PHASE02. 「それぞれの思い」
*ナデシコ、食堂(マサト視点)
(あ~、鬱だ・・・)
悪いクセだ。相手のことを考えず、ズゲズゲいうのは。やっちまった・・・。
つい先ほどのことだ。
艦長とプロスさんが向こうにいくのにジュンのやつがついて行こうとするので引き止めたのだ。
かなりキツいことを言って。
現在ブリッジクルーは食堂に集められて軟禁されている。
ムネタケとかいうカマヤロウが叛乱を起こしたせいだ。
(あんにゃろ。一目見た時から気に食わなかったんだよ)
あとの祭りである。そんなこんなで食堂にいるわけだが・・・、
ジュンのヘコみ様といったらそれはもう見てられなかった。原因のオレですら。
はぁ~フォロー苦手なんだけどなぁ。
そう思っていこうとすると、フクベのおっちゃんに声をかけられた。
さっきジュンをフォローした人物だ。
「フクベのおっちゃん・・・」
「ほっほっほ、中々言うなマサト君。ただちょっとばかり配慮が足りなかったようだが」
「・・・、そんなんわかってますよ。別にあそこまでヘコますつもりはなかったんですから」
本音なのでいいわけする。
「まぁしかたあるまい。いつもああゆう感じだったのだろう、ジュンくんは。
いつも艦長をフォローしていたのだろう、彼は。無意識だったに違いない」
「わかってるよ~、そんなこと。でもだからって職務を忘れちゃいけないっしょ?
あの場合、副官が艦の留守を守るのが当然す。今、ナデシコはマスターキーがない。
なにかあったら、対処ができない。指揮を取る人がいないのだから。
って、別におっちゃんをバカにしてるわけじゃないぞ?」
聞きようによっちゃ、おっちゃんバカにしてるみたいなので断っておく。
「はっはっは。わかっとるよ、そんなことは。それで?彼を慰めておくと?」
「一応フォローを。あのまんまじゃオレの印象最悪っすから。
それに、アイツはたぶん優秀ですよ。プロスさんが一緒に引き抜いたんすから」
オレはそうおっちゃんに聞かせる。
「なるほどな・・・。なら、君がフォローを入れておくといい。わしの心配はいらんようだしの」
「おっちゃんはブリッジの時のフォローだけで十分、後のことはまかせときな~」
「うむ。まぁ、どんなフォローをするのか聞かせてもらうとしよう」
「信用ないなぁ~」
そんな感じでジュンの所に向かう。すると、
「マサト、少し話がある」
今度はゴートのヤツが話かけてきた。おそらくあのことだろう。
「すまん、ゴート。悪いがもう少し後にしてくれ。ジュンが先だ」
「…そうか。なら待とう」
と、そのまま一緒になってついてくる。おいおいお前もかい。
なんか向こうではヤマダのヤツがぎゃーぎゃー言ってるが、無視をしておく。
おもしろいヤツだが、時たまテンションがついていけない。
ゲキガンガーは中々だったが・・・。
そして、ジュンの所に着く。オレはジュンの前、ゴートは俺の横、おっちゃんはジュンの隣だ。
「ジュン・・・・」
「…。マサト、さっきはとんだ醜態を見せてしまったね。ゴメン・・・・」
あ、ヤバ。マジで落ち込んでる。コレは重症だ・・・
「まぁ、・・・オレの言い方もキツかったかもな。
それでもあん時のオマエについては正直黙っていられなかった。オマエは副長だろ?って」
「うん」
「だから、まぁなんというか。つまりだな、オマエってナデシコの副長なわけだろ?」
「ああ、そうだけど」
「だったら、ナデシコの方針を最優先に考えなきゃ。軍のことをどうのこうのいってたけど、
オマエはナデシコの一員であって、軍の一員じゃないだろう?それに艦長は火星行きを方針としてる。
確かに艦長を諌めるのも副官の役目だが、オマエはナデシコのクルー。ひいてはネルガルの一社員だ。」
「そ、それは!」
「最後まで話は聞けって。そもそもこの艦は軍の所属じゃない。ネルガル所属だ。
