宇宙コロニーから送り込まれた5機のナデシコは、コロニーの反抗の意志であった。

 

ナデシコは、連合軍のMS部隊にその姿を隠す”クリムゾン”を攻撃目標に、様々な作戦を展開していった。

 

アフター・ネルガル 195年

クリムゾンがついに、歴史の表舞台に立った。

 

総帥マキビ・ハリは、精鋭軍事力を持って連合軍の壊滅作戦を決行した。

 

地球に送り込まれたナデシコと、クリムゾンとの戦いが大地を震撼させるのであった。

 

 

「でもな、こんなことしても無駄なんじゃないのか?」

すでに自爆まで5分は切っているだろう、脱出するにしてもこんな鈍足輸送機では、残り時間で300キロも移動できない。

つまり、輸送機を確保してもそれが使われるには、ルリが自爆を阻止する事が前提条件なのだ。

「あっ それからもう1機も離陸できるようにしてください、ルリちゃんのナデシコももうそんなにエネルギーは残ってないと思いますから」

「あー? お前本当にあいつを信頼してるんだな」

「当たり前です!」

稟としたユリカの発言に、リョウコは顔を引き締める、

「しっかり頼むぜ、ルリさんよ」

 ザシュッ  ドガガガガガァッ!!

まだ逃げ出さずに襲ってくる連合のリィオーをヒートショーテルで斬り裂きながらユリカも顔を引き締める。

「成功の確率は10パーセント、だけどあの娘なら、ルリちゃんならやれるっ」

 

 

 ピィーーーーーーーーーー

ミサイルサイロ 304型制御室

コンソールパネルの上に上半身を倒れ込むようにしているルリ。

「 ・ ・ ・ 惨めな仕事

  私の  私のミス」

 

 

 

 

 

新機動戦記 

ナデシコ W

 第09話 「亡国の肖像」

 

 

元・連合軍ルクセンブルグ本部基地

ルクセンブルグの街並みがよく見える一室で、ラピスが窓辺から街を見下ろしていた、

「戦場の白き精霊、ヴァルキリー(戦乙女)のおかげでルクセンブルグの街は、ほとんど戦火に塗れる事がなかったね」

その背後に立っていたダッシュが、同じように街を見ながら被害報告をする。

「そう、でも連合の残存勢力は、そろそろ体制を整えてる筈ね」

ダッシュを振り返ることなく、答える。

「僕もそう思う、だから此処はこれからのクリムゾンの戦いの本部として使われる事になったよ」

「 ・ ・ ・ 街並みは、誰が支配しても変わらないのにね」

自嘲気味に呟く、見下ろす街並みは数日前まで戦闘に晒されていたとは思えないほど、古き美しき姿を維持していた。

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ラピス」

「?」

名前を呼ばれ振り返るが、顔の殆んどを覆っているバイザーの為その表情はわからない。

「クリムゾンは支配が目的で戦っているんじゃない、

 今は、連合の支配から各国家を解放するのが目的だよ」

「今は、ね」

ラピスの答えに、少々複雑な表情を浮かべながら、

「う〜ん、クリムゾンに属している僕が言うのも変だけど、

 連合と言う組織を創るミスを犯した各国家に、もう一度考える機会を作ったクリムゾンは、もう少し誉めてもいいんじゃないかな?」

「 ・ ・ ・ ホントに、考える時間が有るかな」

ダッシュに聴こえないような声でラピスはつぶやく、

おそらく、各国家に考える時間はないだろう、変わり行く現状に右往左往し、気づいた時にはもうどうしようもなくなっている、それがラピスの読みだった、

 

コンコンッ  ガチャ

「失礼しますラピス特尉、ビクトリア基地からのMS輸送機、もうじき到着いたします」

扉を開けて入ってきた兵士がそう報告すると、

「ようやく来たのね!」

それまでの事が嘘のような笑顔を浮かべ、ラピスが振り返った。

 

 

ヒュィィィイイイィィィ ・ ・ ・ ン

                       ドピュッ ドッ

キィィィイイィイィィィイィィィ

 

