< 時の流れに >

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、見事に潰れたものね〜」

 

「流石に、天井全体が落ちてくるとは思わなかっただろうな。」

 

「囮も出してたからな・・・そろそろ掘り出してやるか?」

 

      バゴオォォォォォンンンン!!

 

「どうやら、掘り出す必要は無いみたいよ?」

 

「そうだな。」

 

「まったく、単独で脱出可能なら早く出て来いよな。」

 

 

 

 

 

 私達の目の前の瓦礫が砕け。

 黒いコートを羽織った男が、傷一つ無い姿で現れる。

 

「お疲れ様――――と言うほどの仕事じゃなかったわね。

 まあ、噂の英雄達もデパートの天井には勝てなかったみたいね。」

 

「・・・奴等を甘く見るな、エル。」

 

 私の軽口に対して、黒コートの男―――Dが冷めた声で返事を返す。

 背は190cmほど、体付きは細く黒い帽子とサングラスで顔を隠している。

 その長身痩躯の身体で、あのコンクリートの雪崩から生還したとは信じられないだろう。

 だが、私達にとっては予想出来た結果だった。

 

「でもよ、生身の人間が重さ数トンのコンクリの落下に耐えられるのかよ?」

 

 大柄で筋肉質な男が、Dに向かって反論をする。

 この寒空に、半袖のシャツにカーゴパンツ姿の変わり者。

 極端に短い黒髪と、男臭い顔をしている。

 もっとも、この男は気温なんて気にした事は無いでしょうね。

 

「ジェイ、どうやら耐えられたらしいぞ・・・散れ。」

 

「!!」

 

 突然のDの言葉に反応をして、私達はその場を跳び退いた!!

 

     ガオォォォォォォォォォォンンンン!!

 

 天井の残骸を吹き飛ばし、あるいは消滅させながら。

 真紅の竜が大空に飛び立つ!!

 

 まさかあれは―――――作戦前の記録映像で見た、あの二人の使う技!!

 

      バッ!!

               ダッ!!     

   

 そして、竜が飛び立った穴から、二人の人物が飛び出してきた。

 一人は、黒髪の引き締まった体付きの男性。

 一人は、長い赤毛をポニーテールにした美しい少女。

 

 華麗に着地を決めた男性が、怒りを込めた眼差しで私達を睨みつける。

 そして――――

 

「貴様等―――――俺達を狙うならまだしも!!

 関係の無い人達まで巻き込むとは良い度胸だ!!」

 

  ゴウッ!! 

 

 男性――――「漆黒の戦神」と呼ばれる存在がそう吠え。

 その身体に蒼銀の炎を宿す。

 

「結局、これが俺達の運命よ、アキト。

 ―――――貴様等の挑戦状、確かに受け取った。」

 

     ガオォォン!!

  

 美しい少女――――「真紅の羅刹」と呼ばれる人物が不敵に笑いながら。

 己の身体に朱金の炎を纏う。

 

 面白い、相手に不足は無い訳ね。

 私も、無意識のうちに自分の顔に微笑を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 あの数トンのコンクリの塊から、どうやって脱出したのかは知らねえ。

 だが、目の前の存在が俺達にとっては、絶対に認められないのは―――確実だ!!

 

「D――――俺に殺らせてくれるよな?」

 

「・・・最初のトラップで仕留められなかった時の約束だったな。

 ―――良いだろう、勝手にしろジェイ。

 だが、油断だけはするなよ。」

 

    ダッ!!

 

 俺はDの言葉を最後まで聞いてはいなかった。

 そんな忠告は関係無い!!

 俺は目の前の気に食わない存在を叩き潰すのみだ!!

 

「がぁぁぁぁ!!」

 

 取り敢えずの目標として、赤毛の女を目指す!!

 勿論、普通の人間でない事は先刻承知済みだ!!

 

「ふん、力自慢か?」

 

     ガスッ!!

 

「―――!!」

 

 俺の正拳の一撃を軽く弾こうとして――――背後に吹き飛ばされる赤毛の女!!

 

「何!!」

 

 吹き飛ばされた赤毛の女を見て、驚きの声を上げる男!!

 

「余所見をしている場合かよ!!」

 

 驚愕の表情をする男の前に、一瞬で距離を詰め無造作に前蹴りを繰り出す!!

 

「ちぃっ!!」

 

      ガスッ!!

             ドン!!

 

「・・・へっ、やるじゃねーか。」

 

 俺の前蹴りを受け止める事に危険を感じたらしく。

 半身で避けながら、繰り出してきた肘を俺が掌で受け止める。

 

 ―――未だに痺れる掌からすると、軽く数トン単位の威力があるみたいだな。

 

「貴様等―――本当に人間か?」

 

「お前達に言われたくね〜よ!!」

 

 そのまま体当たりを敢行するが、見事に勢いを逸らされ背後に投げ飛ばされる。

 くっ!! 悔しいが技量じゃ勝てね〜かよ!!

 

 地面に片手を付いて体制を整え。

 素早く俺が立ち上がった瞬間!!

 

「―――なかなか、楽しませくれるな。」

 

   ドスゥッ!! 

