機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

 

「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜む。」

 俺、ウリバタケ・セイヤは、格納庫にて殆ど原型を留めていない、緑色のエステバリスの惨状を見てうなっていた。

「はぁ、あの野郎、いくら人を助けるためだからって無茶苦茶な壊し方をしやがって… せめてもっと丁寧に壊せってんだ。パーツもあまりねぇってのによぉ。」

 ぐちぐち言っても直らない事を知っていても言わずには居られない。

「ったく、それにこのエステは、特注品なんだぞ。」

「特注って、班長。どこが特注なんですか?」

 命知らずの部下である若い整備員が理由を聞いてきた。俺は即答する。

「世の中には、知らずにいたほうが良い物もあるぞ。少なくともこれはその一つだ。」

 柄にもなく真面目に言っちまったな。

「はぁ、そうですか… どころで、それって、アサルトピットの近くに付いてる“ブラックボックス”と、関係があるんですか?」

 俺は、驚愕した。

「な、なんだと! お前! 知っていやがったのか!?」

 俺は、若い整備員に詰寄る。

「え、えぇ。」

 よく解っていない顔を整備員は、浮かべた。しかし、俺は容赦なく胸倉をつかむ。

 俺は大声を張り上げた。

「どこまで知っている!?」

「ああ、ああと、べ、別に他には付いていない“ブラックボックス”が、一体構造であの緑色のエステバリスには、付いていることを知っているだけでそれ以上のことは…」

 俺は安堵した。

「そうか… それならいい。」

 俺は、胸倉をつかんでいた手を離すと床に腰を下ろした。

 そして、手で額を押さえ、小さな声で独り言を言った。

「なんで、あの機体を動かせる奴が出て来たんだよ…」

「ふ、“あのシステム”の事で悩んでいるようだな、ウリバタケ。」

 はっとして顔を上げると、そこにはゴートが、立っていた。

 俺は、本音を叩きつける。

「“アレ”は、“システム”なんて綺麗な物じゃねぇ! “刻印”だ! お偉いさん方の事情で遊びついでに作らされたな!」

「まったくだ… それに私も、“アレ”の対応機を本当に動かせる奴が出てくるとは思わなかった。」

 “アレ”は、当初、余りにも突飛過ぎる考えだったために誰も鼻にもかけなかった代物だ。しかし、それが長い年月をかけて完成した。だが、完成したら完成したらで、大量の問題が出てきた。それは、人間には扱えないとまで言われていた。そのために廃棄寸前だった物なのだが、とある高等軍人が目を付けた、そして、俺は、人間には扱い切れないとまで言われた“システム”の、対応機を莫大な資金を投げられて、作られる羽目になったのである。(そして、完成したわ、したのだが、あまりの扱い難さに、持って行ったらそのまま突っ返されてしまった。そんで、そのままお蔵入りだった。犬河が、現れるまでは…)

 最初、趣味と言ったのは誰も怪しまないからだ。そして、俺は言った。

「“アレ”のスイッチは“封印”しておいた… だが、全部は無理だ… 理由は、解るな。」

 ゴートは、頷いたのを見ると、俺は続けた。

「それと、一体構造だし、“ああ言うもの”だからな… 取り外すわけにはいかないんだよなぁ、これが… “封印”は、して置いたが破れる危険はある… まぁ、それくらいは仕方が無い… 基が基だ。」

「フム、まぁ、そんなところだろう。犬河照一には言わなくていいのか。」

「いい… 知らないほうがいい時もある。いずれ… 教える。」

その日が来ないことを祈りつつ… 俺は言った。

「そうか… 所で、新しいパイロットが三人来ると聞いたが…」

「は、しまったぁぁぁ。」

「ど、どうした? ウリバタケ。」

「パイロットで、思い出したんだが、エステのデータを宇宙用にしとくの忘れてた〜」

「おい、不味いだろそれは… しかも、予定より二機も増えてるんだぞ! さっさとやれ!」

「よし! 野郎ども! マッハでやるぞマッハで!」

「「「「「「「「「「ヘイ! お頭!」」」」」」」」」」

 

 解るはずが無い… その“システム”が、本来ならば、歴史の影に埋もれてしまうはずだったものだという事など… この世界の彼らが知るはずも無い…

 

