<スレイヤーズ西遊記>





第三十八話 



ガウリイの過去 その2


あらすじ


 ・・・あんなの俺じゃ無い。
 
(いきなりですね。)

 煩い!!
 今、俺は自分のアイデンティティに亀裂がヤバイんだよ!!

(かなり・・・混乱されてますね。)

 俺は・・・俺は!!
 ギャグキャラじゃないけど、ちょっとお茶目で不死身な・・・

(ギャグキャラじゃないですか。
 ・・・誰がどう見ても。)
 ぐはっ!!

 

(まあ、自分の本当の評価は他人が決めるといいますし。)

 じゃ、じゃあニンエから見た俺って?(汗)

(社会不適格者(ズバリ))

 

 ゴフッ!!(バタ・・・)

 

(どうやらかなりのダメージを受けたみたいですね。)

 ・・・

(まあ話しが始まる頃には起きて来るでしょう。
 では、ここは何時もの通りに私が代りに・・・

 ではスレイヤーズ西遊記 第三十七話 今から始まります!!)


「・・・」
「何、黙ってるのよ。」
「かなり・・・キてますね(汗)」
「ああ・・・(汗)」
「キキキ」(まったく・・・(汗))






第一章.疑惑


 黙々と食事をしているガウリイを、同じテーブルに座っている仲間が見詰めている。
 そして沈黙に耐えられ無くなったリナが、ガウリイに話しかける。

「ガウリイ・・・あたしの質問に応えなさいよ。」

「・・・俺の事じゃない。」
 
 リナの詰問にガウリイはそう返事を返した。

「どう考えてみても、それは嘘だとしか思えないけど?」

 ガウリイの返事を聞いたリナの声に、危険な雰囲気が混じる。
 その雰囲気を感たザザビが更にオロオロと取り乱している。
 ゼルガディスとアメリアは、その二人のやり取りを傍観をしているようだ。

「別に怒らないから、正直に話しなさいよガウリイ。
 確かに名前は聞けなかったけど、外見の特徴はあんたにピッタリじゃないの。」

 しかし、隠し事をされていたのが気に食わないのか、リナの表情は固い。

「もし、ガウリイがその『獅子』将軍なら・・・
 あんたのその人間離れした戦闘力にも説明がつくな。
 河の番人をしていた時の俺にも、その異名は届いていたからな。」

 ゼルガディスも視線に力を込めて、沈黙をしているガウリイを見詰める。

「もっとも・・・俺の聞いた噂話はそれだけじゃ無いがな。」

 更に何かを言い募ろうとするゼルガディスを・・・
 ガウリイの言葉が押し止めた。

「3年前・・・だぞ?
 俺達がこの町に辿り付くのに1年半、それにおれは寺で修行をしていたんだ。
 どう考えても同一人物にはならんだろうが?」

 右手に箸を持ったまま。
 その右手の指を三本立てて、リナ達に軽く振ってみせるガウリイ。
 
 その仕草と言葉を聞いて、根本的な間違いに気が付く三人。

「・・・そう言えばそうだな。
 確かに計算が合わない。」

 ガウリイのその言葉を聞いて、ゼルガディスが相槌を打つ。

 普通の人間ならば不可能だ、しかし・・・

 そんな疑問が頭に浮かんだが。
 取り敢えずゼルガディスは黙っておく事にした。

 そしてリナもガウリイのその言葉を聞いて、少し怒りの矛先を納める・・・が。

「じゃあ、どうして顔を隠すのよ?」

 もう一つ、不審に思って事をガウリイに問い質す。

「ああ、これか?
 ・・・昔の話しだけどな。
 一度その英雄さんと間違えられてな、大変な目に会ったんだよ。
 これはその予防策さ・・・顔は本当に似てるらしいからな。」

「ふ〜ん、そんなに似てるんですか?」

 アメリアが不思議そうにガウリイの説明を聞いている。
 しかし、ガウリイのその発言を聞いてゼルガディスの表情に緊張が走った。

「そうだな・・・似てる、らしいよ。」

 フードに隠れて表情ははっきりと見えないが。
 ガウリイの小刻みに震える肩を見るかぎり。
 どうやら笑っているようだった。

「はぁ〜、それはまた、はた迷惑な話しよね〜」

「・・・まったくだな。」
 ガタッガタッ・・・
 ガウリイに追及をする為に立ち上がっていたリナとゼルガディスは、自席に座りなおし。
 止まっていた食事を再開するのであった。

