人物紹介

 

ア行

アオイ・ジュン:中東の反連合軍”マグアナック”の隊長。

アズマ:地中海コルシカ基地指令

東 舞歌:コロニーから送り込まれた工作員。

     シェンロンナデシコのパイロット

イネス・フレサンジュ:ウイングナデシコの制作者、ルリに指令を送っている。

           アキトと面識あり

エリナ・キンジョウ・ウォン:コロニーから送り込まれた工作員。

              ナデシコヘビーアームズのパイロット

オオサキ・シュン:ラピスの副官、MS関係に強くトールギスを復元中

 

カ行

カズシ:シュンの同僚、2話で死亡(ファミリーネーム何でしたっけ?(爆)

ゴート・ホーリー:エリナが身を隠すサーカス団の団長

 

サ行

サイトウ・タダシ:元ラピスの部下、スペシャルズのエアリーズ中東部隊長、3話で死亡

スバル・リョウコ:ルリとは別のコロニーから送り込まれた工作員。

         ナデシコデスサイズのパイロット

 

タ行

ダッシュ・オモイカネ:クリムゾンのエースパイロット兼ビクトリア基地の教官

           ラピスのよき友人

 

ナ行

 

ハ行

ハルカ・ミナト:連合軍J.A.P.地区特別病棟の軍医、階級は少佐

プロスペクター:アキトの専属運転手

ホウメイ:裏の修理屋、金さえ出してもらえば宇宙船でも造る。

ホシノ・ルリ:コロニーから送り込まれた工作員。

       ウイングナデシコのパイロット

 

マ行

マキビ・ハリ:クリムゾン総帥、ここでも不幸

ミスマル・ユリカ:コロニーから送り込まれた工作員。

         ナデシコサンドロックのパイロット、唯一複数で行動している。

ムネタケ・サダアキ:連合宇宙軍指令。

 

ヤ行

ユキ・キクノ:マキビ・ハリの副官、外見は美人だが実は男。

       ハーリーの為なら何でもする人

雪谷アキト(テンカワ・アキト):雪谷才蔵の養子、10歳以前の記憶を無くしている。

                  サンクキングダム王国の第1王位継承者

雪谷才蔵:連合政府外務次官、数少ないコロニー和平論者。

     コロニーでテロにあい瀕死の重傷

 

ラ行

ラピス・ラズリ:クリムゾンのエースパイロット。

        アキトの血縁者

レイナ・キンジョウ・ウォン:エリナが身を隠すサーカス団の花形スター

              得意技はナイフ投げ

 

ワ行

(以上五十音順)

 

ルリ:どうしたんですか? これ

めるう゛ぃる:ん! 実は人物関係がよくわからないと言う意見だあったから、作ってみた。

ル:でもこれ5話までしかないですよ?

め:キャラが出てくればそのうち更新する予定。

ル:そですか。 まぁ頑張ってくださいね

め:おう! それでは第06話をどうぞ!!

 

   

 

地球から巣立った人類は、宇宙コロニーでの生活に新たな希望を求めていた。

しかし、地球連合政府は、正義と平和の名の下に圧倒的な軍事力を持って各コロニーを制圧した・・・

 

隔壁を破壊し、コロニー内に侵入するMSリィオー

 

搭載可能なだけの爆弾を抱え飛ぶMSエアリーズ

 

倒れるビル・・・

                  爆発する民家・・・

                                            逃げまどう人々・・・

 

  全てを踏み潰していくMS・・・

 

 

アフターネルガル(A・N) 195年

作戦名 『オペレーション・メテオ』

 

連合に反目する一部のコロニー居住者達は流星に偽装した新兵器を送り込む行動にでた。

 

  各コロニーから地球へと打ち出される5つの流星

 

だが、これは既に連合本部に察知されていた。

 

 

 

新機動戦記 

ナデシコ W

第06話 「Party Princess」

 

 

 

スペースポートは報道陣によって埋め尽くされていた。

「本当にあのシャトルに乗っているのか?」

「間違いない、確かな情報だ」

「おい、出てきたぞ!」

彼らが待っているのは今回のコロニー会議で起こった爆発事件の関係者の1人、瀕死の重傷を受けた

才蔵外務次官と、その息子の雪谷アキトだ。

「急げ! こっち こっち こっちだ!」

「カメラ回せ!」

「雪谷さん! 雪谷アキトさん!!」

姿を表したアキトに報道陣が一斉に駆け寄ってマイクとカメラを向ける。

「才蔵外務次官がコロニーで暗殺未遂にあった事に関して何かコメントを!」

「コロニー側の宣戦布告と見ていいのでしょうか?」

「戦争になるんですか!?」

しかし、アキトは質問に答えることなく静かに下を向いている。

「何か答えてください!」

「ちょっと待って!」

ようやく空港警察が駆けつけ、報道陣からアキトを守るように壁を作り出す。

「こら! 押すんじゃない!」

「どうなんですかアキトさん!」

「下がれ! 下がりなさい!」

「一言お願いします!」

・・・・・・

 

 

 ガンッ!

何とか迎えの車に乗り込んだアキトは拳を思いっきり叩き付けた。

「何を勝手なことを! 才蔵さんが何であんな目にあったのか誰も判っていない!!」

「・・・・・・」

吐き捨てるようにつぶやくアキトにプロスは何も答える事無く、車を走らせた。

 

 

 ガチャ  キィィ・・・

電器がついていない雪谷邸のドアを開けてアキトは中に入った、人の気配は無くまるで死んだように静かだ・・・

「・・・アキト?」

誰もいないと思っていた室内から声がして、一瞬アキトは動きを止める。

「お養母さん・・・」

暗い室内に養母の姿を認め、アキトはうなだれる、養母は疲れ果て憔悴しきっていた。

「すみません・・・才蔵さんを助ける事が出来ませんでした・・・」

「いいのよ・・・ アキトが無事だっただけでも・・・・・・

 それにあの人の死んだ理由じゃ無いのよ」

「・・・そうだけど」

「それに、いつかこんな事が起こるような気もしていました・・・」

「・・・・・・」

「あの人が、何か言っていませんでしたか?」

養母の言葉に、アキトは才蔵の言った事を思い出していた、

 

【・・・お前の、いえ 貴方様の本当の名は・・・テンカワ・アキト、

 かつて、完全平和主義を掲げていたサンクキングダム王国の・・・テンカワ王家の長子・・・】

 

