機動戦艦ナデシコ

 

アキトの野望

 

第2話 「男らしく」で逝こう!

 

 

 

天河アキトの朝は早い。

新聞配達員(この時代にいるのか?)がその仕事を終える頃、アキトの一日は始まる。

朝日がカーテンの隙間から降り注ぐ中、特注のキングサイズのベッドで静かな寝息をたてているアキト。

アキトの両側には、薄桃色の髪をした小学1年生ぐらいの少女と、金髪のまだ小学校にも上がっていない

であろう少女が、裸でアキトの腕に抱きついている。

小学生の方は、アキトによって研究所から救い出されたラピスラズリ。

金髪の方は、幼女でありながらすっかりアキトによって(ピー!)されて(ピー!)されたうえに(ピーーー!!)まで

されてしまった、アイちゃんこと本名アイ・フォースランド

ちなみに、何に使ったのかはまったくの謎だが、周囲には大量の使用済みティッシュが散乱している。

その部屋に、一人の女性が入ってくる。

「アキトさんアキトさん、時間ですよ。起きてください」

ベッドの上のアキトの耳元で囁くその女性は、20代前半の黒髪を肩まで伸ばした、おっとり系の美人だ。

やっと名前がついた、アイちゃんママこと、マイ・フォースランドだ。(おめでとう!(笑))

「・・・・・・ん〜〜〜あと分〜〜〜」

「だめですよ。今日は大事な日なんでしょう?」

マイがアキトの肩を軽く揺さぶる。

「・・・キスしてくれたら起きる」

「も、もうっ・・・・・・・アキトさんたら(ポッ)」

子持ちの未亡人のくせに、中学生の様に純情なマイ。

頬を染めながらアキトの唇に、顔を近づけていく。

そして二人の影は一つになる。

と、突然アキトが、マイの腰に手を回してベッドに引きずり込む。

「や、やん♪・・・・・・駄目ですアキトさん、ご飯冷めちゃう(ポッ)」

マイは妙に嬉しそうな表情で、形ばかりの抵抗をする。

「朝食よりも・・・・・・マイの方が食べたい」

「あ、あん、アキトさん・・・・・・あ・・・・・・んふ・・・・・・・」

「マイ・・・・もう、こんなに濡れてる・・・・・最初から期待してたんじゃないのかい?」

「も、もう・・・・・・・・・・・知りません(プイッ)」

いったい何が濡れているのか作者にもまったく解らないが、マイが真っ赤になって顔をそむける。

「それにココもこんなになって・・・・・・・・すっかり、準備ができてるよ」

「や、やんっ・・・・・・そんな、そんなこと・・・・・・・・ない」

「おや〜?じゃあ、コレはなにかな〜?」

「ああ!・・・・・・そ、そこは許して・・・・アキトさん」

「ふふっ・・・・・・・・マイは相変わらず敏感だね」

「ああ・・・・・アキトさん・・・もう・・・・」

まるっきり新婚家庭の朝の風景のような、アキト家。

隣で「何か」が激しく振動しているのに目を覚まさない、低血圧なラピスとアイちゃん。

朝の光の降り注ぐ寝室で、ベッドの軋む音はしばらく止みそうになかった・・・・・・・・・・・

 

 

 

《GAIA》そう銘打ったロゴが付けられた巨大なビルが、周囲のビルを睥睨している。

世界でも有数の高層ビルであるそれは、ほんの数ヶ月前までは別の会社のものであった。

だがビルの完成直後に、その会社の株が突然の暴落。

倒産寸前となったその会社は、資金作りのためにビルの売却を決定した。

だがそれほど巨大なビルを購入し得る資金を持ち、ちょうど新しい社屋を必要とするような企業が、都合良く存在

するはずもない。

もはや、倒産は時間の問題だと思われた。

そこへ現れたのが、《GAIA》である。

《GAIA》、すなわち《ガイア》。

一年程前に突然現れ、瞬く間に世界の情報通信産業を掌握してしまった謎の巨大企業だ。

技術革新が激しく、日進月歩で新しいソフト・ハードが産み出されるこの業界においてすら異常だと言わる

程の早さで、次々と革新的な新技術を発表している。

さまざまな特許を獲得したこの企業には、そのパテントだけでも莫大な金額が入ってくる。

また現在世界で使用されているOSに関しては90%以上のシェアをもつ、事実上の独占企業だ。

豊富な資金とその卓越した技術力・情報力を武器に他企業の吸収合併を繰り返し、今やニュースや新聞紙上

などで「情報通信の巨人」と言わしめる程の巨大企業に成長した。

この企業は、結局およそ相場の三分の一の値でそこを買い叩いて本社社屋とした。

このあまりの手際の良さから、そのビルを所有していた会社の株が暴落したのは《ガイア》の謀略に違いない、

という噂がまことしやかに囁かれたものだ。

ちなみにビルの壁面には、《ガイア》のマスコット・キャラクターである、メイド服を着て、巨大な鈴を髪飾りに、

猫耳の帽子を被った、緑色の髪の女の子が大きく描かれている。

そのビルの最上階に《ガイア》のオーナー会長にして、「通信業界のドン」と呼ばれる人物の執務室があった。

 

 

 

「はいアキト、あ〜んして」

「アキトおにーちゃん、私のも食べて食べて」

「あ、あのアキトさん、私のも良かったら・・・・・」

「ありがとう、でもみんな順番にね♪」

ラピス、アイちゃん、マイから差し出されたスプーンを順番に咥えるアキト。

先程「新婚さんの朝の風景」が繰り広げられたアキト家の、朝食の風景だ。

アキトの前にももちろんスプーンは用意してあるが、毎度この調子で、使われることはほとんど無かった。

ちなみに、壁面のマスコット・キャラクターの説明で予想はできたと思うが、アキト達の居るこの部屋が《ガイア》

の会長室だ。

そう、幸せそうにスプーンを咥える天河アキト、彼こそが謎の巨大企業《GAIA》の会長にして「通信業界のドン」

と呼ばれる男だ。

あの日火星から地球にボソンジャンプしてから、すでに一年が過ぎている。

この一年何があったのかは、いずれ外伝ででも書こう。(<できもしないことを書くな!by作者の良心)

とにかく、この一年で彼は成り上がったのだ!

