機動戦艦ナデシコ

『影(シャドウ)』

 

 

 

 

 

 そんな地球でバカ騒ぎが繰り広げられている頃。

 宇宙空間において、地球の命運を握るある作戦が着々と進んでいた。

 

 その作戦の指揮を執るのは優人部隊。

 これまで有人ボソンジャンプを使用してこなかった木連が、遂に人を戦場に投入してきたのだ。

 

「よし、残った作業は人の手で直接する。

 大まかな作業は虫型戦闘兵器がやってくれた」

 

 ジンシリーズと呼ばれるゲキガンガーのバッタもんに乗った月臣がそう言う。

 本物そっくりの機体に北辰が乗っていたが、どうやら月臣には渡されなかったようだ。

 

「ふむ、ようやく完成か。

 地球にバレやしないかと心配していたのも杞憂に終わりそうだな」

 

 眼前で繰り広げられるバッタの作業を見ながらそう呟く。

 大きい物体に取り付いたバッタ達は、火花を散らしながら作業を進めていた。

 

 何か、今後の木連の作戦で必要なものなのだろう。

 

 その物体は砲台らしく、とても長い砲塔を有している。

 月臣の乗っているジンが小さいのではないかと思われる程であった。

 

「さて」

 

               ピッ

 

 機体に設置されている通信機能を使用する。

 地球側と違い、音声のみのやり取りとなっている。

 

「南雲少佐、全体の仮組みが終了しました。

 後はお連れになった科学者にソフト面をやっていただくだけです」

 

「わかった。

 直ぐに作業に入る」

 

               ピッ

 

「ふう」

 

 そう息を漏らすと、どっかりとパイロットシートに座り直す。

 やはり作業が一段落着いた為に、月臣も少し気が抜けたようだ。

 

 ここまでの作業を地球側に知られてはならない。

 そう上からの指示に従い、それを何とかやってのけた。

 

 それは言う程簡単ではなく、地球側のレーダーに引っかからないようにしたり、

 巡回している地球側の偵察機を撹乱するように無人兵器を誘導に使用としたりと。

 リアルタイムで気を配らないといけなかった。

 

 その為、もう作業も終盤となったので、張り詰めていた気が和らいだのだ。

 

(しかし、このようなものが本当に必要なのか?

 これを使用したら、地球に穴を穿つことになるはず……)

 

 ふと不安に駆られる。

 今まで月臣が指示を取り、作っていた物体はそういうものなのだ。

 

(それに、こんな示威行動で地球人が黙るものか。

 閣下は人が良すぎる、徹底的に地球人は叩かねば分からないはずだ)

 

 それと同時に、上に対する不安もごっちゃになった。

 今現在、草壁がアキトに捕まっていることも知らずにそう月臣は不満を抱く。

 

 否、木連がどういう状況にあるかも知らないのだ。

 

「はあ」

 

 掌で顔を覆いながら、ふと通信機能をいじる。

 どうやら南雲への報告ではなく、他のところへと通信をするつもりのようだ。

 

               ピッ

 

「……ぅぅ……」

 

 妙な声が通信機能から流れてくる。

 

「おい、九十九!」

 

 その声の主が月臣の通信相手らしかった。

 だが、相手は通信に応えるどころではなく、何やら打ちひしがれている様子である。

 

「……放っておいてくれ……。

 どうせ俺はユキナに尻を叩かれて戦場に赴くようなダメな兄貴なんだ

 

 妹に発破を掛けられて戦場に出てきたらしい。

 なんとも面目の立たない話である。

 

「家で何があったのかは知らないが。

 だからと言って、戦場でそうやるのはやめろ!!」

 

「……だってなあ……」

 

「だってもクソもあるか!!

 お前は艦長だろう!! こんなところで打ちひしがれている場合じゃないはずだ!!」

 

「……お前に分かるのか?」

 

「ん?」

 

「……お前に分かるのか!?」

 

「だから、何をだ」

 

「俺が出撃する時の見送りの時にだ!!

 心配しているというのに、「とっとと行け、この変態!」なんて言われた俺の気持ちが!!」

 

「お、おい」

 

 通信相手が妙にヒートアップしてきた為、思わずなだめにかかる。

 だが、既に時遅し。

 

「あんなに小さいから、良い子良い子で育ててきたのに!!

 まさかユキナの口から変態なんて―――実の兄に対する言葉か!?」

 

「―――」

 

「ちきしょぉぉう!!

