私だ!! 私が勇者だ!!

 勇者だって言ってんだろ!!!!!(逆ギレ)

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ

『影(シャドウ)』

 

 

 

 

 

 空を仰ぐ一つの影。

 視線の先には、一隻の白亜の戦艦。

 

 彼女はここにそれが来るのを待っていた。

 悲劇のヒロインになるべく、戦艦が島に来るのを待っていたのだ。

 

「…勇者様ぁ…」

 

 熱い吐息が漏れる。

 その熱を帯びた言霊が戦艦に乗っている相手へと届くのかは知らない。

 

 だが、彼女は嬉しそうに口元を歪めていく。

 

「ああ!

 私の勇者様が、遂に迎えに来てくれた!!」

 

 さらに体を震わせ、頭に被っていた麦藁帽子を手でもみ始める。

 こちらへと向かってくる戦艦が待ちきれないという感じであった。

 

 と。

 

「あのぅ、準備が整いましたけど」

 

 そんな甘酸っぱい空間を形成していると声が掛けられる。

 どうやらその人物には、話しかけた人物が自分の世界に飛び立っているのが分からなかったらしい。

 

「あのぅ」

 

 再度声が掛けられる。

 

               くるり

 

「はい?」

 

「だから、言われた通りの命令を実行してきました。

 こういう雑務は、ナデシコではたくさんやらされてましたから」

 

「そうですか。

 仕事が早いですね」

 

「そ、そうですか?」

 

「でも、もっと他人に気を使った方が良いですよ」

 

「え」

 

               パチン!

 

 彼女が指を鳴らす。

 それが合図である。

 

               ザザザッ!―――ジャキッ!!

 

 辺りに潜んでいた大量の黒服が、相対していた相手へと銃口を向ける。

 黒服の数と同等の銃口が、一人の相手へと向けられていた。

 

「えっと」

 

 たらりと額から汗を流す。

 それから恐る恐る黒服軍団を刺激しないように両手をあげた。

 

「あ、あの。

 もしかして僕の生殺与奪の権利って……」

 

 喉が渇いているのか、言いよどんでしまう。

 

「はい、私が握っています。

 ……そこの不躾なものを下げなさい」

 

 言いよどむ相手を余所に、彼女は微笑みを浮かべたまま黒服へと命令する。

 

 

「「「「「了解ッ!!」」」」」

 

 

 黒服連中はそう返事をすると、直ぐさま命令を実行した。

 それもあっという間に降伏の証とばかりに手をあげていたのを組み伏せる。

 

 そして。

 

                ズルルゥ…

 

うわぁぁぁ!!

オラァ! 大人しくついてこいやぁ!!

 

 大量の黒服によって、彼女の邪魔をした存在は何処かへと引きずられていった。

 その様子を見て少しは溜飲が下がったのか、彼女は再び島へと近づいてくる戦艦へと視線を戻す。

 

「…勇者様ぁぁ…」

 

 危ない女であった。

 

 

 

 

 

 その勇者が乗っているはずのナデシコのブリッジ。

 そこでは、目前に迫ってきた目的地について話していた。

 

 と言ってもブリッジに揃っている面々は、ブリッジクルーだけであった。

 他のクルーは所定の位置で仕事をこなしているのだろう。

 

 全員、大画面モニターを眺めている。

 

 そこに映っているのは、海に浮かんでいる孤島であった。

 前回の熊救出劇から熊を預けた後、次の任務を遂行するべくこの島へと来たわけである。

 

「あの島に何があるんですか?」

 

 モニターに映った島を指差しながらメグミが聞く。

 映像を見る限り、青い澄んだ海の上で、島はただ静かに浮かんでいるだけである。

 

 特に異常事態は発生していないように見えた。

 

「あの島に直接用事があるわけではありません。

 実はこちらへ隕石に偽装した木星トカゲの落し物がありまして」

 

「じゃあ、それの調査が任務というわけですか」

 

「そうです。もしくは駆除ですな。

 今のところ会社の敷地内だった為、バリアで封じ込めているという話です」

 

