時の流れに番外編

 

 

 

ナデシコ的三国志

 

 

八話、曹操周瑜に火攻めを受け、大敗を喫する後編

 

 

 

 

 

 

ガキーン!!

 

 

ザシュ!!

 

 

ズバ!!

 

 

激しい戦闘音が早朝の華容道に響いている。

烏林でまさかの焼き討ちを食らい、江陵へ落ち延びようとしていた曹操ユリカの軍に趙雲アキト張飛アリサの部隊が

追撃をしてきたのだ。

すでに焼き討ちから1日以上が経過していた。

にもかかわらず今だユリカ達は華容道から抜けることができない。

湿地帯であるため思うように進むことができなかったのだ。

 

「キーーーーーーーーー!!、何よ!!、なんでワタシがこんな目にあってるわけ!?(怒)。」

 

馬上から剣を振るいなんとか戦闘をしている蔡瑁ムネタケがヒステリックな声を上げた。

彼の立場にしてみれば納得いかなくて当然だった。

初戦での惨敗も長対陣の前線を維持させつづけることで、ようやく帳消しにできるはずだったのだ。

そのとたん奇襲による敗走である。

投降を認めたのはユリカだから責任は彼女にあるが、火に包まれた船を止めることができなかったのは

前線の指揮官である彼の責任である。

だがあの時はなぜか自分も含めかなりの人間が気を失っていたのだ(ユリカの大声のせい)。

油断ならともかく自分の預かり知らないところで奇襲を食らい、敗北の罪を背負わされるのは

ムネタケの承服できるところではなかった。

 

「ここのところ全く出番だってないし!!、

 ようやく出たと思ったらこの有様で!!。」

 

「俺も前回は名前だけだったぞ!!(怒)。」

 

我に返ったムネタケがあたりを見まわすともう戦っている部下はほとんどいなかった。

そして目の前には前回出番がないため元気のありあまっているアキト(笑)の姿があった。

 

「年貢の納め時だな。

 おとなしく投降すれば命まではとらないようサラちゃんにとりなしてもいい。」

 

「く!?、どこの馬の骨ともしれない戦闘馬鹿にとりなされるほど落ちぶれちゃいないわよ!!(怒)。

 それに劉備サラがワタシを家臣にしたってあの性悪小娘にいいように利用されて捨てられるのがオチだわ!!。」

 

性悪小娘とはもちろん諸葛亮ルリのことである(笑)。

ムネタケとて荊州の豪族としての誇りがある。

出自のはっきりしない劉備サラや本来は家臣筋のルリにこき使われるのは彼のプライドが許さなかった。

 

「あ、あんたみたいに1回くらい出番がなかったからって機嫌悪くしているような贅沢者に

 ほとんど出番のないワタシの気持ちはわからないわよ!!

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人の話聞いてるあんた!?(怒)。」

 

ムネタケの憤怒を無視してなぜかアキトは考え事をしていた。

 

「(性悪小娘・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ルリちゃんのことか。

 聞いたら怒るだろうなぁ。

 でも性悪小娘か、なかなかのネーミングだな)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、何か言った?。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(怒)。

 あ、あ、あ、あんたに人生の厳しさを教えてやるわ!!。

 

完全に正気を失ったムネタケは無謀な特攻を敢行。

当然だが特攻するくらいでアキトにかなうはずがない。

アキトは愛剣鳳凰の利剣(フェザーソード)を手にし、厳しい目でムネタケを見やった。

そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ザン!!

