PHASE02. 「それぞれの思い」
*ブリッジ
「今まで、ナデシコの目的地を明らかにしなかったのは、妨害者の目を欺くためです」
ブリッジ下段にある下部モニターの上にみなさん輪になって集まってます。
ブリッジ要員を集めてプロスさんは話を切り出しました。
勿論ユリカは何を話すか知ってますよ、エッヘン!
「ネルガルがわざわざ機動戦艦を建造した理由は別にあります。
以後、ナデシコはスキャパレリプロジェクトの一端を担い、軍とは別行動を取ります」
この放送はみんなにも伝わっている。
これからの大事な方針だもの、知ってもらわなくちゃ。
プロスさんがフクベ提督に目配せをする。提督はコホンと咳払いをして口を開く。
「我々の目的は火星だ!」
そう…、火星。
私と、アキトの故郷。最初、この話を持ってこられた時、私は断るつもりでいた。
でも目的地が火星、ということで私は引き受けることにした。
理由は簡単。アキトが無事かどうか確かめたかったから・・・
話だけはお父様から聞いていた。アキトと、アキトの家族は火星で全員亡くなったって…。
でもアキトは生きていた。このナデシコに乗って・・・。
すごくうれしかった。だって、何度も何度も連絡取ろうとしたけどダメだったし、
ザフトの地球侵攻で宇宙には簡単に上がれないし、謎の無人兵器の火星侵攻。
もうアキトには会えないんだ、って泣いたこともあった。
だから…、すごくうれしかった。アキトは…、アキトは私に会えてどう思ったんだろう?
私とおんなじかな?そうだといいな・・・
「では、現在地球が抱えている侵略は、見過ごすというんですか!?」
あ、ジュンくんに教えておくの忘れてた。失敗失敗♪
プロスさんにじっと見つめられる。ウッ、あれはプレッシャーかな~(汗)
「多くの地球人が火星と月に殖民していたというのに、連合軍はそれらを見捨て、
地球のみ防衛線を引きました。火星に残された人々と資源はどうなったのでしょう?」
「もう占領されてダメなんじゃないですか?」
メグミちゃんがちょっと控えめに聞いています。
「わかりません。だた、確かめる価値はあると思います」
「・・・そうだな、まぁいいんじゃないか?ザフトとかと戦うよりはさ?
同じ地球人同士で戦うよりは何倍も健全だし」
マサトさん、ちょっといいこといってます。
戦争するよりは人助けの方がず~っといいです。
「これって人助けよね?いいんじゃない?」
「うおぉぉぉ!謎の侵略者が潜む惑星で怯える人々!そこに向かう戦艦!
颯爽と現れて捕えられた人々を救出して見事地球に凱旋!
か~燃えるシチュエーションだぜ!行こう行こう今すぐ行こう!」
「ま、相転移エンジンの特性を考えりゃ、地上で戦うよりはマシかもな」
とりあえず、ブリッジのみんなの意見は好意的です。
・・・あれ?ルリちゃんは?
見渡すとルリちゃんはオペレーター席に静かに座ってました。
「ルリちゃんは?」
「えっ・・・」
私はルリちゃんに聞く。せっかくだもん、ちゃんと意見は聞かなくちゃ。
「ルリちゃんはどう思う?」
「わたしは・・・、わたしもいいと思います。
困ってる人を助けるのはいいことだと思いますので」
うんうん♪そうこなくっちゃ♪
「では艦長、みなさんの同意も得られたところで・・・」
「はいっ!」
私は進行方向のほうへ指を指しながらポーズを取って、
「それでは、機動戦艦ナデシコ、火星に向かうために・・・」
「そうはいかないわ」
突然、私達の目の前にムネタケ副提督の顔が出てくる。
シュー
あれ?あれれれ?
ドアの開く音と共に武装した兵士が続々と入ってくる。あれれれ?
「ムネタケ!血迷ったか!」
フクベ提督がすごい剣幕で怒ってる。
私もそうです。人のすることを邪魔するなんて、馬に蹴られちゃってください!