 どうせ俺なんて居場所がないんだぁ!!」

 

「は、はあ」

 

 とてもつわもの揃いの優人部隊とは思えない態度であった。

 しかも通信の向こう側で膝を抱えているのではないかという勢いである。

 

「そんなに落ち込むことか?」

 

「世界で唯一のかぞくがそんなことを言ったんだぞ!?

 これで落ち込むなと言ったら、俺は何時落ち込んだら良いんだよ!!」

 

「知るか!!

 この軟弱野郎!!」

 

「何を!!?

 このナンパ野郎が聞いたような口を!! だったら、その長髪を切ってみるんだな!!」

 

「なんで俺がそんなことしないといけない!!

 お前みたいな浮ついた気持ちで戦場にいられると邪魔なんだよ!!」

 

「―――っ」

 

 相手の姿が見えないものだから、歯止めが利かず、さらにヒートアップしていく。

 二人共、今にも通信機を叩いて壊すのではないかという感じである。

 

 と。

 

               チャラチャラチャラ〜♪

 

「こ、これは!?」

「まさか!!」

 

 突如、通信機を割り込むようにして曲が鳴り始めた。

 曲は木連だからか、ゲキガンガーのOPテーマ曲である。

 

「―――」

「―――」

 

 そして、その曲を聴いた二人は、これまた突然口ゲンカを終了していた。

 いや、通信機の向こうにいる相手が見えないにも関わらず、二人同時に頷き合う。

 

 

「「来るぞ! ゲキガンガーが!!」」

 

 

 二人の目は、少年のように輝いていた。

 さっきまで争っていたのが嘘のようにである。

 

「「き、来たぁー!」」

 

 宇宙空間の闇を切り裂くように、一機の機動兵器が近づいてくる。

 それは以前、北辰が乗っていた1/1ゲキガンガーであった。

 

 二人が喜んでわいわい騒いでいる時、そのコクピットの中では、

 

「ふむ、出迎えに対する褒美をやろう」

 

 そんなことを呟く、北辰の姿があった。

 そして、その言葉の通り、歓声をあげている木連軍人達の前で機体を何度も旋回させた。

 

 

 

 

 

 同時刻、同所。

 そこで二人と同じようにゲキガンガーのOPテーマ曲を聴いている人物が数人いた。

 

 一人は南雲中佐。

 さすがに中佐クラスになると、この魂を揺さぶる曲が掛かっても顔色一つ変えない。

 見事に精神のバランスを保っていた。

 

 もう一人は、ヤマサキ。

 こちらは対照的に曲を聴きながら、愉しそうに笑い顔を作っている。

 

 その二人と一緒に、他にも何人かの白衣を着た人が何人かいる。

 どうやら何かの作業を進めているようであった。

 

「ははっ、面白いじゃないか。

 暗部があんな登場して良いのかい?」

 

 だが、ヤマサキは手を休めて、南雲と話をしていたりする。

 

「公式には、新技術開発の試験機、それと軍の士気向上が目的となっている。

 まだ戦場で戦果も挙げていないテストパイロットを気にしたりはしないと思うがな」

 

「木連は聖典に関しては熱心だと聞いたけど?」

 

「だろうな。だが、知りたくても知れまい。

 新技術開発の試験機と言っただろう。当然、情報規制が敷かれている」

 

「へぇ。

 まあ知らない方が幸せかもねぇ、知ったらこうだし」

 

 くいっと手を軽く振って、首を斬りおとすマネをする。

 今、汚れ役を一手に引き受けている暗部を木連の上が抱えていることを知られるのはマズいのだ。

 

「しかし、ヤマサキ博士。

 貴方は地球人だというのに、このような兵器を開発しても良いのか?」

 

「面白いから(キッパリ)」

 

「なるほど、ということは、あの他の連中は黙っていないということか。

 地球を覆う壁を破り、直接宇宙から攻撃するような代物だからな……効果範囲も広い」

 

「ま、クリムゾンは黙ってないんじゃないかな。

 幾らなんでも自分とこの工場とかも焼き払ってしまう可能性もあるんだからさ」

 

「ということは?

