< 時の流れに >

 

 

 

 

 

第十八話.水の音は「私」の音

 

四日日、嵐の後・・・

 

 

 

 

 

 

 四日目、午前0時10分

 

 

 今、私の目の前で二人の人物が対峙しています。

 一人は木連軍内で、『真紅の羅刹』と呼ばれる北斗殿。

 そして、もう一人は・・・地球連合軍で『漆黒の戦神』と呼ばれるテンカワ アキト。

 共に、自軍で最強の名を冠する二人。

 

 その二人が今・・・

 

 

 

「・・・零夜、何か斬る物は無いか?」

 

「え!! ・・・一応ナイフならあるけど。」

 

「じゃあ、それを貸せ。」

 

「う、うん。」

 

 視線はテンカワ アキトに向けたまま、零夜からナイフを受け取る北斗殿。

 

「おい、テンカワ!!

 お前も何か武器を持たなくていいのか?」

 

「ゴートさん、あの二人はそんな無粋な道具は使わないさ。

 まあ、俺には北斗の行動に予想がつくけどね。」

 

「何?」

 

 長身でサングラスをした男が、大柄な男にそう言っています。

 そして、肝心のテンカワ アキトは身動きもせずに、北斗殿の動きを見詰めていました。

 その構えには隙が無い。

 私達が・・・優華部隊が一丸になって襲い掛かっても、この男は容易く勝利を収めるでしょう。

 

 ・・・そう、北斗殿と同じ実力を持つ者ですから。

 

    ビリビリビリ・・・!!

 

 突然響いたその音に、私は北斗殿に視線を戻します。

 そこには、真紅のドレスを膝下の長さで切り裂いた北斗殿がいました。

 そして、高く結ってあった髪を解き。

 切り裂いたドレスの切れ端を使い、腰下まである赤毛を無造作に後ろで縛る。

 しかし、服装が変わり髪型が変わろうとも・・・その凛とした立ち姿は美しかった。

 何よりも、その身体の内から溢れ出る澄んだ闘気。

 今までの濁った狂気ではなく、あくまで純粋な闘気に私は驚きました。

 その鳶色の瞳は真っ直ぐにテンカワ アキトを捉えていました。

 

 そして、そこまで北斗殿の狂気を昇華した人物は・・・

 

     カラン、カラン!!

 

                  ・・・ザシュ!!

 

 履いていたハイヒールを脱ぎ捨て、テンカワ アキトに話し掛ける北斗殿。

 そのついでに、手に持っていたナイフを遠方の街路樹に放ち、突き刺します。

 

「さて、待たせたな。」

 

 その場で軽く二、三回跳び、足首の関節を解す北斗殿。

 

「もういいのか?

 柔軟運動は大切だぞ、俺は十分に身体は温まっているからな。」

 

「御好意、感謝する。

 だが、これ以上のおあずけは・・・お互い身体に毒だろう?」

 

 腰を落とし、静かに構えを取りながら北斗殿が微笑みます。

 

「ふっ、違いない・・・」

 

         キン・・・

 

 そして、二人を中心に空間が軋んだ・・・

 武術を収めた者、修羅場を潜り抜けた者だけが感じる何かが。

 二人の対峙する空間に満ちていきます。

 

「結局・・・こうなる運命だったのか。」

 

「高杉さん、私は運命なんて言葉は嫌いです。」

 

 何事も運命の一言で終っては・・・生きている意味など有りません。

 

「そうか、それは悪かったな各務君。

 だが、俺はこの二人の対決を見たかったのかもしれない。

 ・・・一人の武人として。」

 

 二人の闘気に気圧されながらも。

 この戦いを最後まで見届けるべく、高杉さんは目を凝らします。

 確かに、両軍で最強と呼ばれる二人の対決・・・

 本当ならば、ここにいる私達だけでは勿体無いカードでしょう。

 

 ですが、当事者達には関係の無い事で・・・

 

「はっ!!」

 

    タンッ!!

 

「ふっ!!」

 

         ダン!!

