注意:このSSは前編より壊れてます。やっぱりヤマ無し意味無しオチ無しです。本編との関連もちょっとだけありますが、壊れたものが嫌いな人は、即刻「戻る」で撤退したほうがいいです。


また、たくさんのパロディも使用されてます。パロディに不快感を覚える方、パロディの元ネタが解らないと不機嫌になる等の症状が出る方も、やはり撤退したほうがベターかと思われます。いやホントに。









それでも構わないという方のみ、下に向かって出発進行!










GS横島外伝・「明乃の闘い!!




〜月面の赤い衝撃編・後編〜







「なんだ!? ここは・・・どこだ?」


 青年は呆然と辺りを見回した。周りは一面の荒野。空は夜のように黒い。


「お、大神さん・・・ご無事ですか?」


「花火くん! 花火くんこそ無事か!?」


「え、ええ・・・心配していただきありがとうございます・・・・・・ぽ」


「そういえば、ここはどこだ? 俺たちは確かにミカサに強襲をかけた筈なのに。

 はっ!? そうだ、みんな、無事か!?」


 青年・・・大神一郎は通信を味方の隊員に繋げた。2人乗りの霊子甲冑、双武に同乗していた花火は無事であった。


 ミカサに強襲をかけた隊員は、他にエリカ、さくら、ロベリア、織姫なのだが・・・。


『大神さ〜ん! 私は無事です〜』


『大神さんも怪我は無いようですね!』


『ハン! 隊長が殺して死ぬようなタマかよ。それよりここがどこかってことだが・・・』


『中尉さん、いったいどうなってるですか!?』


 無事だった隊員が次々に映し出される。


「そ、そんな一度に喋らないでくれよ! 一体全体何がなんだか・・・!?」


 何も解らないのを責めるのはいくらなんでも酷だろう。


『あ、はいは〜い! 私ここがどこか解っちゃいましたよ、大神さん!』


 挙手した手をぶんぶん振りつつ発言の許可を求めるエリカ。


「解ったって・・・。一体どこだっていうんだ?」


『ここ、月ですよ!!』


 間。


「「『『『えええええ!!?』』』」」


『ちょっと待って下さいよエリカさん! ここが月? そんな・・・』


『だって、あんな近くに地球が見えるじゃないですか』


 全員がエリカの指の方向に目を向けた。そこには、とてつもなく大きい青く輝くもの。


『エリカ。アレが地球だと思う根拠はあるんでーすか?』


『根拠はありますよ!