「バリアですか」

 

「ええ、クリムゾンは元々バリア関連が強みでして。

 地球を覆っているビッグバリアもクリムゾン製ですからなあ」

 

「はあ」

 

「ま、封じているらしいですから。

 別段焦る必要はないでしょうな」

 

「じゃあ、艦長が楽しみにしていたのもそういう事だったんですか」

 

「ええ」

 

「まあ場所が場所ですからなあ。

 皆さんの日頃の疲れを取るには打ってつけでしょうな」

 

「でも、全員、元々あそこで遊ぶ予定みたいでしたよ。

 あっ、私も遊ぶ予定だったんですけど」

 

「ま、まあ……それはもう良いです。

 それよりも……」

 

 何やらプロスが眉間を押さえ始める。

 頭痛でもするのか、目まで瞑っていた。

 

 その心配事の芽は隣にある。

 それもこれもプロスの隣で艦長席に立っているユリカに問題があるのだ。

 

「どうかした?」

 

 メグミが見ていたので、ユリカが尋ねてくる。

 今日も上機嫌らしく、明るいオーラが溢れ出てきていた。

 

「いえ、なんでもないです」

 

 そう呟き、顔を正面へと戻す。

 だが、やはりメグミとしても気になるものがユリカの背後にあるのでチラリと見る。

 

 そう、プロスの悩みもメグミが気になるものも、

 総てはユリカの背後に立っているマネキンに問題があるのだ。

 

 しかもそのマネキン。

 

 

 ウェディングドレスを着ている

 

 

 さらにタキシードを着たマネキンまで存在していた。

 今やブリッジは簡易的とは言え、洋風の結婚式の見学会場となってしまっているのだ。

 

「……バカ」

 

 ユリカへと顔を向けずにルリが呟く。

 その言葉を耳にしたメグミは、思わず頷いてしまう。

 

 何度も。

 

 そんな困惑するクルーの気持ちを余所に、ユリカは上機嫌であった。

 鼻歌まで歌い出す始末である。

 

「艦長」

 

「はい」

 

 ブリッジの空気を見かねたのか、ゴートがユリカに声をかける。

 やはりプロスがユリカの奇行にやられてしまったので、動き始めたのだろう。

 

「これはなんだ」

 

「え? ああ、ウェディングドレスのことですか?

 これはですねぇ、ふふっ。それが聞いて下さいよ! アキトが」

 

「テンカワがどうした」

 

 どこかしらうんざりした口調で相槌を打っているように見える。

 相変わらずの仏頂面なので、判断が付きにくいが。

 

「それがですねぇ―――

 

 

 

 

 

「アキトぉー、アキトはどんなのが好き?

 今度のパーティのドレスで、それを参考して着てみようと思ってるから」

 

「あのなあ、俺はドレスなんて知らないぞ。

 知っているのって言えば、ウェディングドレスぐらいか」

 

 

「ゆ、ユリカ感激!!」

 

 

 

 

 

 

 という風にですね。

 あれ、皆さん、どうしました?」

 

「……なんでもない」

 

 あんまりな真相にブリッジにいた全員、唖然としている。

 その目には、ユリカの背後に立つ二体のマネキンがどこか滑稽に見えていることだろう。

 

 もう着られることすらないかもしれないのだから。

 

「はぁ、パーティまだかなあ」

 

               ピッ

 

「あ、ホウメイさん」

 

 ユリカの目の前にウィンドウが表示される。

 その画面には、ホウメイと後ろの方で料理を並べているホウメイガールズの姿が映っていた。

 

「艦長、パーティの準備は完了したよ。

 会場整備に料理の配置の方もバッチリさ」

 

「ホウメイさん、ご苦労様です」

 

「この艦の人数分だからね。

 骨が折れること、折れること……ところで」

 

「はい」

 

「その後ろに映っているものはなんだい」

 

 面白そうにホウメイが問い掛ける。

 実際、アキトとユリカのやり取りはホウメイにとって面白いのだろう。

 