余談だが、《ガイア》のマスコット・キャラクターは、言うまでもなく前回において、アキトが並べ立てた嘘八百の

中に登場した女の子だ。

あの話を聞いてすっかり気に入ってしまったラピスが、どうしても会社のマスコット・キャラクターにしたいと、駄々

をこねたのだ。

アキトも今更あれは嘘だったとは言えず、仕方なくイラストレーターに描かせたものが、壁面のアレだ。

名前は当初、ア・イ・キャラットの筈であったが、それだとまるでアイちゃんの為に描いたみたいだ、とラピスが

ヘソを曲げたので変更となった。

新しい名称は、主人公である緑髪の少女が「ラピ子」、その妹が「アイ子」となった。

言うまでもなく、ラピスとアイちゃんの名前からとったものだ。

ライバルのうさ耳少女は、アキトの設定によれば「豚田ひかる」であったが、いくらなんでもこりゃないだろうという

ことで、「薔薇田ヒカル」と変更になった。

ユニット名は、3人それぞれの名前をとって「ラピアイローズ」(笑)である。

アキトの嘘から生まれたこのキャラクター、当初は大きなお友達(笑)を中心にけっこう好評であったが、今では

地球規模といって良いほどの高い人気を誇るキャラクターへと成長した。

なんといってもその理由は・・・・・・・・・・・・

 

その時突如、無人兵器の一団がこのビルに向かって突っ込んできた。

なにしろ無数のチューリップが、地球には落下している。

当然そこから吐き出される無人兵器にも、際限というものがなかった。

軍施設は勿論、工場・空港も軒並みターゲットとなった。

そして当然、周囲より目立つ高層ビルも攻撃目標となる。

だがアキト達は、窓の外の光景に気づいていないのか、少しも慌てる様子がない。

「はい、アキトさん、あ〜ん(はぁと)」

「あ〜〜ん」

パクッ もぐもぐ

「美味しい?」

「うん!」

呑気に食事を続けるアキトであった。

そして、もう少しで敵の射程に入るかと思われた、その時!

 

ビーーーーーーーーム!!

 

突然、壁に描かれた「ラピ子」の目から放たれたビームが、瞬く間に敵を撃墜する。

ビルの壁面に描かれた身長数百メートルの少女が、「目からビーム」で敵を撃退する光景はまさに圧巻である。

平和な時であれば悪い冗談としか思えないこの光景も、戦時下ではまさに女神が降臨したかのように、人々には

見えた。

地上で見物していた人達から、喝采が沸き起こる。

この光景を見るために、わざわざ外国から来る人も少なくない。

なにしろ軍でさえ手を焼いている敵を、民間のビル、それも壁面に描かれた少女が撃退する姿は、この敗色

ムード漂う戦争に現れた一筋の光明に思えた。

そう、それはまさに救世主降臨を思わせる出来事であったのだ。

ビルが完成して直後、初めて彼女の奇跡の光を見た群衆は、感動のあまり涙が止まらなかったという。

しかもその後、世界最大規模の宗教団体の法王様が、「今日、東の国に神の子が降り立ちました」などと演説

してくれたものだから、騒ぎは更に大きくなってしまった。

いまや、このビルはかつてのアメリカの「自由の女神」の如く、人々の心の支えとなっているのだ。

彼女を救世主と崇める者達の聖地として、「目からビーム」を見物に来る人達への見世物として、ここは常に

大勢の客がやってくる一大観光スポットとなっていた。

ちなみに、当然のことだが「目からビーム」は、彼女の目にあたる部分にレーザー砲が備えてあるだけであり、

絵から光線が出ている訳ではない。

このレーザー砲、軍でも開発できないほどの超高出力高性能の逸品であり、《ガイア》以外では作成不能である。

従来のレーザーと違い、無人兵器程度のディストーション・フィールドなら、容易く貫くことが出来るのだ。

未来の知識をもつ、彼等ならではの超兵器だ。

他所では有り得ないからこそ、ラピ子の「目からビーム」は奇跡の光にも見えたというわけだ。

「アキトおにーちゃん、美味しい?」

「うん!」

そんな訳で、外が騒がしいのには慣れているアキト達は、平気で食事を続けていた。

そして・・・・・・・・・

「いよいよ明日、ナデシコが出航する」

朝食を終えたアキトが話しを切り出す。

そう、明日、正確に言えば今夜、ナデシコは出航する筈だ。

もっとも本来の出航予定は数日後である。

前回の歴史においては、木連の攻撃の為にそれが早まったのだ。

必ずしも今回もそうなるとはかぎらないが(アキトは既に世界経済の歴史を変えてしまった)、念のため、今夜

ナデシコに乗り込むつもりだ。

「かねてからの計画通り、後のことはマイに任せる」

「わかりました。まかせてくださいアキトさん」

マイが頷く。

「ねえ、アキト。・・・・・・どうしても私は付いていっちゃだめなの?」

「ラピス、それは何度も話し合っただろ?ラピスがココに残ってくれないと、何かあった時連絡がとれないんだ」

一旦ナデシコが地球を離れてしまえば、その間の地球の状況はまったくわからなくなってしまう。

既存の通信装置では、火星まで航行するナデシコへの情報伝達は不可能なのだ。

中継ステーションを経由すれば、あるいは可能かもしれない。

だが、今の地球〜火星間にそんなモノが存在するはずもない。

アキトとラピスとの間で交される『念話』、一種のテレパシーであるそれは二人の間の物理的な距離や障害物

にはまったく影響されない。

現在使われている如何なる通信機器よりも、正確で確実な連絡方法なのだ。

それゆえラピスはアキトと地球とを結ぶ重要な連絡手段として、残らざるを得ないのだ。

「でも、アキト〜〜・・・・・・」(グスッ)

「ラピス、寂しい時には、呼んでくれればいつでも帰ってくるから」

地球〜火星間の移動など、今のアキトにとっては隣の家に行くのとたいして変わらない。

その気になればいつでも戻って来られる。

だったら、ラピスをおいて行く必要は無いのではないか?

