機動戦艦ナデシコ

『影(シャドウ)』

 

 

 

 

 

彼は目を覚ました。

目を開けると天井についている照明が眩しい。

 

(うっ、ここはどこだ?…薬くさいな)

 

何やら薬くさい匂いが部屋中に充満しているようだ。

どうやら医務室らしい周りにそれっぽい機材等がある。

 

「ようやくお目覚めのようね」

 

「ん?…博士か、

 俺がやられた後一体どうなったんだ?」

 

「不思議なことにナデシコのクルーが全員良くは覚えていないんだけど、

 あの後、木星トカゲの無人兵器は全て地上に落ちていたわ。

 そうね…まるで時が止まったかのように…」

 

イネスが悩んでいるのを見ながら彼は起きあがろうとした。

しかし、体を鎖でグルグル巻きにされているので無理だった。

 

「博士!これは一体!?」

 

「説明して欲しいの?

 そうね…じゃあ、言うけどとりあえずあなたのお腹を見て御覧なさい」

 

「腹?」

 

見るとそこには頭が生えていた。

ガイは一瞬止まったが思い出したかのように絶叫した。

この悲鳴がナデシコの艦内中に響き渡った悲鳴の正体である。

 

「な、なんだこれは?!」

 

「おそらく人間の頭ね、

 でも不思議なことに私はこの人物を知っているのよね」

 

ガイのから生えている人物は何故かガスマスクを付けていた。

 

「あ!俺もこいつ知っているぞ!!

 前にケガした時にお見舞いとかいって来た奴だ!!」

 

「お見舞い?前に来た?」

 

「そうなんだよ博士!!

 俺がせっかく傷を癒していたらこいつがやって来て…」

 

「この人がナデシコにいた?

 いつの話し?それともナデシコに乗るもっと前の話なの?」

 

「?????

 ナデシコに乗って俺が名誉の負傷をしてしまった時だ。

 そして俺が医務室で寝ていたらゲキガンシールを土産に置いて帰りやがった」

 

その言葉にイネスは黙り込んでしまった。

このガイの腹から生えてきた人物はテレポートでもするのかと疑い始めた。

 

「とりあえず―――!?」

 

「ふぁ〜―……、ん?

 おぉ!?久しぶりじゃないか!!元気だったか?」

 

「それはこっちのセリフよ?

 まさかあなたが腹から生えているなんて想像もして無かったわ」

 

「そらそうだ。あんたの考えている世界なんてちっぽけなもんだ。

 まあ、俺も別にここから生える気は無かったんだけどな…(ニヤリ)」

 

(違うわね…この人は元から生える気だったんだわ……、

 全く…一体どういう仕掛けなのかしら…そんな隙は無かった筈なのに…)

 

イネスが注意深く医務室の部屋を見渡す。

しかし、特に変わったような感じは部屋からは感じなかった。

 

「おい!!さっさと俺の腹から離れろ!!」

 

「おいおい、酷いな?

 もしかしたら一生お前の腹で過ごさないといけないかもしれないんだぞ?」

 

「い、一生!?」

 

ガイが驚いて腹に引っ付いているアキトの顔を睨みつける。

しかし、そんなガイの視線にも全く動じずイネスとの会話を再開する。

 

「さて、とりあえずお茶でもするか?」

 

 

 

 

 

その頃、光学迷彩で医務室へ向かう集団がいた。

その中の一人が何やらアセっているらしくブツブツ独り言を言っていた。

 

「くっ!!侵入者ですって!?

 あたしのマシンに指一本触れさせないわよ(ブツブツ)

 もし見つけたら熱い銃弾を体の中に撃ちこんでやる(ブツブツ)」

 

     「「「・・・・・」」」」

 

ミナトが手に持っている拳銃を嬉しそうにさすりながら医務室へと急ぐ。

その後を、いつ暴走しても大丈夫なように身構えてついてくる三人。

しかし、光学迷彩で姿が見えないとはいえミナトの独り言で全て台無しである。

 

「おい、少し口を閉じろ。

 これから敵が出てくるかもしれんのだぞ」

 

「大丈夫よォ〜?

 あたしにぜーんぶまかせておけば……(ニヤリ)」

 

ゴートはお前だから安心できないんだと言えなかった。

そんなやり取りをしながらもなんとか医務室の前へとたどり着いたのだった。

 

「ここから先ほどの悲鳴らしきものが聞こえてきたようですな」

 

鋭い眼差しでいつ敵に襲いかかれても平気なように身構える。

それはゴートも同じだが、ウリバタケは自分の作った光学迷彩を信じているのか全く隙だらけだった。

 

「それじゃあ――――」

 

     パン!パン!パン!!――――バッタン!!