「・・・いいえ、何も」

「そう・・・ですか

 アキト、こんな時ですが、いえ こんな時だからこそ貴方に話しておかないといけないことがあります」

「・・・やめましょう、今は休みたいんです」

「・・・アキト」

その様子に養母はアキトが才蔵からあの事を聞かされたのだとわかった、

「それに今は、才蔵さんの所に行ってあげてください」

弱々しく顔を上げるとアキトは養母に向かって笑った、自分は大丈夫だと。

「そうね・・・ そうさせてもらうわ」

そう言うと、養母は荷物をまとめるために自分の部屋に戻っていった。

【サンクキングダム・・・  テンカワ王家    か】

 

 

アキト達より2日遅れて、ユキも地球に戻ってきていた、但しクリムゾン本部ではなくJ.A.P.地区に、

そこで今回の任務の報告を入れていた。

「今回の事で、コロニーと地球の橋渡しをする人物は完全に消えました」

命が助かったとは言え、才蔵が再び今までの職務に戻ることは出来ないだろうと言うことは既に確認済みだ。

『そうですか、連合にとって惜しい人を失いました』

モニターの向こうでハーリーが残念そうに言う。

『得てして、そう言う人物ほど新しい時代の犠牲になるものです』

ハーリーの背後に立っていた長髪黒髪の男が悟ったように言う。

『それよりユキさん、・・・まだこちらに帰ってこないんですか?』

男の言葉に頷きながら、ハーリーは未だに戻ってこないユキに恐る恐る(笑)尋ねる

はい、早くハーリーさまのお側に戻りたいのですが・・・

 まだ、やり残したことがありますので」

出来るなら今直ぐにでも帰りたそうな表情でユキは言うが、そこは(ハーリーの為だけの)軍人、任された任務が

終わるまで戻ることは出来ない。

『そうですか・・・』

心底安心したように胸を撫で下ろすハーリー、

「・・・ ハーリーさま、その態度はなんですか」

『(ギクッ!)い、いえ! 早くユキさんが帰ってくれないと寂しいな〜 なんて』

ユキの言葉に、慌てて心にも無いことを言ってその場を誤魔化そうとするが、

まあ、ハーリーさまにそう言ってもらえるなんて(は〜と)

 わかりましたっ、任務が終わって戻ったあかつきにはハーリーさまが寂しい思いをされないように、24時間

 お側を離れませんわ(は〜とは〜とは〜と)

『え・・・』

目の前が真っ暗になるハーリー、安易な発言身を滅ぼす・・・いい加減覚えた方がいいぞ(笑)

「そう言う事で、今しばらく時間をいただきたいのですが」

先ほどまでとはうって変わって、キリッとした口調になるユキ、

『瀕死の才蔵外務次官とその息子の事か?』

放心状態となってしまったハーリーに変わって男が答える。

「ええ、それでJ.A.P.ポイントでのモビルスーツの出撃許可を出して欲しいのだけど」

『フム、と言っていますがハーリー特佐・・・

 ハーリー特佐! ハーリー特佐!!』

放心状態のハーリーを揺さぶり現実に引き戻す、

『え?   っあ、はい     わかりました、ユキさん10機ほど持っていってください』

放心しながらも話は聞いていたのか、直ぐに対応するハーリー

「10機も・・・ですか?」

ハーリーの示した数字にユキが疑問の声を上げる、2人の人間を抹殺するには余りにも多すぎる数だ、が

男がそれを補佐する、

『我等が動くときには、よく黒い影がついてくるからな』

「黒い影?    ナデシコ、ですか」

『そう言うことです、彼らはクリムゾンの息のかかったものや、新型のモビルスーツばかり狙っていますからね、

 そのための用心です』

「はッ ありがとうございます、ハーリーさま」

そう言ってユキは通信を終えた。

 

 

「・・・フゥ」

切れたモニターを前に脱力するハーリー、

「苦労しますね、ハーリー特佐」

その様子を見ながら男がハーリーに水を差し出す。

「あ、ありがとうございます・・・(ゴクゴクゴク)はぁ」

コップを受け取ると一気に中の水を飲み干す。

「ユキさん、大丈夫でしょうか?」

「・・・もし、本当にナデシコが現れたら10機では役には立たないでしょう」

「ボクもそう思います、多分大丈夫だと思いますが・・・」

男の答えにハーリーは少し不安そうに答えた。

「そう言えば、明日はハーリー特佐の学園の学園祭だと聞きましたが」

沈んでいるハーリーを元気づけようと男が話題を変える。

「ええ、そうなんです。

 夜にはダンスパーティもあって今から楽しみなんです」

先程までとは、表情を一転させてうれしそうな顔を向けるハーリー、

「ハーリー特佐、もしかして一緒に踊りたい女性でもいるのですか?」

その顔に、ピンッときたのか少しからかい気味に言うと。

「そ、そ、そそそそそんな事・・・」

真っ赤になるハーリー、

「(図星か) 明日の仕事は私が変わりにやっておきますので、ハーリー特佐は羽を伸ばしてください」

男が彼を知る人からは想像もしない気遣いをみせると、

「・・・ありがとうございます」

その申し出に素直にハーリーは頭を下げた。

 

 

 ピッ カタカタカタ・・・・      ピピピッ カタカタッ

学園のコンピュータルームで1台のパソコンが起動していた、その前に座るのはアキトのシャトルとは別の

ルートで地球に戻ってきたホシノ・ルリ。

「聖コスモス学園におけるホシノ・ルリに関する、資料抹消・・・

 転校手続き・・・・・・終了、全て問題なし」

戻ってくる時にドクターから受け取った新たな任務のため、自分の記録の抹消と、新しい任務先での学校への

転校手続きをしていた。

 ワイワイ・・・ ガヤガヤ・・・

「?・・・」

妙に騒がしい学園の様子に、ルリは窓から辺りを見回す。

校庭では生徒達が明日の学園祭の準備を進めているのが見えた、

【学園祭・・・ 今の私には関係ないことですね】

そんな事には興味が無いルリは、直ぐに作業に戻る、

「楽しみですわね、明日の夜のダンスパーティ」

「もちろんですわ、ダンスパーティは高等部との合同ですもの」

「あら、素直にあの人と踊れるかもしれないからって言いなさいよ」

「まぁ、私はそのようなことは・・・」

「あらそう、これでライバルが減りましたわ♪」

「・・・負けませんことよ」

コンピュータールームの外を歩いていった生徒の話を聞いてルリの手が止まった、

【・・・・・・高等部と合同のダンスパーティ?

