Warning!!(警告!!)
このSSは、オリジナルのラブひなと大分(かなり)掛け離れています。
そのため、その様なSSを読みたくない!という方は、これより先を読まない事を
Excaliberはお勧め致します。 それでも宜しかったら、本SSをお楽しみ下さい。
ポカポカポカ・・・
とある休日の昼下がり。
勤勉青年で〔ラブひな〕の主人公である浦島景太郎は、ひなた荘のベランダでノンビリゆっくりと日光浴をしていた。
「う−ん・・・いままでこんなに平和な出だしなんかあったかな?
そういえば、Vol.01ではモトコちゃんに追い掛け回されたし、
Vol.02じゃ成瀬川にグ−で度突き倒されて流血したような・・・」
大きな欠伸を洩らしながら、ポツリと虚空に向かって呟く景太郎。 う、痛いところを突いてくるな、景太郎。 別にいいじゃないか。
「よくないよ。 ふぁ・・・何か眠くなってきたな・・・」
そのまま、ベランダでうつらうつらし始める景太郎。 わかるよ、その気持ち。 つい眠たくなるんだよねぇ・・・。
「景太郎−。 何処にいるのよ・・・って、あら?」
とそこに、ヒロインの成瀬川なる嬢が、景太郎を探しにベランダにやって来る。
なるが見た物は・・・ベランダの柵に寄り掛かって、ウトウトしている景太郎だった。
「幸せそうな寝顔しちゃって・・・。 ほら景太郎、起きなさいってば。 こんな所で寝てると風邪ひくわよ?」
ツンツン
なるが景太郎の事を起こそうとして、景太郎の頬をつっ突いた瞬間!
ガバッ!
「きゃっ!?」
景太郎は目を覚ましたと同時に、なんとなるの事を組み敷いたのだった。
ラブひな外伝
ひなた荘であった本当に怖い話Vol.03
気になるアイツは暗殺者(アサッシン)!?
「えっ!? えっえっえ!?」
余りにも突然な出来事に、組み付かれた事も忘れて混乱しているなる。
当の景太郎は、なるの上に跨がり(俗に言うマウントポジションだ)襟に手を掛け、
拳を振り上げた所で我に帰った。 ・・・時間にして、1秒にも満たない速さである。
・・・普段のドジでマヌケでスケベな景太郎とは、大違いだ。
「な、成瀬川ッ・・・!?」
「・・・・・・」
気まずい雰囲気に、動きの止まる景太郎。 そりゃそうだ、女の子を押し倒しているんだし。
〔さっきの景太郎・・・何時もの景太郎じゃない・・・(脅え)。
・・・でも・・・さっきの景太郎・・・ちょっとカッコよかった・・・(ポッ)〕
・・・まあ、場違いな事を考えているお嬢さんもいるみたいだけど・・・(苦笑)。
とにかく、先程の景太郎は普段の景太郎ではなかったらしい。
30秒経過・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
静かに見つめ合う、景太郎となるの二人。
何か、ピンキッシュ(笑)な空気が辺りに満ちているのは気のせいだろうか?
一分経過・・・。
スッ・・・
無言で目を閉じる、なる(何故?)。 もちろん、顔はトマトの様に真っ赤だ。
〔ええっ!?〕
暫く迷っていた景太郎だが、どうやら覚悟を決めたらしく、真剣な表情に変わる。
二人の顔が、段々迫って行く。 あと10cm・・・5cm・・・1cm・・・。
「浦島センパ−イ、なるセンパ−イ! お昼ご飯で・・・ッ!?」
「何をしているんだ、冷めてしま・・・ッ!?」
二人を呼びに来たひなた荘の住人、前原しのぶと青山素子は、
ひなた荘には物凄く場違いな光景を見て、絶句&硬直する。
「「!?」」
そりゃそうだろ、景太郎となるが白昼堂々と愛(?)を交わしている
(様にしのぶ達には見える)んだから。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? な、ナニやってるんですかぁ−っ!!(泣)」
ズドドドドドドドドドドドドドドッ・・・・・・
「ああっ!? ち、ちがうんだよしのぶちゃ−ん!
