第三話 可能性の未来  不変なる過去

「ようブロス!!こんな所で何遣っているんだ?」

エプロン姿の、タカトが食堂のキッチンから、近づいて来た。

「俺の静かなるひとときを、邪魔しないで貰いたいな………タカト。」

そんな言葉、どこ吹く風だと言わんばかりに無視をして、話し掛けてくる。

「『来訪者』か………お前にしては、随分とまあ、まともな小説を読んでるな。」

「俺が小説を読むのがそんなにおかしいか?」

「まさか!!俺と同じ趣味を持つのは良い事だ。」

………お先真暗だな。

「確か、未来から来た主人公が、未来を変えるために、奮闘するってやつだろ?それ。」

「大体そんな所だ。」

「最も、未来から来た主人公は、そうである『可能性の未来』から来たんだがね?」

「可能性の未来?」

「そ………。未来は、決定していないんだぜ。現在の地点で………。」

「つまり?」

「彼が未来から来た時点で、彼が来た未来は、現在にとっては、一つの可能性に過ぎなくなったのさ。

 つまりだ…………幾多にも分岐している、未来の一つから来たってこと……。」

「と言う事は、彼は、どうなるんだ?」

「彼の未来は変わらない。変わるのは、過去から分岐したもう一つの未来。」

「?」

「精神のみそこに送られた彼は、自分の身体が、すでに決定されている未来にあるのだからな。

 変わらないさ。但し………。」

「但し?」

「未来の身体が、すでに未来の世界から消失してしまっている場合、かれは、その世界で生活をしつづ

 ける事に成るだろう。」

「何故だ?」

「自分の精神が最も安定するのは、それに近い精神の波長を持つもの、つまり過去の現在においての

 自分の体、というわけ。」

「成るほど。」

「つまり現在の、一人一人の選択次第によって、未来は変化しつづけるってことさ。」

「解ったような解らないような…………。」

「しかし過去を大幅に変えようとすると、ちょっといただけない事が起こる。」

「どんな事が?」

「つまりだ。ドイツ帝国の総統、ヒトラ−を未来から来た殺し屋が暗殺すると、時はそれを修正しよう

とするわけだ。そして今度は、修正できないほどの国の首領を持ち上げてくる。

つまり、ヒトラ−の役を遣らせようと言う訳さ。つまり、ヒトラ−の『代行者』だな。

それに対して、未来から来た強い力を持った人間、つまり圧倒的力を持った者が来た時、それまた時は

それを修正し様として、『対抗者』を送り出す。

そうする事によって、歴史の安定を図ろうとするんだ。つまり長い目で見ると………。」

「みると?」

「歴史と言うのは、不変と言う事さ。もっとも、その『時』すらも、指図できないイレギュラ−の

存在を考慮に入れなければだが………。」

「…………そんな物がいるのか?」

「そう言う学説も在るのさ。ところでお前は、選択しなければならないことが一つある。」

すらすらと説明していたタカトが、急に真面目な顔になる。

この顔をする時、ろくでもない事の連続のような気がするが………。

「何だ?」

「お前はこれから、俺のデザ−トの、実験台な。」

「何でだ?」

先週何か約束していたような………気が…………。

「先週、映画を見に行く約束、すっぽかしただろお前。」

「あ…………。」

そういえば、急に仕事が入って、忘れていた。

「三時間も待てたのに、その後わびも無かったなあ………。

 親友と言う言葉を、再確認したくなったよ。」

ぱちんと指を一つ鳴らすと同時に、キッチンから、食堂のおばさんが、大きな盆にパフェやら

半径5センチのレアチ−ズケ−キやら、何か見ただけで、胸焼けしそうな物が、ぞろぞろ出てきた。

「しかし、心の広い俺は、俺の作ったこのデザ−トの、味見役と言う大変名誉な職に

 君を差し上げよう。

 勿論断るのは君の自由だ………但し………。」

目が笑ってないぞ………おまえ………。

「君が自分の言った事、反古にする事になるがね。」

「……ど……どう言う事だ?」

冷汗が流れているのは、気のせいではないのだろう。

さっきから、汗が冷たい。

「『約束は守る!!もし守らなかったら、どうとでもしろ!!』君の言葉だったね。」

 間違い無く俺の言った言葉だ。

「まあ、たんと食ってくれ………。お代わりはまだいっぱいあるぞ。

 感想もつけてくれると嬉しいな。」

…………いくら何でも、病気になるぞ。この量は…………。

それから暫くの間、甘い物を見ただけで、吐きそうになったのは、言うまでも無い。

教訓『口は災いの元』

 

 

 

 

 

 

 

