< 時の流れに >

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・俺がこの世界で気が付いてから、既に一年。

 俺の努力は無駄では無かった。

 そう言える確証が今、目の前にある。

 

「・・・それにしても、手加減無しだねテンカワのお兄〜さん。」

 

 おっと、怪しい言動は今は命取りだな。

 流石に今の味方に、後ろから撃たれるのは御免だ。

 

 ・・・例え、それが過去において捨て去った、あの思い出の部隊だとしても、な。

 

 

 ゴォォォォォォォォォ!!

 

 

 俺の乗るダイマジンの横を、全長18m程の戦闘機が、信じられない速度で通過する。

 

 悔しい事に俺の事は完全に無視。

 まあ、あの世界の機体と同じ能力を持つのなら・・・

 このダイマジンの武器では、傷一つ付けられないだろう。

 

 追い付けない、破壊出来ない事を理解しながらも。

 俺はダイマジンを操り、その機体の後を追う。

 

「それでも・・・黙って行かす訳にはいかないんだよ!!」

 

 

 ドォォォォォォォォ!!

 

 

 ダイマジンの胸にあるグラビティ・ブラストを、連続で発射する。

 しかし、例の機体は背後からの俺の攻撃を、軽く避けてみせる。

 

 ・・・当たった所で、全然堪えないくせに。

 

 少しは遊びで当たってみろ、ってんだ。

 可愛げの無い奴だぜ、相変わらずよ。

 

 

 そして、俺のサポートも空しく・・・

 

 

 ドゴォォォォォォォォォ!!

 

 

 無限砲の掘削シャフトは破壊された。

 あの機体・・・ブラックサレナの、グラビティ・キャノンの一撃によって。

 

「さて、ここからが・・・俺の出番だ、ってか?」

 

 艦隊の前で停止した、俺のダイマジンの前に。

 上空からブースター部分を切り離した、ブラックサレナの本体が軽やかに降り立つ。

 

 ジャリッ

 

 ・・・その姿、正に戦神。

 俺はブラックサレナから感じるプレッシャーに、身体の震えを押え切れなかった。

 

 暫しの対峙・・・

 ブラックサレナの背後には、こちらに近づいてくるナデシコの姿も見える。

 残り時間は少ないな。

 

「怖いね〜、身動きも出来ないぜ。

 ・・・だが、俺の疑惑を晴らす為だ!!

 思いっきりいかせて貰う!!」

 

 

 ギョワァァァァァァァ!!

 

 

 当たるとも思わないが、牽制を兼ねてパンチを繰り出す!!

 そして、その攻撃に対するテンカワの反撃は!!

 

 

       ザン!!

               

                           ズバシュ!!  

 

               ドン!!

 

 

 パンチを繰り出した右腕を、肘の部分から切り飛ばされ。

 そのまま、横を駆け抜け様に、ダイマジンの右足を切り裂かれ。

 俺の背後に出た瞬間、飛び上がりながら左腕を付け根から切り取る。

 

 一秒にも満たぬ間に、俺の操るダイマジンは・・・木偶と化した。

 俺が自分の状況を理解したのは、月面に叩きつけられた衝撃を受けてからだった。

 

 

 ズドォォォォォォ・・・・

 

 

「くっ!! 嫌になるね、この実力差!!」

 

 しかし、俺の悪夢はまだ終わらなかった。

 いや、始まったばかりだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 私達が戦場に辿り付いた時には、もう戦闘は終わっていた。

 だが・・・

 

 

 ドシュ!!

 

 

 一瞬、アキトが何をしているのか、私には理解出来なかった。

 無造作に突き出した、DFSの真紅の刃・・・

 それは、敵の大型兵器の頭部を貫いていた。

 

 その事を認識した瞬間、私は大声でアキトに話しかけた!!

 

 

「アキト!! もうその人は戦う事は出来ないよ!!」

 

 

 私の通信は・・・通じているはずだった。

 

 

 ザシュ!!