これは事故なんだよ−ッ!!!?」
それに気付いた景太郎が慌てて声を掛けるが、既にしのぶは
激しい土煙を巻き上げながら何処へと走り去っていってしまった後だった。
途中、見知らぬオジサンが撥ね飛ばされているが、そんな事は気にしない
気にしない。 だってコレ、SSだし。
シャキ−ンッ・・・
「も、モトコちゃん? だ、だからこれは事故なんだっ・・・(汗)」
「浦島・・・キサマ・・・。 最近は改心したと思っていたのだが・・・。
やはり、キサマの存在は悪だ! 成敗してくれる!!
神鳴流秘剣! 百花繚乱!!」
ズギャ−ンッ!!
「ふぇぶらりぃー!!?」
素子の剣技の前に、よくわからない叫びを残しながら吹っ飛んでいく景太郎。
もちろんエコ−のおまけ付きだが、そんな彼の姿もあっと言う間に消えていく。
今更ながら、生きているのか景太郎は・・・?(大汗)
「大丈夫ですか、なる先輩。 あんな下男に貞操を汚されていませんよね?」
「え、ええ・・・。 だ、大丈夫・・・」
素子に手を貸してもらって、起き上がるなる。 未だに彼女の顔はトマトの様に真っ赤だ。
〔景太郎の目・・・何時もの目じゃなかった・・・。 まるで獲物を狙う鷹みたい・・・。
私とした事が・・・ちょっと見惚れちゃったじゃない・・・(ポッ)〕
貞操は汚されていない様だが、どうやら精神の方が汚されてしまったらしい(笑)。
でも、さっきの景太郎は何時もの景太郎じゃないと、ボンヤリとした頭で考えていたなるだった・・・。
「ふ−、やっとひなた荘に帰ってこれたよ。 しかし・・・さっきのは流石にマズいよなぁ・・・」
所々に泥や木の枝を付けた景太郎が、そんな事を呟きながら帰ってきたのは
あれからタップリと30分立ってからの事だ。 なぜなら、素子に吹っ飛ばされた景太郎は、
ひなた荘の裏手の山へと探検ツア−に行く羽目になったからである。 まあ、何時もの事だけど。
「なんや、け−たろ、ベランダでなるのコト押し倒したんやて?(ニヤリ)
積極的になるのも結構やけど、これからはちゃんと時と場所を選ぶんやで」
「な、何言っているんですか、キツネさん!? あれは事故なんですってば!!」
と、やっとの思いで裏山から生還してきた景太郎をからかうのは、
キツネこと紺野みつねさんその人である。
「ケ−タロ−のスケベ−ッ!!」
メキョッ!!
「のう゛ぇあっ!? す、スウちゃん、過激なお出迎えだね・・・(汗)」
「うりゃっ! いくらモテないからって、なるを押し倒すなっ!!」
ガスッ!!
「はぐっ!? さ、サラちゃんまで・・・」
ひなた荘のイタズラコンビ、スゥとサラの二人に殴られて、
ドピュ−と物凄い勢いで、それこそ鯨の潮吹きみたいに頭から血を吹き出している。
不死身のゾンビの如き再生能力で、致命傷もなんのその、な景太郎である。
某エキセントリックな二人の医者が喜びそうだ。
〔凄く貴重なサンプルね・・・。 是非ともウチに欲しいわね・・・(ニヤリ)〕
〔そうですね、母さま。 ヤマダさんといい勝負ですね・・・(ニヤリ)〕
・・・はっ、どうやら別次元へと続く空間の歪みが発生したようだ。
その証拠に、ここにいてはいけない人達が登場しているし・・・(汗)。
ここはラブひなの世界なんだってば。
「あ・・・な・・・成瀬川・・・。 その、さっきは本当にゴメンッ!」
「もういいわよ、どうせ事故なんでしょ? その代わり、次にやったら八葉連牙だからね」
ガバッと、それこそ土下座しそうな勢いで謝る景太郎に、
物騒な事を言いながらさっきの事故を許すなる。 八葉連牙って・・・オイ(汗)。
「センパイ、私センパイの事信じてました」
ホッとした表情でしのぶが景太郎にお絞りを手渡す。 ・・・嘘付け、一番最初に走り去ったくせに。
「あらあら、何だか分かりませんけど、これにて一件落着ですね」
「みゅ−」
ポン、と手を叩きながら言う乙姫むつみに、合の手を入れる温泉ガメのタマ。
ひなた荘の、何時もの変わらない光景。
だが、この一件を境になるの景太郎に対する目が変わったのである・・・。
それは、あの時押し倒された時に見せた、景太郎の目付きのせいなのかもしれない。
あの、底冷えのする、鋭い鷹の様な目線に・・・。
ドカ−ンッ!!