『つまりご主人様はこう仰りたいのですか?我々は、可能性の一部に過ぎないと。』

何故このような話をしているかというと、始まりは、俺があのタイムゲ−トシステムで、過去に飛ば

なかった事が原因だ。

別に飛んでも良かったが、少しばかり心の準備が欲しかったのと、前の戦いで、光の速さで飛んだこと

によって、機体が少し、壊れが生じた事が原因だ。

だから、金銭対策をしに、ネルガルの地球支社に行く途中である。

いくらボソンジャンプが一般に使われるように成ったとはいえ、やはり、数百光年を一瞬という訳には

いかない。

どうしても、何日か掛かってしまう。

また、ボソンジャンプは、気持ち次第で、時間を逆行する恐れがある。

だから、タイムゲ−トシステムで、調整を行なった。

まあ実験は成功した。

今度使えば、俺が行きたい過去の場所に、時間誤差無しでいけるだろう。

つまり空間移動しながら、自分の行きたい時間を、選択できる様に成った訳だ。

恐らく、銀河の端まで、1日も掛からずにいけることだろう。

最もこれはタイムゲ−トシステムの、ほんの一部にしか過ぎない。

このシステムのいい所は、平行世界まで干渉できると言う所にある。

つまり自分に都合のいい未来を、選べると言う訳だ。

ただし、このシステム、とても危険な代物で、A級ジャンパ−でも、扱えない代物、俺もおいそれとは

、使う訳には行かないものだ。

其の訳は後で説明するとして………。

「俺達にとっては、現実だ。過去のある地点に置いては、可能性の一部と言う事だ。」

『では、もしその過去の誰かの選択が別のものであったならば?』

「それが、世界の歴史に影響があるものだったら、世界全体の規模で、未来は大きく変わっている

 はずだ。」

例えば、テンカワの子孫がこんなに多くいるか………。

つまりアキトが、優柔不断だった事が起因だ。

それによって、俺がいる未来は出来ている。

つまり………

「アキトの過去の判断が、違っていれば、テンカワの名を持つものは、一人であるかもしれない。」

『そう言う未来も、平行してある………と言う訳ですね。』

「ああ………しかもアキトと、ナデシコには謎が多すぎる。今でも解明されない謎がな。」

『と仰りますと?』

「木蓮との平和交渉、そしてアキトとその周りいにいる何人かの行動。

 はっきり言って、異常だ………最も俺にはどうでも良い事だが………。」

そう………どうでも良い事だ。

アキトがどう選択し様と、俺は俺の道を進む。

しかし………配偶者の事は、如何にかしろ。

重婚は、叔父さん認めないぞ。

『やっぱりそれが気になりましたか…………。』

「ああ………未来が変わる事を祈る。」

そうして俺は、ネルガルの地球支社に、足を踏み入れた。

『しかしここに、会長がいるとお思いですか?』

「確かな筋から手に入れた。もうそろそろ慰霊祭だ。親族が集まる。」

『しかし許可無しで………。』

「問題無い………アポは取ってある。」

『何時の間に……………。』

「ネルガルも一位の座を、守って行く事が苦しいとは言え、銀河でも大企業だ。」

『そこで、手助けをすると言う訳ですね。』

「といっても、相転移エンジンの改良案を提示するだけだがね。」

そう言って、俺は門で、許可証を提示する。

すんなりと、入ることがで来た。

『嫌にあっけないですね。』

「そうでもない………あの門、全体がセンサ−に成っていた。」

『!!』

「次の門では、網膜パタ−ンと指紋がとられるな。……リンクを切るぞ。用心の為だ。」

『了解……お気をつけて。』

 

 

 

 

 

 

 

 