 高等部、アキトさん・・・・・・アキトさんと】

どんな図式がルリの頭の中を駆け巡ったかは言うまでもないだろう(笑)

 ピッ ガガガガガガガガガガガッッ   ピィィィィ・・・  カタ  パタンッ

一瞬にして全ての手続きを終了させると、ルリはコンピュータルームから飛び出していった。

 

 

翌日 ダンスパーティ会場

華やかである筈の会場がどことなく沈んだ雰囲気に包まれていた、その中心に居るのはアキトだ、少し沈んだ

表情で会場の片隅に佇んでいる。

周りの生徒が皆、ドレスやタキシード姿なのにアキトだけ学生服であることも浮いている原因だ。

元々、アキトはこの学園祭に参加する予定では無く、コロニー会議に外務次官秘書として参加している筈

だった、そのためパーティ用の服など準備していなかった。

「・・・アキトさまのお父様がコロニーでテロにあわれたって、本当ですの?」

「ああ、マスコミじゃ大騒ぎだよ」

「アキトさま、おかわいそう・・・」

そんなアキトを遠目で見ながら生徒達が声を潜めて話している。

そんな中、数人の女生徒がアキトの元へと近づいていく、

「アキトさま、このたびはなんと言えば・・・」

「・・・やはり、パーティの気分などではありません」

「・・・有難う、

 だけど、いつまでも悲しんでいる理由にいかない、そんなんだと養父に怒られるからね」

そう答えると、アキトはいつもの笑みを彼女たちに向ける。

「今日はせっかくのパーティなんだ、楽しまないと」

「アキトさま・・・」

アキトの言葉と笑顔に彼女たちの表情が一気に明るくなる。

そして、そのアキトの言葉を待っていたかのようにパーティが始まった。

「アキト・・・まだ無理してる」

そんなアキトの様子を会場の片隅から心配そうに見ている瞳があった。

 

パーティが始まって数十分、会場の一角で修羅場が生まれていた・・・

「アキトさん、よろしければ一緒に踊っていただけませ・・・ キャウ!」

長いプラチナブロンドを揺らし、白いドレスをまとった女生徒がアキトにダンスのパートナーを申し込もうと

するが、途中で別の女生徒の肘が脇腹に突き刺さる。

「(こそこそ)な、何するのよ姉さん!」

「(こそこそ)抜け駆けしないって、約束だったはずでしょ!」

「(こそこそ)う゛・・・【チッ 普段はトロいのに、どうしてこんな時だけ鋭いの?】」

少しウェーブのかかったブロンド(普段三つ編みのため)の女生徒(同じ顔)にくってかかるが、言い返されて

言葉が詰まる。

「「「「「アキトさん、私と踊ってください」」」」」

瞳に鮮やかなレモンイエローのドレスを着た女生徒5人がアキトの前に来るが、

「「「「「(ギンッ!!)」」」」」

・・・・・・仲間割れ決定(汗)

「あら、アキト君1人なの? なら私と踊らない」

ショートカット黒髪の女生徒(ちなみに副生徒会長)が啀み合っている他の女生徒を尻目にアキトを誘うが、

「あっ! 居た居た 姉さん何してるの!副会長がこんなところで油売っていたら駄目じゃない!」

セミロング黒髪の女生徒が後ろから羽交い締めにして引きずっていく。

「ちょっ ちょっと! 放しなさいっ」

「ほら、早く!【今日ばかりは姉さんの好きにはさせないわよ】」

 ズルズルズル・・・(黒髪姉妹フレームアウト)

「あの、アキトさん もしよかったら私と踊ってくれませんか(は〜と)」

その隙に三つ編みをした後輩の女の子がチャンスとばかりにアキトに迫るも、

 プスッ

「はぅ・・・」

いきなりその場に倒れ込む、替わりにコスモス学園の保険医が、

「アキト君 ワタ・・・」

 パカン!

「MS−07」

軽快な音と共に妙な言葉で沈んでいく保険医(笑)、

「アキト! 私と踊ろう!! ・・・・・・あれ? 居ない

 アキト〜 ふぇ〜んアキトどこ〜〜〜」

長い黒髪をなびかせた女生徒が、辺りの生徒を蹴散らしながら消えたアキトを探して、会場を駆け抜けていた。

 

 

「フゥ・・・」

受け取ったものの口を付けていないグラスを片手に、アキトはパーティ会場を所在なさげに歩いていた、

自分がこういう場所に似合わないことはわかっているが、今 家で1人でいると悪い方向にしか考えが向かない

、それなら人の中に居れば気も紛れるだろうと思って出てきたのだ。

「・・・え? 転校? ホシノさんが」

「まだこの学園に来てから一ヶ月も立っていませんわよ」

「でも、先生方が話していらっしゃるのを聞きましたよ」

ふっと、そんな話が聞こえアキトは思わず足を止めた。

【転校? ルリちゃんが?】

疑問と同時に答えもアキトにはわかった、おそらくドクター・イネスからルリに新しい任務が出されたのだろう。

【ルリちゃんに会いに行かないと・・・】

そう思いパーティ会場から抜け出ようとするが、周りの人が妙にざわついているのに気がついた。

訝しげに辺りを見回し、そしてそのざわめきの元を見つけた。

会場の中を、ゆっくりと進む1人の少女の姿、

しなやかに流れる瑠璃色の長い髪、

シンプルであまり飾り気が無いが、そのぶん上品さを醸し出しているイブニングドレス、

透けるように白い肌に、吸い込まれるような琥珀色の瞳、

まるでファンタジーの妖精がそのまま現れたような美少女だ。

思わずアキトもその少女に見入ってしまう・・・

無論、あちこちからダンスのパートナーを求める手が差し伸べられるが、少女はそれを丁重に断ると誰かを

捜すかのように辺りに視線を走らせる。

【・・・あ!?】

少女はアキトと視線が合うと嬉しそうに微笑みを浮かべ近づいてくる。

と、それを遮る黒い影!

「ルリさん! 僕と踊ってください!!」

 プチッ

「ホシノ流暗殺術最高位が一、地獄極楽撃ぃぃぃぃぃぃ!」

「ほんぎゃぁぁぁああぁぁあぁあ・・・」

 ぐしゃぁぁぁ!!