 

 お互いが掛け声と共に、前方に向かって飛び出しました!!

 

 

 

 

 

 

 四日目、午前0時40分

 

 

                                  ガシッ!!

 

          ドガッ!!

 

                ズン!!

 

 

 俺には辛うじて見えているが・・・

 多分、他の人間には影しか認識出来ないんだろうな。

 

 アキトと北斗の戦いは、俺とは完全にレベルが違った。

 その事は頭で理解はしていたが・・・

 

 これほどとは、な。

 

 俺もアキトに修練を頼んでる都合上。

 何度もアキトと手合わせをしている。

 しかし、俺が必死に戦っていたとしても・・・アキトにとっては、遊びか準備運動だったらしい。

 現に、今のアキトの動きを俺は目で追うのがやっとだった。

 

     ガシィィィィィ!!

 

 一際大きな音をたて・・・二人が中央で、肘と肘をぶつけた状態で止まる。

 アキトの右頬はザックリと切れ、血が流れている。

 そして北斗も、右腕に傷を負っていた。

 

                 ポタッ、ポタッ・・・

 

 ぶつかり合った肘から血が流れ、石畳を紅に染める。

 

「・・・一つ、聞いて良いか?」

 

「何だ?」

 

「何故・・・お前は木連式柔を使える? 

 かなりアレンジされているが、その根底にあるモノは隠せん。」

 

 北斗の発言に、俺達の間に緊張が走る!!

 

 その言葉が意味する事は・・・つまり、アキトが木連と昔から関係を持っていたと言う事だ。

 そう言えば、俺はアキトの流派を知らなかったな。

 

「俺の師匠は・・・元は木連の優人部隊だった男だ。」

 

 アキトが不敵に笑いながら、北斗にそう言い放った。

 

「ちっ、下手な嘘を!!」

 

    ギュン!!

 

 肘を引きつつ、その場にしゃがみ込みながら北斗がアキトの足を刈る!!

 それを跳んで避けながら、アキトが上空から蹴りを放つ!!

 

「はっ!!」

 

 北斗は軸足で地面を蹴り、しゃがんだ状態から回転しながら上空に向けて蹴りを繰り出す!!

 

    パッアアアアアアンンン・・・

 

 お互いの足がぶつかり合い、アキトは更に上空に・・・

 北斗はバク転をし、後ろに着地をしてその場で構えを取る。

 

 そして、アキトが長い滞空時間を使って地面に着地した。

 

「・・・まあ、嘘は言わない男だろうな、お前は。

 確かに師匠が優人部隊の男なら、木連の内情に詳しい事は理解出来る。

 だが!! 優人部隊は結成されてまだ10年未満!!

 極限られた人間しか、優人部隊には選ばれない!!

 お前の師匠とは何者だ!!」

 

「俺達の戦いに、そんな事実が必要なのか?」

 

 北斗の問に、アキトが苦笑をしながら尋ねる。

 

「いや、無い。」

 

「おいおい、即答かよ。」

 

 さすがにその返事に、アキトが肩を竦める。

 まあ、それでも隙を見せないのは見事だな・・・

 

 そんなアキトを見て、北斗が綺麗な笑顔を見せる。

 ・・・見た目は、掛け値無しの美少女なんだけどな。

 

「舞歌が、お前の正体を知りたがっていたのでな。

 死んでしまっては、聞く事も出来まい?」

 

「確かに・・・そうだな!!」

 

                 ダダッ!!

 

 お互いが同時に動く!!

 そして赤い髪が上空に舞い、上方から竜巻の様な回し蹴りを放つ!!

 

「ちっ!!」

 

 出鼻を挫かれたアキトは、その場で転ぶように身体を投げ出しその一撃を避ける。

 そして、地面に片手を付きながら、右足の突き蹴りで空中の北斗を狙う!!

 しかし、北斗の蹴りも単発では終らなかった!!

 

     キュン!!

 

 更に回転を増した北斗の第二の蹴りが、アキトの右足を弾く!!

 そして、そのまま地面のアキトに向けて、膝を繰り出しつつ上空から襲い掛かる!!