 

 

 二度目の攻撃は・・・大型兵器の左足を切り飛ばした。

 

 その光景を見て、凍りつく私とブリッジの皆。

 

 

「アキトォ!!」

 

 

 私の二度目の叫びに、アキトは返事を返してくれた。

 

 

 ピッ!!

 

 

 通信ウィンドウがブリッジに開き。

 私の知らない表情で・・・アキトは語った。

 

「ユリカ・・・少し前に、俺はお前に聞いたな。

 地球と木連、お前ならこの戦争をどうする、と。

 俺の故郷、火星のコロニーを壊滅させ。

 俺の人生と、幾多の人々の人生を狂わせた元凶・・・

 そいつらに対する、俺の答えはこうだ。

 木連の人間、全てを消す!!」

 

 

 その言葉に込められた憎悪に・・・私達ナデシコクルーの動きは止まった。

 

 

 

 

 

 今・・・この瞬間、俺は過去の俺を開放しよう。

 あの煮えたぎる憎悪を、その身に宿していた時の。

 さあ、俺の心の叫びを聞け。

 血の涙を流した、この身体の嘆きを感じろ。

 そして、真の闇の衝撃を受けろ。

 

 ・・・俺の血で染まる視界には、泣き叫ぶアイツ等の姿が映っていた。

 

 その瞬間、確かに俺は笑った。

 あの復讐心を満たされた時に放つ、禍々しい笑みで。

 

 

 

 

 

「そんな・・・そんな事は、いくらアキトでも無理だよ!!」

 

 私は震える身体を抱き締め・・・

 アキトの映る通信ウィンドウから、目を背けそう言い放つ。

 

「無理・・・だと?

 クククククク、笑わしてくれる。

 俺が今まで本当に、全力で戦っていたと思うのか?」

 

 衝撃の告白だった。

 アキトは・・・まだ、実力を隠していたの?

 

 こうして、顔を見ずに話しているだけでも、私の心は挫けそうになる。

 アキトからの見えないプレッシャーは、心だけでなく。

 物理的に、私の身体を蝕んでいた・・・

 

「考えて見ろ?

 俺が木連の軍隊を全て片付ければ、もう後腐れは無い。

 ・・・地球の平和は、それで守れるんだ。」

 

 

 ザン!!

 

 

 そう言いながら、最早動けない大型兵器の胸の部分を切り裂く!!

 

「でも!! でも、そんなのアキトらしくないよ!!」

 

「・・・お前は、俺の何を知っているんだユリカ?

 俺の表面だけを見て、それで理解したと思ってるだろう。

 これもまた・・・俺の一面だ。」

 

 

 ドォォォォォンンンン!!

 

 

 大型兵器の胸の部分を、アキトが貫こうとした時。

 もう一台の敵の大型兵器が現れ、アキトに攻撃を加えた!!

 

 しかし、背後からのその攻撃を余裕でアキトは避ける。

 

「そこまでだテンカワ アキト!!」

 

「ふっ、次の獲物は貴様か白鳥 九十九。」

 

 不敵な笑みを浮かべ、新しい敵を睨むアキト。

 

「な、何故俺の名前を・・・!!」

 

 

 ザシュゥゥ!!

 

 

 一瞬にして間合いを詰め。

 真紅の刃が円を描き・・・

 私達がその真紅の残光に魅入ってる間に、全ては終わっていた。

 

 

 ドゴォォォォォォォ・・・ 

 

 

 その四肢を一瞬にして切り裂かれ。

 地面に伏す、大型兵器・・・

 

「・・・これで、二体。

 さて、どちらから消してやろうか?」

 

 その氷の声に、私の中で何かが変わった!!

 アキトが止まれないなら・・・私が止めるまで!!

 

 

「アキト!!」

 

 

「いい加減・・・煩いぞユリカ。

 黙って俺の仕事を見ていろ。

 ・・・何時もの様にな。」

 

 私の声に、煩わしそうに返事をするアキト・・・

 

 何時もの様に?

 そう、何時もはアキトの戦闘に私は口を挟んだ事は無い。

 だけど、ここで黙ってアキトが人を殺すのを、見ている気はない!!

 もう・・・私は退かない!!