 

 

「ナ、ナデ三でもワタシってこういう結末!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無念!!。」

 

ムネタケは馬上から転げ落ちた。

そして湿地帯に鮮血が広がる。

 

「ムネタケ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ま、それはそれとして、アリサちゃんと合流してユリカ達を追うか。」

 

それでいいのかアキトよ(笑)。

蔡瑁ムネタケはここ、華容道の地で永遠の眠りについた。

そして足止めだったムネタケの部隊の生き残りは皆アキトとアリサに投降。

ムネタケの部隊は事実上壊滅した。

 

 

 

 

 

 

華容道の両脇にそびえる森林、その静寂に身を潜める影が一つ。

軍糧督運使の地位にいる男、夏候淵テツヤであった。

本来は襄陽の後詰であるが、乱に身を投じることを好む彼は無断で、しかも単独で烏林に来ていた。

だが自身の予想を裏切るこの大敗に、彼はいち早くユリカがこの華容道を敗走ルートに選ぶだろうと予測し、

先んじてここに潜んでいた。

 

「参ったぜ。

 まさか黄蓋ゴートの投降が策略だったとは。

 ライザの奴はある程度予想していたみてーだが。

 まあいいさ、おかげで趙雲アキトを狩るチャンスにめぐり合えた。

 艦長さんがこのルートを選べば必ず追手が来る。

 おそらく追ってくるのは劉備サラの部下だ。

 理では説明できねーがそんな気がする。

 そして当然名のある武将、関羽シュンとか、張飛アリサとか、

 そして趙雲アキトあたりが来るはず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ビンゴ(はぁと)。」

 

赤壁のゴートの投降を見破れなかったことからもテツヤは戦略には決して得手ではない。

だが長年の戦闘でつちかった経験とカンで彼は、追撃してくるのは劉備サラの軍だと思ったのだ。

そしてそれは見事に的中した。

テツヤの視線の先、湿地帯の不安定な道を”劉”の旗をなびかせた軍が疾走してくる。

そしてその中にお目当ての男がいる、テツヤは確信した。

 

 

 

「ムネタケ提督もひとかどの武将だったんですね。」

 

張飛アリサが部隊を率いて疾走しながらアキトに斬られたムネタケを誉めた。

それも道理で、彼の足止めにてこずってしまい湿地帯ながらもユリカ達にかなり引き離されてしまったからだ。

ムネタケは指揮官としてムラもあったが、優秀な用兵力を備えていたようだ。

となりで馬を走らせているアキトも複雑は表情をしていた。

 

「うん、考えてみればムネタケの長対陣のおかげでかなりこっちも疲労したんだしね。

 でもだからといって手心を加えるわけにはいかないよ、これは戦争だから。」

 

戦争だから、自分で言ってて虚しくなる言葉だとアキトは思った。

だがすぐに気持ちを切り替え、別の話題をアリサに返した。

 

「でも驚いたよ。

 この追撃にはシュン隊長がやると思っていたから。」

 

「そうですね。

 でもかつてのことが理由ではないんですよね。」

 

かつてのこととは8年以上前に遡る。

当時、華北の大勢力であった袁紹が兵を率いて南下するのに呼応して劉備も徐南にて反旗を翻した。

だが曹操は精鋭を率いて真っ先に劉備撃滅に向かった。

自分の方は後回しだと思っていた劉備は撃破されてしまい、張飛とともに逃走。

この際関羽は劉備の家族の身柄安全を条件に曹操に投降。

厚遇されたが関羽は曹操のはからいを拒絶、結局許しを得て劉備の元へ返ったのだった。

この時のことを配慮し、関羽シュンは追撃部隊に加えられなかったのではと後に騒がれたが、

ルリの思惑は別のところにあった。

 

「追撃部隊が私とアキトさんだけで、姉さんは後詰。

 ルリちゃんとシュン隊長達はこの追撃には参加してないんて、手抜きって思われちゃますね。」

 

「ははは、そうだね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?。」

 

アキトは烏林に忍び込んだ時と同じ不気味な陰気を感じた。

何かいる、となりのアリサも気付いたようだ。

このままやり過ごしてもいいが、万が一この陰気を放っているのが刺客で後詰のサラを狙っているとしたら

洒落にならない。

アキトは自分がこの場に残ることを決めた。

 

「アリサちゃん、あとは任せたよ。」

 

「はい、アキトさんが負けるとは思ってませんが気をつけてくださいね。

 け、け、け、結婚式まだしていないんですから!!(はぁと)。」

 

最後に爆弾発言をしてアリサはアキトの部隊もいっしょに率いてユリカ達を追った。

アキトは困った顔しながら陰気を放つ方向へ言葉を発した。

 