「これはパーティで着る衣装です。

 ホウメイさんもどうですか?」

 

「私は良いよ。

 そんなことよりも恋愛関係は手を繋ぐまでとかいう規約があったはずだけどね」

 

 ウィンドウが動き、プロスの方へと向く。

 プロスはまだ眉間を抑えたままで動いていない、それをホウメイは横目で見る。

 

「また暴動でも起きないと良いけどね」

 

 過去の騒動では、規約の改正はならなかった。

 むしろ、なんだかんだでうやむやのうちに現状維持という形になってしまっている。

 

 つまり、結婚NO。

 婚前交渉NG、プラトニックラヴ限定OKである。

 

「あ!

 パーティを披露宴にするってのもありですよね!!」

 

 

 ユリカの暴動度合いMAX!

 

 

 ホウメイの言葉は、ユリカの暴走に拍車を掛けてしまったようであった。

 元から暴走状態だったのに、さらに油を注いでしまっている。

 

「ホウメイさん、艦長は結婚するわけじゃないんですよ?

 今日のパーティで着てみるだけなんですから」

 

「なんだ、そうなのかい。

 てっきりテンカワの奴が折れたのかと思ったよ」

 

「そうですか?」

 

「まあ良いさ。

 それよりもつまみ食いに来る奴がいるといけないから通信はもう切るよ。

 ん? 言った傍から―――」

 

               ピッ

 

「ところで……着陸しないんですか?

 いい加減、クルーの皆さんも待っていると思いますよ」 

 

 と、ルリが不思議そうに尋ねる。

 もう島は目前にまで迫っているというのに、中々降りないので業を煮やしたようだ。

 

 やはりふざけている乗員に比べ、真面目であろうとしているようである。

 

「そうだね!

 それじゃあ、ナデシコはこれより島へと上陸したいと思います!!」

 

 あっちの世界に旅立っていたユリカがそう宣言する。

 コミュニケを通し、艦内連絡となりブリッジ外にいるクルーにも聞こえたことだろう。

 

「はいはい、聞こえましたか?」

 

 ユリカの通信と後に、補足をするようにメグミが通信を行う。

 通信士として、艦長代理として、クルーに発破をかけるのも仕事なのだ。

 

「これよりナデシコは、島へと上陸します。

 仕事のある人は残念、仕事のない人はのんびり普段の疲れを取りましょう」

 

 天使のような声であった。

 しかし―――。

 

(しっかし、艦長もめげないなあ。

 普通だったら、毒薬注射されたら、ビビるものなんだけど。

 前に医務室で注射した薬品、もっと刺激の強い奴にしとけば良かった。反省、反省。

 でも、注射するにも何が良いかな。

 致死性の高いのが良いかな。あっ、中毒性の高い奴っていうのも捨てがたいかな)

 

 過激なお言葉である。

 アニメ声のアナウンスとは裏腹に、メグミは心の中で今後のユリカ対策を練っていく。

 

「……」

 

「ん?」

 

 視線を感じたメグミが振り向くと、慌てた様子で顔を背けるルリの姿があった。

 その姿に何を思ったのか、メグミは愉快そうに口元を歪ませていく。

 

「やれやれ」

 

 

 

 

 

 そんなやり取りの後、ナデシコは無事に島へと着陸した。

 クルーも次々に島へと上陸していき、出店やビーチバレーのコートを描いたりしている。

 

 ビーチパラソルを何本も砂浜にブッ刺し、ビニールシートが敷かれていく。

 

「はっはっは!!

