バサッ バササッ!!

 ダンボール箱が飛ばされ、なかからツインテールの少女が出てくる。

「長年の恨み・・・覚悟!!!」

 少女はそう言うと、アキトに襲い掛かってきた。

「ちょ、ちょっとまっ・・・・」

「問答無用!!!!」

 たたたたたたたたた

 ズルッ

 ベチッ!!!











 し〜〜〜〜〜〜ん



NAKANO

第三話 たった一つの小さな記憶



 少女はアキトに襲い掛かってきたものの、目の前にあった雪でまともにこけ動かなくなってしまった。

「・・・・・大丈夫?」

 アキトはそう聞くが返事が無い。ただの屍のようだ。

 ・・・・・・・?

 アキトがこれ(死体?)をどう扱う(処理する)かを考えていると、周りからひそひそと笑い声が聞こえた。

「奥さん。殺しみたいですよ」

「あらやだ、ここも物騒になったわねぇ」

「しかも、殺した相手が自分の子供らしいですよ」

「まぁ、あんなに若いのに・・・」

「ええ、せっかく女の子が実の父親に会いにきたと言うのに、父親はそれを突き飛ばして・・・・・」

「・・・・警察に通報しましょう」

 噂話はかなりずれた方向へと向かっていた。しかし、目の前で殺人が起こったと言うのに何でこんなにも冷静なのだろう?

 ともかく、アキトは慌てた。

「アキトさん、何やっているんですか?」

 と、そこへ秋子さんが現れた。

「秋子さん。・・・実はかくかくしかじかで」

 アキトは秋子さんに理由を説明した。

「とりあえず、家へ運びましょう」

 こうして、謎の少女は水瀬家へと運ばれた。



「おかえり〜〜。わっ、大きなおでん種」

 水瀬家では学校の制服から着替えた名雪が出迎えてくれた。

「ただいま、名雪」

 秋子さんはそう言うと、荷物を玄関脇においてすぐさま二階へと向かった。

「アキトさん、お布団引きますから二階までお願いします」

「あ、はい」



 シャ

 秋子さんがカーテンを閉める。

「すぅ、すぅ・・・・」

 謎の少女は二階へと運ばれると、秋子さんに『けろぴーパジャマ』と着替えさせられ、そのまま布団の上で気絶していた。

「アキトが悪い〜〜」

 名雪が非難の目でアキトを見つめる。

「俺は被害者だ!!」

「アキトさん」

 声を大きくしたアキトを秋子さんはたしなめる。

「アキト、鈍感だから」

「・・・・・・・」

 アキトは沈黙している。名雪にその先を促しているようにも見える。

「知らないうちに、迷惑かけてるかもしれないよ」

「でも、知らない顔なんだよ」

「うにゅ〜〜」

 謎の少女はアキトたちの事も知らず、いつの間にか安眠していた。

「とりあえず起きるまではそっとしておきましょう。事情を聞くのはそれからでも遅くないでしょ」

 秋子さんは部屋を出るときに笑みを浮かべて、アキト達を納得させた。



 トン トン トン

「ん?何だこんな時間に?」

 深夜、アキトが勉強をしていると部屋の外から足音が聞こえた。

 気配を探ってみるが、名雪や秋子さんではないようである。

 アキトは下へ行ったらしいその気配を追いかけることにした。



 ガチャ

 冷蔵庫のドアが開けられる。

 がさごそ

「あう〜、お腹すいたよ〜〜。何か食べるものないのぉ〜〜」

 冷蔵庫を開けたのは昼間アキトに襲い掛かってきた謎の少女であった。どうやら、目が覚めたらお腹がすいたらしく、冷蔵庫をあさっていたようである。

 アキトは一安心したが、このまま放っておくわけにも行かず彼女に声をかけた。

「わぁ!!あうぅぅ〜〜〜!!!!」

 ボト ボト

カラン カラン

 アキトは別に驚かせるつもりは無かったのだが、彼女は異常なほど驚き、冷蔵庫の中身と置いてあった鍋などを落としながら、隅へと逃げた。

「ふにゅぅ〜〜〜」

 そして、そのままうずくまった。

 パッ パパパ

 その直後、台所の明かりがついた。

「あぅ!」

「こんな時間にご近所に迷惑よ」

 謎の少女が頭を上げるとアキトの後ろからピンクのパジャマにいつものカーデガンを羽織った秋子さんと、パジャマの上に『ねこねこどてら』を着て半ば寝ている名雪がやってきた。