正面玄関に辿りつき、そこから応接室に、案内された俺は、奇妙な気配にきが付いた。

………八人………いずれも手練………。

「………ご苦労な事だな………。」

「はい?」

「何でも無い………気にしないでくれ。」

そう言って笑いを浮かべて安心させようとしたら………怖かったらしい………

そこまで引かないでよ………。

ちょっと悲しく成った。

案内された場所は、質も監視の量も、超壱級の場所だった。

「お待ちしておりました。会長がもうすぐ御見えです。」

そう言った、黒髪の背の高い美女が、笑顔を浮かべてそう述べた。

「君は?」

「私は、エリナ=ウォン=キンジョウと申します。会長の筆頭秘書です。」

「そうか………。」

サングラスをしていて良かった。

睨んでいるのが諸バレに成らずにすむ。

何故なら違和感があるからだ。

あの動き………武術をかじった者ならば、わかるが………手練れだ。

「いやあ………悪い悪い………遅れてしまったね。」

そう言って、後ろで長髪を束ねた男が、正面のドアから遣って来た。

「商談に入ろう………。」

「せっかちだねえ………。もう少し、アットホ−ムにやろうよ。」

俺はそれに構わず、話しを切り出す。

「一枚設計図を送ったな………見てくれたか?」

「おやおや………話すのはキライかい?」

「……無駄話は嫌いな性質でね。嘘吐きも嫌いだ。」

「嘘吐き?」

ニヤニヤ笑いながら、それでも目は鋭い物に変化する。

「俺の調べでは、あんたは確かに会長だ。」

「そうだね………。僕は会長だ。それのどこが嘘だと?」

「ここには、もう一人会長がいたな。」

「ああ……姉さんかい?彼女はここにはいないけど?」

「しらを切るなら、この話はご破算だ。手間をかけた。」

そう言って立ちあがろうとする、俺に話し掛ける。

「僕一人では、役者不足かい?」

「ここに会長は、二人揃っている。なのに何故ここにはいないと言った?」

「え?」

「エリナ=ウォン=キンジョウというのは、『戦神』の女の一人だ。俺が知らないと思ったか?」

俺の言葉に女の方の目は剣呑な輝きを帯び始める。

しかし男の方は………表面上はへらへらとして、

「女とは結構失礼な言い方だねえ…………。せめて第一夫人と言って欲しいな。

 それにトルニア星系の人達よりは少ないと思うがねえ。」

「あそこは、重婚が許可されている場所だ。戦神の時代は、アラブやイスラム教徒を除くほとんどの

 国が、重婚を批難した時代だ。そうじゃなかったか?」

「そうだね………。けど特例が、出ちゃったのだから仕方がない………。」

そうでもしないと、地球規模の混乱が起きたか………。

「まあ………どっちにしろ、未来はテンカワに集まって行くんだが……。」

「ん?何か?」

「いや別に………。取り敢えず………おれはこう言う場所での、嘘は嫌いだ。世話をかけた。」

立ちあがろうとする俺を女の声が押し止める。

「嘘をついたのは、そっちが先ではなくて?」

さっきまでの声とは、がらりと変わった少し声の高く鋭い響きを持った声が、その女の口から吐き出さ

れていた。

「嘘とは?」

「あの設計図、巧妙に欠陥が組み込まれているわね。一見見ただけでは、誰も気づかないわ。」

ほう………気づいたのか。

「確かに………あれを作っていたら今ごろこの支社は、消し飛んでいるところだな。」

何せ、約8倍の出力をもつ相転移エンジンの、大爆発だ。

まあ、そうなったらそうなったで、別の会社に売り込むだけだったが…………。

「だが俺はメッセ−ジも、残しておいた筈だ。『これはまだ完成していない』と。」

「ええ………あったわ。

 でも、まさか設計図其の物に、欠陥が組み込んであるだなんて、誰も思わないわ。」

見た目は完成された設計図、しかし、数十箇所に欠陥を組み込んでおいた。

動かした日にゃ、楽にあの世に逝ける、極楽自殺装置。

「完成図はここにある。最も、欠陥を全部見付けたと言うのなら、これは持って帰るが?」

「見せて頂けないかしら?」

「どうぞ………。」

そう言って、渡す。

まあ、これ一つでも、実は解らないのだが………。

案の定しかめっ面で質問をして来た。

「何これ?」

「完成図の一つ。」

「騙したと言う事かな?」

奇妙な顔をして問うロン毛の兄ちゃん。

「まさか………ちゃんとここにあるさ。」

暫く考えていた様だが、やがて苦笑いしながら諸手を上げて、

「では、どう言う事かな?説明して欲しい。納得が出来ないのだが………。」

「その二枚を重ねて見ろ。そうすれば、おのずと解る。」

だからここにあるといっただろ………。

一枚一枚では、全く意味がない。

二枚で完成図となる。

「これは…………。」

二人の表情が、驚愕に変わる。

人の顔って、随分変化する物だ。

「三千万クレジットで売ってやろう。」

かなり格安だ。

「御宅のエンジンの何年か先の代物だと思うが………。」

「たった三千万か……。それ以上の価値があると思うがね………。」

そう言って、無理に笑おうとしている。

「そう言えばふと思い出したのだが………。」

「何だい?」

「あんたがたの名前を、聞き忘れた。商談を成立させたいのなら、聞かせて欲しい。」

若会長の方は、少し驚いた顔をした後、苦笑して、

「アカツキ凪人(ナギト)だ。もう一つ『テンカワ』の名も持っている。」

と自分を紹介して、手を差し出して来た。

「現金で良いかな?」

「そうしてくれるとありがたい。」

そして女の方はというと、じっと図面を見つづけた後、溜息と共に肩の力を抜き、肩を竦めながら、

「参ったわね……こんな方法があったなんて………貴方を専属の発明家として雇いたいぐらいね。」

と前置きをした後、

「エリナ=キンジョウ=アカツキ。『テンカワ』の名を持つ一人よ。最も正しければだけど………。」

と語りかけてきた。

「フォトビア=ラトウ。只の、旅人だ。口座を持ってないんで、現金はありがたい。

 誓約書も書いてくれると尚嬉しい。」

「誓約書ね。いいでしょ………。現金と同時に渡すわ。」

ようやく、ゲットと………。

何はともあれ、滞りなく終わった事は良い事だ。

「ああ………それともし、偽札だったら、きっちりその偽札分の、謝礼しに来ますんで。

 あしからず。」

と言う事も付け加えておいた。

一応言っておけば、ここが消えても、文句は言わないだろう………。

そう言った時の彼等の反応は………想像してください………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「速く行くぞ!!ナオキ!!」

そう言って、俺の前にいる子供は、どんどん歩いていく。

苛立たしげに言う少女を見て、俺は苦笑した。

「やれやれ………俺に刹那の面倒見ろだと?」

本来その役は、俺の女房の役だ。

ヤガミ サト

それが女房の名前だが、今は俺の子を妊娠中で、この地球の別荘にいる。

ん?

お前は誰だって?

カツラギ ナオキ

これが俺の名だ。

夫婦別姓は珍しくないだろう?

別に別姓にしている訳じゃない。

普段女房は、カツラギ姓を名乗る。

しかし、この地球で遣る慰霊祭の時等は、ヤガミ姓を名乗っている訳だ。

この祭り、銀河の大イベントみたいで、色々な所から、人が集まってくる。

政府の高官も出席するほどの大騒ぎだ。

俺にして見れば、馬鹿らしい事だが………。

「墓は逃げない。もっとゆっくり歩けよ。」

しかし、その声はその少女の耳には届かなかった様だ。

「無視かよ………。」

分かっていた事だ………今更気にする事はないが………。

はっきり言ってこの餓鬼、うちの女房と幼馴染とすぐ上の姉以外

の言う事はまるっきり無視してくれる。

っていうより、そんな口聞いた瞬間半殺し、もしくはこの世からいなく成っている。

目は、闇に生きる裏社会の大人以上に冷たく、暗い眼をしているって言うのに……、

女房の前では、借りて来た猫の様に大人しい。

今から行くのは、こいつが殺した、こいつの生みの親と父と師匠の墓だ。

最初に殺したのは、自分の同期、次に殺したのが、師匠だ。

女房が言うには、人間とは思えないほどの、過酷な訓練を施されて来たと言う。

木蓮式柔術の裏を極めた闇人形。

では、何故女房は無事か?