「うぉぉぉぉぉぁぁぁ。」

 そして、ウリバタケ&ゴートの悩みの種である、俺、犬河照一は、その頃、必死こいてノルマ制のモップがけをしていた。

「ふははははぁ! 後2kmだぜぇぇぇぇ!」

 目を充血させて俺は叫んだ。

 まぁ、まだ俺の出番はあるまい…

 

 俺、ダイゴウジ・ガイとアオイ・ジュンは、部屋で幻のロボットアニメ「ゲキガンガー3」第27話のクライマックスを観ていた… そして…

「おぉぉぉおぉぉ! ジョーがぁ! 俺のジョーがぁぁぁぁ!」 

 とあるファンにとっては有名なシーンを観て、ジュンが叫ぶ!

「どうだ! 解ったかジュン・アオイ! これが漢と言うものだぁ!」

 俺は、紛れも無い真実の言葉を言った。

「ヤマダぁ!」

 訂正させてもらうぞ!

「ダイゴウジ・ガイっていっているだろぉ!」

 そして!

「ありがとー! こんな良い物を観させてくれてぇぇぇぇぇ!」

 俺とジュンは、互いに互いの手を強く握り締めた。

「「おぉぉぉ(号泣)!!!!」」

 そして、これが止むまでに10分程かかった。

 

そして、視点は艦橋へ、移ります。

 

「後一分で、コロニー見えます。」

 普段より、強めに声を上げて、私が言います。(いいかげん言うのも疲れてきましたが、私はホシノ・ルリです)

「ディストーションフィールド解除。停泊準備。」

 艦長が、いくらか肩の力が抜けた声で命令を出します。

「こちら、機動戦艦「ナデシコ」、「サツキミドリ2号」、どうぞ。」

 メグミさんが、そう言います。

『こちら、「サツキミドリ2号」了解。いや、それにしても可愛い声だねぇ。』

 軽そうな声が聞こえました。

「「サツキミドリ2号」見えます。」

 私が、普通の声で言いました。

 その時、変な光がモニターに写りました。

「え? 何。」

 メグミさんが、戸惑いの声を上げます。

「コロニー方向より、衝撃波来ます。」

 どががががががが

 激しい衝撃が、艦内を揺さぶります。

「被害状況確認。」

 艦長が、また切羽詰まった声で指示を飛ばします。

「左舷第二ジェネレーター付近に中程度の破損。」

 私が、この場でわかる限りの事を言います。

「さっきまで、交信していたのに… さっきまで、おしゃべりしてたのに…」

 メグミさんは、涙を堪えているようです。

「メグミちゃん、生存者いるかも知れないから気を付けて。」

「は、はい。」

 立ち直った見たいです。

 

 それで、また視点は変わります。

 

「セイヤ班長。これを。」

 部下の声に反応して、俺は、被害を受けた壁を見た。

「おいおい、こいつぁ。」

 その壁は、見事に穴が塞がれた跡があった。勝手に塞ぐ機能は、この艦には付いていない。

となると、考えられるのは一つだけだ。

「直ちに警戒態勢をしけ!」

 そして、俺は破損した部分をみる。

「おい、回線をブリッジに回せ。」

「はい。」

 しかし、パッと見、ジェネレーターの被害が思ったよりも、深刻だぜこりゃぁ。

 見るも無残に破壊されたジェネレーターを見て、俺はそう思った。

 これじゃぁ、修理しないとディストーションフィールドは、張れねぇ。10分や20分、じゃむりだぞ、この破壊されようじゃぁ。

 つまり、それが済むまでの間、「ナデシコ」は、まったくの無防備って奴か。

「回線つながりました。」

「おう、貸せ。」

 俺は、部下から通信機をもぎ取った。

「おい、艦長! 聞こえるか?」

『良好です。破損部分の詳しい状況を教えてください。』

 流石に艦長も声が暗い。

「ジェネレーターの破損が酷い。ディストーションフィールドは張れん。」

『そうですか… まぁ、それで頑張るしかないですよ。』

 