 やはり……」

 

「うん、僕の独断だよ。

 この研究は実に面白いから、それにクリムゾンも敵対会社が消えて浮き足だってるからね。

 ここらで気を引き締めても良いんじゃないかな」

 

 にやりと笑う。

 その笑みは、ビックリ箱を開けられるのを今か今かと待つイタズラ小僧のような笑みであった。

 

「なるほど。

 まあ、こちらとしても地球に勝てれば文句は言わない」

 

 南雲も口元を歪める。

 この戦争を勝利に導く可能性を秘めた作戦を、己が指揮を取るのだ。

 

 これに燃えなければ、木連男児ではない。

 

「地球に勝てるかもしれんのだ。

 これを使用すれば、地球の重要な拠点を薙ぎ払ってくれる!!」

 

「そうそう、木連には頑張ってもらわないとねぇ。

 僕の楽しみを増やしてくれるかもしれないんだからさ」

 

「現状の目標は一致しているということだな」

 

「だね」

 

「「―――」」

 

「「はっはっは!!」」

 

               ダダダダダッ!!

                ―――ガチャッ!!

 

「た、大変です!!」

 

「っ、馬鹿者!!

 ノックぐらいしろ!!」

 

「す、すいません!!

 実は地球にある虫型戦闘兵器が交戦状態に入りましたしたので、ご報告までにと」

 

「そんなことぐらいで慌てるな!!

 今、こっちは仕上げにかかろうとしているのだぞ!!」

 

「申し訳御座いません!!

 しかし、送信されてくるデータに不可解な部分が見られるので!!」

 

「チッ。

 仕方あるまい……ヤマサキ博士。少し席を外れる、作業を続行してくれ」

 

「はいはい。

 頑張ってちょうだい」

 

 やや肩を怒らせた状態の南雲が出て行くのと対照的に、

 ヤマサキは、ノンキそうに手を振りながらそれを見送った。

 

「一体何があったのだ?」

 

 コツコツと靴音が通路に鳴り響く。

 

 今、南雲が先程の無礼者に引き連れられて向かっている先は司令塔であった。

 地球の現状や作業の進行具合が逐一送られてくるそこは、まさに木連の前線基地とも言える。

 

「地球のある地域で虫型戦闘機が、地球の兵器にやられ始めたのです。

 そこで、近くのチューリップを呼び寄せ、そこへ増援の命令信号を出したのですが」

 

「ほう、何も問題はあるまい」

 

「確かに信号は正常に作動し、敵へと増援部隊も襲いかかっているのですが……その、敵が」

 

「なんだ、もったいぶるな」

 

 その言葉に後押しをされたように口を開く。

 

「自動販売機なんです」

 

               コツ……

 

 一定のテンポを保っていた靴音が止まる。

 それと同時に、南雲は靴先を隣を歩いていた無礼者へと向けた。

 

「……貴様、自分が何を言っているのか分かっているのか!?

 この戦いの真っ最中にそのような妄言を吐き出すとは!! 木連兵士失格だぞ!!」

 

「い、いえ!! 決して中佐を愚弄しているわけではありません!!

 このことは、艦に送られてくるデータを御覧になってください!!」

 

「なに?」

 

「そこで私が潔白であることは、証明されるはずです!!」

 

「ふん、よかろう」

 

 南雲はふんっと鼻息を荒くしながらも艦のブリッジへと足を進めた。

 先程の足を止めるよりもテンポを、やや速めにしてである。

 

(自動販売機? 何を戯言を)

 

 もう南雲の頭の中では、先程の無礼者が言った言葉は虚言であるという考えであった。

 それどころか、くだらない戯言に付き合わされたという怒りが込みあがってくる。

 

(まあ良い、まだ作戦決行まで時間はある。

 こいつの心身を鍛えなおしてやるには十分だ)

 

 背後を歩いているであろう無礼者へと意識を割きながらそう思う。

 後ろの方では、南雲が矯正メニューを考えているとも知らず獲物が歩いている。

 

 そして、ブリッジへと繋がる扉へとやってきた。

 

               プシュッ!!

 

「おい! なんなんだ!? この情報は!!

 送られてくる情報が全部自動販売機というのは!!」

「しかも見ろ!! 自動販売機なのに、時空歪曲場を使用しているぞ!!」

「虫型戦闘機、次々に撃墜されていきます!! 次元跳躍門、2門大破!!」

「送信される情報に誤りがないか、それとも虫型戦闘機の自立機能に損傷がないか調べろ!!」

「自動販売機の癖に動きが速い!! 次元跳躍門の退避が間に合わん!!」

 

 

「は?」

 

 

 思わず南雲の口から呆けたような言葉が漏れ出す。

 それだけ、ブリッジの慌しい状況が予想外だったのだろう。

 

 全員、口を揃えて自動販売機と言っているからである。

 