物理学者と芸術家がそろって感嘆の声を上げるような綺麗な放物線を描きながらハーリーは星となった。

人の恋路を邪魔するヤツは何とやら・・・

「そ、そんな・・・ ルリさん非道い」

「(ムッ) ホシノ流暗殺術の技が一、天地百竜弾!」

「ふがぁぁぁぁ!!」

止め刺された、ハーリー哀れなり。

 

「アキトさん、せっかくのパーティなんです 踊っていただけませんか?」

先程までの事がまるで嘘のようにルリはそっと手を差し出す、

「ルリちゃん・・・

 お相手させていただきます、お姫さま」

後ろで血の海に沈んでいるハーリー(涙)を見ないことにして、アキトは差し出されたルリの手を取った。

アキトの言葉に頬を染めながらルリは微笑んだ。

「「「「「「「「「「「「「「チッ!」」」」」」」」」」」」」」

会場内の室温が下がった事は言うまでもない。

 

 

 ボォォ〜〜〜〜〜〜 ボォォ〜

濃い霧の中霧笛を響かせながら軍用の貨物船が定刻よりもかなり遅れて軍港に入港してくる。

「ようやく到着か、随分と重役出勤だったな」

「おいおい、こんな霧なんだ仕方ないだろ?」

定刻になっても入港してこなかった貨物船を、今か今かと待っていた兵士が愚痴るのを同僚がなだめる。

「わかってるよ・・・ さて、今回の積荷何だっけ?」

「ん〜〜、確か陸戦型リィオー30機とエアリーズ15機」

その答えに思わず調子外れの口笛を吹く、

「そいつはまた、お偉いさんも随分と奮発したな」

「確かにな、こんなにまとめて納入されるのは初めてだ」

「やっぱり”あれ”の影響か?」

「”あれ”?  ああ、あのコロニーから送り込まれたって言われているモビルスーツか?」

同僚の答えに大きく頷く、

「そう、それそれ」

「しかし、あれはうわさだろ? 連合本部の正式発表でも否定されたし」

「だから、怪しいんだろ?  まっ 俺達には関係ないか」

「う〜ん・・・ まぁとにかく、今は積み卸しの準備だ」

頭を捻りながらも取り敢えず本来の仕事の為、無線のスイッチを入れる。

 ドガァァァァァァ!!

         グガァァァァァン!!

岸壁に停泊した貨物船上のコンテナが次々と炎を上げる!

「なぁ!! 」

何の前触れもなく爆発を起こしたコンテナに兵士が硬直する。

「何だ!?   ・・・・・・おい! あれを見ろ!!」

甲板上、炎を上げるコンテナ群の中から何かが見える、

「おい・・・ 何だよあれは!?」

同僚に示されたモノを見て更に兵士の頭は混乱する、炎の中に浮かぶ影、

「”龍”・・・だと!?」

炎の中、コンテナの中から首を擡げ、辺りを睨んでいるモノはどう見ても龍の頭部の形をしている。

 ゴォォォォオォオォォ・・・

兵士がそれが何かを判断する前に、”龍”から凄まじい炎が吐き出され軍の湾港施設を焼き払っていく。

「あれは・・・な、ナデシコだ!!」

”龍”の体が起きあがりコンテナの中から姿を現したのは、右腕のドラゴンハングを伸ばしたシェンロンナデシコ。

シェンロンナデシコはゆっくりと辺りを見回すと、ドラゴンハングの先端、龍の頭部を模した部分から火炎を吐き出し施設を焼き尽くす。

「こうも警備が甘いなんて・・・」

シェンロンナデシコの中で舞歌が警備のMSすら居ない軍港の様子に苦い顔をする。

「こんな時だというのに敵の侵入を警戒していない・・・

 自業自得だわ」

次々と爆炎を上げる港湾施設を舞歌は醒めた瞳で見ていた。

 

 

 ワァァァアァアァアアアァ・・・

拍手と歓声がそのテントを包んでいた、エリナが身を隠す移動サーカス団。

その裏方で団長のゴートが厳つい顔を更に怒らせていた、

「エリナッ エリナはどこだ もう出番だぞ」

次はエリナとレイナの出番だというのにまだエリナが来ていない、ゴートでなくても怒鳴りたくなる。

「大丈夫よゴートさん、あの人ならちゃんと来るわよ」

ゴートとは対照的に全く落ち着いた様子で、レイナはナイフ投げのナイフを研いでいる。

「だがな・・・」

更に何か言おうとするゴートをレイナが制する、

「ほら、時間通り」

「ん?」

レイナの指さす方向を見ると、深紅のチャイナドレスを纏ったエリナが歩いてくる。

「遅いぞ、エリナ・キンジョウ・ウォン! だいたい何故我々と行動を共にしない?」

しかし、ゴートの様子など気にすることなく、

「公演には間に合った、それでいいじゃない」

「なに!?」

「ゴートさん、時間よ お客さんが待っているわ」

「・・・ わかった」

まだ何か言いたそうなゴートだが、レイナに言われて観客の前に出ていく。

その背中を見送りながら、レイナはエリナの肩を軽く叩く。

「私の腕を信じて、貴方はジッとしていればいいから」

「的になるのは好きじゃ無いんだけどね」

レイナの言葉にエリナが苦笑しながら答える、普段は撃つ方だからだろうか、

「それは好きな人は居ないわよ」

エリナよりも更に苦笑しながらレイナが答える。

「それもそうね」

「さぁ、 出番よ」

 

「皆様お待たせしました 我がサーカス団の花形レイナ・キンジョウ・ウォンによるナイフ投げだ」

サービス精神が有るのか無いのか判断しかねる調子でゴートが言うと、サーチライトがナイフを舞うように扱う

レイナの姿が照らし出される、

「いくわよ!」

高く投げ上げたナイフを受け取ると同時に、6メートル先の的に向かって投げる、

 カッ カカッ

3本のナイフがほぼ同時に的に、その的に体を固定されたエリナの体ギリギリに刺さる。

 ウォォォォォォ・・・

客から歓声が上がる、

 ヒュンッ ヒュッ!

ダンスを踊るように舞いながらレイナが更にナイフを投擲する。

 カッ カッ

そのナイフもエリナを傷つけるギリギリの位置に刺さる。

「少しは怖がってよ、じゃないと私もつまらないもの」

レイナのナイフを表情1つ変えることなく受けているエリナに、少しおどけたように言う、

「・・・え 何?」

と、思わずレイナは動きを止める、エリナから恐怖どころか何の感情も感じ取れない事に気づいたからだ。

信頼する事によって恐怖は克服できる、しかしエリナからは信頼感すら感じてこない、

【この人・・・怖いって事知らないの?】

背筋に寒気が走る、ナイフを握る手に汗が滲んでくる。

そんなレイナの心中を知ることなく、エリナは何も宿さない表情を向けている、

【死? 死なの? 死を求めているの?】

それでも演技をやめる理由にはいかず、ナイフを構え舞うレイナ、

【・・・・・・駄目よ、今投げたら当ててしまう!

 死にたいの? エリナ

 ・・・・・・そんな!】

自分の考えを振り切るように最後の2本を投げる、

 カッ カツッ!