「す、すいません」

 パタン

 秋子さんは冷蔵庫を閉めると、少し前かがみになって謎の少女を見つめた。

「おはよう」

 彼女は弱々しく、言った。

「お腹、すいたの?」

「うぅ〜〜」

 秋子さんの問いに彼女ははっきりと答えなかったが、秋子さんはそれで充分だったらしく床に落ちている卵と鍋を拾いながら言った。

「待っててくださいね。今お夜食作りますから」

「夜食ですか?」

「アキトさんも食べます?」



 アキト達は秋子さんが作った夜食(雑炊)を食べていた。

「眠い〜〜〜」

 名雪はなんだかんだ言いつつも、雑炊を口に運んでいた。

「それで君の名前は・・・」

 アキトは名雪を見て少し苦笑したが、すぐさま謎の少女の方を見て聞いた。

「ふぅ〜、ふぅ〜」

 しかし、彼女は食べるのに夢中であったため、質問するのは食べ終わってからにすることにした。

「お名前は?」

 今度は秋子さんが聞いた。

「・・・沢渡 真琴」

 彼女は弱々しくそれに答えた。

「他に何か覚えていることはある?」

 再び秋子さんが聞くと、彼女は少し考えて首を横に振った。そして、口を開いた。

「何も覚えてないの。それ以外・・・・」

「記憶喪失?」

「うん、たぶん・・・」

「・・・ちょっと待て!じゃあ、『俺に恨み・・・』ってのは何だったんだ?」

「あ、そうだね」

 ガタッ!!