 だが、衝撃を受けているのも一瞬のこと。

 直ぐに南雲はショックから立ち直ると、ブリッジの艦長席へと足を運ぶ。

 

「一体、どういうことだ!!」

 

 メインモニターを見れば、虫型戦闘機を示す光点が、

 自動販売機と示された光点に次々にかき消されていっている。

 

 それを睨みつけていると、管制官が報告をしてきた。

 

「約10分前にこの地域を巡回していた虫型戦闘機と敵が接触。

 敵は偵察機を落とすと、そのまま虫型戦闘機、次元跳躍門の混合部隊と戦闘に」

 

「それ程までに敵は強いのか?」

 

「……御覧の有様です。

 送られてくる情報は我が方の負けを示してます……後、敵の正体……も」

 

 どこか言い難そうにそう告げる。

 

「なるほど、わかった。

 だが、敵の正体が自動販売機というのはどういうことだ!!」

 

「わ、わかりません!!

 何度、虫型戦闘機に新しい情報を送信するように命令しても同じ答えしか!!」

 

「くっ」

 

 最早、地球で何が起こっているのかは明白であった。

 あのウリバタケ製作の自動販売機ロボが地球で大活躍しているのである。

 

 それも木連が地球に送り込んでいた戦力をそれこそ紙クズのように破壊しており、

 あまつさえ、偵察機のバッタが本部へと送ってくる情報は、見る者を困惑させずにいられない。

 

「自動販売機だと……?」

 

 南雲の疑問を嘲笑うかのように、モニターでは相変わらず光点が光点を侵食していく。

 それもたった一機の光点にである。

 

「相転移炉搭載戦艦が戦場に接近してきます!!」

 

 さらに悪いニュースは続いた。

 このままでは、このモニターに映されている地域は地球へと取り返されてしまうだろう。

 

「くそ!

 地球での拠点が減るというのか」

 

「どうされます?」

 

「……地球がその気だというのなら、こっちにも考えがある!!

 今から言う命令を地球に現存している虫型戦闘機に実行させろ!!」

 

「はっ!!」

 

「地球の自動販売機を殲滅せよ!!」

 

「「「「「はっ、はぁ!?」」」」」

 

「どうした! 復唱しろ!」

 

「い、いや―――」

 

「口答えは聞きたくない!!

 貴様も優人部隊の一員だというのなら、黙って命令を実行しろ!!」

 

「は、はっ!! 了解しました!!」

 

「地球め!!

 我々、木連が本気を出したならば、自動販売機が幾つあろうともっ!!!!!」

 

(なあ、中佐ってアホだよな)

(そういうなよ、あの人は律儀な人なんだからさ)

(でも、この命令はないだろう)

 

「はっはっは!!」

 

 こうして地球に現在する木連の無人兵器群は、これまでと違い、活発な活動を見せるようになる。

 地球連合は突如、活発化した無人兵器群の沈静化に、気を取られることになるのであった。

 

 

 

 

 

 そんな地球と木連の対決が激化する中。

 草壁の執務室において、二つの人影がそんな地球と木連の様子を眺めていた。

 

 そう、眺めているのだ。

 簡素だった執務室には、今やところ狭しとばかりにウィンドウが幾つも浮かんでいる。

 それらは、この蜥蜴戦争で係わり合いがある地球、月、火星、木連のデータが表示されていた。

 

「ほれ、自供してしまえ」

 

「……」

 

 だが、そんな膨大なデータを無視して、アキトは草壁で遊んでいたりする。

 

 その証拠に懐からスタンドライトを取り出し、縛り付けた草壁の顔へとライトを向けたり、

 カツ丼をテーブルの上に置いたり、無意味に手で持ったブラインドを開けたりしていた。

 

「ほれほれ」

 

「……」

 

               ピキッ!!

 

 さすがにこんな行動を取る奴に捕まったかと思うと、草壁も納得がいかないのだろう。

 額に青筋を作りながらも、なんとか精神の均衡を保とうとする。

 

「どうした?」

 

「……どうしただと。

 貴様、地球と木連が戦争中だというのに、そのような行動を取る理由はなんだ!!」

 

「さあ、特に意味はない」

 

「くっ、戦争なのだぞ!?

 このような仕打ちをする者に、我々の正義を押し留めることを許すことはできない!!」

 

「許す?