A級艦内警戒態勢発令。本艦に何者かが、侵入した模様。補修班は、作業を続行。その他の乗組員は、持ち場を維持せよ。繰り返す…』

 そんで、まぁ、こんな感じの放送が、流れはしたのだが…

 

 犬河の場合

「俺の持ち場って何所だよ… ま、ようするに掃除していろと言う事か?」

 

 ガイ&ジュンの場合

「「おぉぉぉぉぉぉ!」」

 

と、まぁ、反応の無い人物が、3名ほど居たのであった。

 

それから、30分が過ぎた。

 

ヤマ、いや、ガイの部屋にて… 僕は、本日3回目の「ゲキガンガー」第27話のクライマックスを観ていたときであった。

「おい、ジュン。3回目にもなってお前まだ泣いてんのか?」

 僕は、答える。

「いや… 流石に3回目ともなると感動もだんだん薄れてきたから、僕は泣いてないよ。」

「そうか、じゃぁ、俺の気のせいか? なんか泣き声が聞こえる気がするんだが…」

 僕は、軽く耳を澄ましてみる。

「ヒック、ヒック、ヒック。」

 そ、空耳だ! そうに、違いない。

 ほら、もう一度耳を済ませてみろ… 何も…

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃん。」

 ・・・・・・・・・・・・(思考混乱)

 そうだ、大音響から来る、耳鳴りだ! (かなり無理があるが)

 ああ、もう、マズイマズイ。冷静になれ、アオイ・ジュン。

 いいか、まず声が聞こえると言う事は誰かが何処かに居るということだ。

 そして、泣いていると言う事はおそらく「ゲキガンガー」を観てだろう。

「「ゲキガンガー」を観て、ここまで泣く人なんて、この場以外に、この艦に乗っていたかなぁ。」

 独り言を呟いて考える。

 アオイ・ジュン、ライブラリー検索。(心の中で)

「検索中」

該当者… 無し

 まさか、密航者?

 と、僕が、馬鹿な事を考えていた時だ。

「びぇぇぇぇぇぇん!」

「おわぁ!!!」

 赤い何かがヤ、いや、ガイの上に落ちてきた。

 無論、ガイは下敷きになった。

 そして、その赤い何かは叫ぶ。

「うぇぇぇぇぇぇん(泣き声) ジョーがぁ、私のジョーがぁ!」

何処かで聞いた様な台詞を叫んだ。

 あ、僕が言ったのか。

 ようやく目のピントがあってきた。

 赤い何かは、メガネを掛けて、赤いパイロットスーツを着た女の人であると言うことが、おぼろげながらようやく認識出来た。

「あ、あの、君? とりあえずそこを退いた方が、良いと思うんだけど…」

 僕は、懸命に言葉を紡ぎだす。

「ほぇ?」

 良く解っていない顔をその女の人は浮かべた。

 僕は、人差し指で女の人の下を指す。女の人が、そこへ視線を向ける。

 そこには、女の人に踏み潰されて、気を失って倒れているヤマダ・ジロウ(心を読まれる心配はないから本名を思える)が居た。

「あぁぁぁぁぁぁ!」

 ようやく、気づいたらしい。

「まぁ、それは置いといて。」

「置いとくんですか!」

 ぼ、僕はいつから突っ込み役になったのかな。

 その直後、いきなりその女の人が、僕に接近する。

「やっぱ、ジョーって、最高ですよねぇ!」

「は、はぁ?」

 そこには、いきなり話題を振られて混乱する僕が居た。

「私、最近「ゲキガンガー」って、アニメを知ったんだけどね。もう、見たら、萌え萌え〜って感じで、こんど昔取ったきねづか、てので、同人誌書いてコスミケだしちゃお〜、ってとこまで考えているんだけどぉ、君、どう思う?」

「いや、そういうことなら、そこで寝ているヤマダさんに聞いたほうが、いいと思いますけど。」

 僕は、倒れているヤマダさんに人差し指を向ける。

 これに、と言いたそうな顔を女の人は浮かべる。

「だって、今見てるこのディスクその人のですよ。」

 と、言ったとたんに女の人は、立ち上がって、部屋の隅の棚に注目した。

「キャー、全巻そろってる〜、後で観させてもらおっと。」

「馬鹿ものぉぉぉ!」

 ヤ、いや、ガイさん復活。

「これは、俺の心のより所だ、サンクチュアリーなんだ! 勝手に観ようったって、そう簡単にはみせんぞぉぉぉ!」

「じゃ、お願いします。」

「普通に頼んでるよ!」

 やっぱり僕はツッコミなのか!?