「刺客かどうかは知らないけどでてこいよ、今なら相手してやるぞ。」

 

アキトらしくない高圧的な態度で森林に向かって声をあげる。

するとようやく日の差し込みはじめた森林からすばやくテツヤが姿をあらわした。

冷淡だが嬉しそうな笑みを浮かべてアキトを見つめている。

 

「くっくっく・・・・・・・・・・・・・・・。

 嬉しいぜ、めぐり合えてよぉ。」

 

「男にそんなこと言われてもちっとも嬉しくないぞ。

 何者だ!!、まず名乗ったらどうだ!!。

 そっちは俺を知っているようだし。」

 

「ふむ、なるほどな。

 俺の名は夏候淵テツヤ。

 ま、ナデシコA(漢魏)の将軍の1人と認識してくれ。

 劉備サラの新参さん。」

 

男の名を聞いてアキトは正直驚いた。

ナデシコAの宿将が単独でこんなところにいるなんて。

 

「(!?、真紅の牙と呼ばれた猛将。

 どうりでできる印象があるわけだ。

 でもなぜ気配を簡単に読み取れたんだ?)。」

 

「なんで簡単に俺の存在がばれたか不思議か?。

 おまえくらいの猛者なら俺の気配を読めると思ってな。」

 

「馬鹿な!!。

 俺が全ての兵でおまえを討ち取ろうすることを想像しなかったのか?。」

 

「おまえの目的はあくまで艦長さんの追撃だろ。

 全ての兵を動かしちまったら支障が出る。

 そう考えればおまえか張飛アリサあたりが単独で残るかなと思ったんだよ。

 俺としては猛者を狩れるからどちらでもよかったんだが、ま、本命はあんただからな。」

 

テツヤと会話していてアキトは正直寒気を感じた。

この男は猛者と戦いたい武人というより、猛者を狩りたい暗殺者に近い存在だと思ったからだ。

だがアキトも武人、その程度では気圧されなかった。

馬から下り、テツヤと対等での勝負を望んだ。

 

「勝負だ、テツヤ。

 本編の不完全燃焼はここでつけようぜ!!(爆)。」

 

「言ってくれるな。

 負け戦でのなかというのが気にいらねーが、長江で俺の矢を止めた借りはきっちり返すぜ!!。」

 

「!?、ラピスを狙ったのはおまえだったのか!!。」

 

「おしゃべりはここまでだ。

 狩らせてもらうぜ、漆黒の戦神(長坂の英雄)さんよ!!。」

 

 

 

 

 

 

 

赤壁で大敗を喫した曹操ユリカらナデシコAの主力は華容道をひたすら北上して江陵へと向かっていた。

皆疲れの表情が見えた。

それも当然で、一日中動きずめであり冬の森林が両脇にあるため予想以上に寒さだった。

 

「う〜、さぶいよ〜。

 早く江陵まで逃げてあったかいご飯が食べたい〜(涙)。」

 

寒さに身を震わせながら、曹操ユリカが弱音を吐いた。

あからさまな態度をとるユリカを見て参謀の賈クヨシサダが渋い顔をした。

大将にそんな弱音をはかれては他の兵や将に悪影響だからだ。

そっと馬を近づけて耳打ちをした。

 

「艦長、そのようなことをおっしゃらないでくだされ。

 疲れているのは皆同じ。

 艦長のようなお若い方が泣き言を言っていては、この老体はどうするればよいのですかな?。」

 

「だって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 なんでこうなっちゃったの!!。

 アキトは手に入らないし、ゴートさんにはだまされるし!!。」

 

生の感情むき出しのユリカを見て、周りからもため息が出た。

これで戦は終わりだったはずなのに。

なぜか自分達は大敗を食らって惨めに敗走している。

荊州の無血占領の勢いで調子に乗ったつけが回ったということなのだろうか。

 

「ねえ、メグちゃん。

 大丈夫かな。」

 

ユリカは同じく疲れて元気なく馬を歩かせている程イクメグミに声をかけた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(疲れてるんだから声かけないでほしいわ)。