「ギャ−ッ!!」
ひなた荘に響く、景太郎のけたたましい悲鳴。
もちろん、なる必殺の八葉連牙をくらったためだ(笑)。
「まったくもう! アンタには学習能力っていう物がないのっ!?」
八葉連牙を放っため、少々息の荒いなるが景太郎に向かって怒鳴る。
「・・・うう・・・いたたたたた・・・(ムクリ)」
「しかも、もう回復してるし・・・(汗)」
廊下の片隅で頭をさすっている景太郎に、呆れた視線を送るなる。
何故、景太郎が八葉連牙をくらう羽目になったかというと・・・。
何のことはない、なるの着替えを覗いてしまった(事故)からだ。
・・・三歩歩けば物を忘れる鶏なのだろうか、景太郎は・・・(汗)。
「浦島ぁぁぁぁぁぁッ、キサマというヤツはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
ドバキャッ!!
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁッ!!」
またもや訳の分からない叫び声を上げ、素子の刀剣コレクションの一つ、
神剣ラグナロク(汗)によって廊下の片隅に吹っ飛んでいく景太郎。
そして、死ぬという事を知らないかの如くすぐ蘇ってくるのだ(汗)。
御存知だと思うが、一応彼はれっきとした人間である
「うりゃ−」
「あめ−ばぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
今度はスゥかサラ辺りにでも蹴られたのだろうか、またもや吹っ飛んでいく景太郎。
そんな様子に、しのぶは呆れながらも救急箱片手に景太郎の元へと駆け寄っていく。
「・・・あれ?」
そんななか、その景太郎の様子に疑問を持った人がいた。
景太郎に押し倒された(くどいようだが、事故)なるである。
〔そういえば・・・景太郎って吹っ飛ばされてから起き上がるまで、
殆ど同じ様なタイミングで起き上がっているような・・・?〕
そう、よく見ると景太郎は頭をさすりながら起き上がってくるタイミングが
ほぼ同じなのだ。 しかも殴られて壁に激突した次の瞬間には、景太郎の傷は殆ど癒えている。
それこそ、漫画やアニメの様に・・・(って、元々フィクションか)。
それは置いといて、もしかしたら景太郎はやられたフリをしているだけなのかも。
・・・という考えが一瞬なるの頭に浮かんだが、鈍い景太郎にそんな器用なマネが
出来るワケないか、と思い直すなるだった。
「なるせんぱ−い、どうしたんですか−? そろそろご飯ですよ−?」
「あ、う、うん。 いま行くわ」
ま、そんなワケないか。 あの景太郎だし・・・(どういう意味だろう?)。
となるは無理矢理自分を納得させて、しのぶ達の待つ食堂へと歩いていった。
・・・途中に転がっている、景太郎らしき物体X(汗)を横目に見ながら・・・。
ジ−ッ・・・・・・
「な、何だよ成瀬川? 俺の顔に何か付いてる?」
「えっ? あ、う、ううん、何でもない。 気にしないで・・・」
ジ−ッ・・・・・・
「・・・・・・(汗)」
口では気にしないでと言っておきながら、ずっと景太郎の事を凝視しているなる。
あまりの凝視具合に、回りのひなたガ−ルズも引いている(汗)。
「あ、あのさ成瀬川・・・、凝視されると食べにくいんだけど・・・(大汗)」
後頭部にでっかい汗を浮かべながら、ズズズと味噌汁を啜る景太郎。
「なんや、なる。 そんなに景太郎が気になるんか?(ニヤリ)」
「・・・・・・(怒)」
手酌で熱燗を飲んでいたキツネを、無言で度突き倒すなる。
「あたた・・・。 何するんや、なるっ!?