そうも思えるが、やはりリアルタイムの情報は地球に居なければ手に入らない。

一刻を争う緊急事態では、アキトが戻ってきた時には手遅れということもあり得る。

アキトはラピス達にそう説明したが、本当の理由は別にあった。

『これから、ナデシコの女の子達を(ピー!)しようってのに、ラピスが居たんじゃ都合が悪いからな・・・』

読者の期待を裏切らないアキトであった。(主人公の鑑だね(笑))

「アイちゃんも、ママの言うことをきいて良い子にしてるんだよ」

「うんっ!アイ、良い子だもん!」

「よーし、えらいぞアイちゃん」

アイちゃんを抱き上げて「高い高い」してあげるアキト。

なにやらホームドラマのワンシーンのように、心暖まる光景だ・・・・・・・

 

「・・・あ・・・アイ、ちゃんと・・・・・んんっ・・・・・ママの・・・あふ・・・言うこと・・・・きいて・・・・・ひゃんっ・・・るもん」

 

・・・・・・・アキトの頭が、アイちゃんのスカートの中に隠れてさえいなければ。

いったい中で何が行われているのかは謎であるが、ピチャピチャと何かを舐めるような音が室内に響き渡る。

アキトはアイちゃんの股間に顔をうずめたままソファーに倒れこむと、次のステップへと移行する。

「・・・・あ、ああんっ・・・・・おにいちゃん!おにいちゃん!」

「ふふふっ・・・・・・もう、こんなになって。アイちゃんは将来有望だね」

とっくに手を出したくせに、将来を語るアキト。

彼が最終進化形態へと進む日は、近いかもしれない。

「・・・・・・あんっ・・・・あふっ・・・・・ア、アイ、もう・・・・・・」

「アイちゃん・・・・・・・・・もう我慢できないのかい?」

「・・・お、おにいちゃん・・・・・・・・・早くぅ〜〜〜!」

「あーっ!アキトずるい、アイちゃんばっかり!」

参戦してくるラピス。

先程一戦を終えたばかりのマイは、静観の構えだ。

ここからの出来事を詳しく描写すると、Benさんに追い出されてしまうので(手遅れか(笑))、早送りします。

 

 

 

 

「と、言う訳でアキトさん、出かける前にこれだけの仕事は片付けていってください♪」

妙に嬉しそうに、マイが机の上に書類を置く。

「ドン!」という擬音をたてて置かれたソレを見て、アキトの顔に縦線が入る。

「ちょ、ちょっと多いんじゃないかな」(汗)

「あら。だってこれから一年もの間休暇をとろうっていうんですもの、会長としてやるべき事はやっておいて

頂かないと♪」

「会長」を強調するマイ。

実際には、アキトは会長とはいってもほとんど飾り物で、実務のほとんどは社長であるマイがこなしている。

意外な事に、彼女は火星中央大学の経済学部を主席で卒業した才媛であった。

いや、当然と言ってもいいかもしれない。

なにしろマイは「あの」イネス・フレサンジュの母親なのだから。

そうでなければ、いかに未来の知識を持っているとはいえ、所詮経営は素人であるアキト達がここまでの成功

を収めることはできなかっただろう。

ちなみにアキトの専門は主に諜報活動であり、本来なら「情報部長」の肩書きが妥当であろうか。

アキトの情報収集能力、マイの経営能力、そしてラピスの最先端技術知識と情報処理能力。

プロスペクターあたりが見たら「人格はともかくとして」とか言いながら、涎を垂らしてスカウトに来そうな人材揃

いである。

付け加えるなら、アイちゃんも優秀な頭脳の持ち主に「なる」ことは言うまでも無いことだ。

そんな訳で、普段ならほとんどアキトのところには回って来ない書類が、山と積まれているのは少々不自然だ。

おそらく、ラピス達とは違いアキトのナデシコ乗艦の目的を、その豊富な人生経験により「正確に」把握している

が故の、嫉妬交じりの嫌がらせであろう。

「これが終わるまで出かけちゃだめですから、がんばってくださいね♪」

「マ、マイ〜〜・・・・・」(泣)

結局、泣きながら夜中まで仕事をしたアキトであった。

 

 

 

 

「ううぅ〜、すっかり遅くなったよ・・・・」(涙)

まだ暗い街を疾走する一台のバイク。

ようやく仕事を終えたアキトだ。

「予定では、もうじき敵の攻撃が始まる筈だ・・・・・・・・」

アキトの向う先は、ナデシコA。

そう、今日はすべてが始まった運命の日。

アキトのモノになるべく運命づけられた(注:違います)、女の子達との出会いの日だ!