 なにがです?。」

 

ぶっきらぼうに返事を返すメグミ。

だがユリカに人の心情を察する神経はない。

かまうことなく話を続けた。

 

「今追撃してくるのはサラちゃん達なんでしょ。

 なんでネルガル(呉)は追撃してこないの。

 焼き討ちに成功して私を討ち取る絶好のチャンスなのに。」

 

「それはリョーコさんの武勇で気圧されたから、無理に追撃して無駄な被害を出したくなかったからじゃないですか。

 なにが言いたいんです?。」

 

「うん。

 もしかしてラピスちゃん達に江陵へ先回りされるかもしれないと思って。」

 

「!?。」

 

ユリカの一言でメグミは後の言葉を聞かずして全てを察した。

確かにありうる話である。

追撃を劉備サラ達に任せ、自分らは水路で江陵へ行く。

もし先回りされて江陵が落とされようものなら、追撃してくるアキトらと江陵を占領した周瑜 ラピス

挟み撃ちにされることになる。

今の速度で行くとネルガルの烏林の焼き討ち処理後の動きの方が早い可能性もある。

 

「じゃ、じゃあもっと早くにげないと!!。」

 

「そうだけどこの湿地帯じゃそんな速度はでないよ!!。

 だからサラちゃん達もそんなに早く追撃してこれないし。」

 

いよいよまずい状況に焦りだす面々。

だがヨシサダは意外にも冷静だった。

 

「いえ、そこらへんは実は予測ずみでして。」

 

「「え!?。」」

 

「忌まわしい焼き討ちの前後、別働隊の編成を進言しましたな。」

 

「う、うん。

 万が一のことを思ってって提督が言うから。

 私も賛成だったから、精兵をイズミちゃん達に預けたけど。」

 

「独断ながらこの事態を予測して、彼女達に命を発しておきました。」

 

ヨシサダの言葉を聞いてユリカは狂喜した。

 

「え!!、ホントウなの!!。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・足止め?。」

 

「どこまで時間をかせげるかは微妙ですが、

 機知に富む楽進イズミ将軍ならばなんとか。」

 

「うんうん!!、イズミちゃんならきっとやってくれるよ。

 全軍に通達!!、なんとしても江陵まで逃げ切ります!!。」

 

この号令で全軍は士気がいくらか上がった。

生きる希望が沸いてきたからだ。

とはいえ、世の中はそんなに甘くない。

結局天候が悪くなったり予想以上に時間がかかり彼女達が江陵へ逃げ延びるのは2日後。

敗走から4日以上もの道程となる。

 

 

 

 

 

 

カーン!!

 

ズガ!!

 

ガギィ!!

 

アキトとテツヤの戦闘音が華容道へこだまする。

アキトの武器が剣なのに対して、テツヤの武器は長刀(なぎなた)だった。

無銘ではあるが、テツヤの命を何度も救ってきた一品である。

刃以外の部分も鉄ごしらえでできており、真紅で染められた外見は正しくテツヤの牙と呼ぶにふさわしかった。

 

「できる!?。

 それに俺の一撃を紙一重交わすこの体裁き。

 なるほど、中原を制してきたのは伊達じゃないってことか!!。」

 

「お褒めのお言葉ありがたいが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かいかぶりだぜ。

 紙一重で交わすのが精一杯なんだよ!!。」

 

 

ガン!!

 

ギリギリギリギリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

2人の武器がぶつかり合い、押し合う均衡状態にあった。

テツヤはまだアキトに余裕があることを感じて焦りを隠せなかった。

 

「(甘く見たぜ。

 張遼リョーコがやられるわけだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 予想以上に剣撃が早くて鋭いし、おまけに力も圧倒的に上だ。

 でも長刀でやりあったのは運が良かった。

 同じ間合いの武器じゃとても相手にならねえ)。

 驚いたぜ!!、劉備サラにゃあもったいない。

 どうだ、こっちにこないか、うちの艦長さんもあんたを欲しがっているって言うし。

 とりなしてもいいんだが。」

 

アキトは全くそれにのろうとはしなかった。

 

「そういうことを言うってことは苦し紛れって受け取っていいのかな。

 もう後がないって言ってるようなものだぞ。」

 

「お見通しか!!。」

 

 

カァン!!

