注意!
・このSSは拙作「GS横島 ナデシコ大作戦!!」の、エピローグに繋がらないIF分岐です。
・GSYND=GS横島ナデシコ大作戦の略です。
・拙作を読まなくてもあんまり問題ありません。

※横島が、約二年ロボットに乗って戦争をくぐり抜けました。
※ロボットを一機、リリカル世界に持ち込んでいます。
※料理修行を経て、料理の腕前はかなりのものです。

上の三つを認識していれば多分大丈夫だと思います。

・リリカル勢の性格が本編と異なる場合があります。
・前中後編です。わりとあっさり終わらせます。
・横島が無双する展開が苦手な方は、読むのをオススメしません。
・超展開・超設定があります。苦手な方は(ry




代理人注:こちら http://actionhp.sakura.ne.jp/tss/k999/k999_a27c.htm の一番下の嘘予告に目を通しておくと、分かりやすいかと思われます。






 ナデシコの仲間を、大切な人を救うため、横島は跳んだ。


 しかし、やはり制御に無理があったのか、横島は元の時代ではない、未知の場所に流れ着いた。


 このままでは仲間が死ぬ。早く元の時代に帰らなければ。もし出来るなら、この世界で封印してもいい。


 横島の戦いが、再び始まる……!


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 〜ここまでテンプレ〜










 GSYND分岐IF、リリカルなのは編 プロローグ













 その日は快晴であった。

 森を一人の男が歩いている。
 その装いは、一見すれば、地味に見えたかもしれない。
 不潔さは感じないものの、あまり手入れされていないダークブラウンの髪。
 羽織るコートやインナーも茶系統だ。

 ただ、注視すれば、地味ながらある種の凄みを感じることができるだろう。

 青い瞳からは意志の強さを。服の上からでも分かる筋肉からは肉体の強さを。
 また、手から肘にかけて使い込まれた手甲が、足には同じく具足が装着されている。
 一般人であれば凄まじい違和感を感じたことだろうが、この男には不思議と馴染んでいた。


 男の名は、ゼスト・グランガイツと言った。


 男、ゼストは、木々の隙間から見える眩しい日の光に、その目を細くした。
 ゼストは周囲の人間から無趣味か、精々鍛錬が趣味であると思われており、そしてそれは概ね正しいのだが、
自然の中を歩くことも好きだった。

 厳しい表情を微かに緩ませ(彼を良く知らない人間からすればそうは見えないだろうが)ながらゆっくりと歩を進めていたが、
その表情は俄かに引き締められた。


(男……?)


 ゼストは、木に寄りかかって倒れている若い男を発見した。
 そして気配を消し、油断無く近付いたところ、あることに気付いた。


「…………寝ている、のか?」


 寝ていた。
 気絶ではない。事切れてもいない。
 軽く寝息を立て、涎をたらし、どんな夢を見ているのかその頬は盛大に緩んでいた。鼻ちょうちんは無かった。
 仕立ての良い黒いジャケット、ちょっと色が落ちているGパン。特別変な格好とはいえない。
 肩と頭に小鳥が止まり、その肩と頭を時折つつかれながらも一向に目が覚める気配が無いのが微笑ましい。

 ゼストは、密かにため息をつき、外傷が無いか確かめようとした所で、自分の迂闊さに思わず舌打ちしそうになった。


 ここは、スカリエッティの研究所の直ぐ近く。
彼は、保護する少女、ルーテシアの付き添いとして研究所に訪れていた。スカリエッティとは協力関係ではあるが仲はよくない。
 恐らく監視されているであろう自分がこの青年に近付く事で、この青年は確実に捕捉されてしまっただろう。
 今更気付かなかった振りをしても遅い。

 ゼストは、研究所の連中に遅かれ早かれ接触されるならと、青年を背中に担いで、散歩を切り上げ研究所に戻った。


 背負われながらも、青年は目覚める事無く、ぐへへと笑った。どんな夢を見ているのだろうか。
 ゼストは、呆れたようにため息をついた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「んあー……?」


 言うまでも無いことなので言ってしまうが、その男、横島は、霞む視界と思考が徐々にクリアになっていくのを感じた。
 取り合えず先に視界が完全にクリアになる。例によって、知らない天井であった。


「つっ……ここは……」


 痛む頭に顔を顰めつつ、横島は周囲を見渡す。


「ドクター、目覚めたようです」


 女性の声だった。反射的にそちらを向くと、美女がいた。
 服装は下がタイトスカート、上は両胸にポケットが付いた作業服。服装だけ見ると単なる事務員だが、
 薄い紫の長髪に、切れ長の目。まさに涼やかな美貌。文句なしの美人さんであった。