「待ってろよ、みんな(女性限定)・・・・・・・・・・・・・!」

その時前方に、荷物をトランクに満載した車が見えてきた。

「ユリカ・・・・・・・!」

アキトがその車を忘れる筈がなかった。

かつては生涯の伴侶として選んだほどに、愛した女性(ひと)だ。

無くしたはずだったその姿に、アキトの心は激しく揺れる。

彼女を取り戻すために、人の心を捨て修羅となったかつての自分。

もう二度と同じてつは踏まない。

今度こそユリカを守ってみせる。

決意を新たにするアキト。

アイちゃんやラピスにすら手をだすほどの鬼畜となってしまった今の自分。

肉欲に溺れる爛れた生活。

もはや昔の自分には戻れないと諦めていた。

だが今最愛の人との再会によって、アキトの中に暖かい何かが満ちてくる。

それは捨て去ったはずの人の心・・・・・・・・・・・

 

「今度は筆頭愛人にしてあげるね、ユリカ♪」

 

・・・・・・・などでは、断じてなかった。

未来の鬼畜王・天河アキト、彼の頭の中に正妻という選択肢は無い!(キッパリ)

アキトが加速して車に近づくと、予定通りに荷物が転がってくる。

今のアキトなら勿論避けることは容易いが、ユリカとの運命的な出会いを演出するべくワザとぶつかってみる。

 

ドガシャーンッ!!

 

「ウゲェッッ!!」

予想以上に痛かったらしく、アキトは本気で悲鳴を上げていた。

急いで車からユリカが降りてくる。

「すみません!すみません!本当にすみません!申し訳ありませんでした」

ユリカの謝罪をドコか遠くの事の様に聞きながら、アキトは必死で痛みをこらえていた。

「痛いとこ・・・ありませんか?」

「ありまくるよ!!」とは間違っても口にできない、やせ我慢の好きな主人公、天河アキト。

「い、いや、たいしたことは無い」

表情ひとつ変えないのは立派だ。

女性を口説くときには、この演技力がモノをいうのだろう。

「そんなことより、荷物を拾うのを手伝いますよ」

「い、いえ、そんなわけには・・・・」

「でも、これだけ多いと大変でしょう」

ね?と微笑みかけるアキト。

いきなり大技『アキトスマイル』が炸裂した!

だが、アキトは忘れていた。

この世を支配している「お約束」の法則を。

戦いの最初からトドメの必殺技を使った場合、必ずその技は破られる運命にあるのだということを・・・・・・

「じゃあすいませんけどお願いします」

ユリカはまったく平然と、素で返してきた。

 

ガガーン!!!

 

アキトのバックにそんな擬音が響き渡り、背景の壁に亀裂が走る。

必殺技を破られたショックで硬直しているアキト。

なにしろ、もっとも容易く「オチる」筈だったユリカに、最大のキメ技を破られてしまったのだ。

その精神的ダメージは、計り知れない程大きい。

例えるなら、ゴブリンに「ドラグ・スレイブ」を跳ね返されたようなものだ。

リナ・イ●バースも真っ青だろう。

硬直しているアキトを見ていたユリカが、何かに気が付いたようにその顔を凝視する。

「あの、ぶしつけな質問で申し訳ありませんが。あなた、どこかで・・・・・・・・・・・」

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁん」(泣)

 

ユリカのセリフを無視して、突然立ち上がったアキトが泣きながら走り出す。

「ハーリー泣き」に勝るとも劣らない、アキトの「漢(おとこ)泣き」だ!

しかも夜中だった筈なのに、いつの間にかアキトのバックに夕日が見える。

なんと、アキトは特殊背景変化【夕日にダッシュ】も会得していたのだ!(神威さん、ごめんなさい(笑))

アキトのギャグキャラレベルは、既にハーリー君に並んだかもしれない。

 

「お会いしませんでしたかーーー!?」

 

走り去るアキトの背中に、呼びかけるユリカ。

だが今のアキトにその声は届かない。

そのまま見えなくなってしまったアキトの走り去った方向を、呆然と眺めるユリカ。

赤い夕日が、まるでアキトの流した血の涙のようにも見えた・・・・・・

はい、カァァット!じゃ、次のシーンにいこうかな。

作者がそう考えた瞬間、完全にその存在を(たぶん読者にも)忘れられていたアオイ・ジュンが一言。

「僕の出番は・・・・・・・・・?」(泣)

 

 

 

 

「ふっ、俺としたことが、あの程度でうろたえるとは・・・・」

しばらくして復活したらしいアキトの姿が、基地の正面ゲートにあった。

「焦ることはない。

そもそもあの自己中心的脳内麻薬分泌型爆裂妄想娘に、俺の微笑みの価値が解る筈がない。

あんな、高等な技を使う必要は無いんだ。

そう、そうだとも諺にも有るじゃないか〈豚に真珠〉〈猫に小判〉〈ユリカにアキトスマイル〉ってね。

ふふっ。そうさ、黒い王子様と言われたこの俺にオトせない女なんて居ないさ。

王子様は女の子の憧れなんだから。

だから僕は女の子の憧れなんだ。

そう、僕は憧れの王子様なんだ。

さあ、みんな僕の胸に飛び込んでおいで・・・・・・

ふふっ・・・ふふふっ・・・ふふふふふっ・・・・・・・」

かなりイっちゃってるアキト。まだ復活しきれてなかったようだ。

門の前で焦点の定まらない眼をして、ブツブツと独り言を呟いている危険人物を、守衛達が冷や汗を流しなが

ら、遠巻きに監視していた・・・・・・・・

 

 

 

 

「というわけで、入り口前で大笑いしている、妄想男を保護しました」

あの後、空に向って大笑いを始めたアキトを、守衛もさすがに放っておけなかったらしい。

守衛に呼ばれたプロスぺクターが、アキトのIFSに目を止める。

「ほう〜、パイロットかね」

「違うよ!俺は王子様だ」(注:まだ、あっちの世界から戻ってません)

「(汗)というように、先程から訳のわからないことを言って・・・・・」

「う、うむ・・・・・・(汗)」

さすがのプロスぺクターも、アキトの持つ威厳に恐れを為したのか(注:絶対に違います)、少々押され気味だ。

それでも、自らの仕事を果たすべく、懐からエンピツのような機械を取り出す。

「あっなたのお名前さがしましょ♪」

エンピツをアキトの腕に刺す、プロス。

今のアキトを相手に、さすがに舌に刺そうとは(恐くて)思わなかったらしい。

「痛っ・・・・・・遺伝子データ・・・・・・・・・・・・・ってなんで俺はこんな所に!?」

どうやら痛みで正気にかえったらしい。

「ほら出た〜」

プロスが端末の画面を確認する。

「全滅したユートピアコロニーから、どうやってこの地球に・・・・・・って天河アキト?どこかで聞いたような・・・・」

視線を出身地から職業の欄に移したプロス。

「天河アキト、総合情報通信企業《GAIA》会長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってなんですとーーー!?」

目をこすりもう一度確認するが、どうやら目の錯覚ではなさそうだ。

目の前のキ●ガイが、世界最大の情報通信企業の会長で、「通信業界のドン」と呼ばれる男なのか!?