 だって私たち、リボルバーカノンで大気圏突入しましたから!!』


 胸を張り、自身満々で言い切った。そして、


「『ああ、そういえば』」


 それに呼応する花火とロベリア。


『本当なんですか!?』


「はい、さくらさん。本当ですよ」


 花火の口添えもあってか、大神とさくらと織姫も少しは信じる気になった。


 ・・・まるでエリカは信用が無いかのような扱いだが、それを突っ込む人は誰も居なかった。


『でも大神さん、これからどうしましょう? このままじゃレニ(別働隊臨時隊長)たちが危ないですよ』


「そうだな・・・・・・・・・ん?」


『どうした、隊長』


「向こうのほうで誰かが戦ってるぞ」


『ホントですねー』


 全員が遠方に目を向ける。


「なんだか赤い人たちが多いみたいですけど・・・」


『大神さん! 特にあそこの人たち、凄い力を感じますよ!』


 望遠モードで辺りを見回していたエリカが言う。その人たちとは、例の三人である。


『お、またなんか赤いやつらが転移してきたぜ。ん、あっちでもか』





 そして、はたと全員が何かに感づいたかのように黙り込む。





『・・・・・・もしかして、赤いやつらが月に集められたのか?』


「え?」


 大神は周りのメンバーを確認する。


 エリカ・・・光武F2のカラーが赤。

 さくら・・・光武弐式のカラーが桜色。

 ロベリア・・・炎を操るのが得意。

 織姫・・・光武弐式のカラーがイタリアンローズ。しかも二つ名は「地中海の赤い風」




「・・・・・・・・・・・・・・・(全員)」




「俺の選択ミスかーーーーーーーっ!?」


『ちゅ、中尉さん! それはちょっとあんまりでーす!』


「大神さん・・・。私がついております・・・・・・ぽ」


『あーーーっ! 花火さんずるい!』


「私の色は黒(正確にはダークレーズン)ですから」


『花火・・・言うようになったじゃねぇか』


 そんなこといってる場合では無いのだが・・・。


「み、みんな! 冗談、冗談だって!!」


『趣味悪いですよ・・・』


 さくらの目は半眼だ。


「いいっ!? ご、ごめん、さくらくん」


『中尉さん! 大変でーす!』


「織姫くん?」


『あの赤い人たち(例の三人では無い)が戦ってるの、降魔兵器でーす!』


「なんだって!?」


 降魔兵器は以前大神達、帝国華撃団が倒したはずだったが・・・。


「どうなさいますか? 大神さん」


 花火が問い掛ける。他の隊員も、大神の指示を待っていた。


「・・・・・・・・・今の段階では帰る方法は解らない。だからその方法を探さなければならないが、降魔兵器を放っておくわけにもいかない」


「それでは・・・?」


「降魔兵器を、叩く」


 大神の瞳に、もはや迷いは無かった。


『バッチグーです!』


『はい!』


『そうこなくちゃな!』


『そう来ると思ったでーす』


 もちろん、他の隊員の気持ちも同じだ。


「大神さん。御命令を」





「大神華撃団、出撃!!」


「『『『『了解!!』』』』」





 注:これは間違いなく、GS横島です。





 ――――――――――






「なあシオン・・・ここ、もしかして月?」


「私もそう思います。ここが現実ならば、ですが」


 遠野志貴は途方にくれていた。


「何で俺たちこんな所にいるんだろう」


「私にもわかりません・・・。代行者や真祖なら解るのかも知れませんが・・・」


 シオンには膨大な知識があった。だが、知識はあっても魔術的な素養の無い彼女にはどのような力が働いて月に来たかは解らなかった。


「月って空気無いんじゃなかったっけか」


「そのはずですが」


 なんだか焦りのようなものが感じられないが、それもそのはず。彼は非現実なことを数多く体験していたが、今回はそれに輪をかけた非常識だったからだ。

 だから、今の志貴は驚きを通り越しているのである。そして、やや現実逃避も混じっている


 冷静さを売りとするシオンも、驚きの感情を隠しきれない。





 その理由は、





「琥珀、琥珀はどこ!?」


 後ろで大いに怒っている、遠野秋葉の存在だった。


 ただそれだけではここまで途方に暮れはしない。だが、今の彼女は、





「隠れてないで出てきなさい! 琥珀〜〜〜っ!!」





 G秋葉だった。





 しかも髪は真っ赤。





「変だと思ったんだ。翡翠まで居間に居なかったんだから。たぶん琥珀さんが避難させたんだな・・・」


「・・・・・・・・・」


「いくらなんでも琥珀さんにこんなこと(月への転移)が出来るとは思えないけど・・・」


「・・・・・・・・・」


「しかし琥珀さんにも困ったもんだよなぁ。何もシオンが遊びに来てる時に薬を混ぜること無いだろうに。

 ごめんシオン。せっかく来てくれたのにこんなことになっちゃって」


 志貴が頭を下げると、シオンは慌てて首を振った。


「し、志貴が謝ることはありません! 私が勝手に来ただけですし、おそらくこれも志貴のせいでは!」


 微かに頬も赤い。


「兄さん! シオン! 何を和やかに談笑してるんですか! 
一体ここは何処です!? って言うか琥珀は何処ですか!?」



「秋葉、そんな大きな声出さなくても聞こえるって。ただでさえ体がでかくなってんだから」


「兄さん!!」


「解った、解ったから」


「志貴。まずは秋葉を落ち着かせないことには・・・(小声)」


「いや、無理(小声)」


「何故ですか? 以前志貴はあの・・・(秋葉を見ないようにしながら)秋葉を鎮めたことがあるのでしょう(小声)」


「シオンはあの時気絶してたから知らないだろうけど、あの時の動ける範囲は屋敷内に限られてたし、しかも下半身は埋まってて自由に動くのはほとんど片腕だけだったんだ(小声)」


「・・・・・・・・・・・・と、いうことは(小声)」


「何やってるんですか兄さん!! さっさと琥珀を見つけ出して、屋敷に帰って、そして今度こそ思い知らせないと!!」


 どうやらここに来たのも琥珀のせいだと思っているらしい。


「!? 志貴、秋葉、あれを」


 そこには、巨体があった。巨人ではない。赤い巨体だ。


「フ、フフフフフ! 我が名はミルドラース! 貴様ら全員・・・」


「やかましい!!」


 お嬢右ストレート(仮)がミルドラースの顔面にヒットする。巨体が月面に倒れた。


「き、貴様、こんなことをして」


「・・・・・・・・・・・・」


 どがっ!!


