<真実への路>


第一部 第二話「それぞれの理由(わけ)」

(5)

 あたし達はその三日後にディルス王国に辿り付いた。
 ・・・しかし、そこにあたし達が捜し求める人はいなかった。
 だけどもこの国もつくづくあたしと縁が深いわね・・・
「ふう・・・もう四日も探してるのに・・・」
 宿屋のテーブルで食事を取りながら呟くあたし。
「手掛かりさえ見つかりませんね。」
 あたしの呟きにミリーナが応える。
 街での聞き込みには、さしたる成果はなかった。
「後、残るは・・・」
「城・・・ですか?」
 一番可能性が低いと考え、今まで避けていた場所だった。
 だが消去法でいけば何時かは行き付く場所でもあった・・・

「あれ? リナさんじゃないですか。」
 城の城門にいた兵士があたし達に声を掛けてきた・・・
 その兵士にあたしは見覚えがあった。
「マイアス!! 久しぶりね元気にしてた?」
 このマイアス君、数少ないディルス王国でのあたしの知り合いである。
 ・・・と言うよりは数少ない生き残りか。
 その他にも知り合いはいたのだが・・・
 もう会う事は無いだろう。
「ガウリイさん達を追って来られたんですか?
 それなら一足違いでしたね。」
 いきなりビンゴだった。
「ガウリイ達を知ってるの!!
 何処!! 何処にいるの!! え〜い、さっさっと吐きなさい!!」
 思わずマイアスに詰め寄るあたし。
 服の襟を掴んで前後に振りまわす!!
 今度はミリーナも止め様とはしなかった。
「く、苦しいですよリナさん!!
 ええ、何やらアルス将軍と会見をされてましたが・・・」
 その言葉を聞き思わずマイアスの服から手を離す。
 そして自分の考えに沈む・・・
 ガウリイがアルス将軍と会見をした?
 あのガウリイが?
 だってクラゲの頭で何を話すってのよ。
 解らない・・・ガウリイは本当に何を目的に動いているのだろうか。
「それで、ガウリイは今は城にいるわけね。」
 どちらにしろ会えば答えを聞き出せるはずだ。
 しかし、マイアスの答えはさらにあたし達を困惑させる物だった。
「いいえ、ガウリイさんならもう旅立ちました。
 何でも、でっかいトカゲのえらい人に会いに行くって言ってましたが。
 一体だれなんでしょうかね、その人?」
 でっかいトカゲのえらい人・・・ガウリイがそう言う相手は一人しかいない。
 該当する人(?)は一人だけ・・・黄金竜の長ミルガズィアさんしかいない。
 何故今更ドラゴンズ・ピークに向ったのだろうガウリイは?
 それもわざわざミルガズィアさんに会いに行くとは・・・
「これは・・・早く現地に向った方が良さそうね。」
 行き先が解りさえすれば、もうこの国には用は無い。
 ・・・まあガウリイがアルス将軍と何の話をしたのか興味はあるが。
 いちいちアルス将軍との会見をしてまで聞き出すには、時間が惜しかった。
「そうですね、ここまで複雑な事になるとは思ってもいませんでしたが。」
 ミリーナの感想はそのままあたしの感想でもあった。
 一つ確かな事は・・・ガウリイは確実に何かしらの目的を持って動いている事だった。
 そして、あたし達はマイアスに別れを告げ次の目的地に急いだ。
 確実にガウリイ達との差は詰ってきている筈だ。
 そう心に思いながら・・・

 ドラゴンズ・ピーク、言葉がそのままの意味を告げている地。
 ここには黄金竜と黒竜が生息している。
 そしてその峠を越えればカタート山脈へとつながる・・・
「人間よ・・・一体この地に何の用があって来たのだ。」
 上空を舞っていたを黄金竜が一体、あたし達の前に舞い降りて来た。
 その質問にあたしが答える。
「ミルガズィアさんに取り次いで欲しいの。
 人間の魔導師でリナ=インバースが会いに来ったってね。」
 あたしは気圧される事無く黄金竜にそう伝える。
「ほう・・・お前があのリナ=インバースか。
 解った直ぐに伝えてやろう。
 少しの間ここで待っていろ。」
 そして暫くたってから一頭の黄金竜があたし達の目の前に現れた。
 あたし達の目の前で人型に変身する。
 そこには見知った姿のミルガズィアさんがいた。
「久しい・・・と言うほどの期間ではないな人間よ。
 何の用があってここに来たのだ?」
 あたし達の質問は一つだけだった。
「ガウリイ達は何処?」
「・・・彼は既にここにはいない。
 次なる目的地に向って旅だった。」
 あたしの予想通りの答えだった・・・
 現地にガウリイの姿が見えない時点で、あたしはこの答えを予想していた。
 いくらガウリイ達でも、まさかドラゴンズ・ピークに滞在するとは考えられない。
 ならばもう用件をすませ、次の目的地に向ったと考えたのだ。
 では何故あたしがいちいち、ミルガズィアさんを呼んだかというと・・・
「ミルガズィアさん・・・一体ガウリイと何の話しをされたんですか?」
 この質問がしたかったからだった。
「・・・リナ=インバースよ、お前が知るにはまだ早い事かもしれん。
 少なくとも私の口から彼の決意は告げる事は出来ん。」
 なっ!! 一体どういう事なの?
「ただ一つ言える事は、彼の決断はお主の為だという事だけだ。」
 そしてあたしの目を見つめ更に話しを続ける。
「彼が次に向ったのはセイルーンだ・・・追い付ければ事情を聞く事も出来るだろう。」
 そう言い残し、ミルガズィアさんはあたし達の目の前から消えた。
「・・・あたしの為?
 一体なにをしようとしてるのガウリイ・・・」
 後には呆然とした表情のあたしと、困惑した表情のミリーナだけが残っていた。
 ・・・そして次の日あたし達はセイルーンへと旅立った。
 更に深まる疑問に苦しみながら・・・

 

 

(6)へ続く

 

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