右腕と首筋すれすれにナイフが刺さる、

「!!」

息を飲むレイナ、

【エ、エリナ・・・】

 ウワァアァアアアァアァアァァァ・・・

観客の盛大な歓声がレイナに送られる、しかしレイナは気づいていた、首筋に刺さったナイフがエリナの肌を

傷つけていることに。

 

「エリナ! どうして避けなかったの?」

公演が終わりライオンの檻の隣で一息ついているエリナの所にレイナが寄ってくる。

「? それが私の仕事でしょ」

今更何をと言った雰囲気でレイナを見る、

「・・・はぁ  獣のような瞳をして、ホントにそのライオンと同じなのね」

 ガァァァァッ

そのレイナの言葉に反応するかのように今まで大人しくしていたライオンが立ち上がり、吼える、

「あらら、嫌われたかしら?」

しかし、怖がることなくおどけたようにするレイナ、

「女性に向かって獣のような瞳は無いんじゃないかしら?」

別に怒った風ではなく、窘めるようにエリナが言う。

「それもそうね、 ・・・でも貴方はもっと笑った方がいいと思うわよ、

 元がいいんだから、私が保証するわよ」

そう言って、踵を返すが何か思いだしたように振り返ると。

「いけないっ 大事なこと忘れてたわ、 今日はごめんなさい」

「さっきも言ったけど、それが仕事よ」

頭を下げるレイナに、そう言うとエリナは着替えるためにテントから出ていく。

「笑顔、笑顔」

その背中に向かってレイナはめげることなく声をかけた。

 

 

♪〜〜〜♪♪〜〜〜〜 ♪〜〜〜〜〜〜〜♪〜〜♪〜

ルリの手を引き寄せ、背に手を回し抱き寄せると音楽に合わせてアキトはステップを踏む、外務次官秘書として

数々のパーティを経験したアキトは意外とダンスがうまい。

最初のしばらくはややずれていた呼吸もぴったりと合い、やがて2人は華麗に舞い始める、その様子に周りから

感嘆のため息が漏れる。

「見て、アキトさまが」

「アキトさま、お元気になられたのね」

「でも、お洋服が用意できればよかったのに・・・」

多少はルリに対して嫉妬の念は有るが、それよりも彼女たちはアキトが元気になった事の方が嬉しいようだ、

「そんな事ありませんわ」

「え?」

「私には見えます、アキトさまの凛々しいお姿が」

瞳を閉じた女生徒がうっとりとした口調でつぶやく、

 

しかし、そうは考えないヒト達もいるようだ、

「あ、あああああああああああ、アキトォォォ〜!」

その少女が上げた悲鳴に、周りの生徒達が何事かと注目する。

「何よ! あの女ぁ〜 私のアキトに! アキトにぃぃぃぃ〜〜!!」

手にしたハンカチを引き千切らんばかりに握りしめながら、少女の視線は優雅に踊るアキトとルリに注がれて

いる。

「う〜ん、なかなかお似合いのカップルだね〜」

たまたま近くのロン髪の生徒が2人を見て漏らした言葉に、

 ギンッ!!

少女から絶対零度の視線が突き刺さる、

「そ、それじゃ 僕は失礼する・・・ひょ!?」

視線から逃げるようにその場を離れようとしたロン髪を両脇からプラチナブロンドとブロンドの女生徒が羽交い

締めにする、

「さぁ 生徒会長、誰と誰がお似合いのカップルなのかユックリ聞かせてくださいます?(ニッコリ)」

「皆さん、待ってますから(にっこり)」

「・・・・・・」

ロン髪の顔が一気に青ざめる、

「心配しなくても大丈夫ですよ、会長”だけ”じゃ無いですから(にっこり)」

ふと見ると、高等部工業科担当の教員が黒髪の姉妹に連行されているのが見える。

次の日、変わり果てた姿で彼らが発見されたのは、また別のお話・・・

「何がお似合いなの! アキトに似合うのは私、ラピス・ラズリなの!」

連行されていくロン髪を横目に、吼える少女ラピス・ラズリは怒りで薄桃色の髪の毛を別の生き物のごとく

蠢かしている。

って、何でラピスがここにいるんだ? ここの生徒じゃないだろ?

「アキトが居るから」

あ、さいですか・・・

「・・・って、ラピス、何で貴方がここに居るんですか!?」

先程のラピスの悲鳴を聞きつけたハーリーが慌ててやってくる、

「どいて! ハーリー!! あの小娘引き裂いてボソンの藻屑にしてくれる!!」

「へ? って、待ってラピス」

本当にやりかねない勢いのラピスをハーリーが必死になって押さえつける、

「は〜な〜し〜て〜! 離しなさい!!」

「【あの小娘ってルリさんの事? ラピスとアキトさんって何か関係あるのかな】駄目だよ! それに今行ったら

 邪魔するだけだよ」

必死で押さえつけるハーリーを引きずりながらラピスは一歩一歩進んでいく、

「そんな事無い、アキトだって迷惑に思っている筈! アキト今行くから!!」

「【駄目だ このままだとルリさんが・・・】・・・ あれ?」

諦めかけたハーリーが気づくと、ラピスは止まっていた、

「?・・・ どうしたのラピス」

不思議に思いラピスを見る・・・

 

 ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・

 

鬼が居た、後にハーリーはこの時の事を思い出してそう言ったそうだ。

「・・・ハーリー」

身の毛もよだつ冷気を放ちながら、ラピスが口を開く、

「ナ、ナンデショウ?」

冷気にあてられ、ハーリーの口はうまく動かない。

「どこ触っているのかな?(にっこり)」

魅惑的な微笑みを浮かべ問いかけた。但し瞳は思いっきり怒っている、

「え、えええ〜〜と・・・      (沈黙)」

お決まりと言えば余りにもお決まり、ハーリーはラピスの胸を思いっきり掴んでいた。

「ご、午後5語ごめん!! 小さいから胸だって気付かなかっ・・・・・・」

「ホシノ流暗殺術 亜流ラピス死殺技奥義 真説・冥皇乱撃七星滅殺破斬裂ぅぅぅぅぅ!!」

「ふぎゃぐぎょっぅぅぅうぅぅうううぅうぅ!!」

 ズギュルゥゥゥゥアァァァ!!

意味不明の叫び声を上げてハーリーは空高く舞い上がっていった、いつも一言が死を招く事をいい加減に覚えろ、

「ハーリー、この程度で終わるなんて思ってないよね(にっこり)」

ハーリーの落下地点に素早く回り込むと、落ちてきたハーリーに向かって、

「ホシノ流暗殺術 亜流ラピス死殺技 水の章 竜王破斬断逆鱗獄ぅぅぅぅ!!」

「はぐがげぐじゅがぎゅおぉぉぉぉおぉぉおお!!」

 ガシュゴォォォォオオオオオン!!