でも、さっきっからどうしたんや? 様子がおかしいで?」
「なる先輩、どうかしたんですか?
体の調子が悪いんだったら早めに休んだ方が・・・」
「浦島ッ!
キサマのせいでなる先輩がおかしくなってしまったではないかッ!!
即刻切腹してお詫びしろ!!」
「切腹ってうまいんか−?(ニコニコ)」
「うまいワケないだろ、カオラ・・・(汗)」
「ふにゃ?」
「みゅ?」
上から、キツネ、しのぶ、素子、スゥ、サラ、むつみ、たまの順である。
ちなみに、むつみはご飯の最中だというのに寝こけていたのだ。
ある意味、素晴らしい女性である。
「ホントに大丈夫だってば。 そんなに心配しないでいいわよ。
・・・ところで景太郎。 アンタ、空手か何かやってた?」
「え? 俺が空手か何かやってれば、成瀬川やモトコちゃんに殴られてないよ」
「それはそうやな−」
キツネの言葉に、ウンウンと頷くひなたガ−ルズ一同。
その様子に対して、「どういう意味ですか−、それ−ッ」と景太郎は叫んでいるが、
なるはどうしても腑に落ちなかった。
「・・・私の気のせいだったのかしら? 景太郎の目が、すっごく冷たく見えたんだけど・・・」
「何考えているか知らんけど、気のせいやでなる。 あんなすっとぼけた男に、何が出来るんや?」
「え?」
「ホレ、あれ見てそんな事が言えるん?」
「・・・私の気のせいね、絶対・・・」
・・・そこには、滑って転んだ拍子に素子の胸を触ってしまったため、
素子の刀剣コレクションの一つ、レ−ヴァテイン(一体どこで入手したのだろうか?)に
よって吹っ飛ばされている景太郎の姿があった・・・(笑)。
「ふうっ・・・。 今日はいろいろ大変な目にあったわ」
食堂から自室に帰ってきたなるは、暫く畳の上で横になっていた。
「あ、そうだ。 今日の事、日記に書かなくちゃ・・・。 えっと・・・」
すっくと立って机に向かうと、愛用の日記帳を開くなる。
−−−− 2月10日。 ・・・景太郎に、ベランダで押し倒された。 −−−−
「・・・・・・(怒)」
この文を書いたと同時に、使っていたシャ−ペンを驚異的な握力で握り潰すなる。
パラパラと後に落ちるのは、元シャ−ペンだった残骸である・・・(汗)。
「・・・あんなヤツに押し倒されるなんて・・・屈辱だわ・・・」
よっぽど屈辱的だったのか、なるの握り拳はプルプルと震えている。
〔・・・だからその事は謝ってるだろう、成瀬川・・・〕
「しかも、あんなヤツの事をカッコいいなんて思っちゃったなんて・・・。
景太郎には口が裂けても言えないわね・・・」
〔・・・え、そ、そうなの!?(驚き)〕
「でも、あの時の景太郎の目・・・感情のない冷たい目だった・・・。
景太郎には、何か隠された秘密があるみたいね・・・」
〔ばれちゃったか・・・って、成瀬川? ・・・お−い?〕
ほうっと溜め息を付き、頬を桃色に染めて呟いているなる。
自分の世界に入り込んでいるのか、すぐ近くにいる人物も目に入らないらしい。
全部喋ってる事、筒抜けなんだが・・・(笑)。
「成瀬川ッ!!」
「きゃっ!? ・・・け、景太郎!? 何時からそこにいたのよ!?」
景太郎の声で我に帰るなる。 気付くのが遅いんだって。
「何時って・・・最初からだけど・・・」
「ええッ!? じゃあ・・・その・・・カッコいいとか・・・?」
なるの科白に、顔を真っ赤にしながら頷く景太郎。
途端に、なるの顔も真っ赤になる(from怒り&恥ずかしさ)。
「ど、何処から私の部屋に入って来たのよッ!?
この部屋に入った時には、誰もいなかったハズよッ!!」
「ま、まあまあ、取り合えず落ち着いて。 最初から説明するから」
焦って取り乱すなるを、慌てて宥める景太郎。
何故なら、なるの体に段々と殺意の波動が満ちてきているからだ。
「薄々怪しいとは思ってたけど、今やっとわかったわッ!