 見ろ!! この俺が放つ、必殺の超人アタックを!!」

 

 さらに待ちきれなかった者が、超人バレーを展開し始めた。

 まるで弾丸が砂浜に打ち込まれた様であり、砂浜に穴を穿ったりしていく。

 

 改造人間だけあり超人的である。

 言ってることに偽りはないが、傍迷惑には違いない。

 

 しかも以前のように、赤ふんスタイルなので見るに耐えない。

 まさに公害である。

 

「邪魔よ」

 

「体の自由がぁぁぁ!!」

 

 だから、イネスによって動きを封じられてしまった。

 他にも妙な人型機械が黒煙を撒き散らしながら疾走したり、空気が凍りつく漫談をしようとしている。

 

「やれやれ、皆さん。

 少しは落ち着いて欲しいものですな」

 

              ジャラリ…ごくんっ

 

 そんないつもの光景を見てプロスが胃薬を飲んでいる頃。

 この異様な空間が形成されている砂浜へと一人の少女が足を運んできていた。

 

「こんにちわ」

 

 そこに来たのは、麦藁帽子にワンピースの少女。

 この島を所有しているクリムゾンの令嬢、アクア・クリムゾンであった。

 

 よせば良いのに、わざわざ動けないガイへと声を掛けている。

 しかも赤ふんスタイルなので、おかしいことこの上ない。

 

 しかし、反応は上々である。

 

 

「バカな!? アクアマリンだと!?」

 

 

 何しろガイが砂浜中に響き渡る奇声を発したからである。

 アクアの容姿がガイの中で、ゲキガン魂を燃え上がらせたのだろう。

 

 その相変わらずな大声に、辺りで遊んでいたクルーも何事かと目を向けてくる。

 

「アキト!! 大変だ!!

 アクアマリンが俺に会いに来てくれたぞ!!」

 

 さらに感動を分かち合う為に、砂浜に座り込んでいたアキトを呼ぶ。

 ケガの具合はイネスの治療のかいあってか、医務室の外に出ても良くなったようだ。

 

 もう包帯まみれという格好をしていない。

 

「お、おう」

 

 だが、子供のようなはしゃぎっぷりにアキトは押されてしまう。

 目に見える興奮っぷりの為、アキトの目のはガイを中心に変な熱気を感じ取ったのだ。

 

 たらりと汗を流して立ち上がるのを躊躇う。

 

「早く、来いって!!」

 

 だが、結局はガイの呼びかけに応じ、砂浜から腰をあげ、

 二人の近くへと、松葉杖を使いながらひょこひょこ近づいていく。

 

 そんなアキトの努力を余所に、ガイはアクアへと向き合う。

 しかし、イネスに動きを封じられている為、向き合ったのは気持ちだけであった。

 

 ガイは明後日の方向へと顔を向けている。

 

「ささっ! アクアマリン。

 ようこそ、こんなオンボロ戦艦に!!」

 

 だが、めげずに歯を輝かせ、ニヒルな笑みを浮かべる。

 クラウン本社で養生している某大関スケコマシも感嘆する会心の笑みであった。

 

               キョロキョロ

 

 しかし、そんな目の前で繰り広げられる奇行に対し、アクアは興味がないようである。

 目の前にいる暑苦しい男のことなど、眼中にないとばかりに砂浜を見渡していた。

 

「なんだよ、ガイ」

 

「見ろ、アクアマリンだ!!」

 

「あ、ホントだ。

 でも、良くその顔の向きでわかったな」

 

「ふふん、横目でチラっとな」

 

「そ、そうか」

 

 と、アクアマリン談義で盛り上がる二人であったが、そんな二人にアクアが問い掛ける。

 だが、相変わらず視線はガイとアキトの方に向いておらず、人探しに夢中のようだ。

 

「あの」

 

「あ、なんでしょう」

 

 そんな呼びかけであったが、アキトが応じる。

 それでもアクアは人探しをやめずに、アキトへと尋ねた。

 

 

「どこに勇者様はおられるんでしょうか?」

 

 

 辺りを見渡しながら、そうガイとアキトに問い掛けた。

 無論、そんな問いに対し、二人の反応は―――。

 

「―――えっ」

 

 

「はっはっは!!

