<真実への路>


第一部 第一話「始まりの別れ」

(3)

 


 宿屋は、それ程の客数ではなかった。
 それだけが理由でもないが、目的の二人は直ぐにみつかった。
「久しぶりね、ゼル、アメリア。
 何だかあたし達を、探していたそうだけど?
 何の用かしら。」
 挨拶を兼ねて、そう切り出す。
「奇遇だなリナ。
 こんな所で出会うとはな・・・後ろの連れは新しい仲間か?」
 ・・・この男、ゼルガディスと言う名の魔剣士なのだが。
 ある男に力と引換えに、キメラにされてしまったという過去がある。
 初めて出会った時は、それなりに残酷な面を持つ男だったが・・・
 いかせん、今ではお茶目さが目立つ(笑)。
「なにを白々しい、あんた達はあたしを肴にして、盛り上がったてたんじゃないの?」
 取り敢えずの返答を返す。
 ちなみにガウリイは、既に我関せずの態度だ。(少しは物事を考えろよ・・・)
「・・・まっ、否定はせんがな。
 第一、俺達以外にあんた達の旅の連れが、勤まるとは思わなかったしな。
 貴重な体験と意見の交換、ってやつだ。」
 微かに笑いを含んだ口調で答える。
 ・・・確かに、貴重な体験はしてきたが。
 あまり人様に自慢は出来んぞ、あんな事・・・
 あたしの後ろでは、ルークとミリーナがさりげなく頷いている。
 ・・・まっ、巻き込んだのは・・・あたしのせいかな(汗)。
 ここは、話題を変えておこう・・・
「まっ、その話しはおいといて。
 どうしてアメリアと一緒に、ゼルがここにいる訳?」
 その質問に、苦笑いで答えるゼル。
「実はな、何故か俺が泊まっている宿屋に、アメリアが乱入してきてな。
 何でもリナと旦那に、何か危機がせまってるらしい。
 それで、協力を要請しますと言って。
 無理矢理腕を引かれて、ここまで連れてこられたのさ。」
 ・・・そんな理由で、よくついて来たなコイツ・・・
 根は、面倒見の良い男だしね。ゼルって・・・
 それとも、案外アメリアが目当てとか(笑)。
「それでは説明していいかしら?
 久しぶりね、リナ、ガウリイさん。」
 意図的に無視していたのを、怒っているらしいアメリアの声が響く。
 ・・・だって、もうトラブルはごめんだ。
「・・・言っときますけどね。
 これは託宣であって、予言じゃないからね。」
 託宣? 巫女特有の?
「託宣って、何かお告げがあったわけ?」
「そうよ、それもセイルーンの巫女全員に下された託宣よ。」
 全員って(汗)。
 それって、無茶苦茶な数になるじゃない!!
「託宣の内容はこうよ。
 『炎を纏う者来たりて
  光を導く者と共に 
  かの地へと帰らん』
 ってね、この謎の託宣でセイルーンは今じゃ大騒ぎよ。」
 うーん、確かにセイルーンの巫女、全員が受けた託宣じゃあ大きな意味を持つ筈。
 でも、この内容って・・・
「そこで、私はまず『炎を纏う者〜』で、リナを思い出したわ。」
 ・・・おい。
 横の席では、ゼルが頷いている。(あんた達ね〜!!)
「そして俺は『光を導く者』で、ガウリイの旦那を思い出したな。」
 ゼル・・・それって、買かぶりじゃあない(汗)。
 ふと、後ろのガウリイとルーク達を見ると・・・
 ガウリイとルークが、何か真剣な顔で悩んでいる。
「ガウリイ? 心当たりでもあるの。」
 あたしが質問すると、ガウリイは急いで否定した。
「い、いや〜、何か大層な呼ばれ方をされたな〜、って思ってさ!!」
 う〜ん、何となく怪しいが・・・まっ問い詰めても、忘れたって言うだけだろうし。
「でも『炎を纏う者』とは、リナにピッタリの呼び方だよな!!」
「フォローになっとらんわ〜い!!」
 めこしっっっ!!
 ガウリイの横面に、右拳を打ち込む!!
「ぐぉぉぉぉぉ!! ちょ、ちょっと洒落にならんぞ!!」
 ふん!! 花の乙女が、炎を纏って嬉しいわけあるかい!!
「しかし、何処に連れて行く気なんだリナ?
 幾ら旦那でも、あの世まで連れて行かれたら堪らんぞ。」
 おいゼル!! すでに託宣が、あたしとガウリイだって、決め付けるな!!
「幾らなんでも、あの世じゃないでしょう。
 せいぜい、地獄の一歩手前位じゃあ・・・」
 ・・・アメリア、あんたまで。
「いや、案外地獄は地獄でも。
 人生の地獄だってりしてな(笑)。」
 嫌らしい笑い方で、あたしとガウリイを見るルーク・・・
 人生の地獄って? それって、まさか・・・(ボン!!!)
「顔が赤いですよリナさん。
 何を想像されたんですか。」
 ミリーナの冷静な突っ込みに、少し冷静になるあたし。
 くっそ〜!! 言われ放題じゃないか、あたし!!
 その時、新しい声が一つ加わった。
「いえいえ、やはりそれは地獄ですよ・・・
 そして私は、その水先案内人です。」
 キィンッッッッ!!!
 結界!! まさか、これを張れるのは!!
 急いで声の方に、振り向くあたし達!!
 そこには、一人の魔蔟の姿があった・・・

 

 

(4)へ続く 

 

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