 いや、許してもらわなくて良い」

 

「まったく……なんなんだ、貴様は」

 

「?」

 

「国家の一大事を嘲笑うかのような貴様の態度。

 一体、何を考えている」

 

「この戦争をやめさせるつもりだ。

 それと、戦争の引き金や悪い事をした奴には、それ相応のお仕置きをだな」

 

「……何を言ってるんだ?」

 

「いやいや、いやいやいや。

 分かるだろ? 俺が考えているのはな、この世界を俺が辿った過去とは違う世界にすることなんだよ」

 

「それが動機か、私情だな」

 

「そうさ。簡単なものだろう? 俺の信じたものは、こんな戦争は終わらせないといけないと訴えている。

 だってそうだろ? 遺跡なんかの奪い合いなんてもので争っているんだからな」

 

「なるほど。だが、地球の連中に戦後、あれの正しい扱い方ができると思うかね?

 自分らに都合の悪いことには、直ぐ蓋をするような連中に」

 

「それはお前も一緒だよ」

 

「なに?」

 

「こんな方法であれを手に入れようと画策するような奴がうまく扱えると思うのか?

 あんな使いようによっては、大変なことになるようなものを管理する資格を得て良いもんか」

 

「……」

 

「だから、この世界にあれはいらない」

 

「どうするつもりだ」

 

「処分するさ、俺が。

 ああ―――だけど、もう一回は利用させてもらうつもりだけどな」

 

「なるほど」

 

「ん?」

 

「いや、なんのことはない。

 結局のところ、君がこの争奪戦に参加するというだけの話ではないか」

 

「そうだな、だけど俺の勝ちだ。

 これだけは自信を持って言えるぞ」

 

「正義は負けない!!」

 

「やれやれ」

 

               ズブッ

 

 アキトが腹からスイカを取り出す。

 そして、緑と黒の波打つラインが眩しいその水々しい球体を草壁へと差し出しながらこう言った。

 

「これで譲れ」

 

「譲るわけがないだろう」

 

 どうやら正義は安く見積もられているようであった。

 

 

 

 

 

 こうして様々な監視の目の中、ナデシコは地球で親善大使を救出することに成功した。

 熊だったということで、またユリカが伝えなかったことで一悶着あったが、救出には成功した。

 

 今は熊を連合へと預ける為に、ナデシコを向かわせている最中である。

 

「まあ何はともあれ、あれの追求は後日行うとして。

 どうにか親善大使も助けることもできましたし、バンバンザイですな」

 

「そうですね!!

 あの熊も大喜びしてますし!!」

 

 ユリカはそう言うが、親善大使は放り込まれた牢屋で遺跡にからまれていた。

 からまれると言っても、牢屋の鉄格子の外側で遺跡が一方的に喋っているだけである。

 

 だが、広い場所から一気に狭い場所に移されて気が立っているようだ。

 

「迷惑そうでしたけど」

 

 そうルリが呟く。

 

「気にしない、気にしない!!

 次の任務地は南国! 皆さん、日頃の疲れを取りましょーねぇ!!」

 

胸が緩いと頭も緩くなるのかな(ボソリ)

 

「メグちゃん、何か言った?」

 

「何も言ってませんよ、艦長」

 

「まったく……でも、南国の陽気な天気!!

 白い雲!! 青い海!! そこで遅めだけど任務完了のパーティ!!

 本当に楽しみ!!」

 

 そして、ナデシコは流氷漂う世界を去っていくのであった。

 ここで行われた戦闘の影響で地球上の自動販売機が襲撃されたとも知らないで。

 

 

 

 第19話にジャンプ!!

 

 

あとがき

『影(シャドウ)』第18話。

何時も通りの作風に戻したつもりの話でしたが、如何でしょうか?

 

戦え、僕等の自動販売機ロボ!!

話も中盤(?)なんで、ロボットは乗り換えです(爆)

 

>代理人さん

その二人のパターンは、また今度ということで(汗)

ガスマスクは、草壁閣下をおちょくるもてなすことで忙しいですから。

 

それと最近の展開についてですが、今までのツケが回ってきたというか。

そろそろ背後で何が起こっていたのかという説明をしないといけないかなあと思いまして(汗)

 

 

 

 

代理人の感想

うーむ、自販機ロボ。合体。しかも強い!

いいねぇ。(爆)

エステとグレート合体したりするとさらにいいかも(爆死)。

 

まぁ、冗談は置いといて。(冗談?)

 

いやー、楽しいですなぁ。

軽くてさくさく読める作品というのは昨今のアクションでは貴重ですしw

一読者としてはできればずっとこの路線を行って欲しいかなと。

 

ところでまだ中盤なんですか、これ(爆)。