機動戦艦ナデシコ

 

〜ILLEGAL REQUEST〜

 

 

 

 

 

 

第4話      よそごとの「ときめき」

 

 

「また・・・・・・・、ですか?」

 

不毛な争いをもう2度している・・・・。

 

「おう!リリーちゃん2号の仇はこのアリスちゃん4号が取る!」

 

「やめましょうよ。それに俺もうすぐ休憩なんですけど・・・・・・・」

 

貴重な睡眠時間兼自由時間を少しでも欲しかったんだけど・・・・。

 

「だーかーら、俺が早く来たんだろうが!」

 

納得・・・。

 

「はあ、それじゃトレーニングルームに行きましょう。おまえらー後よろしくなー!」

 

「「「「「うーーっす!」」」」

 

後を頼み、ウリバタケ班長と格納庫を出る。

 

 

「くっ!なんて運動性だ!」

 

「だからやめましょうよー。
  俺の作った無人クンはバッタをモデルにしてるんですから運動性能が良いんですよ。
  班長の作った・・・・・、アリス・・・ちゃんでしたっけ?
  それ、火器重視ですからあたりません」

 

俺の言葉を証明するが如く無人クンがアリスちゃんの回りを跳びはね、
火器の照準が定まっていなかった。

 

「いけ!アリスちゃん!」

 

びよんっ!

 

チュドドドドドドド!

 

対人ミサイルの雨が先程まで無尽クンのいた場所に殺到する。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーっ!!!!!」

 

バキャ!

 

無尽クンの体当たりで2メートルほど吹き飛び沈黙するアリス4号。

 

「アリスちゃ〜ん(泣)」

 

「3戦3勝。何奢ってもらいましょうか、班長?」

 

「くっそ〜。今度は勝ってやる!」

 

「楽しみにしてますよ。(奢ってもらうのを)」

 

流石に嫌味だと思ったので最後のセリフは飲み込む。

 

「な、何やってんですか?」

 

震える声でアキトが声を掛けてきた。何時から見てたんだろう?

 

「技術屋の意地のぶつかりあいってとこだよ」

 

俺はここまでの経緯を簡単に述べた。

 

「今のは?」

 

「対人用セキュリティーシステムの試作品だ。まあどこまで使えるか分からないけど」

 

セイヤさんはまだフリーズ中。

 

「ここ、使うのか?」

 

「はい。鍛えておくに越したことはありませんからね」

 

アキトはそう苦笑した。

 

「じゃあ頑張れよ。その人はもうすぐしたらこっちの世界に帰ってくるから放っといてくれ。
  たぶんプロスさんが労働時間しっかり引いてくれるだろうから反省してくれるだろう」

 

「そ、そうですか」

 

失礼な事に触れてはいけない物に触ってしまったような目でこちらを見ている。

 

「それじゃーな」

 

トレーニングルームのドアが軽いエアの音と供に閉まった。

 

「展望室にでも行くかね?」

 

廊下を歩きながらひとりごちる。

 

「思兼?」

 

ウインドウが瞬時に現れる。

 

「何のようですかマスター?」

 

そこはかとなく機嫌が悪いようだ。

 

「えっと、これから地球とコンタクトが取りたいんだ。
  それを秘密にしてくれると嬉しい。後、展望室空いてる?」

 

「今展望室には一人も確認できません。」

 

「ありがとう。」

 

「・・・・・どういたしまして」

 

そんなやり取りがあった。

 

 

展望室に横になる。下はホログラフか植えてあるのか良く知らないが緑色の芝である。

 

「真面目に働くとやっぱ疲れるな・・・・・」

 

