サレナ 〜希望の花〜 第一話 Cパート

 

 

 

ネルガル ジャンプ実験施設

ヨコスカに新設された新ジャンプ実験場

テツジンによって破壊された研究所をさらに大きくして新設された。

そして最高レベルの安全性を誇るこの施設の中核で新しい実験がおこなわれていた。

 

「で・・・これはどんな実験なの?」

「・・・・定期報告は見てるの??

これは遺跡を使った新しい通信システムの実験よ!!」

いつものようにエリナとアカツキの漫才から始まるのがナデシコの流儀である。

 

「ああ、そういえばそんな物があったねぇ。

いや実験が成功すれば、便利になるね。

どんなに離れていても通信可能なんだから・・・・

あ・・・まずいか?

これじゃぁどこからでも仕事が出来るじゃないか!

おいおいこれじゃぁ仕事から逃げられないじゃないか・・・・。

中止しない??」

 

そしていつものようにエリナを逆なでするアカツキ。

 

「・・・・・かまわないわよ。

もちろん代わりの企画の準備はすんでいるんでしょうね?

もしも、できてないなら最低1年は休めないわね・・・・。」

「続行してください・・・・」

アカツキ撃墜・・・・

もはや会長の威厳は地の果てに・・・・

 

「もう夫婦漫才はいいわ。

これから実験始めるんだから静かにして・・・・」

これから重要な実験を前にさっさと次に進みたいイネスだった。

 

 

 

実験開始から1時間経過

 

「ふぅまぁこんなものね」

私も年を取ったわね・・・・

イネスは考えたくもない事実が頭をよぎり、それを否定するかのように頭をふった。

 

「サレナ・・・これで終わりよ。」

気力で振り切ろうにも年には勝てないのだろうか? イネスの言葉には力がない。

 

「はい・・・・同じデータの処理ばかりで少し退屈です」

コンピューターが退屈だと言う。

こういうところがオモイカネらしいといえるのだろうか。

 

「まぁ簡単な通信実験だから大したことじゃないわ」

人類にとって重大な成果も天才イネス博士にとっては簡単な研究にすぎないのか?

意識過剰とも取れる言葉だが、彼女を知っている者たちにとっては

それは間違いのない『真理』である。

 

「じゃぁべつに普通のコンピューターでもよかったんじゃない?」

こんな高価な機動兵器をなんで、研究に使わないといけないの?

まったく、これなら普通の機材で十分じゃない。

いったいいくら費用がかかっていると思ってるの?

エリナはプロスペクターの手伝いのような事をしている。

現実の成果よりもそれまでにかかった費用が気になるらしい・・・・

エリナは最近プロス的な思考で物事を考えていた。

 

「もしものためよ、もし失敗してもオモイカネクラスのコンピューターなら

問題を見つけやすいわ。

今回は成功したから問題なかったけど。」

「はは、イネス大先生が失敗なんかするのかなぁ」

イネスとウリバタケがいれば何かあっても『こんな事もあろうかと』という一言で

あっというまに解決しそうである。

 

「お褒めの言葉ありがとう

私だって間違いは起こる可能性は否定できないわ。

まぁ用心に越したことはないわね。」

科学にアクシデントは付き物なのだ。

イネスはナデシコではふざけていたとしても実験では気を抜くつもりはない。

 

「コロニー『タギリ』にアクセス・・・・

アクセス完了・・・」

 

「『タギリ』に通常回線でアクセス・・・・」

 

「受信データをチェック・・・・」

 

前回と同じように進む実験

誰もがこのまま実験が終了すると思われた・・・・

 

 

「通常回線アクセス完了」

「受信データが実験データと一致しません。」

 

「さすがは大先生だね。

実験の失敗も予測のうちかい?」

「ふふ、失敗はもう何度もあるわ。

いつだって実験って言うのは成功する方が珍しいのよ。

ところでサレナ、このデータはノイズかしら?」

失敗したという報告が届いたがイネスは全く動じず原因を探ろうとする。

こういった姿勢が、研究員に安心感を与えている。

どっしりと構えるイネスを見てアカツキは「見習わないとな」とつぶやいていた。

 

「いえ、独特の規則性があります。

高確率でコンピューターに繋がっていると考えられます。」

「ほらね、普通のコンピューターならこんな応えすぐには返らないわ。

ホントにオモイカネ様々だわ。」

自分の考えた間違いないことに気をよくして実験は失敗だが上機嫌だ。

『こんな事もあろうかと』

イネスの顔からこんな言葉がにじんでいた。

 

「どこのコンピューターに繋がったのだろうねぇ」

「オモイカネ ハッキング出来ない?」

「・・・・やってみます」

いつのようにとんでもないことを命令するイネス。

そんな命令をいつものようにこなすサレナもサレナだが・・・・

 

「なるほどね、こうなることも予測していたのかな?」

「ええ、もし違うところにアクセスしてもオモイカネクラスであれば一瞬で分かるでしょ?」

「いやはや、危機管理ってわけかい?