 今度は無言でお嬢ヤクザキック(仮)をかます。そしてストンピング十数回。ミルドラースは今度こそ沈黙した。


「何処のどなたかなんて関係ありません。今すぐ琥珀を出しなさい。ええ、今すぐ!」


 首を掴んでガクガク揺らす。だが気絶しているので当然返事はない。


「秋葉、落ちてる落ちてる」


 志貴の言葉でやっと解放する秋葉。


 しかし、異変はまだ始まったばかりだった。


「志貴、新手です!」


 シオンが指し示した先には、数十体の降魔兵器。


「うわ、でかい・・・!? さっきの奴ほどじゃないけど」


「いえ、おそらく大丈夫です。私の知識外のものですが、真租どころか代行者や普段の秋葉にも及ばないはずです」


 シオンが冷静に分析をしていた頃、


「・・・・・・・・・」


 秋葉はやってくる得体の知れないものを見ていた。あれが何かはわからないが、こっちに害意があるのは見ただけで解る。


 今の秋葉には、降魔兵器さえも琥珀の差し金に見えた。


「琥珀のやつぅぅぅっ!!」


 突然攻撃を開始する。いくら降魔兵器といえど、秋葉との身長差は10倍以上(G秋葉の身長は57m)。文字通り蹴散らしている。


「あ、秋葉がさらに切れた」


「とりあえずは、秋葉に続いて敵を倒すしかないようですね」


 志貴はそう言うシオンを見て、


「もしかして、秋葉が敵を蹴散らしてくれるって・・・」


「勿論、予測済みです」





 ――――――――――





 ここ以外でも、続々と異世界、異なる時間軸から赤いやつらがやってくる。赤以外も混じっているようだが、単に赤い奴の近くに居たのだろう。


 そして、あるところでは、


「お前たち、前から言おうと思ってたけど・・・!」


 機動兵器に搭乗している少年が言う。まだ少年だ。


「絶対、ロストグラウンド出身だろう!?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ!?」


「き、キラ・・・?」


「だってそうだろ! 「撃滅!!」とか「滅殺!!」とか、もろにロストグラウンドの悪魔の赤いほうじゃないか!

 って言うか顔! 顔がもう既にロストグラウンド居住者そのものだ!」


「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」


 少年の相棒&敵パイロット三人は、あまりといえばあまりな発言に絶句している。


(キラ・・・ロストグラウンド顔ってのは、たぶんお互い様だ・・・・・・)


「はっ! 何言ってやがる・・・! てめえは戦艦内でドロドロとした愛憎ドラマを繰り広げやがって!

 あのアークエンジェルとか言う戦艦、リヴァイアスって名前に変えたらどうだ? 絶対お似合いだぜ?」


「なんだって・・・?」


 喧々囂々。不毛というか馬鹿そのものな舌戦が繰り広げられる。これ以上はとても見てられない。


 というわけで撤退。ちなみに、月に来たのは少年の相棒の機動兵器の色が原因だろう。赤いから。










「うっわ、すごいよ諒ちゃん! ここ月だよ月!」


「・・・・・・・・・おい、裕次郎。いきなりこんな所に来ちまって、言うことはそれだけなのか?」


「紅君だからねえ。ある意味その性格は羨ましいね」


「・・・・・・・・・・・・(頷き)」


「ってか、これって夢だろ? ありえねーもん」


 見たところ20世紀の普通の男子高校生にしか見えないが、深刻そうなのは「諒ちゃん」と呼ばれた少年だけだ。


「・・・・・・・・・」


 諒ちゃん・・・石黒諒平は、おもむろに裕次郎の頭を殴る。


「ってーーーーっ! 諒ちゃん、何すんのさ!」


「オヤオヤ、石黒君は相変わらず乱暴者だねえ」


「・・・・・・・・・痛い? って夢じゃない?」


 諒平は呆然と呟く。


「あ、そういえば」


「・・・OH MY GOD」


 彼らは一瞬は驚くものの、


「それじゃあとりあえず卓球の練習でもしようか?」


「・・・・・・・・・・・(頷き)」


「ああ!? なに考えてやがる、月だぞここは!? 裕次郎はともかく水野まで」


「どっちにしろ帰る方法なんて解らないしねえ。卓球部の活動をするのも一つの手かもしれないよ。石黒君」


「早く麻妃子(彼女)の所に帰りてーけど、そんな方法見当もつかないからなぁ」


「ど、ドロンパまで・・・・・・・・・! 山吹はともかく」


「フフフ。失礼な」


 深刻な状況にもかかわらず、のほほんとした仲間を見て苦悩する。


「俺なのか!? 変なのは俺のほうなのか!?」


「え? 大丈夫だよ。諒ちゃんはまともだよ。俺が保証する」


「・・・お前に保証されたからなんだってんだ!!」


 諒平が怒鳴った時、


「おや。お客さんの御着きだねえ」


「え?」


 全員が山吹の示した方向を見る。


 そこには、一体の降魔兵器。


「ば、ばばば、ば、化け物!?」


「ジーザス・・・!」


「みんな! ここは逃げよう!!」


 裕次郎の言葉に異議を唱えるものは無く、全員が脱兎のように駆け出す。


 その走る速さはは、さすがに運動部ゆえかなかなかに速い。


 しかし、降魔兵器の大きい歩幅とスタミナには意味が無かったが。


「このままじゃ追いつかれる(ボソ)」


「フフフ。こんなこともあろうかと、とはさすがに思わなかったけど、いい物があるよ」


 山吹が取り出したのは、黄色いラバーのラケット(シェイクハンド)と、ピンポン球一球。


「おい・・・、まさかそれって」


「行くぞ。エクスチェンジボール一号!!」


 カッ!