「うむ、それではまた今度、機会があったらな。」

「可かよ!」

 僕は叫んだ。いいのかなぁ、これで…

「ああ、ところで、今さらなんですが、貴方誰です? 何であなたは上から落ちてきたんですか?」

 遅いって、僕。

 

 ブリッジにて。

「敵側面より接近中。数は4機。」

 私が、普通に言います。(めんどうくさいため略します。私はホシノです)

「迎撃します。ディストーションフィールド再度確認しますけどいけませんか?」

 モニターの向こうのウリバタケさんに、艦長が聞きます。

『無理無理。絶対無理、整備員泣かせな戦艦だぜ。』

 ほんとに、深刻そうです。

「敵、射程内に入ります。」

 メグミさんが、落ち着いたらしい声で言いました。

「攻撃準備。」

 いつの間に来たやら、ゴートさんが、言います。

「あ、まって。」

 ありゃ、どうかしましたか? 艦長?

「ねぇ、ちょっと拡大して見て。」

「はぁ。」

 言われた通りに、画面を拡大します。

「あれは! エステバリスの0G戦フレーム!」

 メグミさんが、驚いて叫びます。ちなみに色は赤ですね。

「味方なら、識別信号を出しているはずだ。」

 冷静にゴートさんが、いいます。

「敵に乗っ取られている、てこと。」

 ハルカさんが、言いました。

「いいえ、識別コードを忘れているだけ。」

「どこから、そんな自信が来るんだ? 艦長。」

 私も疑問に思います。

「だって、ほら。」

 赤いエステバリスの、後ろについている物を見てなるほどと思いました。

「ワイヤーに、白いマーカー… 牽引の基本だが… それは、車の話だぞ…」

 ええ、まったくですね、ゴートさん。

「木星の蜥蜴も、あんなおちゃめだったら良かったのにね。」

 ハルカさんが言いました。

 

 そして、格納庫へ視点は移動する。

 

 格納庫へ到着した時、パイロットが、赤いエステバリスから搭乗用のエレベーターを使って降りる所だった。

 ああ、いい忘れたが、私はゴートだ。

 そのパイロットは、そのままこちらへ歩いてきた。

 そして、ヘルメットを脱ぎ捨てこう言った。

「かぁ、たまんねぇぜ。」

 顔を見て、この場の全員が驚いた顔を浮かべただろう。

「女の…人。」

 流石に、艦長も驚いている。

 そう、そこには、赤いパイロットスーツに身を包んだ、緑色の髪のショートカットの女性が立っていたのだ。

 ずうずうしく、そのパイロットは、続けた。

「風呂、それと飯。」

 いきなりそれか。まぁ、“多少”人格に問題のある人物を集めたんだからそのくらいは、ましなほうか。

 そして、とっとと出て行こうとするパイロットを艦長が、呼び止めた。

「あ、あの、ちょっとあなた名前…」

「人に聞くときは、まず自分から名乗るもんだ。」

 まぁ、それはまったくだが。

「ああ、私は、ミスマル・ユリカ。この「ナデシコ」の艦長です。」

 そのパイロットは、ふーん、と言う表情をすると。

「あたしは、スバル・リョーコ、どうでも良いけど、風呂は何処?」

 そして、そのまま、また出て行こうとするのを今度は私が、呼び止めた。

「0Gフレームは、あの4つで全部か? それと、もう2人来る筈のパイロットは?」

「0Gフレームの方は、コロニーのスクラップの中にもう一個残ってる。流石に全部は持ちきれなかった。パイロットの方は… ま、生きてたらそのうち来るんじゃねぇか。」

 そのとき、格納庫へのエレベーターが、開いた。そこには、ヤマダとアオイと見慣れぬ女性が、乗っていた。

「生きてるよぉ!」

「にぃ。」

 スバルと言ったパイロットが見慣れぬ女性の大声で動揺した。

 そのまま、突如現れた、見慣れぬ女性は続ける。

「はじめまして!!パイロットのアマノ・ヒカルで〜す。18才、独身、女、好きな物は、ピザのはしの硬くなった所と、両口屋の千なり。後、山本屋の味噌煮込みで〜す!! よろしくお願いしま〜す!!」