 

「いいえ黙りません!! 私は・・・私は木連との和平を実現させます!!

 そしてアキト!! 貴方を止めてみせる!!」

 

「・・・俺抜きのナデシコで、か?」

 

 そんな事が出来るのか?

 俺に頼る事しか出来なかったお前に?

 アキトの目は私にそう語っていた。

 

 口では何とでもいえるぞ?

 行動で示してみろ?

 アキトの口は、あざ笑うような笑みを浮かべていた。

 

「私は、私らしく、私の考えた道を行きます!!

 ・・・たとえその道をアキトが邪魔をしても、私はアキトを越えて行く!!」

 

 今までの悩みが解った。

 私はアキトの行動がなければ、何も出来なくなっていた。

 このナデシコの艦長として、就任をしたのは何故?

 それは私が自分一人の力で、何処までやれるかを確かめる為。

 なのに、私はアキトの後ばかりを付いて行き。

 困難な事が起こる度に、アキトの指示を仰いだ。

 

 先程のアキトの台詞・・・「何時もの様にな」

 そう、私は自分の考えを持っていなかった。

 アキトの判断のみを信じていた。

 

 考えてみれば、何時もアキトは私に注意をしていた。

 

 自分で考えろ

 

 自分を信じろ

 

 自分の道を行け

 

 俺は俺、お前はお前だ。

 

 深く考えなかった・・・その罰は大きい。

 今、私は・・・ナデシコは、大切な人と別れ様としている。

 

 でも、もう甘える事は許されない。

 これ以上は・・・自分が逆に許せない。

 アキトをこんな状態になる前に、私がしっかりしていれば止める事も出来たのだから。

 

 ルリちゃんの言葉の意味。

 今、やっと解ったよ・・・遅すぎたけどね。

 

「・・・その言葉に、嘘はないんだな?

 俺の存在が不要だという事に?」

 

 一瞬、躊躇い・・・私はアキトの言葉に頷く。

 これは決別の意思表示。

 

 ・・・これでアキトが、ナデシコから去って行く理由は出来た。 

 

 この時、私は泣いていた。

 はっきりと、頬を流れる涙を感じた。

 

「俺は艦長の意見に賛成だぜ、テンカワ。

 結局、お前のやってる事は、100年前の繰り返しじゃね〜か!!」

 

 そして、リョーコちゃんがそう発言し・・・

 

「アキトさん・・・私も、そのアキトさんの意見には賛成できません。

 それって、結局木星の人達の事を、完全に無かった事にするって事でしょう?

 そんな事に賛成は・・・出来ません。」

 

 悲しそうにメグちゃんが呟き・・・

 

「アキト君、貴方の実力なら他の手段も選べるでしょう?

 火星の事を忘れろとは言わないわ。

 でも憎しみは憎しみを生むだけ、貴方はそれを知ってるのでしょう?」

 

 イネスさんが真剣な表情で、アキトを説得する。

 

「テンカワ!!」

 

「アキト!!」

 

「テンカワ君!!」

 

「アキト君!!」

 

 ナデシコのクルー全員がアキトに呼びかけていた。

 誰もが、このアキトの姿を知りながら、アキトの事を信じていた。

 だから、私はこれだけは絶対に伝えたい・・・

 

 

「アキト!!

 私は・・・私達は!!

 ナデシコは貴方にも負けない!!」

 

 

 胸を張って、この宣言をアキトに・・・

 

 

 

 

 

 痛いほどの沈黙が訪れる・・・

 アキトからの返事は未だ、無い。

 通信ウィンドウのアキトは、相変わらず感情の伺えない瞳で私を見ていた。

 

 もし、ここでアキトがナデシコを去れば・・・

 

 悲しい

 

 正直にそう思える。

 だけど、アキトの主張を認める事は出来ない。

 ましてや、その手伝いをする事など・・・

 

 私は・・・ブリッジを見回す。

 

 メグちゃんは下を向いて、静かに泣いている。

 自分からアキトを拒絶した事が悲しいのだろう。

 だけど、メグちゃんにもアキトの主張は受け入れる事は、出来なかった。

 

 サラちゃんも、ルリちゃんも、ラピスちゃんも、エリナさんも・・・

 全員、私とは違う方向を向いているから、その表情は見えないけど。

 少なくとも、アキトを弁護しようとする気配は無かった。

 

 私の後ろにいるカズシ副提督や、プロスさんも何を言ってこない。

 ムネタケ提督は・・・木星蜥蜴の正体を聞いてから、自室に閉じこもったままだ。

 

 実際に経過した時間は、実は少しだったかもしれない。

 

 この状態を打ち破ったのは、新しい大型兵器の登場だった!!