  1.  
  2. 育ての親
  3.  
  4. 実は姉妹
  5.  
  6. 彼女が操っている

答えは、女房が育ての親だからです。

そして、彼女も木蓮式の裏を学んだもの………。

『表を知るなら裏を知れ』というのが家訓らしく、それを忠実に実行したらしい。

表を知り裏を知って、尚その性格が変化しなかった稀有な例の一つだと言ったのは誰だっけか?

………今はのほほんとした女だが、昔は………のほほんとしていたな。

どうやってこの狂犬を飼いならしたかと聞いたところ、

「普通に接した。」

だけだという………。

俺には真似できないな。

いまや、木蓮式といえば、表は結構知れ渡っているが、裏は今だ日の目を見ていない。

業が深すぎる裏は、極める人間が本当に少ない。

というより、修行の過程で、死んで逝くからであろう。

どんな訓練かは、教えてくれなかった。

まあ、あの表情からして、ろくでもない事は分かった。

え?

どうやって知り合ったか?

それにはこの餓鬼が、一枚噛んでいるんだが…………。

その内話すよ。

「何ブツブツ独り言を言っているのだ?」

どわっ!!

下からじっと、やぶ睨みするなよ!!

「考え事だ。」

「どのような事だ?」

「女房の事さ。」

「…………………………………。」

一瞬にして、殺気が膨れ上がった。

気温が、氷点下にまで下がった気がする。

「サトの事を?」

「別にお前が考えているような事ではないな。さ………早く墓参りを済ませるか。」

そう言って、さっさと歩き出した。

結婚式当日に、こいつが俺に言った言葉は、

「サトを捨てたら………………不幸にしたら………殺す。」

いきなり抱き着いて、俺の耳に囁いた言葉だ。

それだけ、大事だろうと言う事だが、あの時は心臓が抉り出されたような気がした。

以来、俺がどこかに行こうとするたびに、殺意溢れる目が俺に突き刺さる。

そう………今のように……。

「また………サトを置いてどこかに行くのか?」

「ハンタ−は、そんなものさ。」

「サトよりも………そんな仕事が大事なのかよ。」

「…………俺も………サトと長くいられたら良いと思うよ。」

でも………子供の俺が、それを許さない。

あの男に近づきたい!!

そう誓った心が、俺を宇宙に飛ばせる。

ハンタ−と不法航海者…………立場は違うけど、俺はあの男の様になりたかった。

「いいさ………戻ってこなかったら………殺しに行くだけだから………。」

そう言って、ずんずん進んで行く。

「………少しは、俺に懐いて来たのかな?」

前は、殺される寸前だった…………。

サトが止めなかったら、今ごろ俺は墓の中だ。

そんな事を考えていると、

「聞きたい事がある。聞いて良いか?お嬢さん。」

思いっきり、俺の顔が崩れそうな表現が出て来た。

…………一難去ってまた一難…………。

案の定、無表情で見返す刹那の姿が見えた。

『真紅の羅刹』と『漆黒の戦神』の狂気を受け継ぐ少女は、標的と考えた様だ。

「お嬢さん?誰だ?それ………。」

低い声で、黒いコ−トを着た男に聞き返す。

その男は恐ろしげもなく、淡々と質問をしてきた。

「ここに、ネルガルの一族の墓があると聞いた。場所はどこか教えてくれないか?」

右肩に、ハンドボ−ル大の丸い白い毛玉が乗っている。

左手には、花束が握られていた。

黒いサングラスをしていて、長い髪は、無造作に後ろで束ねられていた。

背は、180ぐらいで真一文字に閉じられた唇は、つよい意志を示しているかのようだ。

「お嬢さんと言うのは、誰だと聞いたのだが?」

うううううううう………まずい。

こいつは、女だと言われるのが、大嫌いなんだ。

こんな事言えるのは、女房達だけだ。

ほかの人間が言ったら(俺を含めて)、あの世行き間違いない。

大惨事になる前に……止めるか………。

しかしその前に目の前の男はあっさりと、

「お前だ。」

と断言してくれた。

馬鹿野郎おおおおおおおおおおおおおおおお!!

俺は心の中で、叫んでいた。

シャ!!

刹那の姿がぶれた。

まずい!!

殺す気だ!!

ドン!!

だが次の瞬間、吹き飛んだのは、刹那のほうだった。

「え!!」

その男は、悠然と歩いてきている。

「ポン………暫く遊んで遣れ。」

そう言って、右肩の毛玉を、吹き飛んだ刹那の方へほおる。

それは弾みながら、「ちゅうちゅう」鳴いて、刹那の方へ行った。

ちゅ………ちゅうちゅう?

あれ……鼠か?