唸りを上げて、ルクセンブルグ飛行場にラピス専用MS輸送機が到着した、内部に1機のMSを載せて。

「シュン! 待っていたよ」

待ちきれなかったのかジープ(運転手:ダッシュ)で、輸送機の側まで走って来たラピスは、タラップに寄り掛かるようにして体を支えているシュンに声をかける。

「っ ・ ・ ・ ただいま到着しました、ぐぁ」

ラピスの姿を見て、笑みを浮かべたシュンは敬礼をしようとするが、崩れるようにしてタラップの上にうずくまる、

「ですから、ご無理だと ・ ・ ・ 」

慌てて1人の兵士が駆け寄って、シュンの体を支えようとする、

「? どうしたか」

その様子に、ダッシュが兵士に声をかける、

「ハッ シュン特尉は、とても立っていられる状態ではないのです。

 肋骨は折れていますし、内臓も傷められて ・ ・ ・ 」

「よ、余計なことは言わなくていい」

シュンの状況を説明しようとする兵士の言葉を、強引に遮る

「くぅ ラピス特尉、お待ちかねのトールギスは、相当な暴れ馬ですよ」

脂汗を流しながらも、そう言うシュンの顔には会心の笑みが浮いていた、

 

 

ウィィィィィイィィィィィィイィィイィン

ゆっくりと輸送機のハッチが開き、中から片膝を立てた状態で鎮座している白いMS、プロトタイプリィオー”トールギス”が現れた。

リィオーよりふたまわりは確実に大きい、左腕にはリィオーの装備しているモノとほぼ同じ型の盾(もちろんサイズは違う)、右肩には機体とほぼ同じ長さのドーバーガン、

「これが、トールギス」

クリムゾンが正式採用しているリィオーやエアリーズとは、比べようもないほどの威圧感に、ラピスが思わず息をのむ、

「これは ・ ・ ・ とても20年前に製作途中で放棄されたMSには見えないね」

それはダッシュも同じなのか、呆然とその巨体を見上げている。

「はっ、バーニアによる旋回速度はエアリーズの3倍は軽く出ます」

苦しそうに腹部を押さえ、兵士に支えられながらもシュンは報告を続ける、

「ですが、最高速度は計測不能でした ・ ・ ・ 途中で意識を失いましたので」

「!! シュン特尉がテストパイロットを?」

ダッシュが驚いたようにシュンを振り返る、

「はい、う゛ぅっ    トールギスは他の者に扱えるMSではありません、ラピス特尉以外には」

その表情はラピスに対する絶対の信頼があった。

「買いかぶりじゃないの?」

口ではそう言っているが、どことなく照れている、

「いいえっ 自分は信じています!!  ぐっ ぅう」

我慢の限界が来たのか、その場にうずくまる。

「わかった、早速使わせてもらう、  無理をさせてゴメン

照れているのか、最後は小声になる、

「ラピス特尉のために働き、負傷する これぞ漢の浪漫 ・ ・ ・ ガクッ

そこで意識を失う、

「「「 ・ ・ ・ 」」」

間際の台詞に硬直する3人(ラピス・ダッシュ・兵士A)

「シュン特尉を急いで医務室に!【シュン特尉ってこんな人だったっけ?】」 

いち早く立ち直ったダッシュが、慌てて命令を出す、

「ハッ!!」

 

 