アンタ、人間の脳味噌を食べて容姿をコピ−出来る上位魔神、
ドッペルゲンガ−ねッ!! 何時景太郎と入れ替わったの!!?」
「な、何だよそのドッペルゲンガ−って・・・(汗)。 ここにいるのは、浦島景太郎本人だってば」
どうやらなるは混乱しているらしく、訳の分からない事を怒鳴る。
アレク○スト大陸の南にある某呪われた島にでも行かないと、ドッペルゲンガ−には
会えないって。 しかも、それ昔の話だし。
「・・・わかったわ。 百歩譲ってアンタの事を景太郎本人と認めるわよ。 アンタ一体何者なのッ!!?」
ビシッ!! ←景太郎を指差した音
「だから本人だって言ってるのに・・・(汗)。
まあいいや、取り合えず俺はパンピ−(一般ピ−プルの略)だよ。
ただ・・・」
「ただ? 別にもう多少の事じゃ驚かないから言ってみなさいよ」
とそこで言い淀む景太郎。 なるに、この事を話していいのか迷っているのだ。
「・・・ただ、俺の育った環境がちょっと特殊でさ。
格闘技・・・いやちょっと違うな、暗殺術をやっていたんだ。
普段はさ、意識してなるべく力をセ−ブしているんだけど・・・。
無意識下の時は、ベランダの時みたいに条件反射が起きるんだよね」
平然と怖い事を言い放つ景太郎に、ちょっと寒気を覚えるなる。
暗殺っていう事は詰まるところ・・・人知れず、確実に対象を仕留める事じゃないの。
そんな時代劇みたいな事が・・・。
「暗殺術ぅ? ・・・じゃあ何? アンタってホントは強いの?」
「・・・強いって言うより、相手の息を確実に止める事を目的にしているんだ。
昔でいう、忍者みたいなものじゃないかな?」
「・・・ひなたおばあちゃんから教えて貰ったの?」
「まあ、ね。 護身術程度にって言ってたけど、ハッキリいって強すぎるんだよ。
そうだね・・・俺が本気だせば、モトコちゃんなんて秒殺出来るよ」
「じゃあ、私の部屋に入ってたのは・・・?」
「実際、俺は成瀬川と一緒に部屋に入って来たんだよ。 気配を消す事なんて、俺にとっては造作も無い事さ」
・・・目の前にいる、ボケボケッとした頼り無い浪人生の
(一応今は東大生だけど)景太郎にモトコちゃんが秒殺されてしまうなんて・・・。
・・・不可能ね(キッパリ)。
「そんなにハッキリ言わなくたっていいじゃないか・・・(泣)」
「あ・・・(汗)」
どうやら、考えていた事が口に出ていたらしい。
どこぞのペンギンの着グルミ来ている某ハ−リ−少年じゃあるまいし・・・。
「・・・人間の皮を被った、化け物と殆ど変わらない人種と一緒にして欲しくないわね・・・」
ごもっともですね、失礼しました。
〔うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!〕
関係ない話だが、某少年はブリザ−トが吹き荒れる、北極の地で泣き叫んでいた。
「・・・ホントにアンタって強いの・・・?」
未だに信用出来ないのか、胡散臭そうな目で景太郎を見るなる。
それはそうだ、普段自分の鉄拳パンチで景太郎の事をブッ飛ばしているからだ。
いきなり自分は強いと言われては、信用できる筈がない。
「・・・ま、いきなり信用しろなんていうのもなんだし・・・。 これで信用してもらえるかな?」
と景太郎が苦笑いした瞬間、景太郎の姿がなるの目の前からフッ・・・と消える。
それこそ、瞬きをするヒマもなく。
「・・・えっ!? ど、何処にいったのよ景太郎!!」
「こっちだよ」
ヒョイ
「!?」
なるが景太郎の姿を探していると、逆さまになった景太郎が
いきなりなるの頭上から現れる。ちなみに、どうやって天井に張りついているか、
というとヤモリの様に吸盤で張りついている・・・というのは冗談で、
天井の橋板を足の指で挟んで逆さ立ちしている状態なのだ。
「どう成瀬川、驚いた?」
「うそ・・・」