「フフフフ、提督、この艦を頂くわ。これだけの戦艦を火星へ回すなんて、冗談じゃないわ」
「その人数でなにができる?」
そうです、ゴートさん。もっと言ってやってください。
「わ~ったぞ!テメーら木星のスパイだな!?ウッ!!」
ヤマダさん、いきなり前にでちゃうもんだから銃を突きつけられちゃいました。
頼りにならないなぁ。あ、もちろんアキトは違うよ?だってアキトは王子様だもん!
「勘違いしないで、ほら?来たわよ?」
するとムネタケ副提督の合図と共に外部カメラが、一隻の戦艦が海面から浮上するのを捉える。
あれは・・・
ブリッジに大きなウインドウが表示される。さっき浮上した戦艦からの通信です。
「こちらは地球連合軍、第3艦隊提督、ミスマルである!」
ウインドウには私のお父様が映しだされていた。
「お父様・・・」
「「「えっ!?」」」
何人かの人が驚きの声を漏らす。よく驚かれます、どうしてでしょうか?
「お父様!?これはどうゆうことですの?」
私が尋ねるとお父様は、
「おお~ユリカ、元気か?」
なんて呑気なことを聞いてくる。部下の方達がそっとタメ息ついているのが見えました。
「はい」
「・・これも任務だ。許しておくれ、パパもつらいんだ~」
なんて涙目でお父様はおっしゃってますけど・・・
「困りましたな~。連合軍とのお話は済んでいるはずですよ?
ナデシコはネルガルが私的に使用すると」
「我々がほしいのは、今確実にザフトと木星トカゲ共と戦える兵器だ。それをみすみす民間に・・・」
「いや~さすがはミスマル提督!わかりやすい!じゃあ交渉ですな?そちらに伺いましょう!」
お父様、そう簡単に交渉に応じるかなぁ?
「・・・よかろう。ただし!作動キーと艦長は当艦が預かる!」
「えっ!え~っと・・・」
なんか私も行くことになっちゃいました。
マスターキー格納口前に今います。
「艦長!ソイツぁワナだ!奴らの言いなりになるつもりか!?」
「ユリカ、ミスマル提督が正しい!これだけの戦艦を、むざむざ火星に・・・」
「いや、我々は軍人ではない。従う必要はない!」
みんな口々に言います。ジュン君、それじゃ火星にいるかもしれない人達はどうするの?
見殺しにするの?
「フクベさん、これ以上生き恥を晒すつもりですか?」
・・・そうだった、フクベ提督は・・・。
「ユ~ィリカ~、私が間違ったことを言ったことなどないだろう?」
お父様・・・、もう少し態度を自重しませんと・・・、みなさん呆れてます。
(でも・・・、そうだね。今はとりあえず・・・)
手をマスターキー格納口にかざす。すると、静脈、指紋、体組織認証により、マスターキーがでてくる。
「ヤメロ~艦長!」
「止めるんだ、艦長!」
ヤマダさんとフクベ提督が必死に止めてきます。
「艦長~!ソイツはワナだ!抜くな!」
もう、さっさと抜いて用事をすましちゃいましょう。
ピッ
「抜いちゃいました~!」
「「「「「「「「おお~!」」」」」」」」
「せ、正義が・・・」
「あ~あぁ、エンジンが止まっちゃう」
さ~さっさとお父様に会って用事を済ましましょう。
「ユリカさん」
突然ルリちゃんに声をかけられる。なんだろう?
「なぁに~?」
ルリちゃんは少し微笑んで、
「がんばってきてください」
と一言私に言った。・・・その姿に私はなぜかすごく親近感を覚えた。
まるで親しい人に向けられた愛情とでもいうのだろうか?そんな不思議な感覚。
妹がいたならこんな感じかな~、とか私が思った感覚にソレはすごく似ていた。
だから私はうれしくなって、
「うん、行って来ます!」
といって手を振ってプロスさんと共にお父様の元に向かった。
どうしても聞きたいことがあって・・・
アレ?今ルリちゃん、私のこと艦長じゃなくて名前で呼んだような・・・?
