分に近づきつつある事を、彼はまだ知らなかった・・・



第一話			END
										第二話

後書き・・・

細かい事は気にせず読んでやって下さい(笑)

ストーリーは原作に添ってます・・・多分。

ただオールギャグでいきます(笑)<真実〜>が重いぶんその反動だと思ってください。

出来れば感想を頂けると、喜んで次話を早くアップします。

それでは、次回でお会いししましょう。

                                                     1999.7.5

                                                      By Ben

 

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