 

持てる力でなんとか振り払い再び距離をとるテツヤ。

だがアキトの方が格上だとういことを認めざるを得なかった。

後詰のサラが来るにはまだまだ時間があるが、ここにとどまりつづけるのは得策ではない。

 

「全く!!、誉めてやりたくなるねぇ。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰をだ?。」

 

アキトの質問にテツヤは冷や汗をかきながらも、真剣な表情で答えた。

 

 

「あんたとここまでやりあえた自分をだよ!!。」

 

 

 

ドウッ!!

 

 

 

そういうなりテツヤは長刀を想いきり振り上げ、湿地帯でやわらかい地面に想いきりぶつけた。

その瞬間強烈な土しぶきが舞い上がり、アキトめがけて飛んでいく。

 

「小ざかしいぞ!!。」

 

アキトにとってはこの程度の攻撃は足止め程度にしかならない。

この一瞬の虚を使い奇襲してくる、そう思ったアキトは逆に大技を放った。

 

 

「咆えろ!! 我が内なる竜よ!!

 秘剣!!

 咆ォォ竜ゥゥ斬ァァァンンン!!!」

 

 

 

グオオオオオオオオオォオオオオオオオオオン!!

 

 

張遼リョーコ、李典ヒカル、楽進イズミをふっ飛ばした技で、土しぶきは瞬時にかき消された。

だがアキトの視線にはテツヤの存在を確認することができなかった。

呆然としていると馬のひづめが遠ざかっていく音が聞こえた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・しまった、逃げるつもりだったのか!?。」

 

アキトはすぐさま愛馬竜華にまたがると、急いで後を追った。

竜華ほどの名馬ならば少々の湿地帯など苦にはならない。

平地と変わらない疾走を開始する。

アキトは仕留めきれないことに少々焦りを感じていた。

テツヤは単独で動いているから別の仲間と合流はないだろうが、万夫不当にふさわしい武力だった。

そしてその先にはアリサの部隊がいる。

いきなりテツヤほどの猛将に後ろから斬りこまれたら被害も大きい。

 

「なんとしてもここで仕留めるぞ!!。」

 

アキトは必死に華容道を突き進んだ。

 

 

 

 

 

 

華容道を敗走しているナデシコAの先頭を進んでいる部隊は虎威将軍于禁元一朗である。

ナデシコAでも五指に入る猛将にして、譜代の重臣。

このたびの揚州制圧における先鋒の1人だった。

 

「お、おのれおのれネルガル!!。

 投降を偽るとは、武人の風上にもおけん!!。」

 

真っ黒な長髪を振り乱して怒っている。

なによりも武人であることを誇りに思う彼にとってゴートの奇襲は許し難い行為だったからだ。

それを見かねてもう一人の武将が声をかけてきた。

 

「落ち着け、源一郎。

 戦に策略はつきもの。

 敵が上手だったと認めるのも武人の器量ではないか。」

 

豪快な印象を受ける彼は、横野将軍徐晃源八郎

同じくナデシコAの中核として名をなしている屈強の猛者。

曹操をして古の名将(周亜父)の風格ありと言わしめた名将である。

 

「そ、そんなことはわかっている!!。

 だがそのおかげで何人の同朋がこの世を・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「それも戦にはつきものだし、敵だって同じだろう。

 今は無事に江陵へたどり着くことに専念しようではないか。」

 

「う、うむ。

 そうだな。

 だが間に合うのか?。

 ネルガルは水路で江陵へ向かったと聞くが。」

 

「イズミ殿が別働隊で動いているというし、それに期待するほかはあるまい。」

 

歴戦の将である彼らも不安は隠せなかった。

だが彼らには華容道を着き進むことしかできない。

元一朗の不安といらいらはつのっていくばかりだった。

ふいに元一朗は源八郎に質問した。

 

「おい、名のある武将は討ち取られたのか?。」

 

