逆行者+突破者

第二十九話Tルート「雷獣×剣聖×人鬼」

 

 

 ……ヒュゥゥゥゥゥンンンンン

 

 ズダンッ!!

 

 寸前で意識を取り戻し、両足で着地する。

 

 ふぅ………、ギリギリで間に合ったか。

 アヤトを殺し、主導権を手に入れ、ほっとする。

 

 最後の激突………、

 結果的には相撃ちだったが、アヤトの方が僅かに早く死んだ。

 耐久力でいったら俺の方がはるかに高いからな。

 

 

 上を見上げて、三人が落ちてくるのを待つ。

 

 

 さて、立ち塞がるものは………鬼か、蛇か………。

 

 

 

 

 

 バチッ、バチッ、バチッ!!

 

 時間差で飛んでくる球電の三連撃を難なくかわす。

 そして一気に距離を詰めようとするが……。

 

 その頃にはすでにトールさんは射程距離外に飛び退っていた。

 

 

 ………やりにくいですね。

 刀と飛び道具ではリーチの差があまりにも大きすぎますし、

 トールさんの飛び道具はほぼ無制限ですからね。

 

 

「…………………」

 

 トールさんは無言でまた、両手に球電を発生させた。

 

 ……あの両手を潰しさえすれば、何とかなるんですけど。

 うかつに刀じゃ攻撃できませんからね。

 セオリー通り、足を先に潰しますか。

 

 ドンッ!!

 

 強烈な踏み込み音とともにトールさんに迫る。

 

 加速なら、誰にも負けない自信はあります。

 低空で滑るように移動しながら、足首を狙って一文字に斬りつける。

 ……だがっ!

 

 …キィン!

 

 高速で迫ってくる刃を、蹴りつけ、跳ね上げる。

 その為、不安定にこちらの上半身が立ち上がり、

 がら空きの腹部にトールさんは間髪入れず回し蹴りを叩き込んできた。

 

 ドガッッ!!

 

 吹き飛ばされながら、勘で認識した。

 蹴りつけた後、すぐに球電を追撃に放った事を。

 

 即座に二本の刀を地面に突き立て、自分の軌道をずらす。

 自分のすぐ隣りを、二個の電撃が通過する。

 

 ズザザザザッ!

 

 地を滑りながら体勢を立て直し、距離を取った。

 

 

 ………認識が甘かったね。

 トールさんは接近でもこちらと五分の実力を発揮する。

 自慢にしていたスピードも、エレキブーストと変わらず………か。

 おまけにさっきの一撃でアバラが何本か折れたな。

 動きに支障を出す気は無いが、長期戦はもう望めない。

 

 

「……………」

 

 再び無言で球電を発生させる。

 

 隙も無し………油断するそぶりも見せない。

 はっ、機械に期待する方が間違っていたか。

 

 

 さすがは、僕にとっての『イレギュラー』にして『障害』か……。

 

 

 …………しかたない。

 奥の手を出しますか。

 

 ゆっくりと、二本の刀を腰だめに持っていった。

 構え的には、抜刀と同じ構え方。

 短刀と長刀を軽く交差させるように、位置を調整する。

 

 

 ひりつくような静寂の中………、

 

 

 

 

 

 先に動いたのは――――トールさん。

 

 

 両手の球電をこちらの左右に投げつけ、

 同時にこちらに向かって疾走してくる。

 

 左右の逃げ道を塞ぎ、接近戦で止めを刺す気か。

 

 

 ――だが、それはこちらにとっても好都合。

 

 腰を落とし、迎え撃つような形で集中する。

 

 

 感覚で認識した時間が、引き延ばされたように長く感じる。

 

 

 向かってくるトールさんは、自分の前に左手を差し出し、

 後ろに引いた右手に紫電を灯している。

 

 おそらく、左手でこちらの斬撃を受け止めるつもりだろう。

 

 

 

 ……………甘いね。

 

 

 

 

 ―――――ドンッ!

 

 

 

 一歩――――前に踏み込む。

 

 

 

 

                          はやて
 木連式弐刀術 外式   疾風

 

 

 

 

 交差した刃同士を、噛み合わせ………滑らす。

 

 離れた瞬間、お互いに反発していた力が解放され………、

 

 

 ………抜刀術と同じ、推進力が生まれる。

 

 

 

 

 ゾンッ!!

 

「あっ……」

 

 トールさんの左手は、盾の役割を果たせず、斬り裂かれ、

 

 

 

 

 

 ザシュゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!

 

 

 

 

 刀は………そのままトールさんの喉笛を、断ち切った。

 

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ、お前らっ!特にナオさん!!」

 

「ちょっと待て、デタラメーズの基準で物事を進めるな!!」

 

「………俺もツバキの基準にはついていけないぞ」

 

「右に同じ」

 

 しばらく、空をぼーっと見上げて、やっとこさアキト達が降りて来た。

 

 まったく、セイヤさん謹製のロケットなんて使うから。

 

 

 愚痴を言いながらも、歩は着実に遺跡に向かう。

 

 

 そして、入り口と思しき大穴の前で、

 

 それは終わっていた。

 

 

 

 

 血の池に倒れふしている、銀髪の少女。

 

 

 

 ―――そのそばに佇む、血飛沫を浴びた男。

 

 

 

 

 

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