「古式……当身『荒魂打ち』……。」

「古式?」

「技名だ。それよりも、墓の場所を知りたい。」

「……………人の連れふっ飛ばしておいて、そうくるかい。」

「………解った………。仲良くお前も吹っ飛べ。」

そう言って、俺に近づいて来た。

「墓の場所は教えてやるさ。こっちにも非があるからな。けど普通は、あそこまでやらんだろう。」

「軽く、当てただけだ。吹っ飛んだのはあいつの意志だ。」

そう言って、刹那の方を指差す。

「な………この毛玉………離れろ!!引っ付くな!!背中に入るな、気持ち悪い!!」

………まあ、元気な事…………。

「案内してやるよ………。」

「済まない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分古い墓じゃないか。お袋さんかい?」

「いや………。」

そう言えば………お袋の墓はどこにあるのだろう………。

「知り合いさ。」

そう……知り合いだ…………最も愛しい………。

そう言って、首に下げている。ペンダントを取り出す。

もう殆ど壊れ掛けている、古ぼけた墓………。

ここに来て、ようやく実感できた。

帰って来た、と言う事に………。

穏やかな風が、俺の心を思い出に満たす。

優しい日差しが、遠き日々の匂いを、思い起こさせる。

「君を………迎えに行くよ………。」

何時の間にかに…………そう呟いていた。

暫くして、ハンカチを差し出す手が見えた。

「懐かしいのか?泣いているぜ………あんた………。」

「泣いている?俺が?」

指を顔に触れてみると、確かに涙が出ているようだ。

「………気づいていなかったのか?」

「………自分でも……泣けるとは思わなかった。」

センチメンタルな気分になれるほど、ロマンチストじゃないと思っていたのにな。

「世話をかけた………失礼する。」

気恥ずかしさからか、少しつっけんどんな対応になっていた。

そして、道に戻って見ると、ポンと遊んでいる、女の姿が見えた。

「くっ!!弾むな!!こいつ………まだ分裂しやがって。あっ!!こいつ!!」

パントマイムでも、十分遣っていけるな。

「ポン………帰るぞ!!戻って来い!!」

その言葉に、いやいやするかの様に体全体を横に振わせた。

………良い度胸じゃないか…………。

「太陽にもう連れてってやらんぞ。」

その言葉が聞いたのか、こびる様に大人しく戻って来た。

「太陽って?」

「宇宙マルワタネズミは、火山を住処として生息している。

 だがたまに、宇宙に捨てられたネズミが、太陽風を逆に泳いで、太陽を住処とする奴がいるんだ。

 こいつのお気に入りは、太陽の熱だからな。」

「………どんなネズミなんだ。それ………。」

宇宙の不思議だな………。

「最もこいつとであったのは、どっかの研究所だ。」

破壊していたら、何時の間にかに懐かれたようだと話したら、顔が引きつっていた。

「おい!!こいつを暫く貸せ!!」

いきなり女が、話し掛けて来た。

「ポンをか?」

「そうだ!!」

「ポン、お前は如何したい?」

そう聞いたら、ぴょんと刎ねて、刹那の胸の谷間に、潜り込んでいった。

………よほど気に入ったんだな………。

「じゃあ、暫く頼む………。飯は食べさせて遣ってくれ。」

そう言って、さっさと離れる事にした。

そいつは悪食だから、人以外は、なんでも食うとは言わないでおいてやる。

「場所は教えなくていいのか?」

そう聞く男に俺は

「飽きたら、勝手に帰ってくるさ。じゃあな。」

そう言って、そのまま去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご主人様、調整が完了致しました。』

「ご苦労……済まないな………お前にやらせてしまって……。」

『滅相も御座いません。何なりとお申し付け下さいませ。』

「明後日行動起こすぞ。……暫く休んでいろ。」

『了承……必要の際には及びください。』

「ああ……。」

リンクが切れたあと、再び俺は景色を見渡した。

広がった草原の中にある長いなだらかな坂道。

その道の脇で俺は寝そべっていた。

その先にある、レンタルドックに戻る途中だ。

あの霊園から六十キロ離れた地点に俺は来ていた。

「久々に走ったな。」

『古式・歩法影』

極めれば、千里を一日で走れると言う。

迷信だな………その前にばてる。

俺でも六十キロが限界だ。

只し、俺の師匠のあの爺は、この倍は軽く走っていた。

………化け物め………。

その化け物も、年には勝てず、俺が弟子入りしてから二十年後、永眠した。

青臭い匂いが、俺の鼻を燻る。

爽やかな風が、俺をなでる様にして吹き去っていく。

喉かな日々……こんな日は昼寝するに限る。

そうだ……明日は、ここら辺を歩き回るか。

ス−ツケ−スも飛んでいる事だし………な。

そう……ス−ツケ−ス………ス−ツケ−ス?

って………ちょっとまてや!!

なんでス−ツケ−スが、ここに落ちてくるんだ!!

ガシッ!!

間一髪俺はそれを受け止めると、立ちあがった。

どこの馬鹿だ……こんな物投げ捨てる奴は………。

少し遠くの方で止まった白い乗用車から、長い髪の女が下りて来た。

どうやらあの制服からして、軍の人間らしい。

将校の制服だな。

「ああ〜〜〜〜ん。ジュン君、しっかり運転してよ。」

「行き成り抱きついてくる、ユカが悪いんだろう。

 寝るのは勝手だけど、寝ぼけないでくれ。しかもやっぱり荷物が多すぎるよ。

 こんなにトランクに入らないよ。」

そう言って運転席から、左目を隠すようにして前髪をたらした男が、出て来た。

「駄目!!ユカの思い出の品ばかりなんだからね!!全部持っていくの……。」

一向にこっちに来る気配がない。

忘れているのだろうか?