幼少の頃より‘神童’と呼ばれ、数々の功績を残してきた科学者とは思えないセリフを吐いた。
彼が科学の道に入った原因である論文。その延長線上にある超A・I「思兼」・・・・。
伊達に子供の身で大人ばかりの研究者達としのぎを削ってきたわけではないのだ。
だがそれは同時に世間一般で言う‘子供らしさ’を失うには充分過ぎた出来事だった。
意見の対立。子供の癖にと罵られ、暴力を受けたこともあった。
最も彼の父から叩きこまれた古流武術のお陰でこちらには被害と言えるものは無かったのだが・・・。
まさに悪循環であった。
カスミやイネス・フレサンジュといった彼に劣らない才能を持った理解者やテンカワ家やミスマル家の
ように心和らぐ場所がなければ彼はここまで穏やかには育たなかっただろう。

 

「ほわ〜〜〜。眠い・・・・。」

 

天井から宇宙空間へと視線を移す。

 

「宇宙に来て、星々を見て、まだ争うのか、人は・・・・・?」

 

憎しみも木連側の根底に根付いているのだろう。
だが一部の都合の良い正義とやらに振りまわされる人々が憐れでならなかった。
そして思い出す。ユニットと接して得た記憶を・・・・・。

 

「それがゲキガンガーにおけるテーマなのだ!」

 

誰がどのような局面で言ったかは良く覚えていなかった。だが・・・・・。

 

「間違ってる・・・・」

 

漠然とそう思う。
俺自身にも正義とは何か?と聞かれても黙るしかない。
あの悠久を思わせた時の中で、最初の300年ぐらいは言葉に出来た。
それからは、時の流れとともに分からなくなった。明確だったのは意思と、欲求、願い。
その三つだけだった。
正義は人によって様々である。
だが、アニメの延長で正義を語るのならそれは正義足り得ないと思う。
自分の人生を賭けていない、薄っぺらな世迷言としか判断できない。

 

「こんな俺に資格があるのか?地球人類を裁く資格が・・・・」

 

シズクが俺に託した事。遺跡の記憶の初期化。
それをすれば少なくとも彼らの撒いた悲しみの種子は存在しなくなる。
同じ条件だからといって、同じ歴史を繰り返すほど生命の可能性は少なくない。
故に、奇跡でも起こらなければ同じ事は起こらない・・・・・。

 

「カスミ・・・・。」

 

いかにカスミとシズクに助けられているか思い知らされた。
たった少し会わないだけでこんなに不安になるとは。正直少し情けなく、それ以上に嬉しい。
俺が彼女を必要としている事を感じられて・・・・・。

 

ピッ

 

「ようカスミ」

 

「よう、じゃないでしょ!何であんな事したの!?」

 

「・・・・あんな事?ああ、簀巻きの事?そうでもしないとおまえ付いてきたろ?」

 

「そうだけど・・・。簀巻きはないでしょ!?」

 

「悪かった。それでそっちは?」

 

「まあいいわ。あんたの読みどおりネルガルとクリムゾンの株価に変動が見られるわ。
  同一人物かどうかは保証できないけど。
  それと帰ってきたら最新鋭戦艦の3隻くらい買えるぐらいお金が入ったわよ」

 

「・・・・いくつ会社を潰した?」

 

「失礼ね・・・。そんなに潰れていないわよ、・・・・・たぶん」

 

「たぶんって・・・・。失業者は出来るだけつくるなよ?」

 

「出来る範囲で。それと貴方の創ったウイルス、ネット上に流したけど本当に良いの?」

 

「それで電子戦の実力が判るし。」

 

「良くもまあアレだけ悪辣なヤツを・・・」

 

「そう誉めるなよ」

 

「誉めてない!」

 

「あっそ・・・・。
  イーヴルはそんなに有害なヤツじゃないし、カ−リーは強力過ぎるしやっぱりイーヴルで正解だよ」

 

最もイーヴルは世間様では超強力と言われる部類に入る。
どこぞのマフィアに送りつけたらそのマフィアが三日後に壊滅していたから驚きだった。

 

「カーリーをネット上で流したら流通が一気に止まって地球圏は壊滅よ?」

 

「それも面白いかも・・・・」

 

「ちょっと!冗談でもそうゆう怖い事言うの止してよね?」

 