 

三人が呆然とする中、銃声と共に医務室のドアが倒れていく。

そんな中、硝煙の匂いを辺りに撒き散らしながらミナトが高らかに宣言した。

 

「はーい!不法侵入者は手を上げてねェー?」

 

 

 

 

 

突然の侵入者に驚いてコーヒーを運んでいたイネスが驚く。

ガイがコーヒーをにこぼしてしまってガスマスクが熱さでうめいている。

だが、その様子に気付かなかった四人は異常が無いと思って光学迷彩を解いた。

 

「誰もいませんな」

 

「だが、悲鳴の発生元はここにいる」

 

ゴートが指差す先にはガイ+おまけがいた。

その光景を見て喋ろうとしていた言葉を飲みこみ動きを止める。

 

「なんだそれは?」

 

「いや、俺にも訳が分からないんだが生えてきた」

 

「むっ?待てよ……、

 こいつは前にナデシコに潜入してきた奴ではないか」

 

ゴートが一番最初に記憶からアキトのことを思い出す。

それに続いてプロスも思い出したのか手をポンッと叩いて声を上げる。

 

「そういえば、いましたな。

 いやはや、まさかこんなところに潜伏していたとは……」

 

「おい、この異常自体にちっとも疑問を持たんのはおかしいぞ」

 

ガイにそう言われて不快そうな表情をしながらも腹を見て問いただす。

腹に向かって話し掛けるのだからはっきり言って屈辱感が湧き上がってこないでもない。

 

「一体、お前は何がしたいんだ?

 トイレから消えたと思ったらそんなところに隠れていたりして……」

 

「まあまあ、ゴート君も落ち着いて、

 とりあえずは彼を腹から引き剥がすかそれとも切り落とすかしないと」

 

「物騒な提案だな」

 

普通にアキトがその提案に感想を述べる。

その言葉を聞いてゴートは怒りでいかめしい顔がいつもより怖くなってきた。

 

「ふざけるな!!

  貴様の目的は一体なんだ!!答えないか!!」

 

ゴートが大声を上げてへと迫る。

 

「目的と言ってもな……。

 別に特にこれと言った目的意識を持って行動してないから――――」

 

「だったらその質問は良い!!

 とりあえず貴様の素性を調べさせてもらうぞ」

 

「ん?どうやってだ?」

 

「DNA検査とお前のその素顔を見てこれから誰かを検証する」

 

ゴートがプロスに検査をするように促す。

プロスは手に検査の為の機械を持って近づいてくる。

 

そして、ゴートの手がアキトのガスマスクを掴んだ。

 

 

 

「あたしは別にもうどうでも良いやぁ―…」

 

ミナトは文字通り手も足も出そうに無いアキトを見てそんなことを言っていた。

 

 

 

その頃、他のクルー達は……。

 

「食らえェー!!必殺のジェッ●スト●ーム●ターック!!」

 

「そんな穴だらけの必殺技が通じる訳無いでしょう!!」

 

モニターに映っている1機のエステバリスが動いた。

華麗なステップと共に飛びあがる。

 

「何!?俺を下敷きに!!」

 

「やばい!!ヒカルそっちに行くよ!!」

 

「えェ〜!?ちょっと待ってよ〜〜!!」

 

ヒカルが抗議を言った時にミユキも同じように叫んでいた。

 

「貰ったわ!!

 どうやら今度の昼食代はあなた達持ちになりそうね!!」

 

「「「負けてたまるか―――!!」」」

 

そんな映像を見ていた黄色い制服に身を包んだアキトがぽつりと呟いた。

 

「はぁー……また負け越しかー……」

 

彼は開始時間10秒で集中砲火を浴びて一気に戦線を離脱したのだった。

だからそのショックでミユキが何やら不気味な笑みを浮かべているのを見過ごした。

 

 

 

 

 

後編にジャンプ!!

 

 

 

 

 

あとがき

 

 またもやナデシコにアキト(ガスマスク)参上!!

 どうして腹から生えているかは後編で明らかになると思います!!

 

 さて、どうなることやら…。(汗)

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

Sakanaさんからの投稿第十八弾です!!

・・・

・・・

・・・はっ!!

一体何があったのでしょうか?

かなりシュールな場面を想像してしまいましたが(汗)

でも本当に・・・あらゆる意味で・・・凄いよ!! Sakanaさん!!

 

ではSakanaさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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