ピ〜ポ〜ピ〜ポ〜ピ〜ポ〜ピ〜ポ〜ピ〜ポ〜 ・ ・ ・ 

意識を失っているシュンを乗せた救急車が、猛スピードで発進する。

「ダッシュ、MS部隊に出撃準備をさせて」

その救急車を見送りながら、ダッシュに命令を下す、

「え?」

驚いたようにラピスを振り替える、いつ連合の残存勢力が攻めて来るかもしれない状況で、基地の守りを薄くするのはあまり賛成できない、

少なくとも敵の動きがある程度解かるまでは様子を見たい所だ、

「地球圏統一連合軍、サンクキングダム基地へ出撃よ」

が、ラピスはダッシュが反対意見を言う前に、出撃先を告げる。

その口調には、反論を許さない鋭さがあった、

「サンクキングダム基地?」

そこはテンカワ・アキトとテンカワ・ルリ(ラピス・ラズリ)の故郷、

「いつまでも連合の支配させて置く訳にいかない、指揮は私がとるっ

 ダッシュ、この命令に不服はあるわけ ないよね」

「【ラピス・・・怖いよ】もちろん、あたりまえだよ

 早速 部隊の編成にかかる」

無論、ある程度事情を知っているダッシュが反対する訳が無い。

「うん、じゃぁ 細かい事は全部任せるから、

 それと、私はこのトールギスに乗るからね」

背後に佇む、白き巨人を見上げる。

「いきなり実戦に? ラピスそれは危険じゃ」

驚くダッシュを尻目に、ラピスはトールギスに秘められた力を見抜こうとするかのように見つめる、

「大丈夫、無茶をするつもりは無いから、

 ただ、このMSに私の可能性をかけてみたいだけ、これからの私に何が出来るのか」

「 ・ ・ ・ わかった、ラピスは一度決めたら梃子でも動かないからね」

しばらくその横顔を見てから、あきらめたようにため息をついた、

「そう言う事、じゃぁ私はトールギスのチェックをするから、後のことはよろしく」

そういって、早速トールギスのコクピットに乗り込む、

なんだかんだと言っても、このMSを前にしてパイロットの血が騒いでいるようだ、

もっとも、それはラピスだからであって、シュンの状態を見たダッシュは乗ろうとも思わない、

【無茶をしないと言っても、無理だろうな、

 滅ぼされた自分の故郷を目の前にして、冷静になんていられる筈がない ・ ・ ・

 何かとサポートしないといけないな】

その姿を見ながら、ダッシュはラピスがどう動いてもサポートできるようにするにはどうするか考え始めていた。

 

 

「よぉっと!」

パコーーンッ

気合の声と共に打ち出されたボールが、サーブエリアのきわどい所に突き刺さる。

「ハッ!」

パコーーン!

それを軽やかなサイドステップで移動しながら打ち返すルリ、

リョウコの放った強烈な豪腕サーブを、エンドラインぎりぎりに打ち返すルリ、はっきり言って中等部のレベルではない。

「そりゃっ!」

パーーン!

「フッ!」

パシーン!

「はぁぁぁっ!!!」

パシンッ!!

「甘いですよ」

パンッ

「まだまだ!!」

ルリの打ち返したボールのバウンドする位置を予測し、待ち受けるリョウコ だが ・ ・ ・

「なにぃぃぃぃっ!?」

ボールのバウンドする位置は予想通りだったが、バウンドしたボールはリョウコの予測を完全に裏切り一気に伸びてきた。

バシッ ・ ・ ・ パスッ!           ポテ

何とか追いついて打ち返したのは流石だが、ラケットの端に引っかかり気味だったために、ボールはネットに引っかかってコートに落ちた、

「 ・ ・ ・ ハッ ゲームセット、Winホシノ・ルリ」

あまりにハイレベルな試合に、呆然と見入っていた教師が試合終了を告げる、

「はぁぁ 流石だぜルリ」

タオルで汗を拭いながら、リョウコがルリに話し掛けるが、ルリが答える前にギャラリーと化していたクラスメイト達から、声援が送られる、

「へへっ」

満更じゃないのか笑顔を浮かべて、それに手を振って答えるリョウコだが、ルリはさっさと立ち去ってしまった。

「あっ たく、せっかく応援してくれてんだから、少しは答えてやってもいいだろうに」

手を振りつつその後姿を見送る、どこに行くかはだいたいの見当がついているから慌てて追う必要は無いだろう、

 

キ〜〜〜ン コ〜〜〜ン カ〜〜〜ン コ〜〜〜ン

 

授業の終了を告げるチャイムが学園内に響いてきた。

 

 