今度は真横に向かって吹っ飛び、壁を粉砕して外に飛んでいった。よく他の人を巻き込まなかったものだ。

 

 

「・・・なんか、騒がしいね(汗)」

「気にしないでください(キッパリ)」

周りが騒がしいがそんな事は関係なくダンスを続けるアキトとルリ、

「ルリちゃん、また戦いにいくのかい?」

「はい・・・ ごめんなさい、今まで黙っていて」

「いいよ、何となく解っていたから」

「アキトさん・・・

 ・・・・・・!!」

その時、ルリの耳に奇妙な音が聞こえてきた、

「・・・・・・これは、軍用機のエンジン音? 違う、これはクリムゾンのモビルスーツ輸送機!

 ここが、見つかったの?」

ダンスを中断して、ルリは駆け出す。

「ルリちゃん!?」

「アキトさん、ここは危険です クリムゾンが来ます!」

驚くアキトにそう言うと、パーティ会場から出ていった。

【・・・狙いは私ではなくアキトさんかも、そんな事させません!】

 

 

「徹底的にやりなさい、公式発表は地球連合へのテロと言うことになる」

MS輸送機の中でユキはMS隊の隊長に最後の確認をしていた、しかし、やる気十分のユキと違い隊長は

やる気が欠けていた。

「はぁ、ですがあまり気が進みません、民間施設を攻撃するなんて」

人として当然の反応だろう、これから攻撃しようとする目標は民間人しか居ない普通の施設、しかもターゲット

は民間人。

「! なら貴様は残っていろっ 指揮は別の者にとらせる!」

「!? 何故ですか特佐」

「そのような考えだと、死なせなくていい部下を無用に死なせることになる! そんなヤツに現場の指揮を任せ

 られない!」

「!   申し訳ございませんでしたっ これより速やかに任務を遂行します!!」

ユキの反応に態度を180度変える、軍人の悲しいサガか。

「よし、行けっ!」

「ハッ これよりモビルスーツ第1小隊降下します!」

ユキに敬礼すると自分のエアリーズに飛び乗る。

「作戦開始! 第1小隊に続き第2小隊も降下せよ!」

『了解しました!』

もう1機の輸送機に居る第2小隊の隊長機から返事が返り、2機の輸送機からそれぞれMS部隊が目標に

向けて降下した。

 

 

 ヴィィィィ  ズゥゥゥン・・・

重い音を響かせ、エアリーズ2機とリィオー1機がコスモス学園のほど近い森林地帯に降り立つ、

「よし、これよりターゲットを補足、殲滅する!」

『『了解!』』

隊長の声に部下からの返答が来る、

【・・・いくら上からの命令とは言え、こんな事をする羽目になるとはな】

ユキにはああ言ったが、やはり納得が出来ない。

『・・・! 隊長っ』

「何っ!」

部下の声と同時にビームの奔流が襲ってくるっ

 ドガァァァァァァ!!

避けきれなかったエアリーズが1機、ビームの飲まれ消滅する。

『な、何だ?』

「気をつけろ! 敵が居るぞ!【まさか・・・ ナデシコか!?】」

残ったリィオーに注意しながら、隊長の頭にはクリムゾンの行動をことごとく妨害すると言われるMSの話を

思い出した。

公式には存在しないが、確実に存在するナデシコの事を。

 ヴィィィィィィン・・・    ブゥンッ

隠されていた森の中からバスターライフルを構えたウイングナデシコがゆっくりと起きあがる。

 

 

 ドババババババッ   ガガガガガガガッ    ズガァァァァン!!

「な、何だ!!」

「こんなところで戦争か!?」

いきなり現れたMSの襲撃に学園内は混乱していた、今まで戦争とは無関係な位置に居た生徒達なのだから

当然だ。

「わぁぁぁぁ!」

「コロニーが攻めてきたんだ〜!」

「逃げろ!!」

我先にと学園から逃げようとする生徒の中、アキトは襲撃しているMSを見て顔を強ばらせていた。

「あれは・・・ 連合軍のモビルスーツ!」

軍のMSの攻撃から学園を庇うようにウイングナデシコが戦闘を続ける。

「こんなところで戦闘を・・・ まさか! 俺を狙ってか!?」

ルリを狙ってと考えるのが普通だろうが、軍が簡単にルリの居場所を見つけられるとは思わない、ならば

才蔵暗殺の現場を見たアキトを抹殺しに来たと考える方が自然だ。

「アキトさま〜!」

「きゃぁ!!」

アキトの姿を見つけた女生徒が恐怖に震えて走ってくる。

「っ 危ない!!」

流れ弾が炸裂し、その勢いで吹き飛ばされた彼女たちをとっさに受け止める、

「大丈夫か!?」

「は、はい」

「大丈夫・・・です」

アキトに抱きつきガタガタ震えながら答える、取り敢えずけがはしていないようだ。

「さぁ 大丈夫だから、走って」

「は、はい」

「でも・・・」

「早く!」

「「は、はいっ!!」」

アキトに半ば背中を押されるように学園の外に向かって走っていく。

「・・・ ルリちゃん」

彼女たちが走っていくのを見送ってから、アキトはルリの乗っているウイングナデシコを見上げた。

 

 

「リィオー、エアリーズ共にノーマルタイプ2機確認・・・ 破壊します」

表示されたデータを見て、ルリはウイングナデシコを突撃させる、

【さっき落としたエアリーズを合わせても3機? おかしい輸送機が2機なら少なくとも6機は搭載している筈

 ・・・増援が来ますね】

シールドでリィオーを突き飛ばしライフルを構えるが、エアリーズから放たれたミサイルを回避するため

スラスターを噴かす。

そこに倒されたリィオーからライフルが降り注ぐが、装甲で全て弾き返される、

 

 

「くそ! 何でこんな所に敵機が居るんだ!?」

『来ます!』

「クッ」

起きあがったリィオーが叫ぶと同時にナデシコから放たれたビームを寸前でかわす、スペシャルズの名は伊達

ではない。

 

 

『現在敵モビルスーツと交戦中です!』

第1小隊の隊長からの報告にユキはそれほど驚くことなく対応していた。

「敵機? その機種は?」

『解りません! 見たことの無い機種です!』

「・・・ハーリーさまの予言通り、やはりナデシコなのか?」

しばらく考え込むと、

「その所属不明機回収する! 残りのリィオー、エアリーズ発進させよっ 帰投中の第2小隊も現場に向かわ

 せろ!!」

輸送機内はにわかに慌ただしくなった。

 

