機動戦艦ナデシコ『時の流れに』after another

『Dream』第5話 「運命の選択」みたいな・・・協力?

ナデシコのグラヴィティブラストによって出来た穴が無人兵器で塞がる前に、

俺と千沙ちゃん、万葉ちゃんのエステバリスが最大戦速で駆け抜け、ナデシコBそっくり艦の前に出た。

そして俺の正面には赤いサレナタイプ。

これに乗るのはおそらく・・・

『アキト・・・だな?』

「北斗か。久しぶりだな」

『この日をどんなに待ち望んだことか。と言いたいところだが、この機体では相手にならんな』

「で?後ろのエステバリス擬きや神皇シリーズには誰が乗っているんだ?」

『これまで通り・・・ならば問題ないのだろうが千紗、万葉の2人が欠けている。

 エステバリスにはサブロウタだ』

「で?今日は何をしにこんな所くんだりまで出張ってきたんだ?」

『お前らを見定めるため。

 千沙を欠いた今の舞歌にはストッパーとなるべき人物がいないからな。

 優華部隊の人間を集めて、半ば脱走のような形で木星を出てきた』

それを聞いた瞬間、俺の右後方にいたエステバリスがレールガンをもう1機に預け、

ナデシコそっくり艦のブリッジの前に進み出た。

流石に通信を開いていない状態では周囲の神皇シリーズがライフルで牽制している。

『舞歌様!こんな事をするなんて何を考えているんですか?!

 これでは私達が和平のために考えた作戦が台無しじゃないですか!!』

通信を開くとほぼ同時に千沙ちゃんがそう捲し立てた。

『ち、千沙?貴女、何故そこに?』

舞歌さんの声が上擦っている。

『私が何故此処に居るのかなんてどうでも良いことなんです!!

 舞歌様が木連に残っていてくれなければ和平への道のりが遠くなってしまうんですよ?!』

『大丈夫よ、木星には私の意志を理解してくれた秋山くんも、月臣くんも、それに白鳥くんも残っているから。

 それより、千沙?白鳥くんが心配していたわよ?』

『九十九さんが?・・・・・・もういいです。

 アキトさんに聞きました。

 アキトさんにとって最初の世界でも九十九さんはハルカ=ミナトを選んだそうです。

 それに私には・・・(赤)』

『そう・・・貴女が決心したなら私は何も言わないけど、今度はしっかりやるのよ?』

俺はそこに割り込みをかけた。

「舞歌さん、テンカワ=アキトです。

 北斗から聞きましたが、半ば脱走のような形で木連から出てきたとのことですが、

 これからどうされるつもりですか?」

『そうね?木連に戻るのは無理って解っているし・・・そちらに同行させてもらえるかしら?』

「俺や、後ろの2人は賛成できますが、ナデシコのクルーの殆どは木星の事情を知りません。

 火星に降りるまで待っていただけますか?」

『それまでは・・・共闘ということで、良いかしら?』

「そうですね。今回の無人兵器はやけに数が多いようですし。

 ・・・ただ、出来れば北斗に後ろから撃たないように言っておいてくれませんか?」

『解ったわ。この艦、シャクヤクは乙型や丙型の敵味方識別装置には味方になっています。

 この艦の周囲にいる限り彼らは敵対行為はしないでしょう。

 ・・・オペレーター、重力波砲、発射!』

シャクヤクの開けた穴を通って俺達は再びナデシコの防衛ラインに接触した。

 

「ルリちゃん、無人兵器後方のナデシコそっくりの艦は味方だ。

 それに、あのスーパーエステには『彼』が乗っているそうだよ?」

『そうですか。あの人もあの性格なりに努力していたと判断していいんですかね?』

「そうさ、彼との繋がりは大事にしなきゃいけないことだと思うよ?」

『解りました、アキトさん。

 前線のエステバリス隊が苦戦しているようです。

 艦長代理命令です。

 本時刻より、10分以内に敵機を殲滅してください』

そのルリちゃんの命令に俺は苦笑で応えた。

「苦戦?あいつらが?

 ルリちゃんには変わらないように見えても、彼らは俺が火星で鍛え上げたメンバーだよ?

 ・・・全エステバリスに告ぐ、5分以内に敵機を殲滅しろ!!