「ど、どうしてガイアの会長がここに?」

「よく・・・覚えてないんだ、あの前後のことは。気が付いたら地球に居た」

「い、いやですから、何故あなたはここに来たのかと・・・・・」

「火星のコロニーで・・・・あいつとあいつの家族は、俺の両親が何故死んだのか知っている筈なんだ」

「あ、あいつって誰のことです?両親が死んだのが、ここに来たことと何か関係が・・・?」

アキトが「シナリオ通り」のセリフを棒読みしているため、二人の会話はまったく噛み合っていない。

「プロスさん。あなたさっきから何を言ってるんです?」

プロスがシナリオと違うセリフを言ってるのに、ようやく気が付いたアキト。

「それはこっちのセリフだ!」と心の中だけでツッコミを入れる、我慢強いプロス。

「え、えーと、あなたはガイアの会長の天河アキトさんですよね?」

「え?・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、それでか!」

プロスの質問に、アキトはシナリオとセリフが違っていた理由を、ようやく理解した。

アキトには、自分が世界有数の大企業のオーナーなのだという自覚がほとんど無かった。

その為、前回と同じことをすればナデシコに乗れると、勝手に思いこんでいたのだ。

しかたなく、アキトは正攻法でいくことにした。

「プロスさん?」

「な、なんですかな?」

「俺を、ナデシコに乗せてくれませんか?」

とたんにプロスの目付きが鋭くなり、灰色の脳細胞が活性化する。

最高機密であるナデシコの事を知っているのは、まあそれほど不思議なことでもない。

仮にも世界最高の情報通信企業のオーナーなら、その程度の情報は簡単に集められるだろう。

ガイアの特殊情報処理室といえば、裏社会では知らぬ者のない超一流の諜報機間だ。

問題は何故それ程の組織のトップが、自らここへ来たのか。

ナデシコの構造を探る産業スパイとして?

それともナデシコの行動を妨害する破壊工作員か?

有り得ない。

プロスはその考えを否定する。

組織のトップがそんなことで、自らの手を汚す筈がない。

やるなら、部下を使うはずだ。

では、目の前の人物は偽者?

いや、違う。

そもそも潜入工作を行おうとする者にとって、目立つことは厳禁だ。

わざわざ世界的有名人の名を語るメリットなど何も無い。

では、やはり本物?だとしたら目的は?

あるいは、只の精神病患者か?

だとしたら、遺伝子データはどう説明する?

本物のガイアの会長が、実は精神病患者だとでも言うのか?

バカバカしい。

では、本物だとして目的は?

産業スパイ?破壊工作員?

ガイアの会長が?

ありえない。

目的は!?目的は一体なんなんだ!?

 

思考の無限ループにはまってしまったプロス。

考えてもわかる筈がない。

なにしろアキトの目的は「ナデシコの女性クルーをオトすこと」なのだから。

世界的大企業の会長が、戦艦の女性クルーをナンパするためだけに極秘の基地までやって来た。

もしもその真相を導きだせるとすれば、プロスは一度精神病院に行くべきだ。

だがプロスは残念ながら正気を保っており、真実に辿り着くことができない。

頭を抱えて苦悩するプロス。

どれほどの時間、そうしていただろうか。

ぷちっ

なにかが切れるような音がすると、突然プロスが顔を上げる。

結論がでたのか、アキトに向かって話を切り出す。

「そうですか、あなたも大変ですねえ・・・・・・・・」

「う、うん」

何が大変なのかよくわからないが、「シナリオ通り」に頷くアキト。

「王子様・・・・・・でしたね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」

耳を疑うアキト。

ちなみにアキトは、自分がイッっちゃってた間の発言は記憶には無い。

「よろしい。それではあなた、今日からこのナデシコの王子様です!

しっかり働いてくださいよ!」

悟りきったような爽やかな笑顔のプロス。(笑)

苦悩のあまり、プロスの脳細胞は焼き切れていた。(ご愁傷様)

「お、おうじさま・・・・ですか」

アキトの顔がひきつる。

「そう!王子様です!」

プロスの背後のスクリーンに、「王子様」の画像が流れては消えていくのを、アキトは呆然と眺めていた。

 

 

 

 

「おーい、そこの少年!」

プロスと別れたアキトは、予定通りに骨折したガイを見物していた。

あの後、本当に「王子様」として契約を結んだアキト。(結局プロスは正気に戻らなかった(笑))

しかし、王子様の仕事っていったい・・・・・・・・・?

「あのロボットのコックピットに俺の大事な宝物が有るんだ!すまーん!取ってきてくれ!」

「やれやれ」

まさか、ここまで予定通りだとはアキトも思ってなかった。

アキトというイレギュラーの存在により、この世界の歴史は既に大きく変わった筈だ。

にも関わらず、予定通りナデシコは完成し、ヤマダは勝手に骨折する。

「偶然、というには出来すぎだな」

運命・・・・・そんな言葉がアキトの頭をよぎる。

アキトが一人でどんなに足掻いたところで、定められた未来は変えられないのか?

ではアキトの行動はすべて無駄なのか。

再びあのような悲劇が起こるというのか。

そんな筈が無い!