 

 ピッ カタカタカタ・・・・      ピピピッ カタカタッ

「やっぱり・・・」

ディスプレイに表示されたデータを見てユリカは、大きく頷いた。

「私以外にもクリムゾンの施設を攻撃している人がいる・・・

 1人はエリナさんだけど・・・まだ他にもいるんだ、私と同じナデシコに乗る人が、

 あってみたいな、みんなに・・・」

にっこりと微笑みながらユリカはつぶやいた。

 

 

 ザザァ〜  ザザザァ〜〜

任務を終えたリョウコは再びホウメイの浮きドックに戻っていた。

「オ〜イ リョウコ、飯だよ」

「ん〜 わかった」

整備の終わったナデシコデスサイズの上で寝そべっていたリョウコがホウメイの声に答え起きあがる。

「? 何見ていたんだい」

「ん 月だよ、地球で見る月は綺麗だなと思って」

そう言って、リョウコは月を見上げる、

「月ね」

つられるようにホウメイも月を見上げる、何の変哲もない満月だ。

「コロニーから見た月はなんか・・・ 墓場みたいだったから」

「へ〜、墓場ね」

リョウコの言葉に納得するホウメイ、確かに空気の揺らぎの無い宇宙空間だと物がはっきりと見えてしまうか

ら、月もそう見えるのだろう。

「オレはいつまでこの月を見ていられるのかな・・・

 ヘヘッ アイツは月なんて見ていないだろうけどよ」

そう言って、リョウコはナデシコデスサイズから飛び降りる。

「強がってばかりで、アイツももう少し人生楽しめばいいのに、

 ・・・・・・生きている間にさ」

「理屈でわかっていてもなかなか出来ない、人間なんてそんなものさね」

ホウメイの言葉に頷きながら、もう一度月を見上げる、

「・・・アイツ、何してるかな?」

「ホウメイさ〜ん、リョウコさ〜ん、早く来ないと夕飯なしですよ〜」

「おっと、いけねぇ オレの分残しとけよ〜」

かけられた声に、リョウコは慌てて走っていった。

 

 

 ドババババババッ   ガンッガンッガンッ!!

降り注ぐ弾丸をモノともせず、ナデシコはライフルを構えビームを放つ、

「? どこを狙っている」

見当違いの方向に放たれたビームを訝しげに見るが、次の瞬間3つの火球が生まれる、輸送機から増援に

降りてきた4機のうちの3機が一撃で落とされた。

「なんて破壊力・・・ 機体の基本性能が違いすぎる!!」

第1小隊の隊長がその威力に改めて戦慄する、このままでは全滅する。

 ガランッ    ヴィ、ブォォン・・・

ナデシコはライフルを投げ捨てるとシールドに装備されていたビームサーベルを抜き放つ、

 ゴウッ

翼状のスラスター噴かし、一気にリィオーに詰め寄る。

『うわぁ・・・あぁぁぁぁぁぁ』

無線機から部下の悲鳴が上がる。

「くそぉ!」

慌てて援護射撃をするが、エアリーズのライフルでは装甲に傷すら付かない。

 ズシャァァァ!!  ゴオォォォォォン!!

両断され爆発するリィオー、

 

 

「増援確認・・・ ? 市街地から3機 何故市街地から」

だが、考えるのは後だ、今は敵の殲滅が先だ。

輸送機から降りてきた残りのエアリーズが背後に回り込む、と同時に援護のエアリーズ3機が3方向から飛び

かかってくる、

「甘い」

足下に転がっているリィオーの残骸を蹴り上げ3機のエアリーズを牽制し、背後に回り込んできたエアリーズ

を機体を半回転させサーベルで切り裂く、

その勢いのまま機体を1回転させて別のエアリーズに迫り、シールドで殴りつけサーベルでコクピットを貫く。

『上昇だ! 上昇しろ!!』

ようやくリィオーの残骸を払いのけたエアリーズが慌てて上昇しようとするが、フル装備の為動きが鈍い、

モタモタとしている間にナデシコが飛びかかり、エンジン部を切り裂く。

『ワァァアァ・・・』

片方のエンジンを失い出力バランスの崩れたエアリーズが僚機にぶつかり爆発を起こす、装備の弾薬に火が

回ったか、

「後、1機・・・ え?」

残ったエアリーズにナデシコを向けようとした時、センサーに反応があった。

「まだ誰か、学園に残っている?

 ・・・・・・あれは、アキトさん!!」

モニターに映し出されるのは間違いなくアキトだ、学園の時計塔の近くでルリをウイングナデシコを見上げる

アキト、

「どうして? 速く逃げてください!」

が、スピーカを切っている為アキトには聞こえない。

『喰らえ!!』

ルリの見せた隙を見逃すことなく、残ったエアリーズがミサイルを一斉に放つ、

【!! 駄目! 今 避けたらアキトさんに】

 ガガッガアァァァァン!!

連続してミサイルがウイングナデシコに降り注ぐ が、その中の1発がナデシコを逸れ時計塔を破壊する。

「!!」

崩れた時計塔の瓦礫がアキトめがけて降り注ぐ、

「アキトさん!!」

 

 

「やったか!?」

ありったけのミサイルをたたき込んだ時点で、唯一生き残った第1小隊隊長機が倒れ込んだナデシコを確認

する。

「・・・クッ 衝撃で倒れただけか」

爆煙の中から無傷のナデシコが姿を現したのを見て、顔をしかめる。

あれだけのミサイルを受けて無傷ならもうエアリーズでは破壊できない。

「・・・クソッ ここまでか      ん!?」

 

 

「何!? ナデシコが雪谷の息子を庇っているだと!?」

『はい! あれは間違いなく ターゲットの雪谷アキトです』

その報告にユキは顔色を変えた、

「・・・ 何故そんな事を?

 もしかして雪谷の息子、ナデシコのパイロットと何か関係が?」

 

 

 ゴガァァァァン!   ズゥゥゥン!!    ガッガッガガッガッ

「くぅ!」

反撃しないのをいい事にエアリーズからは次々とミサイルが打ち込まれる、いくらウイングナデシコの装甲が

頑丈でも限界は有る。

だが今動けばシールドで庇っているアキトに、時計塔の瓦礫が降り注いでしまう。

「このっ」

頭部を巡らせバルカンを発射するが、その程度は避けられてしまう。

「このままでは・・・」

心配そうにモニターに映るアキトを見る、瓦礫がアキトを直撃する前にシールドで庇ったつもりだったが、小さな

破片が当たったらしく気を失っている。

 ガガガガガッ    ガゴォォォン!!     ズゥゥゥン!!