だから別にアイツらの方針に従うイワレは無い。そうだろ?会社のもんなんだから。
だったらオマエがナデシコのクルーである限り、会社の方針に従って最大限努力しなければならない」
なんとか理屈を並べて言葉を一旦切る。
ヤマダの流しているゲキガンガーの声が食堂に響く。・・・ヒドく場違いだな…。
「一応聞いておくが、なんでオマエは火星行きを反対するんだ?」
オレはジュンに尋ねてみる。
「・・・うん。僕は、やっぱりミスマル提督の主張の方が正しいと思うんだ。
現在地球が置かれている状況はすごく厳しい。
ザフトはアフリカ大陸のほうをほぼ占領してるし、木星トカゲはそんなの関係なく攻めてくる。
ザフトのほうはモビルスーツがあるからいいけど僕らは・・・。
ナデシコがいくら強力な艦だといっても単艦で火星なんて無謀だ。月の奪還すらまだなのに・・・。
それに、火星に生き残りが居るかどうかすらあやしいんだ。
それもわからないのに火星にいくなんて、ダメだと思うよ・・・・」
なるほどなぁ。確かにコイツの言ってることもわからんでもない。
地球は今混乱状態だ。なんにせよ・・・。
「まぁ、オマエの言うこともわからんでもないが・・・、あの艦長はたぶん主張曲げんぞ?」
「だ、大丈夫だよ!ユリカは提督の言うことには逆らったことないし」
・・・本当かよ。ぜってーあのおっさん艦長甘やかして育ててそうだし。
「だとしてもだ、ジュン。コレはオレのカンだが、あの艦長はかなり頑固そうだ。
自分の考えとかには絶対だと思うし、それを貫く資質もある。
あの初陣の作戦も艦長の案だろう?」
「あ、ああ。で、でももし軍の警告を無視して火星に向かったら、地球連合を敵に・・・」
「あ~そのことなんだがな、たぶん大丈夫だ」
「な、なんでだよっ!なんの根拠で!じゃないとユリカが・・・」
…なるほど、コイツ、艦長に惚れてるのか。だからか、妙に抜けてるのは…
「ま~ま~、落ち着けって。理由なんだがな・・・」
オレはちらっとゴートのほうを見る。そして目を見て合図を送る。
(ある程度、話していいか?)
(・・・・、いいだろう)
許可をもらったので話す。
「このナデシコなんだがな。まぁ言ってみれば、
今現在地球のあらゆる艦とは全く違うシステムから作られてるわけなんだが。
ネルガルは、地球で初めて相転移エンジンとグラビティブラストの実用に成功した、
唯一の企業なわけだ」
「ああ」
「で、地球連合としては、それはぜひともほしいわけよ。対ザフト、対木星トカゲとして。
ネルガルとしても、大口の連合に売りたいわけだ、これが。
だが別に連合に売りつける必要も無い。ザフトだっていいし、赤道連合だっていい。
なんなら、オーブに売ったっていいわけだ。でもそれじゃあ連合は困る。
敵の戦力が増したらなおさらな?おそらくこの件は、一部の強硬派の突っ走りだろう。
出世にくらんだりしたな?本来なら、普通に一隻火星にに行かせるだけでその技術は渡されるわけなんだから。
おそらくミスマル提督はそれに巻き込まれてんだろう。艦長もそこらヘン分かってると思うし。
だから今突っぱねていっても怒られんのはソレを命令したバカだし。心配ないって」
ふぅ。話がなんか長くなった・・・。こんな話をするつもりじゃなかったんだが…
「そ、そうか…、言われてみれば」
「だろ?で、だ」
ここからが本題だ。あ~慣れないことはするもんじゃないな~
「艦長はおそらくこのまま火星にいくと思うわけだが・・・、
オマエは結局どうする?」
「・・・・」
だんまりか。まぁそうだよな、イキナリそれを答えるのは今のジュンには無理か。
「まぁそんなことを自分の頭で考えながら過ごせってことだ。
オマエが望む望まないに限らずな?」
そういってオレは話を締めくくる。そして、
「まぁムズカしいとは思うけどよ。とにかく悩め。悩めるうちにな?