 いかなる手段の使用も許可する!!」

『テンカワ、いかなる手段もってことは?』

「そうだよ、リョーコちゃん。最終手段の使用も許可するよ!!」

『よっしゃ〜行くぜ!!』

『…『最終解除コード『マルス』『ガンガー』『煌』『鯖』『サレナ』『雷』『風』』…』

その瞬間、火星を目の前にしたこの戦場に7体の天使が降臨した。

(まあ、ガイの奴を天使と呼ぶかどうかは人それぞれだが)

『一の太刀、秘剣『飛燕』・・・どうでぇ無人兵器共め!』

『ガァァイ!ハァァイパァァァ・・・ヌゥアッパアアアァァァァァ!!』

「さて、俺も行こうかな?」

『アキトさん!あの機体の説明、後でしっかりしてくださいね?』

「解ってるよ、ルリちゃん・・・ディア、行くぞ!」

『了解、バーストモードを戦線突入と共に開始。で良いんだよね?』

「ああ、上出来だ」

俺のブローディアが最大戦速で戦場を駆け抜ける。

その他の機体も展開した光翼で無人兵器を落としながらヤンマ級、カトンボ級の艦に攻撃をしかけている。

リョーコちゃんは相変わらずの近接戦闘、その横をこれまた近接戦闘で駆け抜けるイツキちゃん。

格闘戦に特化したガイとそれを援護するヒカルちゃんと万葉ちゃん。

5人の援護をそつなくこなす千沙ちゃんとイズミさん。

「ディア、フェザー収束」

『了解』

「受けろ、我が秘剣、『飛竜翼斬』!!」

ギャァァァァァァオオオオンンンン!!

俺の放った攻撃は、

「し、しまった。シャクヤクの方に飛んでいっちまった」

『アキト!よく方向を考えてから撃て!』

北斗、サブロウタ以下、優華部隊の多重ディストーションフィールドが辛うじて威力を減衰させた。

『アキト兄、優華部隊の機体に損傷はないけど、シャクヤクの外壁に叩きつけられたみたいだよ』

しかし、その攻撃によって、無人兵器の残存勢力は殲滅している。

「敵機殲滅完了。エステバリス隊、ナデシコに帰艦せよ!!」

ブローディアから青い信号弾を発射した。

 

「エステバリス隊の帰艦完了を確認したら、火星に突入します。

 ミナトさん、降下軌道を算出しますのでそれに従って降りてください。

 ただ、その前に地表にあるチューリップを撃ちます。

 オモイカネ、ブリッジ等、生活ブロックの重力制御ヨロシク」

(フフッ、これによる映像でアキトさんを問いつめられますね)

ナデシコの主砲グラヴィティブラストを真下に向けて撃つためには艦自体をその方向に向ける必要があります。

 

俺達が帰艦後の一服をしている(俺とガイは喫煙者だった)と、艦が傾いていくのが解った。

「げ?・・・みんな、何か手近な物に掴まるんだ!!」

ガイを筆頭に全員が極手近にあった物に掴まった。

そう、リョーコちゃん、イツキちゃんは俺に。

ヒカルちゃん、万葉ちゃんはガイに。

千沙ちゃんは巧みに自動販売機に降り立った。

「ルリちゃん!重力制御を忘れてるぞ!」

俺はこの時点では知らなかった。

これがワザと行われていたことを。

次第に傾いていく格納庫は既に床が壁とかしている。

「ガイ、床まで飛べるか?」

「2人抱えてはちょっと苦しいかな?」

既に俺達が掴まっているところから床(本来の壁)まで3m弱ある。

「ガイ、飛ぶぞ!みんなは俺達が飛んだ時点で離れるんだ!

 ・・・行くぞ!」

俺達6人が何事もなかったかのように降り立ち、その横に間髪入れずに千紗ちゃんが降り立つ。

その千沙ちゃんの上から耐えきれなくなったのであろうセイヤさんが落ちてくる。

 

ドサッ!