アキトが拳を握り締める。

「俺は絶対に未来を変える!あの悲劇を繰り返したりしない!」

アキトは改めて心に誓う。

ア、アキト・・・・・おまえもようやく自分のやるべき事をわかってくれたんだな。(作者感涙)

他の部屋のアキト君が主人公として真っ当な活躍をしている中、おまえだけこんな外道に育っちまって・・・・・

俺(作者)がどんなに肩身が狭い思いをしたか。(遠い目)

だが、そんな思いもこれで終わりだ!

俺は今こそ胸を張って言える。

おまえは俺の自慢の主人公だ!と。

さあ、これから本当のおまえの姿を、読者に見せ付けてやるがよい!

 

「・・・そうさ、絶対に繰り返すものか!

あんな、女の子を一人も(ピーーーー!)できない未来など。

今度こそあの船は、俺のハーレムにしてみせる!!!」

 

アキトの叫びが格納庫に響き渡る。(作者の心にも絶望の叫びが響き渡った)

 

・・・・・・・・も、もはや何も言うまい。

願わくば、一日も早くBenさんが裏ページを作ってくれることを期待しよう。(笑)

 

ズウウゥゥゥゥン!!

 

アキトがエステに乗り込むと同時に、ドッグに振動が走る。

敵の攻撃が始まったのだ。

「来たか・・・・・・!」

この俺様の引き立て役となるべく、雑魚どもがわざわざ。

前回の歴史から考えて、とりあえず出撃さえすればユリカはオトせる(っていうか勝手にオチる)筈だ。

『アキトスマイル』を破られたままなのは屈辱だが、とりあえずそれで良しとしよう。

それに、おかげで新しい必殺技も思いついたしな。

アキトは余裕の笑みを浮かべる。

どうやらアキトは、ユリカに破れて現実逃避の為に逃げ込んだ、「アッチの世界」で新しい技を開発していたよう

だ。

一種のイメージトレーニングによる特訓、と考えて良いだろう。(良いのか、それで!?)

まあ、番組前半で必殺技を破られた主人公が、後半で特訓を重ねることにより新必殺技を会得するのは

「お約束」である。

しかし「新しい必殺技」とはいったい・・・・・・・・?

 

 

 

 

そのころブリッジでは、ルリ、ユリカ、メグミ、ミナト等、アキトの愛人候補者達と、その他大勢(笑)が対応を

協議中であった。

ゴート   「敵の攻撃は、我々の頭上に集中している」

フクベ   「敵の目的はナデシコか」

ムネタケ 「そうと解れば反撃よ!」

ゴート   「どうやって?」

ムネタケ 「ナデシコの対空砲火を真上に向けて、敵を下から焼き払うのよ!」

ミナト   「上にいる軍人さんとか吹っとばすわけ?」

ムネタケ 「ど、どうせ全滅してるわ」

メグミ   「それって、非人道的って言いません?」

ムネタケ 「キィイイイ!」

フクベ   「艦長は、何か意見があるかね?」

ユリカ   「海底ゲートを抜けて、一旦海中へ。その後浮上して、敵を背後より・・・殲滅します!」

ガイ    「そこで俺の出番さ!

       俺様のロボットが地上に出て、囮となって敵を引き付ける。

       その間にナデシコは発進!

       かーっ!燃えるシチュエーションだぁ!」

ウリバタケ 「おたく、骨折中だろ」

ガイ     「しまったー!」

ルリ     「囮なら出てるわ」

全員     「「「「「「「「ええ!?」」」」」」」」

ルリ     「今、エレベーターにロボットが」

 

 

 

 

エレベーターで上昇中のアキトは燃えて(めずらしく萌えではない)いた。

「もう、必殺技を破られるのは御免だ。俺は鬼畜王になるんだ!」

どうやら、王子様になるのは止めたらしい。(笑)

「誰だ、君は?パイロットか?」

突然、空中にスクリーンが現れて、白髪の髭じじいが質問してくる。

女の子意外に興味が無い今のアキトには、このじじいが名前が思い出せなかった。

『誰だったかな、このじじい?・・・・・まあじじいの名前なんかどうでもいい。髭で十分だ』

フクベは髭と命名されたようだ。

「所属と名前を言いたまえ」

「天河アキト。コックです」

さすがに、ここで王子様さまとは言わない。

「ユリカ、あの人は・・・」

「うん・・・(天河・・・・・?)」

召使いのジュンが主人であるユリカに、先程会った青年のことを確認する。

「なんで、こいつがコネクタつけてんだ?」

「彼は、火星出身でね。先程、王子様で採用した」(<まだ言うか(笑))

ガイの質問に答えるプロス、彼はまだイッちゃったままだ。

「だからなんで、王子様がエステバリスを・・・・・・・・・・・・って王子様ぁ?」

「アキト!アキトだーっ!」

ガイの疑問の声を無視して、ユリカがアキトに呼びかける。

「懐かしい〜、そうかアキトかぁ。何でさっき知らんぷりしてたの?・・・そうか、相変わらず照れ屋さんだね」

そんなことよりも普通は、泣きながら逃げ出したことを疑問に思うのではなかろうか?