オマエけっこうラッキーなんだぜ?こうゆうことって中々気付かないし、
あまり時間もないが、悩める時間もあるんだし」
そう。コイツはラッキーだ。悩める時間があるということは。
オレは…、オレは、悩める暇などなかった・・・・・。ちょっとブルーな気分になる。
「すこし・・・考えてみるよ・・・マサト」
「そうそう。ま、がんばれや」
そういってオレは席を立つ。話しっぱなしでノドが乾いた。
「それで?ゴート、話ってのは・・・・」
立ち上がってオレは気付いた。
ゲキガンガーを見ていると思った周りの視線が、俺たちに向いているのに・・・。
オレはあわててジュンやおっちゃんを見る。するとおっちゃんがにやっと笑っていた。
「おっちゃん、気付いてたなら教えてくれよ…」
「話の腰を折るのも悪いと思っての」
「・・・・・、ゴート?」
「右に同じく」
・・・・・、慣れないことなんてするもんじゃない。
この時オレは硬く心に誓った。
「で?話ってのは?」
不機嫌な声でオレはゴートに聞く。全く、ハズいったらありゃしない。
「ミスターからの伝言だ。そろそろよろしく、と」
「…、そうか。そろそろか」
その一言を聞いた瞬間、オレは頭の中の意識を切り替える。
その瞬間、オレは仕事モードに入る。
*ナデシコ、食堂
なんか全然印象が違いました。とても寝坊で遅刻する人とは思えない言動っぷり。
正直驚きです。
「アキトさん、私、ビックリしました」
「…俺もだよ、ルリちゃん。変わったヤツとは思ってたけど」
そうしてアキトさんは一瞬、警戒するような目をする。
確かに、あの人は危険です。私達のこともそのうち勘ぐるかもしれません。
「俺も気をつけないといけないな」
「ええ、私もです」
そんなことを話していると、ジュンさんとの話が終わったのか、なにやらゴートさんと話しています。
「ミスターからの伝言だ。そろそろよろしく、と」
「…、そうか。そろそろか」
その瞬間、マサトさんの雰囲気がガラッと変わりました。
あれがアキトさんの話していた切り替えというやつでしょうか?
「みんな聞いてくれ」
ゴートさんが急に話し出しました。なんでしょう?
「そろそろ我々も動かなくてはならない。
このまま、連合にナデシコを差し出すのは社の方針に反するのでな」
なるほど。ゴートさんが音頭を取りますか。
「諸君も知ってのとおり。コレは連合の一部の人間による独断だ。
しかし我々はそれに従う謂れはない。よってこれより艦を奪還し、
予定通り、火星に向かう」
「でもさぁ~、こっちには戦闘訓練受けた人がいないんだけど~」
ミナトさんが反論する。
「それなら問題はない。今現在、艦内には何人かそうゆう者が乗っている。
俺の部下だ。通信は生きてるので問題はない。速やかに奪還できる」
「でも艦長いないとこの艦動きませんよ?」
私は一応意見をいう。もちろん、ゴートさんにはなにか確信があるのだろうけど。
「その点に関してはミスターが何とかする。
先ほどミスターから合図があった。『そろそろ戻る』、と」
なるほど、一枚上手ですね、プロスさん。
「と、いうわけだ。これより艦の奪還を開始する」
*戦艦トビウメ、応接室
「プロスさん遅いなぁ」
今、私はトビウメの応接室でお父様とお茶をしている。
プロスさんはお父様の部下と交渉中です。早く終わらないかなぁ。
「まぁ、落ち着きなさい。…それよりユリカ、少しやつれたんじゃないか?」
「お別れしてまだ2日ですわ、お父様」
もう、お父様ったら。アルツハイマーにはまだ早いですよ?
それに部下達の方まで・・・、私が来るといつもため息をつくの。どうしてかしら?