 山吹が打ったボールは、彼の狙い通りに降魔兵器の鼻先に命中する。


 すると、間も無くその場に崩れ落ちた。


「うわーっ! 真ちゃん(山吹)すげーっ!」


「それって例の、粉末睡眠薬を仕込んだピン球か!?」


「即効性さ」


「即効性とかそれ以前にどんな睡眠薬だぞれは!」


「企業秘密だよ石黒君」





 ・・・・・・・・・・





 そんなこんなで、櫻ヶ丘高校卓球部の部員は、何とかその場を逃げおおせた。


 このようにまともな戦闘能力を持っていない者も多数やってきていたが、今のところは死人は出ていないようである。





 ――――――――――





 場面は再び明乃一行。まだ戦いは続いているが、彼女らは月の異変に戸惑っていた。


「くっそ! なんだってんだこりゃ。バケモンの群れと遠目にぽつぽつ見える赤い奴等。どうなってるんだ・・・!?」


「あの三人の戦いすら理解の範疇外なのに・・・」


 なんかもー、常人では無いはずのアリサとナオも、この異変の中ではただの凡人である。


「あ、あの人危ない!」


「「え!?」」


 明乃の指を差した方向には、降魔兵器に立ち向かう皮ジャンの男。三人が見たときには、その拳の一撃で降魔兵器を倒した所だった。


 皮ジャン男の周りには、今倒したのとは別に、4体ほどの降魔兵器の死骸が転がっていた。










「はあ、はあ、くそ、きりがない・・・」


 皮ジャン男・・・魔神勇二は肩で息をしながら呻いた。こちらに近づく敵はまだ最低4体はいる。


「く・・・・・・!! 限・・・界か・・・!」


 勇二が諦めの言葉を呟いた時、


「情けないぞ勇二!!」


「!?」


(BGM:Like a whirlwind)


 勇二が声が聞こえた所を見上げると、いつのまにか積み上げられた50体程の敵の死骸。そしてその頂点に腕を組んでたたずむ虎頭の男。


「タイガージョー!?」


「まったくもって情けない! この程度の敵を前に諦めようとするとは!」


「だが・・・休み無しで戦っては、さすがにもう限界・・・」





「馬鹿者ぉ!!!」





 ドゴッ!!!


「ぐはっ!?」


 タイガージョーの拳が、目にもとまらぬ速さで勇二の頬を打ち抜く。


「うつけものがッ!『諦めとは愚か者の結論である』という言葉を知らぬのか!! 漢(おとこ)は死ぬまで・・・否、死んでも諦めぬが本道であろうが!!」


「くっ・・・!」


「そして! 閃真流人応派はこの程度で終わるほど底の浅い流派ではないぞ!!」


 勇二は痛みと悔恨で表情を歪め、


「すまないタイガージョー・・・。俺はとんだ腑抜けだ! 諦めた所で全ては終わってしまうというのに・・・」


「フッ。まあいきなり月に飛ばされて、わけの解らぬものに囲まれては混乱するのも無理は無い」


「目が覚めたよタイガージョー。

 よし! ならばこいつらは全員、たとえ刺し違えてでも・・・」





「この痴れ者がぁ!!!」





 ドガァッ!


「ぬはっ!

 な、何をするタイガージョー!?」


「何をするか・・・だと? まだ解らんのか勇二! 刺し違えてでも? 自分が死んでどうする!!」


「な・・・!? し、しかし」


「確かに人の生活を脅かすものを、刺し違えてでも倒そうとする覚悟は見事。そんな気持ちは私にも解らぬでもない・・・」





「だが!!


 


 だがしかし!!!」




「お前が自ら死ぬということ。それはこれからお前が助けることが出来る者、お前にしか救うことの出来ない者を見捨てることに他ならなぬ!!」


「ぬ・・・」


「そして、貴様が死ねば残された者はどうする!? 大切な人を失う気持ち、残された者の気持ち、まさか解らぬとは言うまいな!?