 

「がぁぁぁ!!」

 

 アキトは驚異的な背筋を使い、地面から飛び上がりつつ右拳を北斗の膝に叩き込んだ!!

 

   ガシィィィィィィィ!!

 

「くぁ!!」

 

「ぐっ!!」

 

      ザザザッ・・・

 

 お互いに一旦距離をおき、先ほどの負傷個所を確認する。

 アキトは右拳から血を流し、北斗は左膝から出血をしていた。

 どれだけのダメージを負ったのかは解らないが、軽傷では無いだろう。

 

「キツイ・・・なあ、やっぱり。」

 

 台詞は泣き言でも、アキトの奴は笑っていた。

 

「本当にな、俺をここまで梃子摺らせてくれるとは、さすがに思わなかったぜ。」

 

 北斗もアキトの呟きに、笑いながら応える。

 この二人には・・・純粋に戦う事を楽しんでいた。

 信じられない事だが、そこには憎しみも恨みも無く・・・ただ、澄んだ空間が支配をしていた。

 あの初めての機動戦で見せた、北斗の狂気は微塵も感じられない。

 

 これが・・・昇華と言う現象なのか?

 

 お互いに、ただ純粋に相手を求め、自分の全てをぶつけている。

 

「ぬかせ、笑いながら言う事か。」

 

「それはお互い様だろうが。」

 

「「・・・なら、そろそろ本気でいくか?」」

 

    バッ!!

 

 そして、二人はお互いにその場から消える!!

 いや、更にスピードを上げたのか!!

 

 ・・・この二人は、この期に及んでまだ実力を隠していたのか!!

 俺にはもう、二人の姿を捉える事は出来なかった。

 

 そう、この二人が納得しない限りこの戦いは終らないだろう・・・

 

 

 

 

 

 

 四日目、午前1時16分

 

 

 心臓が激しく脈打つ・・・

 拳が、足が、打撲と切り傷で赤く染まる。

 肺は、空気を求めて狂った様に活動をしている。

 そして、頭はアイツの事で一杯だ。

 

 満たされていくのが実感出来る・・・だから、止まる事は出来ない。

 繰り出す技に、己が更なる高みに昇る事が感じられる・・・だから、手足の動きは加速する。

 そして目の前の相手が微笑む・・・だから、俺も微笑み返す。

 

 お互いに、相手を好敵手と認めているから。

 

   ガシ!!

                    ガッ!!

                 ドゴッ!!

                                        バシュッ!!

 

 繰り出す技は、全て一撃必倒の威力を持つ。

 時には乱打を、時には関節技を、お互いの隙を狙って仕掛ける。

 一瞬の迷いで命が絶たれる。

 半瞬の油断で全てが終る。

 その緊張感が・・・心地良い。

 

 アイツの放った右フックを、左手で包み込むように捉え。

 右膝を鳩尾に叩き込む。

 その俺の右膝を逆に一歩踏み込む事ににより、鳩尾から遠ざけダメージを減らしつつ。

 密着した状態から、アイツの左手がそっと俺の右肩に触れる。

 アイツの意図を見抜いた俺は、半身になって・・・

 

   ドウッ!!

 

「がっ!!」

 

 アイツの放った、発勁の気の流れに沿って衝撃を逃がしつつ。

 こちらも左肩を相手の胸元に当て・・・

 

          ドガッ!! 

 

 半歩の踏み込みと、全身の体重を一点に集め相手を吹き飛ばす!!

 しかし、手応えは・・・異様に軽い。

 アイツも、先ほどの俺と同様に後ろに自分から飛ぶ事で、ダメージを最小限に抑えていたのだ。

 

 そして、幾度目かの対峙・・・

 

   ジャリ・・・

 

 俺達の技の威力を物語るように、足元の石畳は所々で砕けている。

 だが自分でも、驚くほどに身体が軽い。

 限界はとっくに超えている。

 ダメージも、無視できない程受けているはずだが・・・

 

 何故だ・・・身体の奥底から、ふつふつと異様な力が沸いてくる。

 そうだ、まだ行ける。

 もう直ぐ、何かが掴めそうだ。

 

 既にお互いに無駄な会話は無かった。

 ただ、視界に映るのはアイツだけ。

 今までの、ただ殺されるだけの無力なターゲットではない。 

 俺の全身全霊の攻撃を受け止め、応えを返してくれる最高の存在だ。

 

 何て、晴れやかな気分だ・・・

 

     ダダダダッ!!