 また、テンションが高くなったなこの艦の…

「ま、二人も来ればいい方か。」

 その方が整備員も喜びそうだな。

『勝手にコロさないで〜』

 スバルと言ったパイロットが、何か言おうとした時。なにやら、微妙な声が聞こえた。

「イズミちゃん。」

 アマノと、言ったパイロットが、スバルのコミュニケーターを覗き込む。

「生きてたんだ。今何処?」

 至極真っ当な質問をコミュニケーターに向かって、アマノが投げつける。

『それは… 言えない。』

 ドンガラガッシャァン

 全員が、ズッコけた。

「おまえ! ふざけてないで教えろ!」

 まったくだな。

『そんなことより…      開けて。』

「……………」

 スバルが固まった。聞き取れなかったがイズミとかいった者は、何を開けてくれと言ったのだろうか。

「ハーイ、モイチドイッテクダサーイ。」

 スバルの口調が変わっている。何があったんだ。

『だから、      開けて。』

「おい、お前マジで… そんな所に、どうやって。」

『秘密』

 いろいろと、気になる会話が続く。

「ああ、解った、開けてやるよ。」

『お願い。』

「おい、ヒカル。」

「なに〜 リョーコ。」

 結構仲が、良いらしいな。

 なにやら、ゴニョゴニョ話しているが… スッゴイ気になるな。

「え、ホントに。」

「そうらしい。」

「一体、何があったんだ?」

 耐え切れなくなり私が口を開く。

「ああ、ちょっと… あの、エステバリスの足元にある“スーツケース”取ってきてくれません。」

「ああ、それ位なら、俺が行って来てやるよ。」

 ヒカルに言われて、そういったのは私ではない。ヤマダだ。

 ヤマダは、その高さ50cm 横15cm 縦40cm程の大きさの“スーツケース”を40秒ほど掛けて取ってきた。

「結構な重さがあるな…」

 ヤマダが、ぼやく。

「まぁ、アレが事実だとするならな。」

 スバルが、何故か冷や汗を浮かべている。

「じゃ、開けるよぉ。」

 そういって、ヒカルが“スーツケース”のロックを外した次の瞬間。

 “スーツケース”の蓋が一気に離れた。そこから現れた者とは…

・・・・・・・・・・・・(全員思考混乱)

「ぷはぁ、空気が美味い。」

 もう、何も言えん。とにかく、解ることはやたらと長い黒髪の女性が、そこから出てきたと言う事だけだ。(これもかなり混乱している中で思った事だが)

「イズミ… おまえ、どうやってこの中に入っていた… ご丁寧にロックまで掛けて。」

 スバル… よく言葉が紡げるものだな、感心。

「だ・か・ら・、・ヒ・ミ・ツ。」

 そう言った途端、スバルが“スーツケース”の両方の蓋を掴む。

「閉めるぞ…」

「異議なし。」(この場にいるイズミORゴートを除いた全員)

 そういう掛け声? と共に、スバルが思いっきり“スーツケース”を再び閉めようと力を込める。

「わ〜、待って、待って〜、閉めないで、閉めないで〜」

 と、長い髪の女性が、言うのに対し皆は…

「喧しい。」(イズミORゴートを除いた全員)

 至極真っ当な台詞を始めて吐いたのである。(チョイと危険だが)

「お願い、閉めないで…」

 涙目で言われても、もう誰も聞く耳を持たんと思うが…

「さばじゃないんだからさぁ。くっくっく。」

ひゅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

 一気にこの場の気温が氷点下まで下がった。本人が笑っている所を見ると、ギャグのつもりらしい。

 皆もう殺る気も失せたらしく、もう勝手にしろ、と言う顔を浮かべている。

「ええ、こいつはマキ・イズミ… 以下略。」

 慣れてるな、スバル。

 これは、また賑やかになりそうな予感… いや、確信がするな…

 

 

機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

第3話上

END

第3話下へと続く