 

千沙ちゃんは見ることもなく、セイヤさんをよけたのだ。

「千沙ちゃん、せめて受け止めてあげればよかったのに」

「イヤです。『彼』以外の人に触れる気はありません」

「なんで?」

俺にとっては少々疑問だった。

「・・・古い考えで育った人間ですから」

木連の考え方ね。

「さてと、恨み言でもいうためにブリッジに行くとしようか」

俺は意識的にセイヤさんのことを忘れた。

 

「アキトさん、アキトさん、居ないんですか?

 ・・・・開けますよ?」

セイヤさんに頼んでいた個人用のディストーションフィールド発生装置が完成したので

アキトさんの部屋を訪ねてきたのですが、当のアキトさんは留守でした。

「オモイカネ?アキトさんの所在は?」

『テンカワさんの反応は現在、ナデシコ艦内のいずれにも確認できません。

 それと、ルリさん。3分ほど前にテンカワさんの部屋でボソン粒子の反応が確認されました』

そうですか、今のアキトさんは私の知っているアキトさんではないんですね。

何らかの方法で地球に向かったと考えるのが筋でしょう。

これから8ヶ月あまり、ナデシコは行方不明になるのですから、ラピスに一言言っておきたいはずですし。

それにしても、アキトさん。

ラピス=ラズリですか。

私に会いたいのなら、言ってくれれば何時何処でも会いに行ったのに。

 

「う〜。最近アキトとお話ししてない〜」

俺の目の前にはラピスの後ろ姿がある。

(アキト、アキトォ。最近お話ししてないよぉ?)

「ゴメンな、ラピス。最近忙しいからさ」

振り返ったラピスの顔が驚愕にみたされた後、喜びに変化した。

「アキトォ、どうしたの?火星にいるんじゃなかったの?」

「火星にたどり着けば少しの間暇があるからな。

 その時間を利用して、遊びに来たのに、ラピスには迷惑だったのか?」

「そんなことないよ、そんなことない。

 あたしはアキトがいてくれれば他には何にも要らない」

「それじゃあダメなんだよ、ラピス。

 ラピスはもっといろんな事を知っていかなきゃいけないんだ」

その後、5分にわたるラピスの抗議を俺はなんとか押さえた。

「ラピス。ナデシコはこれから8ヶ月近く行方不明になる。

 その間、これを良い機会だと思って、本を読んでみないか?

 マンガやアニメばっかりじゃなくて・・・」

「ウン!アキトがそう言うんなら読んでみる!」

「マンガやアニメを小説にしたモノは小説とは言わないぞ?」

「・・・解った」

「じゃあ、俺は帰るからな。ハーリーくんと仲良くやるんだぞ?」

「ウン」

俺は再びジャンプして、ナデシコへと帰艦した。

 

 

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<あとがき>

ルリ :意外と秘密が多いようですね?アキトさん。

ジュン:今回はアキトくんが忙しいそうなのでボクが代役します。

    『艦長』のアオイ=ジュンです。

ルリ :ジュンさんですか・・・艦長就任おめでとうございます。

ジュン:人生何が幸いするか分からないよね?

ルリ :気になっていたんですが、火星への研修旅行、ユリカさんは参加されなかったんですか?

ジュン:ミスマルの伯父さんが参加させると思うかい?

    あの研修は火星にいる期間は1週間ほどだけど、その旅程が3ヶ月近くもかかるんだよ?

ルリ :思えませんね。

ジュン:それにね。あの研修自体が一種の適性試験なんだ。

    あれの途中で退学を申し出た奴も少なくないんだよ。

    そしてその最終試験が模擬的なテロリストとの遭遇なんだ。

ルリ :それなら、ジュンさんが遭遇されたテロリストも偽物だったんですか?

ジュン:それなら良かったんだけどね。

    軍の計画書を盗み出しそれの通りに行動していた本物のテロリストだったんだ。

ルリ :そんな中落ち付いていたジュンさんってすごいんですね?

ジュン:そんな状況になったら、換えって落ち着けたよ。

    でも、それからはね。どんな事態になっても落ち着いて行動できるようになったんだ。

    「あの状況よりはマシだ」ってね。

ルリ :ああ、だから「人生何が幸いするのか分からない」ってなるんですね?

ジュン:そういうこと。

ルリ :さて、ジュンさんの秘密が分かったところで次回

    ・・・終わってないじゃないですか。今回の話。

    と言うことで『後編』に続きます。