 

 先に動いたのは俺だった。

 待ち構えているアイツに向かい、一瞬で距離を詰め右のローを放つ。

 アイツは俺の攻撃を片足を上げて避け、その足を降ろさずハイキック。

 ハイキックを右手で・・・ガードをする前に、蹴り足は地面に降りた。

 フェイントに引っ掛かった事を理解する前に、俺の身体は右に向けて跳んでいた。

 俺の身体の脇を、左ストレートが飛び。

 伸びきった、その左腕を捉え様とすると、アイツは逆にその左手でドレスの上から俺の肩を掴み・・・

 

   バン!!

 

「あぅ!!」

 

 身体が跳ねた・・・

 衝撃を逃がす暇は無く。

 綺麗に俺の腹部に右の掌打が入る。

 

 もっとも・・・

 

「ぐぁ・・・」

 

 左手で動きを抑えられ、避けられないと悟った瞬間。

 俺も左肘をアイツの胸元に撃ち込み、痛烈な一撃を叩き込んでいたのだ。

 

       ドサッ!!

  

                        ズササササ・・・

 

 俺は数メートル吹き飛ばされ。

 アイツはその場で倒れる・・・

 

「アキト!!」

 

「北ちゃん!!」

 

 周りの連中が煩い・・・

 普通なら、お互いこの一撃で終っている。

 俺は良くて内臓破裂、悪くて即死だ。

 アイツも折れた肋骨が心臓か肺を直撃、下手をすると背骨が折れているかもな。

 そう、本当ならここで俺達の戦いは終るはずだ。

 

 本当なら、な。

 

   ジャリッ・・・

 

 お互いが・・・

 

         ジャリッ・・・

  

 示し合わせた様に、同時に立ち上がる。

 致命傷は、致命傷でなかった。

 確かにお互いに必殺の攻撃を放ち、その身に食らったのに、だ。

 

「・・・掴んだな。」

 

「ああ、お互いにな。」

 

 俺とアイツの意味不明な言葉に、周囲の人間が動揺する気配が感じられる。

 ・・・感覚も、以前とは比べ物ならない程に鋭くなっている。

 

「ふぉぉぉぉ・・・」

 

「はぁぁぁぁ・・・」

 

 限界を超えた、さらにその向こう側に・・・

 俺達は辿り付いた。

 

 アイツの身体に薄っすらと、清冽な蒼色と清楚な白銀の混じった気が立上る。

 そして俺の目には、自分の身体が猛々しい朱色と眩い金色の混じった気を纏うのを見た。

 

「な、何だあれは?」

 

「二人の身体が・・・薄っすらと光ってる?」

 

 外野も煩い。

 まあ、超常現象に近いからな。

 俺とアイツの目が合い、お互いに笑う・・・

 

「木連式柔 口伝 『武羅威(ブライ)』

 己の魂の色を発現せし『昴氣(コウキ)』を、その身に纏う時。

 その者は人の身にして、武神への道を歩む。

 ・・・内面的な発勁の類ではなく、実際に外面にも影響を及ぼす『昂氣』を纏うわけだ。

 木連式柔に伝わる伝説の奥義。

 しかし、俺の魂の色が朱とは・・・皮肉が利いてるな。

 お前はこの口伝を知っていたか?」

 

 不思議そうに、自分の蒼白く光る拳を眺めるアイツに俺は話し掛ける。

 口調は浮き立つ・・・それは仕方が無いだろう、二人同時にこの境地に辿り付けたのだから。

 

 幾ら強くなろうとも、互角の相手がいなければ虚しいだけだ。

 そう、もう俺はあの頃の孤独に耐えられないだろう。

 これ程の好敵手を得た以上・・・

 