「わからん。

 だがムネタケ都督が帰還しないらしい。

 追手は張飛アリサと、長坂でリョーコ殿、ヒカル殿、イズミ殿をてこずらせた新参。

 もしかすると・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「そ、そうか。

 降将で向上心が強かったとはいえ、彼も同胞。

 もし討ち死にしたならば冥福を祈ろう。」

 

「うむ。

 ん?。」

 

後ろからひづめの音が聞こえる。

ふりむくと斥候と思われる兵士が駆け寄ってきた。

 

「どうした、追手か?。」

 

源八郎が冷静に聞き返した。

 

「御意にございまする!!。

 劉の旗印から見て劉備サラの追手かと!!。」

 

この凶報を聞いて元一郎はいてもたってもいられなくなった。

馬首を返した。

 

「どこへ行く?。

 元一朗!?。」

 

「決まっている!!、追手を蹴散らす!!。」

 

「馬鹿な!!、戦意が完全に下がっている部隊では足止めが精一杯だ!!。」

 

正論だが元一朗は聞く耳を持たない。

 

「誰かがふんばらねば艦長もろとも討ち死にだぞ。

 俺が行けば済む話だ。」

 

「確かにそうだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 おい、足止めはどうなっている。」

 

「は!!。

 張コウライザ将軍の部隊が抗戦中かと。」

 

「彼女なら防ぎきれるかもしれんが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 もういい、元一朗!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死ぬなよ!!。」

 

源八郎は気休めの言葉をかけた。

元一朗は嬉しそうに頷くと手勢を率いて一目散に後方へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・まずいわね。」

 

ライザが悔しそうに呟いた。

アリサの部隊がついに敗走軍の後ろにくいついたのだ。

敗走軍の数は以外にも多くない。

疫病を恐れたユリカはかなりの兵士を密かに烏林から退かせていたのだ。

それが仇となり、まともに戦える兵士達が少なかったのだ。

両脇の森林から足止めを加えているが、見透かされて、確固撃破状態である。

かなりの兵をもらってはいたがそれでも厳しい。

ライザの用兵力だからこそなんと止めている状態だった。

 

「ホントまずいわ。

 そもそも黄蓋ゴートの焼き討ちがまずかったんだけど。

 チハヤったら何も言ってくれないし。

 それとも予測していて言わなかった?。」

 

劉備サラの下から降ってきた徐庶チハヤはいち早く襄陽へ任地代えを申し出ており、この場にはいなかった。

ライザはありうるかもと思った。

予想していたからこそ襄陽へ逃げたのではないかと思ったからだ。

 

「ま、それはおいおいということで!!。」

 

金髪をたなびかせながら槍を振るう。

そこへ1人の武将が現れた。

 

「あら、見たことあるわ、張飛アリサじゃない。

 久方ぶり、官渡の戦い以来じゃない。」

 

「そうですわね、ライザさん。

 あの時はお世話になりました。

 ですが申し訳ないですけど、投降していただけないなら討ち取るしかありません。」

 

アリサの厳しい表情を見てもうやりあうしかないと感じたその時だった。

アリサの後方で何か騒いでいる。

 

「!?、何事!!。」

 

見ると一騎の武者が一直線に向かってくる。

兵士達は赤い長刀によって切り裂かれていった。

 

「!?、テツヤ!!。」

 

テツヤは馬ごと跳躍させ、アリサに一撃を加えようとした。

 

「!!。」

 

 

ガーーーーーーーーーーーン!!

 

 

激しい金属音が響いた。

アリサは落ち着いてヴァルキリーランス(神々の槍)で切りさばいた。

テツヤはうまくライザのそばまで行くことができた。

 

「おまえの不安が敵中だな、ライザ。」

 

「当たって欲しくはなかったけど。

 で、もしかしてやりあったわけ、新参と。」

 

「ああ、おかげで敗北感でいっぱいだ。

 逃げてくるのが精一杯だ。」

 

「で、どうするの。

 いまだピンチよ。」

 

「わかってる、おまけに新参も追いつく・・・・・・・・・・・・・・・・。

 気が利くねェ。」

 