「何も石鹸とかシャンプ−とか、あっちでも買える物は、置いて来てほしかったなあ。」

「あっちに同じ物があるとは限らないじゃない。これでも少なくしたんだからね…。」

置いてそのまま去ろうか………。

それとも持って行って遣るか。

如何しよう。

………一応声かけてみるか。

「おい………。」

「この熊の人形が、幅取り過ぎなんだよ。何に使うのこんなの………。」

「この熊さんはね!!小さい頃からのお友達なの!!」

「………もしも〜〜〜〜〜し……。」

「部屋の装飾品なら、宅急便で送れば良いじゃないか。

 もしかして、行きも戦艦の中に持ち込んだ訳?」

「そうよ……悪い!!もしかして、子供とでもいう訳……プンプン。」

「………聞いているか?おい………。」

「いや……別に……悪いって行ってないじゃないか……。ただ戦艦に不必要なものは……(汗)。」

「不必要ですって!!ひど〜〜〜〜〜〜い!!どれもこれも、私にとって必要な物なの!!」

「…………置いていくぞ………。」

人の話………全く聞きやがらねえ。

車のトランクに置いていこうとしたが………。

「あ!!泥棒さんだ!!」

………おい……。

いきなり泥棒はないだろう……。

これに見覚えはないか?と聞こうとしたが、もう一人の野郎が、その言葉を信じたのか、ブラスタ−

を構えて、こう警告して来た。

「お前!!何時の間にそんな所に!!それを離せ!!」

お前ら……本当に人の話し聞けや。

………しまいにゃ怒るぞ………。

 

 

 

 

 

 

 

……………二時間後…………

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 ごめんなさいほんと〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜にごめんなさい!!」

「ま………いいけどな………。」

その男を軽くのした後、泣きじゃくる?女を宥めながら?説明した。

本当に悲劇のヒロインを演じてくれたよな………。

 

 

 

『いや!!止めて!!お願い!!いくら私が可愛いからって、こんな所で襲わないで!!』

『………冷静に話しを聞け……。この荷物をあんたに渡しに来ただけだ。』

『私を荷物にして、渡すですって!!ひどい!!あんまりだわ!!薬漬けにして、命令に逆らえない

 様にして、私をどこかに売るのね!!ああ……許して私の王子様……ユカは穢れた女に成ってしまい

 ます………ウルウル。』

『………話しを作るのが上手いな………。

 そうなりたいのはあんたの勝手だが、まずは俺の話す事を良く聞いて欲しいのだが………。』

『でも、私は何時でも貴方との出会いを、信じています。

 どんな困難があっても、きっと助けに来てくださいね………。』

『………脳タリン娘………。』

『ひど〜〜〜〜〜〜い!!ユカはいっつも明るく元気な女の子(はあと)って言われてるんだよ!!

 脳タリンじゃないもん………プンプン!!』

『………悪口だけは良く聞こえてるな………。

 取り敢えずこの俺の頭上に落ちてきたス−ツケ−スを、あんたに渡したいんだがね………。』

『あ………え〜〜〜〜〜と………もしかして……それ渡しに来てくれたの?』

『もしかしなくてもそうだ………。』

『あ……は………はははははははははははは…………。』

 

 

とまあこんな具合だ。

しかし………

「大体だな……こんな荷物の積み方があるか!!何だこの隙間だらけの積み方は!!

 誰の仕事だ全く……。」

「ジュ……ジュン君の仕事です。」

「そのばかたたき起こせ!!俺が直してやる!!」

何故か俺を見て目をきらきらさせている………。

如何した事だ?

まあ無視してやっていよう………。

それが、俺の失敗だったのはいうまでもない………。

 

 

 

 

 

 

「お前ね………何時までむくれてるの?」

「別にむくれてませんよ!!マキビさん……。」

「三四郎………艦長のあのやり方は、正しかったんだぜ?