 さらに! お前が無事に戻らねば、お前に近しい者たちはお前をおびき出す餌とされるかもしれん。奴等はお前が月にいるとは知らぬだろうからな。

 そしてその際、死より辛い苦しみを味わうことになるだろうことがお前には解らぬのか!?」


「う・・・く・・・」


 勇二はがくりと膝をつく。


 彼は思う。そうだ。自分はあらゆる意味で簡単に死んで良い存在ではなかった。大切な友人のため。家族の無念を晴らすため。そして・・・。


「・・・・・・勇二。閃真流人応派の拳とはどんな拳であるか言ってみろ」


 タイガージョーは静かな声で問い掛ける。


「・・・・・・人を、生かすための拳・・・・・」





「然り!!

 ならば勇二よ!! 自分を生かすことも出来ぬ者が、他人を生かすことなど叶わぬと知れ!!」




「・・・・・・タイガージョー、俺はとんでもない勘違いをしていたよ・・・」


「解れば良し。その勢いも若さ故」


「ありがとう。タイガージョー」










「・・・・・・・・・・・・なんて・・・なんて熱い人たち」


「私、なんだか涙が・・・」


「それより俺は、このやり取りの間、攻撃せずに待っていたあの怪物たちに一票」


 三人は、しっかり見学していた。










「そういえば勇二よ。先程お前の戦いを見ていて思ったが、」


「なんだ?」


「よくぞここまで己を高めた! というわけで貴様に必殺技を伝授しよう!」


「ああ。よろしく頼む」


 タイガージョーは胸の前で腕をクロスさせ、全身の気を高める。


 それに反応したのか、降下魔兵器もやっと攻撃を仕掛けようとする。


「はあああああああああああああ!!

 閃真流人応派奥義!! 鳳凰天舞!!」


 ドドドドドドドド ドゴオッ!!


 気を乗せた拳が機関銃のように突き刺さる。強靭なはずの装甲と皮膚は、一瞬にしてバラバラに砕け、散る。


「その技は!?」


「この技は使い手の力量に大きく左右される技。今の勇二では地竜鳴動撃ほどの威力も出せまい。

 だが裏を返せば、使い手が強くなれば強くなっただけ威力が向上するということ。すなわち、使い手と共に成長する奥義といえよう!!」


「成る程」


「勇二。もう大丈夫だな。今はこの危機を乗り越え、更なる成長を遂げて帰るべき所に帰るのだ! 特別に私も手伝おう」


「解った。・・・・・・俺はもう迷わない!!」


(BGM:Disabution)


「「はああああああああああああああ!!」」


 地を揺るがすほどに高まる気。勇二の右手が真っ赤に燃える。


「閃真流人応派奥義! 地竜鳴動撃!!」


「閃真流人応派奥義! 飛翔竜極波!!」










「「おおおおおお〜!!」」


 アリサとナオは生身の人間が出したとは信じられないような力を目の当たりにし、感嘆の声を上げることしか出来ない。


「・・・・・・・・・」


 明乃は二人の戦いの様子をじっと見つめていた。


 何一つ見逃さぬと言わんばかりに・・・。





 ――――――――――





 目立つためかさらに敵を呼び寄せる勇二&タイガージョー。だが二人は片っ端から返り討ちにしていた。


 そのとき、明乃のコミュニケ(月神族と通じる特別製)に神無から通信が入る。


「はい、なんですか?」


『何ですかじゃないぞ天河! 今の状況がどうなっているか解っているのか!?』


「なんか変な怪物と知らない人たちが戦っているようですが」


『そこからだとそれだけしか解らんかも知れんが、それは甘い認識と言わざるをえん』


「と言うと?」


『お前の傍で凄まじい赤い力がぶつかり合っているだろう。それによって発生した気が我々の結界によって阻まれ、ついには時空が歪んでしまったのだ』


「ということは、あの怪物や知らない人たちは・・・?」


『そう。それによって呼び寄せられたと言うことだ。主に赤い奴等がな』


 その言葉に明乃は顔を強張らせ、


「ということはですよ・・・

 リーザス赤の将軍とか烈火のサムライトルーパーとかメロンパン好きフレイムヘイズとか紅赤朱の鬼妹とか炎使いのゴッドハンターとか女難に事欠かないファイアイーグルとかが来るかもしれないってことですか!?」