後ろを振り向くと元一朗の一隊が加勢に現れた。

 

「!?、テツヤ殿!!。

 なぜ後詰の貴殿がここにいる!?。」

 

疑問な元一朗に対してテツヤは特別変わった表情はしていない。

 

「いいじゃねーかよ。

 んなこたぁ。

 それより敵さんそろそろ動くぜ。」

 

「む、よかろう。

 ここでの足止め、この于禁元一朗が引き受けた!!。」

 

そういうなり手勢を率いてアリサの部隊に突っ込んでいった。

さすがに全ては任せられないとライザも兵を整えて再戦闘を開始。

 

「この正義の槍を切り裂けるか!!。」

 

 

ドシュ!!

 

 

ズン!!

 

 

疾風のごとき槍がアリサの兵を次々と討ち取っていく。

そこへ追いついてきたアキトが現れた。

 

「む!?、貴様は何奴!!。」

 

アキトは漆黒の鎧を着ているためやたらに目立つ。

だが元一朗は鎧よりもその身のこなしで只者ではないと見ぬいた。

 

「趙雲アキトだ。

 そういうあんたは(知ってるけど)?。」

 

「我が名は于禁元一朗だ!!。

 趙雲アキト!!、いざじんじょうに勝負!!。」

 

言うなり追撃されてるしているを忘れた武人どおしが互いの必殺技を炸裂される。

 

 

「食らえい!!、激頑爆裂衝(ゲキガンフレアー)ーーーーーーー!!」

 

 

「なんの!!、飛竜翼斬!!」

 

 

そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ユリカ達はなんとか逃げ切り江陵へ逃げ延びることができた。

4日以上という過酷な逃走だったが、武将連はムネタケ以外は奇跡的にも戦死者がいなかった(ひでー)。

リョーコ、テツヤ、ライザ、そして戦死したムネタケと元一朗の奮闘のたまものである。

ただし、元一朗はこの後包帯ぐるぐるまき状態で許昌へ帰還したという。

どうもアキトには負けたらしい(爆)。

テツヤ、ライザの2人はいったん行方不明になっていた。

が、数日して彼らは襄陽へ帰還。

南の方へ逃れて身を潜めていたようである。

ライザはおとがめはなかったがテツヤは任務放棄をしたのでしばらくの間謹慎状態にあった。

楽進イズミの方も付け焼刃の水軍と頭を使ってネルガル水軍の足止めに成功。

しかも被害は少なかった。

この後、ユリカは徐晃源八郎、そして曹仁九十九に江陵の死守を任せて帰還。

3年後の馬超北斗(正式採用決定!!)の反乱まで自らは休息に入る。

 

ではそれぞれの言葉を一言ずつ。

 

「うえーん、アキトが手に入らなかったよぉ(涙)。」

 

「くっそー、まんまとはめられちまった、でもあの馬鹿(ガイ)に勝てたから少しはましだな。」

 

「趙雲アキトめ!!、次は勝つ!!・・・・・・・・・・・・・・・・か、体が(汗)。」

 

「くくく、今回は退くが次はこうはいかねえぜ。」

 

「チハヤにイヤミ言われそうだわ。」

 

「ヤカンから音がする時・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふっとう(奮闘)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・く、く、く。」

 

ちなみにムネタケは戦死によりコメントはありません(爆)。

 

 

ネルガルは烏林の戦後処理後迅速に行動したが、思わぬ足止めをくらい結局先回りはできなかった。

だがネルガルの動きはこれだけではない。

この直後、ネルガルはラピスの発案で再び動き出す。

そして、ナデシコAと小競り合いをしながら劉備サラと荊州巡って激しく争うのだ

ところで長江に落ちたゴートは、必死の捜索が行われたにも関わらず行方がわからなかった。

だが灯台下暗し、なんと厠で発見されたのだ。

どうも死体と間違われて放置されていたらしい(俗説として存在する)

赤壁の功労者に対する仕打ちがこれでは本人も浮かばれない(黄蓋は正確な死亡年も死因もわかっていない)。

ではそれぞれの言葉をひとつずつ。

 

