サレナ 〜希望の花〜 第二章 第二話 Cパート

 

「ルリちゃん、ありがと〜〜」

「はい」

ユリカがブリッジに現れたのは午後3時を少し過ぎた頃であった。

その間、ユリカが何をしていたのかは疑問である。

(アキトを捜しに艦内を走り回っていたという報告はあるが、

ものすごい勢いで走っているため顔までははっきりと見られなかったそうだ。)

 

「ユリカ、お前なぁ少しは仕事しろよ。

ルリちゃんばっかりにやらせてないで・・・・」

アキトはルリと昼食を取ったあと、あと片づけのため一度食堂に戻ったが、

そのあとは、仕事をするルリのためおやつを持ってきたりしていた。

(そのために暴走台風には一度も会わなかったそうである。)

 

「ごめんごめん、だってめんどくさいんだもん。

この一年のチューリップの出現から移動経路なんかいろいろ調べることが多いんだから。」

 

「だからってなぁ・・・・」

自分は仕事をせずに、子供(少女です)一人に仕事を押しつけたりするユリカ。

こいつは昔からそうだとばかりに、アキトの深いため息が哀愁を誘う。

 

「しかたないですよ、ユリカさん一人でやったらたぶん1000年以上かかります。」

 

「・・・・・ははは。」

さすがに艦長といえど、1000年も仕事は出来るわけでもなく

ルリに仕事を任せたのは仕方のないことなのだ。

(ユリカにルリの仕事の手伝いをさせるという考えは、無意味だというのは言うまでもない。)

 

「すいませんねぇ、ルリさん。

オペレーター一人では負担が多いでしょう?」

 

「はい、でも仕方ないですから・・・・」

電卓を片手にルリの労をねぎらうプロスペクター。

ルリちゃんの給料でも増やしているんだろうか?

(でもルリは喜ばないけどね Byオモイカネ)

 

「ふぅ、ルリルリ一人だとさすがに負担が大きいわよねぇ。

プロスさん何とかならないの?」

 

「そうですよ、女の子一人じゃぁかわいそう。」

 

「大丈夫です。

私一人じゃないです、オモイカネもいますから・・・・」

ミナトとメグミもさすがに今回のルリの仕事に関して、口を出した。

まぁ12歳の少女に昼食抜きで仕事をさせるというのは、

人権団体が乗り込んできても不思議ではない。

 

「副オペレーターでもいればいいのに・・・・

あ、そういえばあの副操縦士さんは??

こっちに来てから全然会ってないんだけど・・・・」

 

「あぁ、本社の用で出かけています。

本日合流する予定なのですが・・・・」

メグミは口うるさい副操縦士がいないことに気がついた。

いつもなら、真っ先にブリッジにいるはずのエリナが今日はいない。

あれ、そういえば西欧に来るときはすでにいなかったような気がする。

 

「ふぅ、あの人いったい何しに来たんだろう?」

さぁ。

 

「あ、そういえばプロスさん。

新しいパイロットのアカツキさんも見えないんですけど・・・・」

ブリッジにいるアキトがもう一つ気になることを口にした。

 

「あぁ、アカツキさんですか??

あの方も色々お忙しいようで・・・・」

 

「・・・・プロスさん苦労してますね・・・・」

後のクルーは語る。

このときにクルーが連想した姿は、会長室に座るアカツキではなく、

父親に新しいエステバリスをねだるぼんぼんの姿だったそうだ。

 

「ははは・・・・」

いまだアカツキが会長と気がつかないクルー達の同情の声に、

さすがのプロスもただ笑うしかなかった。

 

いつもにぎやかなブリッジで一人ルリから渡されたデータを見ながら

うなっていたユリカが、突然口を開いた。

いままで、ナデシコの今後のことを考えていたらしい。

アキトに言われてからちゃんと艦長の仕事をしていたようだ。

「うーん、うーん

・・・・・・・よし

皆さーんきいてくださーい。

ナデシコは明日市街地を離れまーす。」

 

「え? ここにいないといけないんじゃないの??」

さすがにこの無茶な判断にミナトが異議を唱える。

 