僕も見習わないと・・・」

イネス先生にはかなわないな。

周りにいた誰もが抱いた思いである。

 

「・・・・思った以上に厳しいです。

相手はオモイカネクラスのコンピュータのバックアップがあるようです。」

サレナから思いもしない報告を受けイネスの顔が少しゆがむ。

だが、別段気にしている様子はなかった。

 

「・・・・相手が悪いことは考えてたかい?」

「ナデシコに繋がったのかしら・・・・?」

「まぁなら悪くはないか。身内だしね」

まぁクラッキングは犯罪だが、身内に対しては「防犯テスト」ということで何とでもなる。

それにわざわざ侵入しなくても、今までのデータを合法的に集めることが出来るのだ。

それほど困った状況ではない。

 

これがもしもクリムゾングループのマザーコンピューターにでも入っていたなら、

重要な実験データの一部がクリムゾンに流れることになる。

まだオモイカネにアクセスしただけましといったところだろう。

 

それに、サレナのクラックをブロックするほどのオモイカネとなれば

ナデシコB・Cかダッシュだけになる。

(残りのオモイカネは実戦経験が少ない。

小型でも実戦経験が豊富なサレナには勝てないだろう。)

まぁオペレーターのバックアップがつけばそんな状況もひっくり返される可能性もあるが、

電子の妖精達は只今、休暇中。

一人働いているハーリーが監督するオモイカネに当たることはまぁそうないことだろう。

繰り返すようだがもしクラッキングに失敗しても同じ身内みたいな物だ。

後でどうにでもなる。

 

「クラッキング完了

どうやらナデシコ級戦艦のシステムに繋がったようです。

データのパターンが酷似しています。

さらにどうやら戦闘中のようです。」

「え 戦闘中?」

たしかに火星の後継者事件終結後いくつかのいざこざは起こった。

だが、それも1年も経ち沈静化してしまった。

いまさら、重大な事件が起こるのだろうか?

 

「まだ量産の方は終わってなかったよね?」

「連合に納品するのはあと1ヶ月は先よ?」

そう、量産型ナデシコ級戦艦はまだ艤装中だ。

 

「ナデシコBもCもここの近くに停泊してたよね?」

「・・・・まちがいありません。

停泊を確認しました。」

研究員の一人がウィンドウをにらみながら報告した。

 

『じゃぁどのナデシコ??』

イネスの頭にすら『?』のマークが飛び交っている。

もはや、この状況を説明できるのは繋がっているサレナしかいない。

そしてそのサレナから信じられない言葉が飛び出した。

 

 

 

「通信先はナデシコAです」

「はぁ?? ナデシコ A???」

 

 

 

「はぁ? ナデシコAの残骸は記念碑になってるはずだけど・・・・

和平記念館に戦闘があったのかい!?

・・・・そんな報告聞いてない・・・よね?」

今日はいそいでたから報告見るの忘れていたアカツキが確認のためにエリナに聞いた。

 

「私だって知らないわよ。」

自分もこんな報告は受けていない。

こんな重要な事件であればすぐさま秘書の私に報告されるはずだ。

それに、いったい何の目的で今は戦闘能力の全くないナデシコAをねらうのだろうか。

初代ナデシコはアマテラスの自爆により全壊している。

いま平和記念館にある物は、ナデシコの残骸をつなぎ合わせた「張りぼて」である。

(一応飛べるには飛べるが、相転移炉はなく核融合炉のみ動いている。)

そもそも戦闘能力のないナデシコAがどうして戦闘中なのだろうか。

 

「いや・・・こういうときに説明してもらえると嬉しいんだけど・・・・」

いつもの説明を期待してアカツキがイネスを見た。

 

「私だって何がなんだか分からないわ。

サレナに期待するしかないわね。」

「和平記念館で戦闘は起きていないようです。」

優秀な研究員の一人が、どこから調べたのだろうか最新の情報を報告した。

さすがはここの研究員は優秀ね。

欲しい情報をすぐに探してくれる。

私の仕事場にもこんな研究員が欲しいわね。

と思う部下にあまり恵まれないエリナだった。

 

「接続先のシステムを特定しました・・・・

ナデシコA所属のエステバリスのメインシステムです。

・・・・・・

エステバリスのメインモニターを出します・・・・」

 

そうそこには信じられない、だが懐かしい姿が映し出されていた。

 

 


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