学園内にある海岸に面した中庭、ちょっとした自然公園ほどの広さを持っている中庭の散歩道の脇にあるベンチにルリは腰掛けていた、

「ふう ・ ・ ・ 」

潮風に長い髪を靡かせながら息をつく、

カサッ

しばらく瞑想でもしているようにジッとしていたルリの耳に、かすかな音が聞こえた、

「 ・ ・ ・ 何んのようですか? リョウコさん」

背後から近づいてくる人物を振り返ることなく、言い当てる、

「気配消してたつもりだったんだけどな」

端から気づかれずに近づけるとは思っていなかったのだろう、悪びれることなくルリに近づくと、隣に座る。

そんなリョウコに、少々不機嫌そうな表情を浮かべるが、特に何も言わない

「う〜〜〜ん、いい天気だぜ」

ホントに気持ちよさそうに伸びをすると、ふっと真面目な顔になり、

「しっかし、いい考えだよな転校しながら移動するってのは、オレ達の年なら学校に行くのが当然だ」

が、のんきなリョウコと対照的に、ルリの声は冷たかった、

「どういうつもりですか」

「? オレは普通にしてるつもりだけど」

ルリに視線を合す事なく答える、

「目立ちすぎてます」

顔を険しくしてリョウコを睨むが、別に堪えた様子はない、

「隠すより、自然に行動してた方が怪しまれないと思うけどな、

 お前も学生生活満喫したらどうだ?」

確かに、誰とも接点を持たず孤立しているルリより、クラスメイトと打ち解けているリョウコの方があまり怪しまれないだろう。

それに本人は気づいていないが、ルリもリョウコに負けず劣らず、目立ちまくっていた。

「 ・ ・ ・ そう言う事を言っているんじゃないです」

「? じゃぁなんだよ?」

今まで逸らしていた視線をルリに向ける。

「私は別にリョウコさんの行動に文句を言うつもりはありません」

言っても無駄ですし、と心の中で続けて、

「それじゃあ、何なんだよ?」

心当たりがないのか、ひたすら”?”を頭の上に浮かべている、

「 ・ ・ ・ ふう」

しょうがないですね、と言ったふうにため息をつくと。

 

ど・う・し・て、私より遥かに年上のリョウコさんが、ワ・タ・シと同じクラスに居るんです!?しかも中等部」

 

ヒゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ウ

一陣の冷たい風が2人の間を吹きぬけた。

スバル・リョウコ実年齢18歳、中等部のクラスに高等部の人間が居れば、嫌が応にも目立つのはあたりまえだ。

もっとも編入手続きでは、ルリと同じ15歳になってるが、

「い、いいじゃねえかっ 別に!!」

強気に言い返すが、声が裏返っている、

「いいわけありませんっ おかげで思いっきり目立ってますよ!」

「あぅ〜〜〜」

「この学園には高等部もあるのに、まったく ・ ・ ・ 」

「ゴメンナサイ」

素直に謝るリョウコ、

「はぁ〜 もういいです、ただし私を巻き込まないでください、それと ・ ・ ・ 」

「『私の邪魔もしないで』か?」

それまでの砕けまくった表情から、一気に引き締まった戦士の顔になる、

「悪いが、それは聞けねーぜ、

 狙ってる獲物はオレも同じなんだからな」

「?」

「とぼけても無駄だぜ、お前の瞳にはあの要塞がしっかり映ってる」

そう言って、リョウコは沖合いに浮かぶ島を目で示す、

地球圏統一連合軍MS部隊スペシャルズの補給基地がそこにそびえていた、いや今となってはクリムゾンのだ、

「早い者勝ちってのはどうだ?」

リョウコの提案に答える事なく、ルリは沖合いに浮かぶ要塞を見ていた。

 

 

スッ ・ ・ ・ 

不意にルリの上に影が落ちる、

「え?」

雲ひとつない晴天だった筈なのに、とルリが空を見上げると、

「久しぶり、ルリちゃん」

優しそうな笑顔を浮かべた、アキトが立っていた、

「おぉ!?」

リョウコもそれまでアキトの接近に気づいてなかったのか、目を丸くしてアキトを凝視している、

それからきっかり30分、ルリは固まったままだったそうな。

 