『そいつらが誰かは知らんが、可能性は十分にある』


 って言うか全員来ていたりするのだが。


『そして、事態は悪化している』


「え!?」


『今はもう、赤い奴らに限らなくなってきているのだ・・・・・・』





 ――――――――――





「また違う宇宙に来ちまったみてーだな。月ってことはここは未来か?」


「気を抜くなよ九郎! すぐにマスターテリオンらも来るぞ!」


 月に突如現れた巨大ロボット。その中の少女が後ろの長髪の青年に注意を促す。


 それは、世界最強の魔導書、アル=アジフ。マスター・オブ・ネクロノミコン、大十字九郎。


 そして、魔を絶つ剣、デモンベイン。


「その通りだ」


「!? 来やがったか!」


「よもや、油断で一瞬で倒されるなどと言う醜態は晒さんでくれよ、大十字九郎!」


「言われるまでもねェよ!!」


 九郎らとほぼ同時に現れたのは、黒き少女にしてアル=アジフに勝るとも劣らぬ魔導書、ナコト写本。聖書の獣・金色の魔人、マスターテリオン。


 そして、赤黒の鬼械神、リベル=レギス。




 彼らは戦った。戦って戦って戦い抜き、数々の時代、時空、宇宙を戦場とし、熾烈にして苛烈にぶつかり合った。


 そして今、未曾有の混乱に陥る月に降臨した・・・。





「ほう、何の偶然かまた地球の近くまで来るとは。しかしそれも一興か」


「ちょうどいい。ここで決着つけてやるぜ! マスターテリオンッ!!」


「大十字九郎ッ! はたして貴公に出来るか!?」


「汝等の顔も見飽きた・・・。終わりにしようぞ、ナコト写本!!」


「2000年も生きぬ小娘が! こちらの台詞だ、アル=アジフ!!」


 相対する鬼械神。その気は大きく膨れ上がる。そして、お互いの手に凄まじい力が集中する。


 すなわちそれは、無限熱量、レムリア・インパクト。


 そして、絶対零度、ハイパーボリア・ゼロドライブ。


「てめえのそれは、レムリア・インパクトには勝てないぜ」


「ほう・・・? 面白いな。それは何故だ?」





「てめえのその技・・・文字数が多い!!」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」




 以外にも、呆けた声を出したのはアルだった。


「う、うつけっ! こんな時に・・・真面目にやらんか!」


 至極真っ当な意見である。だが、


「フ、文字数が多ければ何故負ける?」


「マ、マスター?」


 マスターテリオンは、楽しそうだった。


「それは、その長い名前を言い終わる前に、こっちの技が決まるからだ!!」


「成る程。しかし貴公は失念しているぞ」


「なんだと!?」


「技を発動させる前、貴公は「光差す世界に云々」と口上をたれるではないか!!」


「う――――――――――!!」


 九郎はたじろぐ。


「だ、だが、こっちは仮にも「無限熱量」!! 絶対零度どまりの冷気と違って、威力はまさに無限大だぜ!?」


「ほう! だがはたして貴公に絶対零度を超える熱量を出せるか?」


「出してみせる!!」


 九郎とマスターテリオンはにらみ合う。そして、


「大十字九郎。仮にレムリア・インパクトのほうが強いとして、余はそれ以上に強大・・・否、凶悪なものを知っているぞ」


「なんだと!?」


 レムリア・インパクトは絶対必滅の必殺技。だが・・・。


「大十字九郎。貴公、「萌え」と言えば、何を連想する?」


「「はあ!?」」


 九郎とアルは滅茶苦茶呆れた声を上げる。


「それとこれと何の関係が・・・」


「答えよ大十字九郎! 貴公にとって「萌え」とは何だ!?」


「気でも違ったのかあやつは・・・」


 アルは心底疲れた溜息をつくが、


「・・・・・・シスプリ・・・・・・かな?」


「んな!?」


 アルは大切な人に裏切られたかのような声を上げる。


「フ・・・ははははは! そうか。それが貴公にとっての萌えか!?」


「悪いかよ・・・」


「いや、それもなかなかだ。だが、余はそれ以上の萌えを知っているぞ!!」


「何!?」


「おーい・・・」


 アルの呼びかけも聞こえない。


「それは・・・・・・「ゆめりあ」


「ゆめりあ!?」


「そう。その「萌え」の破壊力。それはレムリア・インパクトでさえも、ギャリック砲の前のどどん波の如し。

 そう。言ってみれば・・・ゆめりあ・インパクトとでも言うべきか」


「ゆ、ゆめりあ・インパクト!!?」


「そうだ大十字九郎。エセルドレーダ。余のライブラリからデモンベインにゆめりあのデータを送るのだ」


「い、イエス。マスター・・・」





 10分経過。




 20分経過。




 30分経過・・・。





「ぐっはあああああ!? な、何て威力だ!?」


「そう。まさにゆめりあ・インパクト」


「くっ、負けた・・・」


「フッ、見た所、この月には赤い者が集められているようだ。なのに何故、みづきが居ないのか・・・そう思わぬか? 大十字九郎」