「悔しー、ルリを出しぬけなかったよぉ(涙)。」

 

「次回あたりようやく僕の出番かい?。」

 

「むぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・厠に放置された俺の立場は(涙)。」

 

『僕らの出番なくなりそうだね。』

 

『うん〜、でもディアよりはマシかな〜。』

 

「俺の名はダイゴウジガ・・・・・・・・・・・・・・グバ!?」

 

「いい加減うるさいぞ(優華部隊での出番は私だけだった、ちょっとした優越感)。」

 

 

劉備サラは曹操ユリカを討ち取ることはできなかったが、

かなりの追撃で戦果をあげ周瑜ラピスと共に南郡攻略に動き出す。

だがそれは建前にすぎない。

彼女達はこの南郡攻略とユリカの帰還という隙を狙い、南荊州奪還を狙う。

ルリはその下ごしらえのためにシュンや関平カズシらを動かさなかった。

そう、世の中を渡るために大量に必要なものをゆっくりと無理なく用立てるために。

 

「ふふふ、かっこいい終わり方ですけどまた私出番なかったですね(怒)。」

 

「私も名前だけだったわ(怒)。」

 

「俺もだ(怒)。」

 

「俺もですよ隊長(怒)。」

 

「私は出番ありましたから、しかもアキトさんとツーショット(はぁと)。」

 

「感無量っす!!、俺大活躍できた(嬉涙)。」

 

 

 

こうして歴史に名高い赤壁の戦いは幕を閉じた。

だが戦いはまだ終わったわけではない。

曹操は北へ還り、呉はそれを追う。

劉備はその隙を狙い第3勢力に名乗りをあげようとしている。

北で虎視眈々と中央進出を狙う馬超の動きは。

漢中にて独自の国家を築く張魯は。

今だ乱世を静観する劉章は。

そして三国志を飲み込むことになる司馬懿の登場。

そう、ここからが本当の戦いだから。

三国志はここから始まるのだ!!。

 

 

9話へ続く

 

 

作者の話(たわいないけど)

 

おひさしぶりでございます、3104でございます。

本当は赤壁について第3回の予定でしたが、飛ばし過ぎて語るネタが切れましたので(切実)、

私のたわごとにお付き合いください。

何度も語りましたが赤壁は曖昧な記述が非常に多く、小説、テレビ、漫画に関わらず作者の個性がもろに出ます。

私は演義から入ったくちなので、正史準拠を宣言しながら演義にも手をつけました。

演義の赤壁も過剰な部分を抜けば作者である羅貫中(元時代の人)の個性が出た結果でしょうね。

また赤壁での曹操達の策略や狙いは私の推測や完全オリジナルも入っています。

なので私の書いた赤壁は正しいわけではありません、でも違うわけでもない。

書いた本人にとっては正史というわけでして(あたりまえだけど)。

ナデシコキャラは今回くそまじめな展開でいってしまいました。

確か自分ではギャグタッチでいくと書いただけに苦笑状態です。

でも戦闘バリバリでよかったかなと思ってもいます。

で、くぎりではここで終わらせるのがベストですけど、むしろ私としてはこの後の三国志の方を皆さんに

知って欲しいので、、Benさんに駄目って言われない限りは、このまま続きを書かせていただきます。

あ、その前にBenさんや神威さんにあやかってナデ三の設定資料でも作ってみようかな。

なんか俺が配役とか把握しきれなくなってるし(爆)。

長くて済みませんでした。

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

3104さんからの連載第八話後編の投稿です!!

面白いお話でしたね!!

しかし、テツヤ・・・外伝でもあれだけ幅をきかせておいて、この作品でも良い役を貰ってるな〜(笑)

最近気になるのはメティちゃんのその後ですかね?(爆)

それと是非とも今後もこの連載を続けてほしいですね!!

チハヤの目的も不明なままですし。

・・・イネスさんはとうとう出てこなかったし(苦笑)

それに馬超にあのお方が・・・

 

最後に一言・・・

ゴートさん死んじゃったんだ(笑)

 

では3104さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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