「美人のねーちゃn……いててて!」


 いきなり自分を見て目を輝かせた横島に一瞬目を丸くし、すぐに「なんだコイツ」と言わんばかりに半眼になった。


「調子はどうだい?」


 女性の横に立っていた男性が、横島に気さくに声をかけた。
 なかなかのイケメンな顔立ちに、白衣が良く似合っている。


「ちょっと頭が痛むっスけど……。えっと、ここは?」


「私のラボだよ」


「ラボ? ドクターって呼ばれたから医者かと思ったけど……」


「まぁ、医者というよりは科学者だね」


 白衣の男は一瞬間を置き、


「私はジェイル・スカリエッティ。好きに呼んで貰ってかまわない。彼女はウーノ。君は?」


「ドクター!」


 いきなり名乗るスカリエッティに、ウーノは咎めるように声を上げた。
 その後ろで様子を見守っていたゼストも、血相を変えた。

 色めき立ったのは理由がある。
 スカリエッティは、違法な研究により広域指名手配をされている、れっきとした犯罪者である。
 彼が名乗るということは、生かしては帰さないと言っているにほぼ等しい。ここは彼の城である。隠蔽するくらい造作も無い。

 実際、スカリエッティは横島に微塵も興味を持っていない。好奇心で覗いたが、時間の無駄だったとさえ思っていた。
 だが横島は、


「ジェイル・スカリエッティ……。んー、スカさんって呼んでもいいっスか?」


「!?」


 ウーノとゼストは、目を見開いた。
 犯罪者と知って、とっさにウソをついた? いや、そんな様子には見えない。


「スカさん、かい?」


「あー、だめっスか? じゃあジェイルさんで……」


「ああ、いや。スカさんで構わない」


 柔らかい表情ながら目が全く笑っていなかったスカリエッティだが、今度はちゃんと目も笑い、横島に質問をした。

 Q.なぜあんな所で寝ていたのか。
 A.解らない。気付いたらここ(医務室)に居た。

 Q.今まで何処に居たのか。
 A.日本の鳴海市。


(ミッドじゃない?)
(次元漂流者なのか?)

 ウーノとゼストは顔を見合わせた。


 Q.ウーノばかり見てないで真面目に答えてね。
 A.すんません。


 次に、スカリエッティは、ここに来るまでに何をしていたか、と質問しようとした。
 だが、横島はその質問の前に、スカリエッティに逆に質問した。

 そしてそれは、歴史の大きな分岐点となる。
 このまま質問を受けていれば、横島はPT事件、闇の書事件の関係者であることがスカリエッティに知られていた。
 言い換えれば、高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやての関係者であると知られるということである。

 
「あ、その前にスカさん。スカさんって科学者なんスよね」


「それが?」


「これを見てください。コイツをどう思います?」


「これは……?」


 横島が差し出したのは、火星極冠遺跡の中枢ユニットであった(もちろん文珠で小型化してある)。
 そもそも横島は、このユニットを安全に機能停止させることが至上命題である。駄目元ではあったが。

 果たして、スカリエッティの反応は劇的なものだった。


「よ、横島君、これは? ロストロギア……かい?」


「ロストロギアって……ああ、ジュエルシードみたいな? いや、違うっスよ。それはとある遺跡の中枢ユニットと言うか……」


「へえ……触っても?」


「ええ。手にとってもらってもいいっスよ」


 あっさりスカリエッティに中枢ユニットを渡す横島。


「ただ見るだけでは何がなんだかさっぱりだが、興味深い……。うん、実に興味深いよ」


「実はですね、俺はそれの機能を安全に停止させられる人を探してるんス」


 プレシアさんじゃ無理だったけど。という言葉は言わなかった。どうせ言っても誰のことか解らないだろうと思ったからだ。


「了承した!」


「ど、ドクター!?」


「いやぁ、君は思わぬ拾い物だったみたいだね! こんなに面白そうなものを持ってきてくれるなんて!」


「そ、そうっスか?」


「機能の安全な停止か……。うん、確約は出来ないが、出来る限りはやってみよう。
その間、君の衣食住は保証するよ!」


「あ、ありがとうございます!」


「ドクター……。よろしいのですか?」


 ウーノは、こうなったらスカリエッティは止まらないだろうなぁと思いつつ、念のため確認した。
 一応、彼の「計画」はあらかたの事に手を打ち、後は現場レベルの事が殆どだ。
 むしろ横島が持ち込んだユニットは、スカリエッティの暇つぶしとしてはいい物かも知れない。


「もちろん。どうやら彼はミッドの住人ではなさそうだし、置いても多分問題ないだろう」


「はい」


 問題あるなら、消せばいい。
 スカリエッティは言外にそう匂わせ、ウーノもきちんと嗅ぎ取る。

 だが、横島が起こす騒動に色々困らせられる日々が始まる事は、流石に察する事はできなかった。





「いやー、スカさんがいい人で良かったっス!」


「……君の思っているような男ではないが」


 ゼストは、横島を居住スペースに案内しつつ、ルーテシアに会わせてみようか、と思うのだった。











 あとがき

 いつから私が無印から書くと錯覚していた?


※横島の見た目について。
文中にもある通り、青のGジャンではなく、ちょっと良い品質の黒のジャケット羽織ってます。
また、頭にバンダナはしてません。

 

 

  前編へ続く