「善処するよ」

 

「はあ・・・・。今、テンカワさんがレアメタルの精製やってる」

 

「何でそんな事を?」

 

「ゼラニウムの推力、パワーがエステバリスと比較できないくらい並外れているらしいの。
  並みの金属じゃ耐えられないらしいわ」

 

そういえばテンカワ・アヤナ博士は元々材料工学の研究者としてエステの開発に協力していた。

 

「アレは元々人が乗るように出来てないんだろうな」

 

「?どういう事?」

 

「いや、気にするな。重力制御は?」

 

「明日香さんの方は3割って言ってるけど実際は5割ってとこよ。
  もう少しやりたい事があるみたい」

 

「良くなるに越した事は無いけど。動力系の調査は?」

 

「さあ?匙投げてたわ」

 

「ま、追々わかってくるだろ。後、盾も造っておいてくれると嬉しいかな?」

 

「盾?貴方が設計したの?」

 

「イエス。攻防一体のヤツをね」

 

「もう送ったの?」

 

「ああ。衛星中継で」

 

「呆れた。貴方仕事してるの?」

 

「もちろん。査定に響かない程度に」

 

「報告はこれでお終い?」

 

「これで終わりだと思う」

 

「・・・・・・トオヤ?」

 

「何?」

 

「・・・・早く帰ってきてね?」

 

こちらを上目使いに見ている。まるで縋り付くように・・・・・。

 

「できるだけな」

 

「それで充分。それじゃね」

 

「それじゃーな」

 

ピッ

 

「・・・・・早く帰ってきてね、か」

 

口元が綻ぶのを感じる。

 

「嬉しい事言ってくれるじゃないか・・・・」

 

俺は今、間違いなく微笑んでいるのだろう。
誰に見せる事のない、カスミのためだけの笑顔を・・・・・。

 

 

 

なぜか襲撃されてもいないサツキミドリ2号からの避難民からパイロット三名と
エステ0G戦フレーム3機を預かった。
そんなこんなで現在自己紹介の真っ最中。
こちらは簡素に名前と役職だけ。と言ってもここにいるブリッジクルーと長的立場にいる人のみだ。
本来なら俺も挨拶しなければいけなかったんだろうが自分の名前をあの中で堂々と言う危険を踏む
わけにはいかなかったのでメカニッククルーの集団に紛れている。
同じ制服だし帽子を深めに被っているので見つからないだろう。
このすぐ後に俺は己のした判断を悔やむ事になる・・・・・・・。

 

・・・・・・・うるさいやい。

 

「はじめまして!!新人パイロットのアマノ ヒカルで〜す」

 

この言葉が俺を襲った悲劇の始まりだった・・・・・。

 

「おおおおおおおお!!!」

 

なぜ、叫ぶ?俺の前、後ろ、右、左がなぜか波を模した動きをしている。
俺はといえばその波に呑まれて漂流している。
もう、抵抗する気力もない・・・・・。いや、出来ないと言った方が正確か?

 

「18歳、独身、女、好きな物は、ピザのはしの硬くなった所と、両口屋の千なり。
  後、山本屋の味噌煮込みで〜す!!」

 

「おおおおおおおお!!!」

 

だ、か、ら何故叫ぶ!?俺には判らんよ・・・・。
時に蹴られ、踏まれ、体当たりを食らいまるでパチンコの玉のように人の間を移動しつづける俺。
叫び声にもう耳をやられている。その事に誰も気付かない。薄情なやつらめ・・・・。

 

「よお、俺の名前はスバル リョーコ 18歳、パイロットだ。これからよろしく。」

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

もう特に言いたい事は無い。俺に危害さえ加えないなら・・・・。

 

「特技は居合抜きと射撃。好きなものはおにぎり、嫌いなものは鶏の皮、以上。」

 

「うおおおおおららららら!!!!」

 

ついに狂ったか・・・。
火の付いたたいまつでも持たせると似合ってるかもしれない。
文化レベルは下がると思うが・・・・・。
何やら二人がふざけ合っているが俺としては今ある脅威に立ち向かわなければいけなかった。
人の壁と言う脅威に・・・。

 

べべべんん・・・!