「・・・いいや、さすがにこんな口伝までは教えてくれなかった。

 多分、本人も知らなかっただろうしな。

 だが何かを予感してはいた。

 身体の奥底から吹き上がる、力に。」

 

 視線は俺から外さず、構えを戻しアイツはそう言う。

 先ほどのお互いの一撃は、無意識に発現した武羅威の『昂氣』が、お互いの身体を守ったのだろう。

 もっとも、拳にその『昂氣』を纏った今の状態では・・・

 先ほどの事を再現すれば、とても無傷で済むとは思えんがな。

 

「この武羅威を発現した人物は、俺の知る限り木連式柔の創設者の師匠だけだ。

 もっとも既に故人だがな。

 それに木連式柔自体、地球の名前も失伝された古武術だ。

 その歴史の中においても、この境地に辿り付いた者は10名に満たないらしい。

 ・・・どうだ、伝説の一人になった気分は?」

 

 俺が微笑みながらそう言うと・・・

 

「正直に言えば、そんなに大層な有り難味は感じ無いな。

 俺にとって木連式柔は、戦う為の牙の一つに過ぎない。

 ただ一つ言える事は・・・俺をこの境地に立たせたのはお前だ。」

 

「その通り。

 そして、俺をこの境地に連れて来たのはお前だ。」

 

 そして、お互いに無言になる。

 俺一人では、この境地に辿り付けなかっただろう。

 アイツが相手だったからこそ・・・俺はこの境地に辿り付いたのだ。

 

 そして、幾ら新しい力を手に入れたとしても、今までのダメージが消えたわけではない。

 また、この力も未知数の存在なのだ。

 果たしてどれだけの威力があるのか・・・

 

 次が最後の一撃

 

 俺が目で語りかけ、アイツは頷く。

 そして、この一撃で倒れたとしても悔いがないよう。

 俺達は最後の力を振り絞る!!

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

「たぁああああああ!!」

 

 武羅威は魂を力に変えると言われる奥義。

 心の強さが、魂の力となり、発現し『昂氣』となる!!

 それはつまり、意思と意思の戦い!!

 

  ゴォォォォォォ!!

 

 俺と、アイツを中心に渦を巻くようにして、鮮烈な光の『昂氣』が立上る!!

 蒼と白銀の渦と、朱と金色の渦が出現し・・・

 

「だぁあああああ!!」

 

「はぁぁぁぁぁああああ!!」

 

       ダン!!

  

                   ドン!!

 

 お互いが、以前の己の最高のスピードを軽く凌駕して走る!!

 瞬く間に縮まる、俺とアイツの距離!!

 アイツの右手が動き・・・

 俺の右手が反応する・・・

 

 

 そして、蒼銀と朱金の衝突。

 

 

   ガオォォォォォォォォォォォォ!!

 

           バリバリバリ!!

 

                     ゴォォォォォォォ!!

 

 踏み込んだ足元の石畳が砕ける。

 突き出した右腕が、何か硬質なモノに遮られる。

 その場で右腕を伸ばしたまま、一進一退の力比べを得て・・・

 

 

   ゴァァァァァァァ!!

 

 

 俺達の力場の内圧に耐えられなくなったのか。

 蓄積した力が周辺に弾け跳ぶ!!

 

             ドゴォォォォォオオオオンンンン!!

  

「ちぃぃ!!」

 

「ぐあっ!!」

 

 足元の砕け散った石畳を吹き飛ばし。

 周辺の街路樹や外灯を軋ませ。

 俺自身も弾き飛ばされながら、俺はアイツも同様に吹き飛んでいるのを見て・・・

 笑いながら意識を失った。

 

 ・・・相討ち、か。

 それが一番嬉しい結末かもしれん、な。

 今後もこの楽しみを味わえそうだ。

 

 不明瞭な意識に、俺の名前を呼びながら駆け寄って来る零夜の気配を感じた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十八話 四日目その2へ続く

 

 

 

 

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