「まぁそれはそれとして、お腹空いたろう?た~んと食べなさい。
双葉屋のケーキ、イチゴにチョコレート、レアチーズがいっぱいぃっぱい☆★」
こんなにいっぱい・・・。私食べられませんよ?お父様。
あ、それよりもさっさと私の目的を済ましちゃいましょう。
「ねぇお父様?テンカワ・アキト君、覚えてますか?」
一瞬、お父様の反応が違った。アキトの名前を出した時に。
「テンカワ?テンカワ…いやー誰だっけなぁ・・・?」
「火星でお隣だった子です」
「火星?」
「私、アキトに会いました」
どうやらアキトの読みは当たったみたい。
お父様は何か知ってる。
それで私はアキトに地球であったことと、アキトのご両親のことを話した。
「殺されたっ?」
「ええ、お父様は何かご存知かと」
「いや、何かの間違いだろう。テンカワ夫妻は事故で死んだのは事実だ」
・・・お父様、何か隠してるみたい。
どう問い詰めるか思案していたらプロスさんが入ってきた。もう時間切れか…
「お待たせしました」
「結論は出たかね?」
「はい、色々、協議いたしまして」
「で?」
「ナデシコは・・・、あくまでわが社の私有物であり、その行動に制限を受ける必要なし、と」
さすがプロスさん。さて、そろそろ私もナデシコに・・・・
ズゥゥゥゥゥン
「なんだ!?何が起こった!?」
急に大きな音が聞こえて、艦が揺れる。
これは・・・・
「話はひとまず後だ。ユリカ、私に着いて来なさい」
そういってお父様は応接質を離れた。さてさて、ココは…。
私はプロスさんの方に視線を合わせる。
すると、プロスさんはメガネをクイっと指で押さえながら言った。
「では艦長、参りましょうか」
「はいっ!」
*トビウメ、ブリッジ
「チューリップだと?」
全く、こんな時に・・・
シュー
ドアが開いて、ワシはブリッジにはいる。
「状況はどうなっている!?」
「我、操舵不能!我、操舵不能!我・・・」
「護衛艦、クロッカス、パンジー、共にチューリップに捕まりました」
「ヤツめ…、生きていたのか・・・・」
水飛沫と共にチューリップが現れ、口を開きクロッカスとバンジーを飲み込んでいった。
クッ!私の大事な部下を!急がなくては
「ナデシコ、発進準備!さぁユリカ!キーを渡しなさい」
そういって、私は後ろを振り向く。そこにはユリカが、
「あれ~?ユリカは何処に?」
いなかった。部下に視線を送るが知ってそうなヤツは誰もいなかった。
「ここですわ、お父様」
ブリッジにいきなり大画面で我が娘の顔が映し出される。
「ユリカ!」
「もう一度お聞きします。アキトのご両親の件ですわ」
「なっ!こんな時に何を!」
むぅ、やけに拘る。しかし・・・
「私にとっては大事なことです!」
「提督!チューリップ!進路をナデシコへ!」
「お父様!本当のことをおっしゃって!」
ユリカが険しい顔をする。ユリカ・・・・ムムムッ(汗)。
「ユリカ…、確かにそんな話を聞いたかもしれん。
だがしかし、お前に聞かせるのは忍びなくてな…その」
私は無意識にヒゲを触って、話を濁らす。むぅ。
「わかりました。行きましょう」
「はい」
「「「「「えっ!」」」」」
ユリカはウインドウ越しでプロスペクターに発進の声を告げる。なんだと!
「待たんかユリカ!何処へ行くつもりだ!」
「ナデシコです」
「何~!艦を明け渡しにこちらに来たのでは!」
「え~?私はただアキトの話が本当か確かめに来ただけですわ、お父様」
「はへぇ?ユリカ~!!!」
なななな!なんて事を!
「艦長足る者、たとえどのような時でも艦を見捨てるような真似はいたしません!
そう教えてくださったのはお父様です!」
むぅ、確かにそれを教えたのはワシだ。だがこの場合は!
「それに…」
なんだ?他に何か理由でもあるのか?
なんだなんだ?なぜ顔を赤らめている!ユリカ!
「あの艦には私の好きな人が乗っているんです!」
キュン
その言葉と共に私の娘は艦から去っていった。
爆弾発言を残していって・・・
「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ワシは一気に白くなってしまった・・・・・ガクッ。
「提督!」
「提督が倒られたぞ!」
「急いで医療班を!ええい、それじゃ間に合わん!」
「ユリカお嬢様…、ご立派になられて・・・」
「確かに提督にはデッドな発言だよな、あれは」
トビウメの艦内は一気に騒がしくなった。