「うん、そうだけどそれじゃぁ町にまで被害が出ちゃうよ?」

 

「でもそうしないと町を守れないじゃないか!!」

ユリカの判断を信頼していると思われるジュンですらとまどいを隠せない。

だが今のユリカは違い珍しく、まじめな顔でクルー達を見つめる。

 

「うーん、だからダメなの。

チューリップは、軍を最終標的にしているみたいなの。

ほらみて、これが今までのデータから出た答え・・・・」

 

そこには今までのチューリップの発生から破壊までの航路を線で表している地図だった。

その線は軍の駐屯地を目指すかのように、駐屯地に集中していた。

 

「・・・・じゃぁチューリップの目的って・・・・」

 

「たぶん、地上の破壊じゃなくて軍への攻撃・・・・」

ポツリとルリがつぶやく。

だれも解き明かせなかったチューリップの秘密が目の前にデータになって存在していた。

チューリップは無秩序に破壊活動をおこなうという一般常識を否定されたクルー達は

その場で固まった。

 

「じゃぁこれをみんなに知らせないと!!」

ジュンが立ち上がると、ユリカが首を傾げた。

 

「うーん、聞いてくれるかなぁ?

私は一応軍の地位は大佐だけど、これはナデシコの中でしか有効じゃないよね。

たぶん言っても聞いてくれないよ・・・・」

 

「そんなぁ、じゃぁまるで町をバリケード代わりにしているみたいじゃないか!!」

軍の駐屯地は町を守るために多少距離を取ってはいるが、おおよそ市街地にある。

それが逆に軍に向かうためには町を通過しなければならないという、矛盾になっている。

 

「でも、チューリップは目標をこの船にするはずだから

私たちが離れれば大丈夫」

 

「そうか・・・じゃぁナデシコをおとりに使うのか・・・・

でもこれで民間人の被害が減るんだから・・・・」

チューリップは軍施設をねらっている。

それなら巨大な軍事機密である戦艦をねらうのは当然のことである。

現にナデシコも初航海時にバッタにおそわれている。

 

みんなが納得した頃、ユリカはクルー達を見渡すとウィンクした。

「だって、町の近くじゃ危なくてグラビティーブラスト撃てないもんね!

やっぱりグラビティーブラストは気持ちよく撃ちたいもん。」

クルー達の今のユリカへの評価はこれで元に戻った。

 

 

 

駐屯地シュンの事務室

「なんだって、ナデシコはB6領域に撤退するだと!!」

「ふん、所詮は民間人だ。」

 

 

「なぜB6なんだ??

そんなところにいれば、救援も送れんぞ??

・・・・・

まさかな・・・・

おいオオサトすまんが、ナデシコに前に渡したチューリップの資料から得たデータを

もらえないかどうか聞いてきてくれ。」

報告を聞いて怪訝そうな顔をしていたシュンが、はっと気がついたように顔を上げた。

 

「どうしたんだ?」

「いや、もしかしたらあのお嬢ちゃんは気がついたのかもしれん。」

オオサトはシュンの反応を一瞬気にしたようだが、

大したことではないだろうとすぐに背を向ける。

 

「?

まぁ一応きいておくよ・・・・」

そのままオオサトは部屋を出ていく。

シュンは、一人窓の向こうに見える空を見上げた。

 

「・・・・さぁ、お手並み拝見と行きますか・・・・」

 

アトカキカキ・・・
うーん、最近筆が遅いなぁ。
まぁ8/8までは用事はないから、もう少し進むかな?

ふぅ、なぜか5・6話が進まずに7話が書き終わり書けているのは
どういうことだろう?・・・・・謎だね。

あ・・・近い内に新作出るかも? です。
感想なんだってっ
代理人の感想

・・・ま〜、こうやって自分でオチをつけるのもユリカの「私らしさ」とゆー事で(爆)。

後、少し気になったのがブリッジでの副オペに関するクルーの会話。

ラピスなりハーリーなりの登場の伏線ですか?


BACK ROOM NEXT