 何を隠そう、俺が勇者ガイジャミング発生ですよ!!」

 

 

 ガイがそう言い切る。

 何の根拠もない癖に、たいそうな自信であった。

 

「いえ、貴方は勇者様ではありません。

 まがい物です(キッパリ)」

 

「ふっ、アクアマリンがそう思うのも無理はない。

 これから俺が勇者であることの証を見せましょう」

 

 しかも人の話をまったく聞いていない。

 

「その証拠に俺の変身能力を―――」

「その証拠に、あそこに勇者様がおられましたから」

 

 アクアが誰かを指差す。

 

「えっと」

「ん?」

 

 二人はその指差す方をへと視線を向ける。

 すると、その方向に立っていたのは、ウクレレを持ったイズミであった。

 

 愉快そうにヂャカヂャカウクレレをかき鳴らしている。

 

 

「なっ!? あれが勇者!?」

 

 

 ガイの驚きは当然のものであった。

 あれが勇者というよりも魔王にしか見えない。

 

「違います。

 その人じゃなくて、その隣の御方です」

 

「隣ぃ?」

 

 視線を動かす。

 そこには、ミユキの姿があった。

 

「……勇者?」

 

「はい、勇者様です」

 

 そう答えると、アクアはミユキへと近づいていく。

 もはや動くことができないガイや松葉杖スタイルのアキトなど眼中にないようである。

 

「…ぁぁ、勇者様!!…」

 

 感極まったのか、小走りになる。

 そのまま勢いに乗ったまま、突撃していく。

 

 そんなアクアに対し、ミユキは耳を塞ぎ、目を閉じている。

 それというのも、イズミが漫談を聞かせようとしているからであろう。

 

 だが、それがミユキの命取りであった。

 

               ガバッ!!

 

「はぶっ!」

 

「うふふ、捕まえた」

 

 背後から抱きつかれてしまう。

 しかもアクアの勢いに負けて、砂浜へと仰向けに倒れてしまった。

 

 ほとほと変人に縁のある人であった。

 どこかで運勢が逆転したとするならば、総てはガスマスクことアキトのせいだろう。

 

「いたたっ、なんなの」

 

「ぁぁ、ぃぃ」

 

               …ぞわぞわ

 

 ミユキが立ち上がろうとするが、アクアが背中で頬擦りをしているのだ。

 それも恍惚とした表情を浮かべ、嬉々とした声を漏らすのだから堪ったものではない。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 瞬時に頬擦りしていたアクアを振りほどくと、5mは後ずさる。

 器用に座った状態で背後へと下がっていく。

 

「な、なんなんですか!?

 あ、貴方は!!」

 

 そうミユキは問い掛ける。

 問い掛けられた当人は、頬擦りができなくなったので残念そうな表情を浮かべていた。

 

 だが、それも直ぐに消え失せる。

 まるで話せるのが嬉しいとばかりに、頬をバラ色に染めていく。

 

「私ですか?

 私は勇者様の為に、ヒロインを演じようという悲劇のヒロインです」

 

「は?」

 

「とにかく、勇者様が勇者様であるという自覚がないと困るんです。

 私が悲劇のヒロインという役目を真っ当する為には、勇者様が勇者様でないと」

 

「はあ?」

 

「まだまだ自覚がありませんね。

 1年という短い期間で会社間の争いに身を投じられ、幾つもの功績を作った方だというのに。

 いえ、そもそもそれこそが勇者の証なんですけど」

 

「……話が見えてこないんですけど」

 

「あら、失礼しました。

 勇者様を置いてきぼりにして、私一人で喋ってしまいましたね(にっこり)」

 

「は、はあ」

 

「仕方ありません。

 ご自覚なさるまで、私も実力行使とさせていただきます」

 

「え」

 

               ガチャンッ!!

 

 どこに隠し持っていたのか、手から放たれた手錠がミユキの腕へと巻きつく。

 手錠と手錠を結ぶ鎖の部分が異常に長く、まさか手錠を投げつけてくるとは思わなかったミユキは捕まった。

 

 しかも。

 

                 ガチャンッ!!

 

 もう片方をアクアは、自分の腕へとつける。

 それはまるで。

 

「…ぁぁ、運命の赤い糸…」

 

 

「んなわけあるかー!!」

 

 

 

 

 その2にジャンプ!!