 

 

 ブゥゥゥゥゥゥゥンンン!!!

 

 

「テンカワ アキト!!

 俺ではお前に勝てないかもしれん!!

 だが、貴様の考えが我等木連の殲滅にあるならば!!

 俺は刺し違えてでも、お前を倒す!!」

 

 突然、アキトの前方に現れた大型兵器!!

 駄目!! 今のアキトは容赦をしない!!

 

 敵の大型兵器の無謀な行動に、私の心臓は跳ねた。

 

 そして、アキトの取った行動は・・・!! 

 

 

 クルッ・・・

 

 

 敵から背を向け、ナデシコの方に歩き出す。

 何故? 何がしたいのアキト?

 

「・・・月臣、ナデシコの総意確かに聞いたな?」

 

「あ、ああ、和平の意思は聞いた。」

 

 戸惑いながらアキトの質問に応える、月臣と呼ばれた敵パイロット。

 

「それが俺の・・・俺達の総意だ。」

 

 

「!!」

 

 

 そのアキトの発言に・・・その場の全員が息を飲む。

 

「元一郎君、役者が違うわ。

 九十九君と三郎太君を回収して、早く帰ってきなさい。」

 

「し、しかし、舞歌殿。

 これは一体?」

 

「つまりね・・・その戦艦のクルー達の、意識改革をしたかったのよ、彼は。

 自分が嫌われ役になってね。

 そうでしょ、テンカワ アキト君?」

 

 敵との通信から、意外な事実が指摘される。

 声だけしか聞こえないけど・・・女性よね?

 

 そして、その女性の言葉に、思わず耳を傾ける私達。

 

 女性の質問に、沈黙をしていたアキトの答えは・・・

 

「・・・その通りだ。

 このナデシコは俺の介入により、今まで肝心な所での決断を迫られなかった。

 無人兵器が相手の時は、それでも良い。

 しかし、これからは木連・・・お前達、生身の人間が相手だ。

 その事実を知った今、ナデシコのクルーは自分達の立場を自覚する必要がある。」

 

 アキトは・・・普段の落ち着いた表情でそう語る。

 そうか、また私達はアキトに助けられたんだね。

 

「なるほどね・・・徹底抗戦にしろ、和平にしろ、目的意識無くして集団はまとまらない。

 結構策士ね、テンカワ アキト君。」

 

「馬鹿げた理由の、愚かなだけの戦争だ。

 その被害者に立つ者は今も泣かされ、指揮をする者がそれを知らない。

 ・・・これは問題だ、しかし俺の存在がそんな環境をナデシコに作ってしまった。

 ならば・・・後始末は自分でするべきだろう?」

 

 その為に・・・私達にアキトはアノ姿を見せた。

 本当なら、私達には隠しておきたかったんだと思う。

 だって・・・今は悲しい瞳をしてるもん、アキト。

 

「怖い人ね・・・そして恐ろしく、強い。

 あの時の君は、間違い無く血に狂う鬼だった。

 しかし、それ程のモノを内包しながら、大切な人達の為に正気に還る、か。

 ・・・確かに、貴方達の意思は受け取ったわ。

 私の名前は東 舞歌、優人部隊の総指揮官よ。」

 

 敵の女性が自分の素性を明らかにする。

 

「私はナデシコの艦長ミスマル ユリカです。」

 

「そう、貴方とは一度ゆっくりと話をしたいものね。

 ・・・あのレイナって女の子は、ちょっと元気過ぎたけど。」

 

 苦笑をしながら、そんな返事を返す舞歌さん。

 ちょっと待ってよ、レイナちゃんの事を知ってるの!!