*ナデシコ、食堂
「じゃ、いいこと?ここでおとなしくして頂戴」
ムネタケの叛乱で、今ナデシコは無防備だ。
艦内のクルーは何箇所かに集められて軟禁されている。
俺は食堂で働いていたので今現在食堂で大人しくしている。
「ちきしょ~!覚えてろよ!!」
「はぁ~、自由への夢は一日にして終わる、か・・・」
今しがたブリッジのクルーがここに押し込められた。
それにしても・・・あのムネタケの勝ち誇ったかのような顔・・・、むかつくなぁ。
「だぁぁぁぁぁ!?あきらめるなっ!希望はまだそこにあぁ~るっ!!」
「はいはい・・・」
叫ぶガイにウリバタケさんは聞き流す。
たしかに、ガイはちょっとうるさいトコがあるよな・・・。
「みんなもあきらめるなっ!悪は絶対に滅ぶっ!
「なんかがっかり。戦艦に乗ればカッコイイ人いっぱい居ると思ったのにぃ」
「ま、世の中そんなものよ」
「ホント、このふね、へんな人ばっかぁ。
でもネルガルのヒゲめがねの人大丈夫かなぁ?ちょっと頼りないよねぇ」
おいおいメグミちゃん。プロスさんはすごい人だよ。
みんなの話をキッチンで皮むきしながら聞く。なんか聞き耳たててるみたいで悪いけど。
「人は見かけによらないよ、メグちゃん。意外とね、大丈夫よ」
「そうですかぁ~?」
ちなみにルリちゃんは俺の横で皮むきの手伝いをしている。
「アキトさん」
「なんだいルリちゃん」
「計画の件ですけど、お金のこと忘れてましたね?」
「あっ」
・・・忘れていた。そっか~必要だよな~お金…、でもどこから出そう。
ふうっ、ルリちゃんはため息をつきながら話を続けた。
「そんなことだろうと思いました。・・・大丈夫です。
ラピスとハーリー君に私の口座のお金を使うように言っておきましたから」
「…、さすがルリちゃん。ゴメン」
「いえ。まぁそんなトコなんかアキトさんらしいですから、気にしないでください」
「そんな風に見てたんだ・・・、俺のこと」
・・・、うわぁ~俺ってダメじゃん。ちょっとヘコむ俺だった・・・。
「なんだなんだなんだみんなぁ!元気だせよ~!
よぉ~し、オレがとっておきの元気が出るビデオを見せてやるぜっ!!」
ガイがゲキガンガーのデータが入ったロムを取り出す。
ゲキガンガーか、久しぶりに見ようかな・・・。
すると、
「テンカワ、それとルリちゃん。何か始まるみたいだよ」
と、ホウメイさんが声をかけてくれる。チラッとルリちゃんのほうに目配せすると、
ルリちゃんもコクンと頷いて手を休める。
「なんかのビデオだってさ」
みんなが上映の幕の方に目を向けている。
と思ったら、端の席のほうでゴートさんとフクベ提督、マサトと・・・それとジュン?
その4名が固まってなにやら話していた。
なぜジュンが?ユリカについていったんじゃないのか?
なんだかジュンがヘコんでいる。なぜだろう?
「ルリちゃん、どうしてジュンがここにいるんだい?」
そう、小声で聞いてみる。すると、
「マサトさんが引きとめたんです。『艦長とプロスさんが呼ばれただけのになんでオマエも行くんだ?』って言って」
と、教えてくれた。へぇ~、マサトがねぇ。
「結構キツイこと言ってました。艦長が艦を開けるんだからお前がここの責任者だろう?とか、
お前まで行ってなんか意味があるのか?とか、ミスマル提督の条件は艦長とマスターキーだって、
別にお前は呼ばれてない、とか、副長の責務を忘れてる、とか」
そ、それは・・・。結構キツイな…。
「結構キツイな、それ」
「はい、でもフクベ提督がフォローしてましたけど」
「そっか・・・」
ジュン・・・、がんばれよ。