 もし、検査を怠れば、人間爆弾で、こっちが被害を受けていたかもしれんだしな。」

「分かってますよ………けれど……。」

「けれど………。」

「………何でもありません。」

やれやれ………初々しいね……。

あの戦いの後………海賊の中で大破しながらも生き残り、降伏した者達がいた。

どうやら、重傷を負っている者が多いようだったが、艦長は厳重に検査を行ないその上で、厳重な

セキュリティをかけた牢屋にほおり込んだ。

三四郎にとって、重傷者はすぐに助ける者だという観念があるらしく、その命令に反対していた

が………。

あっさり無視して、艦長は自分の命令を徹底させた。

時間をかけた検査の為に、何人かは途中で死んだが、それでも何人かは生き残った。

「何人かは、怪我人の振りをしていたみたいだしな。

 それに、誰かを人質にされたら如何する?俺はともかく、お前は何もできんだろ?」

「僕だって、木蓮式柔術を学んでいます!!足手まといには成りませんよ!!」

「ごりっぱ………。」

まあ海賊艦の、探索の時の襲撃については、話さない方が良いかもしれんな。

襲われた時あの女が、素手で心臓抉り出したなんて聞いたら、卒倒するな。

あの時、

『随分惨い殺し方をするな。心臓とってそれを取った奴に見せるかよ。』

抉った後さえ見うけられない。

『どんな殺し方をしても、死体には変わりないでしょう。』

『もしかして、欲求不満か?』

『そうだとしたら、どうなんです?貴方が、相手をしてくれますか?』

『ものによるけどね。』

その答えに答えず、自分の歩幅を変えずに(つまり死体を踏みながら)歩いて行った。

『さっさと行きますよ。あの剥げ爺に怒鳴られるのは癪ですからね。』

『アイアイサ−。』

いつもは、冷たく笑うだけなのにね………。

そんな事を考えていると………

「マキビさん。なんです後ろの、カ−ドの束は………。」

胡散臭げに、後ろ座席を指差して来た。

「無修正の裏ビデオ。俺の弟がミスマル総司令の旗艦の艦長になったんでね。そのお祝いさ。」

「弟さんがいたんですか?」

「ああ……俺より優秀で、もう少佐さ。年はおれより二つ下。」

「総司令も、いらっしゃるんですか?」

「そう………銀河連邦西域軍総司令ユカ=ミスマル・テンカワ大将。

 御年24歳最年少のエリ−トさ。」

旗艦名『トワイライト・クィ−ン』(黄昏の女王)ナデシコの発展版だ。

本来は『ヤマツバキ』と言う名だったらしいが、勝手に名前を変更してしまったらしい。

この人の知られている二つ名は、『戦場の女神』だ。

士官学校主席で卒業。

この人が出てきたお陰で、西域軍は最強と呼ばれている。

そして彼女の元には、優秀な若手が多く集っている様だ。

例えば白鳥 水地(みずち)。

猛将と呼ばれるほどの軍人で、卓抜とした艦隊指揮能力を持っている。

ハリ−=ウォルファン。

作戦参謀の地位についていて、冷徹な作戦案を出し、はっきり物を言う男なので、上官からは煙たがら

れていた様だが………それを彼女が拾った様だ。

ほかにも色々いるが、最後にしよう。

テルヨシ=マキビ

おれの弟。

説明終わり。

「しかしこんな物……軍規に引っ掛りませんか?」

「別に、おおっぴらに見ろという訳じゃないし、いいんじゃないの?」

「いい訳ありませんよ!!」

「……かたいこと言うなよ。心配すんなって。考えてあるからさ。」

「………しりませんよ……。」

「まあ、詰まらん事はとっとと終わらせて、早くジェニ−の所に行かないとな。」

「………今度は金髪ですか?」

「いや、ブラウン。ベッドでパ−ティ−遣りたいんだとさ。」

「え?パ−ティ−?」

混乱している三四郎を尻目に、俺は車を基地に走らせた。

それにしても、あの艦長が、先に出発する艦隊のお見送りを提案するとはね。

どうなる事やら………・。

 

 

 

 

 

 

如何してこうなったのだろうか?

呆然とする頭の中で、その質問だけがリフレインされていた。

「この人はどなたですかな?ユカさん。」

ブロスに似た男が、ポカンとした顔と声で、そう尋ねているのが見える。

「この人は、ユカの王子様です!!」

………王子様?

記憶を辿って見るが、やはり三十分前に出会ったばかりだ。

どこにもそれ以前に、この顔が記憶されていない。

次に王子様の単語を、考えて見る。

色々な記憶と、世間一般の意味を比べて見ると、俺とその想像図がかみ合わない。

取り敢えず聞いてみた。

「王子様って………誰?」

その質問に、にこにこ笑いながら、指を指して答えてくれた。

「…………俺?」

ブロスもどきや周りの人間はやはり、目を点にしたまま、そしてジュンと呼ばれた人間のみが、

殺気こもった視線で俺を見ていた。

「………なんで俺が王子様なのか教えてくれないか?」

………………この四百年の間、こんな意味不明の女に会ったのは、始めてだ。

少なくとも俺の記憶にはない。

大体なんで俺が、こんな軍の基地なんぞにいるのか?

何時の間にかに乗せられていた、と言う迂闊さがこの事態を招いたのは確かだ。

どこからか、

「未熟未熟〜〜〜〜〜〜〜〜。」

と言う声が聞こえてきそうだ。

「う〜〜〜〜〜ん……なんでかなあ………。

 でもあの時、ぴんと閃いたの。この人は王子様だって!!」

「それだけの………理由か?」

頭痛がして来たぞ…………。

「うん!!だって笑うと、私の理想の王子様にそっくりなんだもん!!」

そんな理由あるか!!………本当にそれが理由ならば…………、

「………一度、眼科と精神科にいく事をお勧めする。お大事に………。」

………こんなのが、軍の高官なんて言ったら、アウトロ―達は、涙を流して喜ぶぜ。

そのまま回れ右をすると、さっさと其の場から離れて………離れて………。

「コ−トを引っ張るな。」

振り向いて見ると、「ウルウル」と言いながら、捨てられた子犬のような目で、俺を見上げていた。

両手はしっかり、俺のコ−トを引っ掴んでいる。

「……そこのひげ親父……何とかしろ……。」

ブロスもどきの方を向いてそう言って見た。

しかし別に気を悪くした様でもなく、その男は、

「ひげ親父とは……ああ、私の事ですか。

 ええとユカさん。その人は軍の方でもない様ですし、私どもの社員でも御座いません。

 なにより、私どもと致しましても、いやがる人を無理に連れて行くというのも、あまり宜しい事とは

 言えませんので、はい。」

とすらすらと彼女に説明をしていた。

………ああ軍人なぞ大嫌いだ!!

それだけはおおっぴらに言ってやるぞ。

「でも………王子様だもん………。」

………いい加減しつこいなこの女………。

「頼むから離せ……。………・・蹴るぞ。

ぼそりと言った脅しにも、いやいやして離さなかった。

「………3回俺を捕まえる事が出来たら、茶でもご馳走してやる。」

その言葉で、あっさりと離した。

……単純で助かった………。

「邪魔したな………。」

そう言って帰ろうとしたところ、

「一回目!!も〜〜〜〜〜らい!!」

と言う明るい声と共に、後ろから影が迫って来た。

右に避けるとその女の腕を掴んで、ジュンという男のほうへ、突き飛ばしてやった。

「わああああああああ!!」

「あぐうううううううう!!」

異句異音が同じ方向から聞こえる。

周りをざっと見まわすと………囲まれているみたいな気が………。

仕方がない………。

「昼寝の時間をくれてやろう。」

地面に手を当てると、そのまま気をはなった。

「『古式・遠当て『小波』』」

地面の細かい衝撃波が空気を振動し、地上にあるものを粉砕する技だ。

それに対して、地面諸共破壊する技を、『荒波』と呼ぶ。

まあ周りにいる人間は、今回気絶しているだけだろう。

数名は体が動かないだけの様だが………。

そして、艦内の小さな殺気を放っている人間にも聞こえる様に言った。

「あんたの大事なご主人は、気絶しているだけだ。その内目を覚ますだろうよ。」

そして、こいつ等が気絶から醒める前に、とっとと逃げることにした。

………君子危うきに近寄らず………

 

 

 

 

「ヒスイさん……ナゼトメタノ?」

「無駄な事をしている暇はないでしょう。」

青い髪の少女に、私はそう答える。

「ムダ?何が?テルヨシ……危ない目に会っタ。同じ事あいつにしようとシタダケ。」

まだ、十にも満たない女の子が、怒りに満ちた声でそう言った。

「今の貴方の任務は、テルヨシの事ではないでしょう?