「思うっ!! 思うぞマスターテリオン!!」


「やはり余の見込んだ男よ! 大十字九郎!!」


 それぞれの機体に乗っていなければ、手を握り合ってもおかしくは無かっただろう。


 だが九郎は気付くべきだった。彼の伴侶とも言うべき少女の肩が震えていることに。


「・・・・・・・・・・・・・・・九郎」


「お、なんだアル? トイレか?」





 ぷちっ





「ええ加減にせんかこの大うつけがあああああっっっ!!!」


「ぐぼらっ!?」





「あっははは・・・。アル=アジフは嫉妬深いな? 大十字九郎!」





 ――――――――――





 ジェフティのブレードが降魔兵器を切り裂いた時、もう一体の降魔兵器、「烈風」の衝撃波が直撃する。


「うおっ!?」


 そのショックか、ディンゴはジェフティのコックピットから投げ出された。


「しまった!!」


 ディンゴはとある事情で心肺機能を失い、それを機械で補っている。そしてその動力はジェフティから供給されている。


 早い話、ディンゴはジェフティに乗っていないと死ぬのだ。


「ディンゴさん!!」


 レオは叫ぶが、叫んだ所で事態は好転しない。うるさい敵を自機であるビッグバイパーのレーザーで黙らせ、ディンゴのところに急行した。


「ディンゴさん!?」


「ぐっ! うがああああ!!?」


 のた打ち回るディンゴ。


「このままじゃ!」


 ディンゴを担いでジェフティに運ぼうにも、のた打ち回っている男を時間切れ前に届けるのは不可能に近い。


(でも、やるしか!)


 レオがディンゴを担ごうとした時、ディンゴがのた打ち回るどころかぴくりとも動かないことに気付いた。


 その様は、ビデオの一時停止モードをみているかのような不自然さだった。


「「静止モード」が間に合ったみてーだな」


「え? え!?」


 後ろを向くと、ヘルメットを被って刀?のようなものを持っている人。声からすると若者っぽい。


『静止モードとは重力素子引力を最大にして周囲の時間を遅延・・・』


「ポンコツ、おめーの説明は相変わらず解りにくいんだよ。対象の時間の流れを止めるって言やあ一発だろーがよ」


『サダミツの言動はアバウトに過ぎる』


 見た感じ一人二役を演じる危なげな人だが、レオにはヘルメットが意思を持っているものだと解った。


「あ、あのー・・・」


「ああ悪ィ。つまりはもう大丈夫ってこった。こいつはいっつも回りくどくてよ」


『君はもう少し考えるということを憶えろ』


 ほとんど一人漫才である。


「あの、もしかして、あなたはAI?」


『私のことが解るのか? 正確にはデータ生命と言うのだが』


「いえ、なんとなく・・・」


(ちょっと前の僕とエイダと感じが似てたし・・・)


 レオはクスリと笑ってしまった。


「ま、いいや。んじゃあ俺とポンコツは奴らを片してくっから。あんたは安全な場所に避難してな」


「はい・・・」


 そう言って、二人?は駆けて行った。


「・・・・・・・・・」


 レオは、後ろにある二体の機体を見る。


 今の自分の愛機、最新鋭のビッグバイパー。


 以前の愛機、最強のオービタルフレーム、ジェフティ。


(ディンゴさんはまだ大丈夫そうだし)


 レオは、ジェフティに乗り込んだ。


(この感じ・・・懐かしいな)


『ジェフティに搭乗するのは久しぶりですね。レオ・ステンバック』


「ああ、そうだね。エイダ」


『現在、月面にて正体不明の勢力が交戦中。我々のように空間を転移したものも多数。勢力ごとの機体、年代もまちまちです』


「年代まで?」


『はい。中には蒸気機関を主動力とする物もあるようです」


「じょ、蒸気機関!? 骨董品じゃないか!!」


『はい。ある意味、驚異的なテクノロジーです』


(確かに・・・)


 レオは驚きとも呆れともとれる表情を浮かべ、


「エイダ。僕らはこれからどうすればいいと思う?」


『無駄な戦闘は避け、この時代の情報を収集、そして今後の対策を練る事を提案します。ですが・・・』


「ですが?」


『レオは、おそらくこのミッションプランを最も避けようとするでしょう』


「・・・解ってるじゃないか」


『・・・・・・・・・・・・・・・』


 レオは、「沈黙」というおよそAIらしからぬ行動を取るエイダにくすっと笑い、





「それじゃ、久しぶりに行くよ、エイダ!!」


『了解』






 ――――――――――





「へっへっへ! GAU−8/A アヴェンジャー30mm機関砲は効くだろォ!? なんたってアパッチのやつじゃねぇ。サンダーボルトUについてるやつを引っぺがしたやつだからな!」


 肩に機関砲を担いだやけにいかつい男が、嬉しそうに重火器をぶちかます。簡単そうに言っているが、弾丸だけでも長さ290mm、重さは727gである。間違っても人間の撃てる物ではない。


「おおっと手荒すぎたかい? んじゃあパンツァーファウスト3はどうだい! ま、それでも装甲貫通能力は700mmあるがな!」


 どっごおん!