その日の午後の授業にルリが出席していなかったのもお約束、

 

 

 

 

 

連合・サンクキングダム基地

ヴゥーーーー  ヴゥーーーー  ヴゥーーーー

「MS大型輸送機3 護衛機7! 接近してきます!!」

けたたましく警報が鳴り響く中、レーダーを見ていたオペレーターが悲鳴をあげる、

「識別コード確認ッ 間違いありません! クリムゾンです!!」

ガンッ

「クソッ! クリムゾンッいったい何を考えているんだ!!」

基地指令は、力いっぱい拳を叩き付ける、彼には いや、連合軍の誰にもクリムゾンの考えは理解できなかった。

が、理解できなくても、攻撃してきていることは間違いない、ならば彼等には戦うしか選択肢は残されていなかった。

「MS輸送機より、MS発進を確認! エアリーズ部隊です!!」

「こちらもMSで迎撃だ!」

「ハッ!!」

 

 

 

 

 

クリムゾンのクーデターにより、地球圏統一連合軍は混乱をきわめた、

各地の基地には、連合軍士官達が状況を理解できずに立てこもっているのだ。

 

各国家間に存在した紛争解決のために組織された地球圏統一連合は、軍事力が異常に拡張し、それぞれの国内政治を軍国主義で圧迫するまでになっていた。

 

そんな形で統一されていた多くの国家の解放を、現在クリムゾンは行おうとしているのである、

しかし、連合の軍備拡張そのものはクリムゾンのMS部隊が引き起こしたものであり、

この、クリムゾンの行動を疑問視する国家も多く、軍事力による支配は変わらず、ただ、連合とクリムゾンの名前のみが、替わるだけであろうと考えられていた。

 

 

 

 

 

キュィィィィィィ ・ ・ ・ ギュン

輸送機内の大型MS、トールギスのカメラアイに光が走る、

『ラピス、MS部隊全機の発進を確認したよ』

通信用のモニターにダッシュが現れ、現状を報告する、

今回もダッシュ自身、エアリーズ・カスタムで出撃、指揮をしている。

「わかった、それじゃ私も出る!」

『援護は任せて、ラピスは目的を果たすことだけ考えて』

「大丈夫よダッシュ、余計なことは考えていない、雑念は捨てているから」

『うん、地上部隊は僕達に任せて、何機かは上がってくると思うけど』

「気にしないで、スペックどうりなら加速で振り切れるから」

『じゃぁ また後で』

敬礼をすると、通信は切れた。

 

ウィィィィィイィィィィィィイィィイィン  ガゴォン

 

輸送機のハッチがゆっくりと開き、トールギスの発進態勢が整う、

と言っても、規格外機であるトールギスに専用の発進装置がある訳ではなく、開いたハッチから突き落とすだけなのだが。

『ラピス特尉、トールギス射出準備整いました!』

輸送機のコクピットから通信が入る。

「お願い」

『ハッ!』

その瞬間、輸送機が急上昇をはじめ、それに伴い傾斜していくハッチ内、

ギギギギ ・ ・ ・      ゴォォォン!

重い音を響かせ、傾斜に耐えきれなくなったトールギスがハッチから一気に転がり落ちる、

『ウイング・キャリアー01より、トールギスヘ グットラック!』

「フフッ 誰に向かって言ってる?」

輸送機からの通信に、不敵な笑みを浮かべる、

 

キィィィィィィィィイイイィイィイィイィィィィ ・ ・ ・ 

 

重力に引かれるまま、トールギスは自由落下を開始する、

「重い機体の機動性を高出力バーニアのみでおぎなう ・ ・ ・ 確かに理には適っているけど、

 無茶な話ね」

空気摩擦による振動の中、つぶやく、

「 ・ ・ ・ さあ、貴方の力見せてもらうよ」

もうすぐ戦闘高度に達することを確認すると、トールギスのスロットルを上げた、

 

ウィィィィ ・ ・ ・ ゴァァァアァァァァアァア!!!