 貴方はこのオモイカネを調整する事が任務の筈……。」

そう言って、彼女の目を手で覆う。

「その心を今は忘れなさい。自分の事で手一杯でしょう?」

「…………ハイ。」

手を離すと、感情を失った表情が、表れた。

それが終われば、またその感情に支配されるでしょうけど………。

まあ其の時には、私がそこにいないことを、祈るしかないわね。

それにしても………

「運命というのは、人に媚びを売るのがお上手ですね。」

また出会いました。

面白い技を使います……私の王子様は………。

「ユカ姉さん………横取りしないで下さいね。」

私が先に見つけたのですから………。

そう言えばもうそろそろ、三四郎君たちが来ますね。

迎えに行きましょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

―二日後―

「さあ………全ての始まりをただしに行くか……。」

『参りましょう……我々の始まりの時に………。』

「宇宙でゲ―トを開く。」

『了解……リミッタ−は?』

「外さなくて良い。………奴等の出発に乗じて、俺達も飛ぶ。」

『了承。』

「悪夢が………終わる………。」

『終わりますな………悪夢が………。』

「ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

会長の元に届いた1束の花……。

それに添える様にして壱通の手紙が届いた。

「ブロス……この意味を如何取る?」

「『ネルガルには高嶺の花一輪を頂く』ロゼリア嬢の事でしょう。」

「何故そう思う。」

「クリムゾンとの縁談。それを揶揄した物ではないかと愚考します。」

「クリムゾンに遣るには勿体無いと言う事か?それとも私には不似合いの娘と言う事か。」

恐らく、両方だろう。

クリムゾンの血を引く者との結婚とはいえ、評判がかなり悪い男だ。

表面上はあの男を寓してはいるが………。

クリムゾンの会長にとっては、利用できるならば、利用してやろうという程度の男に過ぎないはずだ。

クリムゾンの会長、『氷の剣』とひそやかに囁かれている男……………

なんの躊躇いもなく、あの男を切る事だろう。

やはり前会長には、この人は劣る。

父系では確かにあの男が一番後継者に近い。

だが、男が継ぐとは限らない。

継がなければ、ならない理由は全くない。

「まあいい……悪戯である可能性は高いが……、警戒はしておいてくれ……。」

「はっ!!」

やはり貴方は、ここを継ぐべきではなかった。

洒落たものだな……『復讐』を意味する花を贈ってくるとは………。

俺の勘はこれが本気であると告げているようだ……。

会長室を後にして俺は、ロゼリア嬢が住む屋敷に急いだ。

 

第3話完

 

 

 

続く

 

 

 

さあて終わった終わった!!

第4話行きますか!!

「ちょっと待て!!」

あれ?

タカト君どないした?

「ラトウと呼べ……。それより、北斗とアキトの子孫が出てきていたな?」

ん?

おお出したとも!!

それが何か?

「本当にあの北斗が花嫁になったのか?」

そうとは言っていないが?

「ん?」

結婚しなくても、子供はできるものだよ。

「………甥をおとしめたくはない……。さっさと吐くんだな。」

良く考えて見よう……。

ルリちゃんは如何やって生まれたかがヒント。

「…………こいつ……外道が……。」

はははははは……外道に外道と呼ばれるのは光栄の極み!!

「……ふん……俺が手を下すまでもない……後ろから来る火の鳥に注意するのだな。」

火の鳥?

って……まさか………。

どおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

ぎゃあああああああああああああああああ!!

「それと、青白い玉も飛んできているぞ………。」

ズドドドドドドドドドドドドド!!

ぐはあああああああああああああああああああ!!

こ………こんなはずはあああああああああああああ!!

「向こうのBenさんの家が、半壊しているが………あそこから放ったみたいだな。

 修理が大変そうだが……まあ後で、ランでも捨てておくか。

 奴当たりの道具にはなるだろう。

 死にそうになったら、Benさんが止めるも良し。

 保険金をかけた後で、二人にやつ裂きにさせるも良し。任せ様。」

た……助けて………。

ゴン!!

「………オモイカネ……何か聞こえたか?」

『いいえ?私の聞ける範囲内では何も……。』

「じゃあ……この塵でも、Benさんの家に捨ててくるか。」

『それが宜しいかと思われます。』

ズルズル…………。

終わり

 

 

管理人の感想

 

 

ランさんからの投稿第三話です!!

なんだか、遺伝って怖いね・・・

あそこまでそっくりだと、笑える笑える(苦笑)

でも、北斗とアキトの娘ね。

・・・まあ、キャラ的には気に入りましたし、今後は更なるレベルアップを望みましょう!!

少なくとも、格闘戦ではピカ一になる可能性が大!!

そして、気になるのはやはり幼馴染でしょう!!

一体誰なんだ? 男か? 女か?

う〜ん、想像が加速しますね〜(ニヤリ)

 

ではランさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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