 

ウクレレの音鳴り響き戦艦に静寂が満ちた。

 

「どうも、新人パイロットのマキ イズミです」

 

「うおおお・・・・・??」

 

漸く興奮から醒めたようだった。

 

「ふふふ・・・・ヒカルとリョーコ・・・・・二人揃って・・・」

 

「・・・・・・・」

 

全員凍り付いたように動かなくなる。いや、二人除いて。
一人はこの永久凍土の発生現、後一人はホシノルリその人だ。
俺は耳がやられていたので良く聞こえなかったのが幸いしたのだろう。

 

「「何やってんだか・・・・・」」

 

俺と少女の声が重なった。

 

「大丈夫だったみたいですね」

 

「なんとかな・・・・」

 

二人して深い溜息をついた。
その視線の先にはウクレレを狂ったように鳴らしている人間が・・・・。

 

「バカ、ばっかだ・・・・。この戦艦・・・・」

 

少女が驚いたような視線をこちらに向けている。

 

「テンカワも凍ってるな・・・」

 

「あ、アキトさん」

 

ぱたぱたと小走りにアキトの方へ向かって行く。

 

「モテルね。俺の弟は・・」

 

この呟きを少女が聞いたらどうしただろう?

 

そして俺はへたり込む。

 

「疲れた・・・・」

 

「大丈夫ですか?」

 

まず確認したのは眼鏡。

 

「誰、あんた?」

 

「いやだな〜さっき自己紹介したばっかじゃないですか〜」

 

なぜか叩かれる。俺に非が合ったのか?

 

「ああ、そういえば。アマノさんだっけ?」

 

「はい。アマノヒカルです」

 

「俺はクサナギトオヤ。サブメカニックチーフだ。たぶん顔をあわす時も多いと思う」

 

「そうですか〜」

 

「・・・・・・」

 

会話が止まる。

 

「それで大丈夫ですか?」

 

「死んでないだけマシだろうな・・・」

 

遠まわしな答えを述べる。

 

「何時もああなのか?」

 

指を差す。

 

「大体そう。ハードボイルドぶりっ子な時もあるけど・・・」

 

何なんだろうこの戦艦は?変人大集合な感じだが・・・・。

 

「もう、部屋に帰る・・・・」

 

「さよーならー」

 

後ろで声が聞こえた気がした。

 

 

パイロット4人はサツキミドリまで0G戦フレームを取りに行った。
俺は一応休憩なので自室で寝ていた。

 

ムクッ。

 

医務室へ向かう。俺の予想が正しければ・・・・。

 

ブイン!

 

          ガン!

 

現れた物体に殴り付ける。幸せな事に一撃で気絶してくれた。

 

「ヤマダ・・・。仕事増やすなよ・・・?」

 

医務室の中に放りこむ。

 

「お休み・・・・・」

 

欠伸をしながら自室へ戻る。今度は起こされる事も無かった・・・・。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

〜堕作者のあとがき〜

 

ども、久遠の月です。まだトオヤは染まっていません。何時になったら染まるのか?
作者の気分次第です(笑)
それじゃあまた次の機会に

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

 

久遠の月さんからの投稿第五話です!!

トウヤ・・・まだ自分を保っているのか?(苦笑)

早く壊れた方が、後が楽だぞ(笑)

まあ、シリアスもそれはそれで面白そうだけど。

しかし、今のところは忠実に本編をなぞってますね〜

・・・まあ、ガイが気絶してたけど、問題は全然無いでしょう!!

 

それでは、久遠の月さん投稿有難うございました!!

 

さて、感想のメールを出す時には、この 久遠の月さん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この 掲示板 に感想を書き込んで下さいね!! 

 

 

ナデシコのページに戻る