 

バックパックの4基のバーニアが鳴動し、一気に落下していた機体を押し上げる、

「ッ ・ ・ ・ やっぱり、きつい」

シートにめり込むような、強烈なGに顔を歪める、

「だけどっ 此処はサンクキングダム! 無様な戦いは出来ないっ」

トールギスを発見し迫ってきたエアリーズを、すれ違いざまにサーベルで斬り裂く、

「くぅぅうっ!」

絶え間なく襲ってくるGに耐えながら、ラピスは白い機体を戦場に舞わせる。

 

 

「目標は中枢施設のみっ! その他の物には手を出すな!!」

『『『『了解!』』』』

エアリーズ部隊率いて、大通りを猛スピードで飛行するダッシュのエアリーズ・カスタム、そう命令しながら街の要所要所で防衛線を構築している連合のリィオーを破壊し進攻する、

連合側も必死に応戦してくるが、パイロットの腕の差か、次々を破壊されてほとんど手も足も出ない。

「第03小隊っ 東側の滑走路の制圧に向かえっ! 第04小隊は西側だ、

 第01・02小隊はこのまま僕と共に、サンクキングダム司令部を押さえるっ!

 行くぞ!!」

 

 

ゴォオォウッ!!      ドギュゥゥン!         ゴガァァァアァン

           ドゥドゥドゥッ        キンッキンッ  ギュァァ  ズバッ!        ドオオオオオッ

サンクキングダム上空では、トールギス1機と連合の防空部隊のエアリーズが激しい戦闘を繰り返していた、

いや、それは戦闘と言うより、トールギスによる一方的な戦いだった。

『な、何なんだ! あのMSは!?』

「さぁな クリムゾンの新型だろ」

同僚の上擦った声に、答えるまでもない事を返す、ただでさえ手一杯な状態だ気の利いた答えなど出る筈もない。

『がぁッ』

また1機、僚機が撃ち落された、

【フンッ こんな辺境の基地に何のようかと思ったが】

その爆発に巻き込まれないように、回避しながら思考を廻らす、

【何のことない、新型機のテストか ・ ・ ・ 戦いを道楽と勘違いしている連中らしいぜ!!】

仕返しとばかりにミサイルを放つが、あっさりとかわされる、あまりの機動性にミサイルの誘導装置が追尾できないのだ。

【俺達はただのモルモットだったって事か!!】

ふと首を廻らせると、20機近く上がっていた防空部隊ももう片手で数えられるまで激減していた。

 

 

「あうぅぅ!!」

殺人的な加速に必死で絶えながらラピスはトールギスを操っていた、エアリーズのパイロットが考えているほど、余裕が有る訳ではない、

「! このぉ!!」

トールギスの回避位置を予測していたかのように待ち構えていたエアリーズの一撃をバーニア出力を上げ強引に回避し、替わりにドーバーガンを撃ち込む、

「ハァハァハァハァ ・ ・ ・ バーニアの出力を上げれば余裕で振り切れる、か」

激しく息をしながら、スロットルレバーに置かれた、自分の手を見る、その手は半ばまでしか上がっていない、

「ハァハァハァ、なにを躊躇っているのラピス・ラズリ」

 

 

「指令! 防空部隊のエアリーズ全機撃墜さました!」

「滑走路、クリムゾンに完全に占拠されました!」

「地上防衛部隊70%壊滅!」

「指令本部、クリムゾンに包囲されていますっ」

「くぅ! まさかここまでとは ・ ・ ・ 」

2時間足らずの戦闘でまさに目を覆いたくなる状況となっていた、だが指令の顔にはまだ諦めの色は浮いていない、

「! 指令 クリムゾンからの通信です!」

「っ 正面モニターへまわせっ」

エアリーズのコクピットからなのだろう、ダッシュの姿が映し出される、

『直ちに武装解除して投降せよ!! こちらはこれ以上の戦闘を望んでいないっ』

「そちらから仕掛けておいて何を!!」

ダッシュの降伏勧告に激怒する、一方的に戦闘を仕掛けて、更にこちらを壊滅に近い状態にしておいて『戦闘を望んでいない』などと言っているのだ、当然と言えば当然か、

「退散するのはお前達のほうだ!! 全ビーム砲発射準備!!」

前半はモニターに映っているダッシュに、後半はオペレーターに向かって怒鳴る、

 

 

「!! ビーム砲!? 本部データに無い装備か!?」

本部ビルから次々と現れてくる、ビーム砲を見て驚愕の表情を浮かべる、

ドガァァン!!