逆さまになったまま、なるに笑顔を向ける景太郎を見て、ペタリと床に座り込むなる。
「・・・そ、それで私に何の様なのよッ!!」
「あ、それなんだけど・・・よっと」
スタッ
なるの精一杯の強がりに、華麗な着地を決めながら話し掛ける景太郎。
「今日の事を、みんなに内緒にしといて欲しいんだ。 ・・・特に、モトコちゃんにはね・・・」
「なるほど、確かにそうね・・・」
景太郎の苦笑混じりの説明に、合点がいったという顔で頷くなる。
素子にこの事がばれた場合、一番ショックを受けるのは彼女であろうからだ。
誰だって、自分より弱いヤツに秒殺出来るなんて言われたら傷つく。
特に、彼女が平素嫌っている(最近はそれ程でもないが)景太郎に言われれば・・・。
「・・・わかったわ、みんなには秘密にしといてあげる」
「ホント? ありがとう、成瀬川!」
やれやれ、という感じのなるに喜びを体全体で表す景太郎。
「ただし・・・(ニヤリ)」
「な、なんだよ?」
なるのニヤリ笑いに、嫌な予感がする景太郎。
もちろん、彼の嫌な予感は絶対といっていい程はずれない。
いわゆるこれはお約束というヤツである。
「私、前から欲しかった服があるんだけど・・・。 そういえば明日、日曜日だったわよねぇ・・・(ニヤリ)」
「うっ・・・。 ・・・あ、明日プレゼントさせて戴きます・・・(シクシク)」
明日からどうやって生活していこうと悩む景太郎に対し、
なるは前から欲しかった服が手に入るのでホクホク顔だった。
・・・でも、世間一般はその行為をでぇと(笑)というのではないだろうか・・・?
んで、時間はさっさと流れて次の日の朝(早っ!)。
「いってきま−すっ! お昼頃には帰ってくるからね−」
「・・・いってきます・・・(泣)」
元気良くひなた荘の玄関を出ていくのはなるで、その後ろをまるで幽霊の様に
ノロノロと歩いてついていくのが景太郎である。
「あの、キツネさん? センパイ達二人、何かあったんでしょうか?」
「さあな−? でも、け−たろにとってはよくないコトみたいやな」
しのぶの問いに、キツネが鋭く分析する。 実際、景太郎にとってはよくなかった。
今日、彼の所持金の殆どはなるの服代に消えてしまうのだし。 しばらく彼は金欠病で苦しむ事になるわけだ。
「何か面白いコトでも転がってへんかな−? ・・・仕方あらへん、酒でも飲むかいな」
「あ、私もお洗濯しなくちゃ・・・」
キツネとしのぶの二人は、なると景太郎の二人を見送ったあと、
それぞれ自分の事をするべく自室に帰っていった。
が・・・数時間後、彼女達にとって驚くべき事が起きるのだが、
この時は誰もそんな事を想像出来なかったのだ・・・・・・(遠い目)。
「ん−、このワンピ−ス春らしくていいわね−。
あ、でもこっちのセ−タ−も捨てがたいかも・・・」
「な、成瀬川・・・まだ買うつもりなの・・・(汗)?」
某有名デパ−ト日向支店内のブッティクに、景太郎となるの姿があった。
お目当ての物(服)を手に入れてホクホク顔のなるに対し・・・。
財布の中身が北風注意報な景太郎。 目茶苦茶不憫だ・・・。
「何言ってんのよ、モトコちゃんにばれるよりはマシでしょ?」
「それはそうだけど・・・」
自分の財布の中身がどんどん減っていく様を見るのは、誰だって悲しいモノだ。
景太郎の財布の中には、輸吉さんが一枚、漱石さんが三枚しかいなかった。
さ、寒い・・・寒すぎるぞ景太郎・・・(涙)。
「いいじゃない別に。 このスカ−トのデザインいいわね、この帽子もなかなか・・・」
「・・・・・・(泣)」
この瞬間、景太郎は北風注意報が北風警報になった事を悟った。
そして次々に服を選んでいくなるに対し、景太郎は
〔お金足りるかな・・・?(汗)〕と密かに心の中で心配していたのである。
・・・数分後、景太郎はキャッシャ−の前で白く燃え尽きたそうな。
めでたしめでたし・・・なのか?