「106ミリ無反動砲もプレゼントだ! おおとっと遠慮はいらねえ、受けとんな! いや、無反動砲の傑作はカール・グスタフ84mmか!? 俺には物足りねェけどな!!」


「おい、ブラ!」


「スティンガーも撃ち頃だぜ!? でもこいつは安モンでよ、自動追尾じゃなくて手動で誘導しなきゃならんのだがな、ほれ、ジョイスティックで操作するんだ。ほとんどゲームのノリだ!!」


「ブラス様!」


「っと、チャフを撒くの忘れてたぜ。だが、こんなんに騙されたら俺は大笑いしてやるぜ?」


「いい加減にしろ、ブラっ!!」


 さっきから横でごちゃごちゃ言ってた(ブラス主観)優男・・・カルバート・リムリックは、ついに我慢の限界とばかりに叫ぶ。


「おいカル。今良いとこなんだ、邪魔するなよ」


「弾薬だって高いんだぞ!?」


「使わずにしまい込んでも宝の持ち腐れじゃねぇか。使ってやったほうが武器も喜ぶぜ」


 一見正論だが、長い付き合いのカルは知っていた。こいつはただ武器をぶちかませばそれで幸せなのだと。


「おい・・・ユイノもここに居るんだぞ? 大砲なんか今じゃなくても撃てるだろ!? 今のところはファーストブリーダー号に戻ろうぜ」


「私は大丈夫ですが・・・。ここに居ればカルバート様に危険が及びます。ですから・・・」


「バカ言うんじゃねェよ。人間何時くたばるか解らん。だったら後悔しねぇようにチャンスがあったら撃たねェと」


(殺して死ぬような可愛げがお前にあるのかよ・・・)


 カルは頭痛に耐えるかのように頭を抑える。


「どうしてもってんならお前等だけで帰れ。俺はもっと撃ってく」


 カルが口を開こうとした時、





「そうそう、ここは俺に任せて兄ちゃんとお嬢ちゃんは帰んな!」





 三人以外の声に、三人は声のほうに向く。


 そこには、大柄な人影が。だが、露出している部分は一切無く、まるでパワードスーツである。


「お、話が解りそうなやつが来たぜ。手前、何もんだ?」


「俺はA.J。ま、名前なんざどうでもいいが、アンタには大いに共感できる。混ぜてくれや」


「そりゃ構わねェが、そりゃ何処のメーカーのパワードスーツだ?」


「パワードスーツじゃねえが・・・おれは「随行体」って奴でよ。

 だが、そんなもんはどうでも良いだろ・・・?」


「違ェねぇ」


 ブラスはいかつい顔をにやりと歪めた。


「「・・・・・・・・・・・・」」


 ブラスが増えたようなその光景(カルにとっては悪夢のような)に、言葉をなくすカルとユイノだが、


「お? まだ居たのかよカル」


「わかったよ! お前もさっさと帰ってこないと置いてくからな!!」


「ブラス様・・・。なるべくお早く・・・」


「努力はするがよ」


 絶対嘘だ。


 だが何を言っても無駄だと解っているカルは、ユイノの手を引いて船に戻った。




 三十分後。


「いい〜〜〜〜〜〜〜ヤッハア!!」


 A.J.はブラスに負けず劣らず、一発一発が強力無比な威力の弾丸を吐き出す。


「どうよ!? 毎分6万発の実体弾が奏でるハイブリッドバルカンのサウンドは!?」


「おお? やるじゃねぇか! ならこっちはボールド・チャレンジ社製のミサイル、マジックボックス・ランチャーだ! ハッハア! すげぇ反動だ!」


「こっちも負けねぇ! スーパーノヴァレーザー! どうだいこの威力? 破片も思わずダンスしてるだろ?」


「ジェイドメタル・ライマン社製のアイビスVライフル! ライフルとは思えねェ威力だ!!」


「フリーズマイン! ン〜〜〜ん!! クールだ・・・クールすぎるぜ!! み〜んな凍って砕け散る!」


「ドンキーDX2もイカスぜ! 知ってるか? こいつは第二次ハフマン紛争後期の超高性能ミサイルだ! 重装甲ヴァンツァーの腕を軽くふっとなすってんだから驚きだろ?」





 etc,etc・・・・・・。上記の台詞はA.Jとブラスの台詞のほんの一部である。


 正直な話、この猛攻に晒された降魔兵器への同情は禁じえない。


「おい、やるじゃねえか! それって見た感じ6m前後の機動兵器の携帯火器だろ? よくもまあ人間が扱えるモンだぜ」


「あんたこそ、その高性能すぎる武器は何処で手に入るんだ?」


「へっ、ちいっとばかし遠いところさ」





 喋りながらも、撃つ手を止めない。本当に敵が気の毒である。


 後編に続く。