「!!   全機この空域より離脱する!!」

ビーム砲に撃ち抜かれ爆発するエアリーズを見、ダッシュは慌てて命令を出し、自分のエアリーズ・カスタムを急上昇させる、

それに習い、上空に退避しようと一斉にクリムゾンのエアリーズも急上昇をかける、

が、本部ビル寸前まで接近していのが彼らの運命を決めていた、

ドキュゥゥン!  ドキュゥゥン!  ドバババババッ

          ドゴォォン!        ゴガァァン!

   ギュゥゥン!     ドキュゥゥン!!      ドガァァンッ 

回避行動もむなしく、次々とビームに飲まれ蒸発していくエアリーズ、

「くそっ ビーム砲ごときに!!」

墜とされていく味方機を見て、頭に血を昇らせたダッシュが本部ビルに突撃をかけようとするが、

『やめて、ダッシュ 全機に指示を、この空域より離脱する』

接近してきたトールギスが、エアリーズを押しとどめる、

「ラピス? 迂闊だった、まさかこれほどの火器が配備されていたなんて ・ ・ ・ だけど、まだいける!」

『やめろって言ってる! ここはいっ一旦退いて態勢を立て直したほうがいい、

 輸送機を降ろした地点まで下がるよ!』

血が昇っている為、冷静さを欠いているダッシュを押さえ込む、

「 ・ ・ ・ 了解」

突撃したい気持ちを何とか抑えると、ダッシュは退避できたエアリーズを率いて、後退を開始した。

「腕もいいし、頭も切れるけど、ダッシュには実戦経験がほとんど無いから ・ ・ ・ 」

いつに無く無謀な行動をしようとした友人を、押し留める事が出来、息をつくと自分も後退しようとする、

「 ・ ・ ・ 」

が、そのままホバリングを続け、依然と猛烈なビームの嵐を撃ち続けている本部ビルを見下ろす、

「私、臆病になった? 

 このトールギスなら、ビームなんて気にせずに司令部を叩ける!!」

 

ギュォォォォオオオォォォ ・ ・ ・  ゴォォォォォッ

 

そう呟くと、司令部に向けて一気に加速を開始する、

『ッ!! ラピスッ何を!?』

それに気づいたダッシュの声が通信機から響くが、無視

「 ・ ・ ・ どんなMSでも乗りこなしてきた私が何を畏れる!?」

スロットルを最大まで上げられない自分に喝を入れ、一気にMAXまで引き上げる、

 

ギュァァアァァァアァァアァァァ!!

 

トールギスの4基のバーニアから凄まじいまでの噴射炎が吹き上がり、更に速さを増す、

「くぅぅぅ ・ ・ ・ ・ うぁ【死ぬかな、このままだと】」

激しい重圧に押し潰されそうになりながらも、頭の一部は冷静になっている、

ドウッ ドウッ ドウッ

何発かのビームがトールギスを捕らえるが、全て装甲で弾き飛ばしてしまう、

「むぅぅ ・ ・ ・ 【このMSの性能なら、どんな戦いにでも勝てる】」

迫ってくる本部ビルを薄れ掛けそうな意識で確認しながら、思考を走らせる、

「【だけど、弱点もある】パイロットは生身の人間 ・ ・ ・ くぅ」

視界が薄れ、目の前がブラックアウトしていく、

「カハッ こ、ここまで ・ ・ ・ ね」

これ以上続ければ死ぬ、と言う直前でMAXで固定していたスロットルを下げる、

「ハァハァハァ サンクキングダムを前にしてるのに ・ ・ ・ 」

機体を反転させ、ダッシュたちと合流するべくこの空域から離脱していった。

 

 

 

 

 

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