「全然めでたくな−いっ!!」
「でも意外よね−、アンタが強かったなんて・・・」
「・・・それ、どういう意味なんだよ。
明日からどうやって暮らしていけばいいんだろう、俺・・・(泣)」
日向市にある公園の歩道を歩いている、景太郎となるの二人。
もちろん、景太郎の両腕にはこれでもかっ!っという程の紙袋が下がっていた。
しかも、そのどれもに有名ブランドのロゴが刻まれている。
「安心して、もうこれ以上買う物はないから」
「こんだけ買えば普通充分だろっ−、成瀬川−っ!!」
ニコリと景太郎に微笑んでみせるなるに、心の底から悲しみの声を上げる景太郎。
ちなみに、景太郎が今日使った金額は占めて7万円。 残り全財産・・・1500円である(滝汗)。
「ほ、ほらほら、缶コ−ヒ−でも奢ってあげるから(汗)。
元気だしなさいよ。 ここに座って待ってて、買ってくるから」
「元気なんて出るわけないだろ・・・。 ハァ・・・」
取り合えず、気を効かせてなるは景太郎に缶コ−ヒ−を奢ろうとするが、
今日景太郎が払った金額に比べれば微々たるものだ。
ベンチに座って黄昏ている景太郎を残し、なるは自販機に向かっていった。
「・・・今日は、ちょっと調子に乗りすぎちゃったかな。 アイツ、元々貧乏なワケだし・・・・・・。
後でお金、少し(少しだけなのか!?)返そうっと」
ガコンッ
缶コ−ヒ−(景太郎用)と缶紅茶(自分用)を買ったなるは、
いまだ黄昏ている景太郎の元へと戻ろうとした。
ドンッ
「きゃッ!?」
その時、何処からともなく如何にもガラの悪そうな連中になるにぶつかってきた。
もちろん、ワザとである。 大方、難癖付けて、カツアゲでもしようという魂胆なのだろう。
「あぁ!? てめえのせいで怪我しちまったじゃねえかよ、このアマッ!!」
・・・ああ、自分で書いておきながら、なんて独創性のない科白なんだ・・・。
第一、何でムサい男を書かなきゃいけないんだ? 情け無くなってくるよ・・・。
「・・・だったら書かなければいいじゃないの、Excaliber?」
いや、そうだけど・・・話が続かないモンで。
「なによっ、アンタ達がワザとぶつかって来たんじゃないのよ!
アンタこそクリ−ニング代払いなさいよ、コ−トが汚れちゃったじゃないの!!」
と険悪なム−ド漂う雰囲気に・・・。
「お−い、成瀬川。 遅かったから迎えに来たけど、何かあったの?」
・・・場違いな程明るい雰囲気で歩いてきたのは、
我等が主人公浦島景太郎その人である。
「お、このアマの彼氏はノホホンとしてるぜ!
てめえの彼女が俺達にぶつかって来たんだ、慰謝料よこせっ!!」
弱そうと判断したのか、景太郎には威圧的な態度で接するチンピラ共。
一瞬、(彼らの馬鹿さ加減に)呆気に取られた景太郎だが、肩を竦める。
「・・・わかったよ、いくら欲しいんだ?」
「・・・景太郎!!」
驚くなるに、〔大丈夫だよ、任せといて〕という様に笑い掛ける景太郎。
ヤケに自信たっぷりである。 何か、景太郎には秘策があるのだろうか?