次々とミサイルが直撃し、機体を揺らす。

機体を放置してアキトを安全な場所まで運ぼうかとまでルリの思考が進んだ時、もちろんそんな事をすれば

クリムゾンにウイングナデシコを奪われる事になるのだが、

 

精霊が舞い降りた。

 

 ガゴォォォォォォオオォオン!!

盛大な音を立てて、エアリーズが吹き飛んだ。

「何!?」

驚いてルリがナデシコのカメラを巡らすと、

「!? 白に薄桃色のラインのリィオー あのパーソナルカラーはクリムゾンのラピス・ラズリ特佐!?」

戦場の精霊と称されるラピスのリィオーがエアリーズを殴り倒していた。

 

 

「ユキ特佐の事だから、絶対アキトを生かしておかないと思ったけど・・・こんな直接的な手で来るなんて」

エアリーズを殴り飛ばしてからラピスはウイングナデシコを見る。

「・・・あのナデシコ、やっぱり生きてたんだ

 でも、どうしてアキトを助けてくれたの・・・・・・」

しかし、理由はどうあれアキトを助けてくれた事は感謝するべき事だ。

「ここであの時の決着をつけたいけど、私も見つかったら後々困るし・・・

 それに、今頃はユキの所に作戦中止命令も届いてる筈だから」

そうつぶやくと、ラピスはエアリーズを行動不能にしてその場から去っていった。

 

 

「モビルスーツ隊 全滅です!!」

「何! 10機全部がか!?  くっ私がでるっ」

通信手からの報告にユキが自ら出ようとした時、

「待ってください! 本部からの通信です」

「ん? 本部からだと」

「通信、開きます」

と、モニターに黒髪長髪の男が映し出される、ハーリーと一緒にいた男だ。

「どういうつもりだ月臣特佐、私は今作戦中なのだが」

棘々しくモニターの月臣を睨みながら、棘々しく言葉を発する。

『ユキ・キクノ特佐、作戦は中止だ戻ってきたまえ』

しかし、そんなユキの様子を気にすることなく月臣は言う、

「な、何故だ!? 何故今更そんな・・・」

『ユキ特佐これは、ハーリー特佐からの命令だ』

「ハーリーさまが? そんな」

『雪谷の息子は生かしておく事にしたそうだ・・・

 それに、もう才蔵外務次官は居ないのだろ、ならば作戦は成功だ、

 もう一度言うユキ特佐戻って来るんだ』

「・・・  了解した」

悔しそうに復唱するとユキは輸送機に帰還命令を出した。

 

 

 ピッ

ユキとの通信を切ると同時にもう一つ開いていた通信ウインドウからダッシュが月臣に向かって敬礼した。

『有り難うございます、月臣特佐』

「何、ラピス特佐にはいつも無理をしてもらっている、このくらいの事は当然だよ」

『それにしてもよかったのですか? ハーリー特佐には何も連絡してませんが?』

「心配ない、ハーリー特佐も私と同じ判断をした筈だ、

 それにアキト君はハーリー特佐の友人でもあるのだから」

『わかりました、それでは失礼します』

もう一度、敬礼するとダッシュは通信を閉じた。

「ふぅ・・・ ラピス特佐の身内が生きていると言ううわさは本当だったのか、

 あの様子だとハーリー特佐にもまだ、話ていなかったようだな・・・あの子も水くさい事を・・・」

 

 

「う゛う゛・・・・・・あ」

「あ、アキトさん気付きましたか」

目を開くと、目の前にはルリの顔があった、またルリに膝枕されている。

「ルリ・・・ちゃん? 俺は・・・

 そうだ! 連合のモビルスーツが攻めてきて・・・ それから」

「大丈夫です、もうクリムゾンのモビルスーツは居ません」

微笑みながら、ルリはアキトの額をなでる、

「すみません、アキトさん私がもっとしっかりしていれば・・・」

「それは違うよ、早く逃げなかった俺が悪いんだから」

「そ、そうです! どうして早く逃げなかったんですか!?」

「ん・・・ そうだね、ルリちゃんに逢いたかったから、かな」

「え?」

意外な答えにルリが驚いたようにアキトを見る。

「ルリちゃん、キミはこの戦闘が終わったらそのまま、ここから離れるつもりだったでしょ」

「あ、はい・・・」

素直に頷くルリ、

「それじゃ、なんだか寂しいじゃない、ダンスの途中で居なくなるなんて・・・・・・」

「・・・ アキトさん」

「まるで2度と会えなくなるみたいでさ、 なんだかいやじゃない」

「・・・・・・」

アキトの言葉にルリは言葉をなくす、

「・・・ なんて、なんかドラマのセリフみたいだね」

そう言ってアキトは微笑んだ。

「・・・・・・・・・

 それじゃ、踊りましょうかアキトさん」

しばらく無言のままアキトを見ていたルリが立ち上がるとアキトの手を取った。

 

 

 

満月の下、誰もいない廃墟を舞台に姫と騎士のダンスは終わることなく続いていた。

 

 

 

to be continued

 

 

 

 

 

次回予告

 

ニューエドワーズ基地で連合軍首脳部が軍縮を訴える中で、クリムゾンの総帥マキビ・ハリは巧妙な情報操作

でルリ達をこの場所に集めていた。

ナデシコの手による連合軍の抹殺。

 

ハ−リーの罠が新たな流血の時代を呼ぶ・・・

 

次回 新機動戦記 ナデシコ W

 第07話 「流血へのシナリオ」

 

 

 

 

あ(と)がき

 

ルリ:うきょ〜〜〜(ポポポポポポッ)

めるう゛ぃる:なんか壊れてますね(汗)

ル:アキトさんと、アキトさんと(は〜〜と)

め:・・・ しばらくそっとしておきましょう(汗)

  と、言うことで、今回のナデシコ W どうでしたでしょうか?

  本人はかなり遊んでます。

  しかし、今回ルリちゃん役得の塊でしたね、ハーリーは最悪の塊でしたが(笑)

  それにしてもこの学園そっくりさんが多いことで(笑)

  まぁ、今回はかなり趣味に走りましたが次はまじめです、気分切り替えて頑張りますので、見捨てないで

  くださいね。

 

  何でここまでルリ&アキトになったんだろ?

ル:愛の力です(ポポポッ)

め:・・・・・・

 

で、続きです。

 

えっと・・・Benのフロントページだと、これ以上改行が出来ないんですよね(苦笑)

めるう゛ぃるさん、感想はメールで送ります、ではでは・・・