 

「ちょっと待って下さい!!

 レイナちゃんの事を知ってるんですか?

 じゃあ、ミナトさんも!!」

 

「ええ、今はもう解放したからそっちに送ったわよ?

 多分、九十九君がその辺りの安全な岩場に、二人を降ろしてると思うわ。」

 

 私はナデシコの周囲を警備していた、アカツキさんとアリサちゃんに捜索を頼む。

 

「アカツキさん!! アリサちゃん!! お願い!!」

 

『了〜解。』

 

『解りました。』

 

 二人の返事を聞き、予想ポイントを指示した後。

 ふと、モニターを見ると、月臣さんが破壊された大型兵器からパイロットを救出している所だった。

 

 その救出されているパイロットは・・・九十九さんだった。

 

 生きてる・・・よね?

 良かった、私達の決断は間に合ったんだ。

 ギリギリだったけど・・・

 

 そこで私はふと疑問に思った。

 

「ルリちゃん・・・それにラピスちゃんに、エリナさんやサラちゃんも、随分静かだね?」

 

 アキトがあんな姿を見せたのに?

 

「私は予想をしてましたから・・・ちょっと、ショックではありましたが。」

 

「アキトの考えている事は、私には全部解るもん。」

 

 と、ルリちゃんとラピスちゃんが余裕の表情で答え。

 

「ま、テンカワ君の今回の行動を、ネルガル関係の人達は事前に聞かされていたから。」

 

 エリナさんがちょっと気まずそうに、私に告白し・・・

 

「実はね・・・西欧方面軍から来た人達は、全員アキトの考えを以前に聞かされていたのよ。」

 

 サラちゃんも困った顔で、私にそう話す。 

 

 ・・・ほ〜〜〜〜〜

 確かに、エリナさん、プロスさんは動揺をしてなかった。

 サラちゃんに、シュン副提督もアキトの宣言に、驚いていなかった。

 

「・・・もしかして、私と艦長だけですか?

 ブリッジで、この事を知らなかったのは?」

 

 

 コクコク

 

 

 一斉に頷く皆さん。

 メグちゃんの表情に怒りが浮かぶ。

 私の顔も赤くなっていると思う。

 

「ちょ、ちょっと待て艦長、メグミちゃん!!

 その気持ちは解る!! よ〜く、解る!!

 だが、怒りを向けるのは俺じゃ無いだろう?」

 

 シュン副提督が、私とメグミちゃんを必死に宥める。

 ふっふっふっ・・・ア〜キ〜ト〜、幾ら私達が馬鹿だったからとは言え。

 ここまでの決断を迫ったんだから。

 覚悟は良いわよね?

 

 私はメグちゃんと、アイコンタクトでお互いの意思を確認する。

 さて・・・格納庫にでも行こうかな。

 多分、他にも沢山の人達が来てると思うけどね。

 

 

 

 

 ピィー!! ピィー!! ピィー!!

 

 

「艦長!! 緊急通信です!!」

 

「何事なのサラちゃん!!」

 

 緊急通信? 何が起こったの?

 

「・・・これは!!

 月の衛星軌道上を航行中の地球連合艦隊から、救難信号です!!

 

 サラちゃんの報告に驚く私!!

 

「そんな、敵の規模は!!」

 

 地球連合の艦隊を襲う敵。

 一体どれほどの戦力なのだろう?

 

「機動兵器が・・・一機のみだそうです!!」

 

「!!」

 

 それでは・・・まるで!!

 

「ユリカ!! 俺が出る!!」

 

 その台詞と共に・・・

 上空で待機させていた、ブースターオプションとドッキングして。

 アキトの操るブラックサレナは、盛大な炎を噴射させながら戦場に飛び立った。

 

「ルリちゃん、私達も後を追うよ!!」

 

「はい!!」

 

 そして、ナデシコもまたアキトを追って、新しい戦場に向かうのだった。

 

 私の心には、嫌な予感が渦巻いていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十六話 その9へ続く

 

 

 

 

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