もちろん、ユリカがそんな些細なことを気にする筈がないと知っているアキトは、平然としている。

「ユリカ、どうしてお前がそこに?」

聞かなくても解ってるが、一応この質問はしておかないと不自然だろう。

「彼女はこのナデシコの艦長です」

「お姫様」などとは言わず、真面目に答えるプロス。

どうやら彼は、アキトに関することだけ思考が壊れているようだ。

「そうだよ。ユリカはこのナデシコの艦長さんなんだぞ、えっへん!」

「ちょ、ちょっとユリカ。あいつ誰なの?」

ユリカの親しげな様子に、召使いであるジュンが身のほど知らずにも嫉妬する。

「うん、私の王子様。ユリカがピンチの時、いつも駆けつけてくれるのよ」

「そうです!彼はこのナデシコの王子様です!」

ユリカの発言にプロスがうれしそうに同意する。

「「「「「「「はぁ?」」」」」」」

全員の顔にクエスチョンマークが浮かぶ。

そして、彼女の伝説の決めゼリフ。

「バカ?」

 

 

 

「ほんとに久しぶりだなユリカ。元気そうで良かった」

「でも、アキトを囮になんて出来ない。危険すぎる」

「コウイチロウおじさんは元気か?火星ではお世話になったからな」

「解ってるわ、アキトの決意の固さ。女の勝手でどうこうできないわよね」

「ま、とりあえず敵は俺に任せろ。ナデシコが出るまでもないさ」

「わかった。ナデシコと私達の命は、あなたに預ける。必ず生きて・・・・帰ってきてね」

意味は通じているようだが、会話が噛み合ってないような気がする。

その場に居る全員がそう思った。

「エレベーター停止。地上に出ます」

「頑張ってください。(ニコッ)」

ルリの報告の後、メグミからの激励が入る。

「ありがとう。君の名前を教えてもらえるかな(ニコッ)」

「(ポッ)メ、メグミ・レイナードです」

「俺は天河アキト。アキトってよんで欲しいな(ニコッ、キラキラッ)」

「(ポポポッ)は、はい、頑張ってください、ア・・・アキトさん」

一度は破られた『アキトスマイル』だが、防御力の低いメグミには効果絶大であった。

『歯のツッパリは要らんですよ!』との相乗効果により、その威力はこれまでの150%の破壊力(当社比)だ。

スクリーンを見ていたミナトも思わず「ちょっと、いいかも(ポッ)」と呟く。

ちなみに、この時点ではいまだ感受性の成長していないマシン・チャイルドのホシノ・ルリには、アキトの微笑

みの魅力が理解できない。

『やっぱり今のルリちゃんには効かないか』

表情を変えないルリを見て、アキトは『アキトスマイル』が無効であったことを知る。

『ま、予想通りだ。そのための新必殺技だしね』

アキトが「アッチの世界」で編み出した新必殺技。

それは、この事態を想定して編み出された、対ホシノ・ルリ専用必殺技なのだ!

『戦闘が終わってからが、ルリちゃんとの本当の勝負だ!』

アキトは燃えていた。

「作戦は10分間、とにかく敵を引き付けろ。健闘を祈る」

10分も要りませんよ。分で全滅させます!」

ゴートの説明に応えると、アキトは一気に突入する。

「ま、待て。いったい何を・・・・・!?」

アキトの行動に慌てるゴート。

ちなみに今回のアキトは、ちゃんとエステ用のライフルも持ち出している。

敵の中央部を走り抜けながら、ピンポイント射撃で確実に相手を仕留めていく。

無駄弾など一発もない。

一体につき一発で、確実に急所に当てている。

普段は只の色キチガイだが、アキトの戦闘能力は超一流だった。

その技量の凄まじさに、ブリッジのメンバーが息を飲む。

「な、なんだあの射撃は!?人間の動体視力で、あれほどの精密射撃が出来る筈がない!」

「う、嘘よ!どうしてコックにあんなことが出来るのよ!?」

「むぅ・・・・!」

従軍経験のあるゴート、現役軍人であるムネタケが驚愕の叫びを上げ、フクベも思わず唸る。

スクリーンの中のエステは空中に飛び上がると、地上に展開する敵を上空から攻撃する。

それも、今度は両手に一丁ずつライフルを持っている。

これには、戦闘には素人であるメグミとミナトも驚いた。

「う、嘘みたい。でもでも、すごくカッコイイです(はぁと)」

「すっごいわね〜、丁ともちゃんと敵に当ててるわよ」

ちなみにプロの軍人でも、こんなことは絶対にできない。

武器が二つ有っても、命令を下す脳が一つである以上、同時に複数の標的に狙いを定めることは不可能だ。

「さっすがアキト。やっぱり私の王子様だね(はぁと)」

「ユ、ユリカ〜」(涙)

「ふ、さすがは私が見込んだ王子様ですな」

ユリカと召使いの声に阻まれて、プロスの発言が聞こえなかったのは、アキトにとって幸いであっただろう。

もし聞かれていたら、プロスとアキトの関係について、妖しい噂がたつのは避けられなかったであろうから。

アキトの攻撃に、無論敵も反撃してくるがすべて紙一重でかわされる。

前方は勿論、背中や頭上からの攻撃すら、アキトはまるで見えているかのように、最小限の動きで回避する。

「バカな・・・・見えない筈の攻撃を、紙一重でかわすなど・・・・・!」

ゴートの疑問ももっともだ。

通常の戦闘における回避とは、常に高速で移動することにより、敵に狙いをつけさせないようにすることだ。

決して、見えていてかわしている訳ではない。

だが、アキトは明らかに見えている。

そうでなければ、紙一重の回避など絶対に出来ない。

敵の攻撃が前方だけなら、あるいは他のパイロットにもできるかもしれない。

(それにしたって銃弾は肉眼では見えない)