「嘘じゃないもん!!」

 アキトの言葉に真琴が立ち上がって主張する。

「別に疑ってるわけじゃないんだけど・・・」

「あんたの顔を見たら、なんだかむしょーにむかむかして来たのよぉ!!!」

「アキトこの子に何かしたの?」

「さ、さぁ?俺は全く覚えがないんだが・・・」

「う、嘘じゃないも〜〜〜んッ!!!」

 アキトのセリフに真琴は泣きながら部屋に戻っていった。

・・・・・・・・

「・・・で、どうします秋子さん?」

「さぁ、どうしましょうか?」

「アキト、ホントに覚えがないの?」

「俺の記憶が改ざんされてない限りは・・・」

「とりあえず、アキトさんのことは覚えてる(?)みたいですからしばらく様子を見ましょう」

「はぁ、わかりました」

「おやすみだお〜〜〜」

 バタン

「・・・・・これで新しい実験台が」

 アキト達が出て行くと秋子さんは怪しい笑みで微笑んだ。

 翌日、秋子さんにすすめられたオレンジジャムを食べた真琴がどうなったかは言うまでもあるまい。



「起立!!」

 ナカザトが教室に入ってくる。今日の最初の授業は数学だった。

「着席!!」

「おはよう。早速だが来週は小テストをやるからな」

 ナカザトがそう言った途端にブーイングの嵐が巻き起こる。

「範囲は・・・」

 しかし、範囲を言おうとしたとたんにブーイングは収まった。

 アキトも慌てて筆記用具を出す。しかし・・・

「げっ!!!」

「んっ?どうした相沢」

「いいえ、なにも・・」

 そう言うアキトの目にはばらばらにされたシャーペンや消しゴム、それと様々な落書きが書かれているノートがあった。

「そうか、では範囲を言うぞ教科書・・・・」

「あ゛〜〜〜〜」

「アキト、大丈夫?」

「・・・・大丈夫じゃない」

「後でノート写させてあげるよ」

「・・・よろしく」



「はぁ〜〜」

「どうしたんですか?アキトさん」

 昼休み、アキトは裏庭でぐで〜〜っと横になっていた。

 そんなアキトに栞は話し掛けた。

「栞ちゃんか・・・」

「顔色、悪いですよ」

「腹がすいてるからだろうなきっと・・・」

「お昼食べないんですか?」

「財布、忘れた」

「そうですか。・・・・・だったら、一緒にこれでも食べませんか?」

 栞はどこからか複数のスナック菓子を取り出した。

「・・・・一つ聞いていいかな?」

「なんですか?」

「それはどこから取り出したの?」

「それは秘密です」

「四○元ポケット?」

「そんな事言う人嫌いです!!」



「♪♪♪♪♪」

 真琴は部屋で布団を背もたれにしながら、雑誌を読んでいた。アキトが毎週購読している料理雑誌だ。

「こらッ!!」

 アキトは部屋にいきなり入ってくるなり、真琴を叱った。

 ・・・・・

「・・・ごめんなさい」

 アキトに叱られた真琴は素直にあやまった。

「どうしたの、アキト」

 アキトはなぜか涙ぐんでいた。



「これで全部ですか?」

「はい、それにしても・・・」

 アキトは秋子さんと買い物に出ていた。

「アキトさんは力持ちですね(汗)」

秋子さんがチラッとアキトを見ると、そこにはたくさんの荷物をらくらくと片手で持っているアキトがいた。

「そうですか?」

「うぐぅぅぅぅぅううう!!!!」

 どかぁぁぁぁぁあああんんっ!!!!

 バラバラバラバラ

「うぐぅ・・・」

「大丈夫ですか?アキトさんそれにええと・・・・」

「あゆ、大丈夫か!!?」

 アキトは荷物からあゆを引っ張り出した。・・・あゆは失神していた。

「あらあら・・・」

 秋子さんはそうニッコリと言いながら一つのビンを取り出した。

「うぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううう!!!!!!!!」

 あゆの悲鳴が寒空の中町じゅうに響いた。



「アキト〜〜」

 真琴を記憶が戻るまで預かると決まった決まった夕食の後、名雪はアキトを呼んだ。

「わたしのノート、返して〜〜」

 アキトは授業が終わった後、名雪にノートを借りそのまま返していなかったのである。

「あ、ちょっと待ってって」

 アキトはすぐさま部屋に戻りかばんをあさり始めた。

「あれ?」

 しかし、

「あれれ?」

 ノートは、

「あーーーー!!!!!!」

 見つからなかった。

「アキト〜〜、ノートはぁ〜〜?」

「・・・・ごめん、忘れた!!!」

 アキトは手を合わせて謝った。

「明日、学校で返すから」

「わたしのノートぉ〜〜」

 名雪は今にも泣きそうだった。

「・・・行ってきます」



 カコン カコン

 夜の校舎に無機質な音が響く。

「寒いなぁ〜〜」

 アキトはこんな事なら途中でホッカイロでも買ってくるんだったと後悔した。

「ん?」

 そして教室前の廊下に出ると一人の女生徒がいた。手には剣を持っている。

「はぁぁぁぁぁぁあああああ」

 タタタタタタッ!!

 女生徒はアキトのほうを向くと剣を構えアキトの方へと向かってきた。

「・・・・・」

 アキトはそれをしっかりと見て直前でかわす。

「せいっ!!!」

 ザシュ

「キギャァァァァアアアッ!!!!」

 女生徒がアキトがいた場所をジャンプで抜け、そのまま剣で空中を切ると正体不明の、化け物が発したような悲鳴が聞こえた。

「はっ!!」

 ザシュ

 女生徒はもう一度空中を切るとそのままスタスタと歩いていった。

「・・・君は何者だい?」

「・・・私は・・・」

 そして、アキトが女生徒の方を向くと、

「魔物を狩る者だから」

 月明かりに照らされた女生徒の姿が印象的に残った。



第四話へ続く



作者の後書き

ようやく第三話が完成しました。この調子だといつ終わることやら・・・

もっとスピードUpせねば



キャラ設定 その3『北川 潤』

性別、男

年齢、17歳

生年月日、4月18日

趣味、いろいろ

特技、特になし

部活、帰宅部

その他、特記事項

一言で言えばオタクの中のオタク

 

 

 

 

代理人の感想

・・・・・・・・・・・すいません、Kanon知らないのでさっぱりさっぱり。