 だが、最後までゼルガディスの表情は晴れなかった・・・






第二章.追及


「おい、宿の部屋ならそのフードを外しても大丈夫だろうが?」

「あ、ああ、そうだな。」

 騒がしい食事が終り。
 ガウリイとゼルガディスは宿の自室に戻っていた。
 ザザビは夜行性なのか、外に出掛けていった様だ。

 

 パサッ・・・

 

 そして、お互いに目深に被っていたフードを取り払う。

 片方は岩の肌をした異形の人物。
 もう片方は・・・食堂に描かれていた人物と、うり二つの人物だった。
 そのガウリイの顔をゼルガディスが睨んでいる。

「何だよ?」

 その視線を感じたガウリイが、ゼルガディス軽く睨んで文句を言う。

「何故、俺達にまで素性を隠す?」

 ゼルガディスの言葉を聞いて、ガウリイの表情が少し硬くなる。
 そして、肩を竦めてゼルガディスに返事をする。

「・・・まだ、言ってるのか?」

 そう言いながら、自分の寝具の上に座って胡座をかく。
 そして、部屋に備え付けてある椅子に座っているゼルガディスを横目で見る。
 その左手は自分の金髪を暇そうに弄んでいた。

 そんなガウリイの表情は『もう、うんざりだ』と雄弁に物語っている。
 しかし、ゼルガディスの追及は止まらなかった。

「『獅子』将軍・・・敵国では『羅刹』、と呼ばれていたらしいな。」

 ゼルガディスの言葉聞いて、ガウリイの左手の動きが停まった。

「一人で100人斬りは当たり前。 
 超一流の戦士にして、常勝無敗の軍を指揮する将軍。
 この国の救世主であり、敵国にとって悪夢の使者。
 落した砦や関所は数知れづ・・・一体何人殺した?」

「・・・」

 ゼルガディスの言葉に沈黙で応えるガウリイ。
 その表情は・・・今は金髪の裏に隠れていて覗う事は出来ない。

「お前の桁外れの戦闘能力。
 何故、お前は杖を好んで使う?
 それは『獅子』将軍が一番得意だった得物・・・剣と扱いが似ているからか?」

 その言葉には一切の妥協は無かった。


 俺は何時も不思議だった。
 この男の実力は人間を超えている。
 幾ら釈迦如来の加護があるとは言え、南海紅竜王と同等の戦いが出来る人間がいるものか。
 何か隠された事情がある筈だ。
 そう、この旅が誰かに仕組まれていると、俺は考えている。
 そのキーパーソンが・・・ガウリイだろう。


 ゼルガディスは何時からか気に掛けていた事を、この場でガウリイに追及する。

「・・・俺はただの坊主だ。」

「誰も信じて無いぞ、そんな事。」

 ガウリイの呟く様な返事を一言で切り捨てる。


 そして、痛い程の静寂が室内に満ち・・・


 その静寂を破ったのは・・・ゼルガディスだった。

「ガウリイ、お前の正体は何だ?
 確かにリナには余り知られたく無い過去かもしれんが・・・」

「俺の過去は俺だけのモノだ。
 それに過去がどうあれ、今の俺は法名『三蔵法師』を持つ坊主。
 ・・・それだけだ。」

 バタッ・・・

 そう言い捨てて、ガウリイは寝具に横になってしまう。
 その姿を見て・・・ゼルガディスは苦笑した。

「まったく・・・駄々子かお前は?」

「・・・」

 そのゼルガディスの嫌味にも、ガウリイは無反応だった。
 しかし、ゼルガディスからの追及はもうなかった。

「まあ話したく無いのなら、それでもいいさ・・・
 確かに移動年数という、俺にも理解出来ない謎があるしな。
 だがな、この国の首都は道中で必ず通るぞ。
 それまでに覚悟は決めておんだな。
 ・・・リナの嫉妬は恐いぞ。」

 ビック!!

 最後の台詞に反応を返すガウリイ。
 それを見てニヤリと笑うゼルガディス。

「王女・・・今は、女王だったな。
 今でも待ってるみたいだな『獅子』将軍の事をな。
 さて、どうなるかな?」

 フッ・・・

 そう言い残して、ゼルガディスは部屋の蝋燭の火を消した。
 後には暗闇だけが残っていた。

 

 

 

 

 

 

第三十八話         END
							 	 	第三十九話に続く
あとがき

「ちわ、ニンエです。

 ちょっとシリアスにも慣れました。

 ・・・しかし、ガウリイさんはあれで騙せていると思ってるのでしょうか?

 このヘボ作者にしては引く終り方ですね。

 少しは成長したんですかね?

 では、また次回でお会いしましょう。」

 

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