だが今、アキトは全方位からの攻撃が見えている。

そう考えざるをえないのだ。

心眼。ゴートの頭にそんな言葉が浮かんでくる。

格闘家やヨガの行者として道を極めると、見えない筈のものが見えることがあると言う。

くだらない迷信だと思っていたが、あるいは実在するのかもしれない。

そうとでも考えなければ、目の前の光景の説明がつかない。

ちなみに、元の世界に居た時のアキトにもこんなことはできない。

これらの異常な戦闘能力は、全てこの世界に来てから身につけたものだ。

アキト自身不思議だったが、いまだ原因はわかっていない。

最初に異常に気づいたのは、この世界に来てすぐ、ユートピアコロニーのシェルターでだ。

最初に侵入してきた敵をアキトが倒した。

だが、考えてみればおかしな話だ。

精神だけが戻ってきた以上、肉体は鍛える以前のアキトのものだ。

なのに、決して反動の少なくないマシンガンの連射で、全ての攻撃を一点に集中している。

これは技術以上に、筋力が無ければ絶対に出来ない。

その時から、アキトは自分の身体に、どうやら異変が起こったらしいことに気づいていた。

「すごいすごい!もーアキトさんカッコ良すぎます(はぁと)」

「ホント、彼、かなりいいかもしれないわね(ポッ)」

「ぶーっ!アキトはユリカの王子様なんですからね!プンプン!」

メグミとミナトがアキトに興味を持ったのが気に入らないユリカが、二人を牽制する。

「えーっ!でも艦長、それって子供の頃の話なんですよね?」

「そーよ艦長!抜け駆けは無しにしましょう」

「違います!アキトは今でもユリカだけの王子様なんです」

「そーですとも!彼はこのナデシコだけの王子様なんです!」

・・・・・・・プロス、いい加減に(アッチの世界から)戻って来い。

そうこうしている内に、ほとんどの敵が撃墜され、残り一機となった。

「後5秒か・・・・これで、ラスト!」

最後の敵が地上に墜落するのと、タイマーが5分経過を知らせたのはほぼ同時だった。

「任務完了っと」

アキトが息を吐く。

「アキトアキト!お待たせー!」

ユリカからの通信と同時にナデシコが浮上する。

「ずいぶん早かったな」

「あなたの為に急いで来たの!」

今更来られてもしょうがないんだが、勿論アキトはそんなことは口に出さない。

「アキトさん、お疲れ様です(はぁと)」

「アキト君、ご苦労様」

「ありがとうメグミちゃん。それから・・・・・・あなたのお名前を、まだ聞いてませんでしたね?(ニコッキラキラッ)」

ミナトに微笑みかけるアキト。

「(ポポポッ)ハ、ハルカ・ミナト、ナデシコの操舵士よ(あ、あの笑顔は反則よね)」

「ハルカ・ミナト・・・・素敵な名前ですね」

アキトが真剣な眼差しで見つめるながら、ミナトに囁く。

『瞳翔星煌(ひとみをかけるほしのきらめき)』に加え、非可聴領域の特殊催眠音波『セイレーンの囁き』がアキト

の声帯から放たれた。

「(キュン!)あ、ありがとう・・・・・・・とっても、うれしいわ(な、なんで、さっき会ったばかりなのに・・・・・・・)」

視覚のみならず聴覚にも働きかけるアキトの神秘の技が、ミナトの正常な思考能力を奪い去る。

ナデシコの女性クルー中、最も高い「対アキト防御能力」を持っていると言われるハルカ・ミナト。

それゆえナデシコSS界において、有り得ないカップリングであると言われてきた《アキトXミナト》。

今、その神話が崩れ去ろうとしていた・・・・・・・・・・・・・(って、それほどのことでもないか(笑))

 

 

 

「戦況を報告せよ!」

やっと出番がきた髭・・・・・フクベが指示を出す。

「バッタ、ジョロ共残存ゼロ。地上軍の被害は甚大だが、戦死者数は

「そんな・・・・なんなのよあのパイロットは?なんであれがコックなのよ?」

ルリの報告に、キノコ頭が喚きたてる。

「認めざるを得まい。よくやった、パイロット!」

「まさに王子様!」

「ミスター、さっきからいったい何を・・・・・・・・・(汗)」

あくまで王子様で押し通すつもりのプロスのセリフに、今更ながらゴートがツッコミを入れる。

「アキト!すごいすごい、さすが!」

「そんな、たいしたことはないよ。それより少し疲れた、休ませてもらえるかな」

「え?・・うん!じゃあ私が部屋で介抱してあげる!」

「ちょ、ちょっと艦長、抜け駆けはずるいです!」

「そーよ艦長、誰が介抱するか、ちゃんと公平に決めましょう」

「ユ、ユリカ〜〜〜〜・・・・・・・・・」(涙)

「さすがは私の見込んだ王子様!モテモテですな」

「ミ、ミスター、だからさっきからいったい何を・・・・・・」

「なんなのよ、この連中!こんなのに戦艦を任せていいの!?」

「むう・・・・・・・・・(汗)」

その騒ぎを横目で見ながら、アキトの視線はある少女に固定されている。

「次は君の番だよ」

アキトが聞き取れない程小さな声で呟くと同時に、その少女も呟いた。

「バカばっか」

 

 

 

 

続く


次回予告

 

妄想一発、オ●ンコ挿入!

我等が鬼畜王の前方を遮る、警察の法の手。

何故、人は人と戦わねばならないのか!?

非情な法律に泣く、美しきオペレーター。

そして、運命の別れ。

息詰まるベッドシーンの連続。

先走り汁の飛ぶ空に、ルリちゃんとの新たなる合体が始まる!!

次回 機動戦艦ナデシコ アキトの野望

    「緑の恥丘」は任せとけ

をみんなで見よう!

 

 

 

 

 

クリさんからの三回目の投稿で〜す!!

エンジョイしてるな〜アキト(笑)

これは最終変化も目前ですね。

どういった形態になるのか、凄く興味深いですけどね(笑)

さて、そろそろR指定にはいってるな(苦笑)

次くらいから18禁だろう・・・

急いで裏ページを作りますか(爆)

 

今回の感想はこの一言ですね。

 

プロスさん最高!!

 

 

では、クリさん投稿、本当に有難うございました!!

 

感想のメールを出す時には、この クリさん の名前をクリックして下さいね!!

後、掲示板になら感想を書き易い、と言う方もおられるので。

この掲示板に出来れば感想を書き込んで下さいね!!

 

 

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