「お、アンタ物分かりがいいじゃねえか」
「ありがとう、よくそう言われるよ。
大きいのが無いから細かくなるけど、それでもいい?」
「かまわねえよ、早くよこしな」
「よかった、それじゃ受け取ってくれ。 ・・・はい、500円」
チンピラに百円硬貨を五枚、人指し指と親指に挟んで見せる景太郎。
いったい何を考えているのだろうか、この男は・・・。
一瞬ポカンとした表情を見せたチンピラだが、
ついで顔が猿の様に真っ赤になった。 ハッキリ言って、見てて面白い。
心の狭いヤツラだなぁ・・・と景太郎は思っていたりする。
「ふざけんのもいい加減にしろよ、てめえ・・・。 自分の立場が分かっているのか?」
「そんな事はないよ、俺は本気だって」
と景太郎は楽しげに言うと、指先にちょっとだけ力を込める。
その瞬間、クニャっと男達の目の前で呆気なく、くの字に曲がる百円玉硬貨×5。
「・・・ちょっとだけ、曲がってるけどね。 俺の気持ち、受け取ってくれ」
改めて、彼らに曲がった百円玉を見せる景太郎。 その顔は、不敵に笑っている。
彼らには、その笑顔が何か途轍も無く恐ろしい物に見えていたらしい。
「・・・・・・!!!」
それを見た瞬間、彼らは声にならない悲鳴を上げながら何処かへと去っていった。
所詮、こういう輩はこの程度のモノなのである。
「・・・うそ・・・」
景太郎の後ろで、さっきの光景を信じられないのか、なるが茫然と立っていた。
それはそうだ、いきなり百円玉を曲げてみせれば誰だって驚く。
しかも、それがあの景太郎だったら尚更である。
「それってどういう意味なんだよ、Excaliber・・・?」
いや、別に何でもない。 とにかく、景太郎の御陰でなるの安全は守られたワケだ。
「そろそろ帰ろうか、成瀬川。 さっき見た事も、内緒にしておいてくれるとありがたいんだけど・・・」
「・・・え、ええ・・・わかったわ・・・。 ・・・私の、命の恩人なんだしね」
済まなそうに頭をポリポリと書いている景太郎を見て、
悪戯っぽく笑ってみせるなる。 おっ、何かいい雰囲気じゃない?
「な、なんだよ、成瀬川? その恩人っていうのは?」
「な、何でもないわよっ! ほらっ、早く帰るわよっ!!」
困惑している景太郎の手を引き、なるは足早にひなた荘へと向かって帰路に就いたのだった。
う−ん、何か書いてて楽しいぞ・・・(笑)。
景太郎達が帰路に就いた頃、ひなた荘でも事件が起きようとしていた。
「ふうっ・・・。 ここが・・・〔ひなた荘〕か・・・。 なんか懐かしいな・・・」
ザッ・・・
ブルルッ・・・という大きな震えと共に、大きな一歩を踏み出す青年。
これから、ここで過ごすんだ・・・という期待と不安が入り交じった変な気分で
ひなた荘を見上げていた。
〔あれ・・・?〕
ベランダで洗濯物を干していたしのぶは、ひなた荘を見上げている不審人物(?)に気がついた。
〔あれは・・・浦島センパイ・・・? でも・・・なるセンパイと一緒に出ていったハズじゃ・・・?〕
「むっ? あれは・・・浦島・・・? なる先輩を一人放っておいて帰ってくるとは・・・」
「ええ・・・。 でも、あの人何か違うと思いませんか? 何かこう・・・上手く説明出来ないんですけど・・・」
しのぶの近くで素振りをしていた素子は、頬を伝う汗をタオルで拭いながら下を覗き込んでいた。
「おや? アレはけ−たろやないか? なるのヤツはどうしたんやろ?」
キツネもつい先程まで酒を飲んでいたのだが、二人の様子がおかしいため、覗きにきたのだ。
「・・・女性を一人で帰らせたなんて、男の風上にも置けぬ奴だな、浦島・・・。
この私が直々に成敗してくれる・・・この〔妖刀ひな〕でな・・・。
クックックックックック・・・・・・(ニヤリ)」
「「・・・・・・(汗)」」
完璧に座った目で景太郎もどき(仮)を見ている素子。
と思った瞬間、素子は景太郎の下に向かうために、猛スピ−ドで階段を下りていった。
「キツネさん・・・センパイ大丈夫でしょうか・・・(汗)」
「と、取り合えず行くしかないやろ、これは・・・。
こりゃ・・・血の雨・・・いや、肉片の雨が降るで・・・(大汗)」
こうしちゃおれん、と急いで素子の後を追うしのぶとキツネの二人。
だが、キツネは〔それはそれで楽しめるかもな−〕と考えていたりもする・・・。
・・・キツネさんって、将来大物になれるよ、絶対。