 

 冷たい殺気と共に、俺の横腹に信じられない程に重く鋭い蹴りが叩き込まれた!!

 

「ガハッ!!

 あの一撃を受けて・・・もう立ち上がれるのかよ、化け物が!!」

 

「そのままお前に返すぞ、その言葉!!」

 

             ドン!!

 

 今度は俺の横面に、掌が叩き込まれた!!

 その方向に向かって吹き飛ばされる!!

 くっ!! マジで素手で戦車を倒せるなコイツ等!!

 

    ズサササササササ―――

 

 俺と敵の戦いを傍観していた仲間の足元まで―――約30m程吹き飛ばされた俺が転がる。

 おいおい、俺の体重を考えると人間業とは思えないぜ?

 

「くっそ〜〜〜、本当に人間じゃないぜアイツ等!!」

 

「あら、手伝いましょうかジェイ?」

 

 首をほぐしつつ、俺は元気に立ち上がる。

 

「うるせい!! 俺の本気はこれからよ!!」

 

 腕を振り回して、自分のやる気をアピールする。

 Dの視線が冷たい所を見ると――――俺が単独で戦う事を止められるか?

 

「・・・どうやら、あちらも手加減を止めたみたいだな。

 任務の遂行が最優先だ、全員でいくぞ。」

 

「・・・へ〜い。」

 

 Dの宣言に、俺は不満ながらも従う。

 コイツには絶対に勝てないと解っているからな――――

 

「一応、名前を聞いておこうか?

 背後関係は予想がつくが、名前までは解らないからな。」

 

「へえ、面白い事を言うわね?

 私に興味を持ってくれたのかしら、ハンサムさん?」

 

 男の冷たい言葉に、エルが揶揄するように話しかける。

 

「ああ、お前達の墓に名前が無ければ可哀相だからな。」

 

     ゴン!!

 

 男が右から左に振り抜いた右手から、蒼銀の塊がエルに向かって走る!!

 

       バシュ!!

 

「・・・さすがに怖い男だな、テンカワ アキト。」

 

 素早く、エルの前に身体を運んだDが右手で蒼銀の塊を掴み・・・握り潰す。

 

「受け止めた―――いや、握り潰したのか俺の『昂氣』を?」

 

「そうだな、あれは歪曲場を使って消滅させたな。」

 

 冷静に、男とDのやり取りを見ていた赤毛の女が、そう呟く。

 

「望み通り、自己紹介をしてあげるわ。

 私の名前はエル、この黒いコートの人が私達のリーダーでもあるD。

 で、さっきまで貴方達と遊んでいたのがジェイ。」

 

 黒髪をセミロングにして、切れ長の黒い瞳を持つ女。

 その見事な身体を、今日は紫のスーツで隠している。

 それが、エルだった。

 ――――俺から言わせれば、嫌味な女だがな。

 

「ちょっと離れた処にいる、特徴の無い男がカエン。

 それで最後に――――」

 

 その言葉と同時に、男―――テンカワ アキトが右側に吹き飛ばされる!!

 

    ドン!!

 

「ぐぁ!?」

 

 そして何も無かった空間から、一人の小柄な男が現れる。

 

「その男が、イン―――見事な隠れ身の術でしょう?」

 

 吹き飛ばされたテンカワを見下ろしながら、エルが嘲るように笑う。

 テンカワの気を逸らせる為に、今まで話をしていたのだ。

 ―――だから、嫌いなんだよなこの女、凄く陰険だからよ。

 

「貴様等――――人間ではないな。」

 

 少しふらつきながらも、その場で立ち上がるテンカワ。

 お前も人間とは思えないタフネスだぜ。

 

 だが、戦力の分断は出来た。

 後は仕事に掛るだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間では無い、か。

 なら、その人外の存在と対等に戦っているお前達は何だ?」

 

 今まで黙って俺達の戦いを見ていた俺は、苦笑をしながらテンカワに話し掛ける。

 お前に―――俺達の何が解る?

 

「カエン? 貴方―――」

 

「黙ってろ、エル。

 D―――漆黒の戦神は俺とインが殺す。」

 

「好きにしろ、俺達は残りの真紅の羅刹に止めを刺すまでだ。」

 

 仕事に徹したその返事に、俺は無言で頷く。

 そして、戦いの火蓋は切って落とされた―――

 

 

   ゴウ!!

 

 俺の炎に包まれた右手を、テンカワが蒼銀の輝きに包まれた拳で受け止める。

 おいおい、俺の炎は数百度―――火傷じゃ済まない温度だぜ?

 本当に生身の人間かよ?

 

「―――だっ!!」

 

 しかも、技量では天と地の差がありやがる!!

 一瞬で、身体を回転させ俺の攻撃をいなしつつ、脇腹に膝が叩き込まれる―――

 寸前で、その場から飛びのくテンカワ。

 

「良い勘をしてるな。」

 

「―――光学迷彩、貴様等やはり。」

 

 誰も居ない空間に目をやり、そう呟くテンカワ。

 どうやら、おぼろげながらもインの存在を感知しているらしい。

 まったく―――どっちが化け物だよ。

 

「2対1でほぼ対等かよ、俺も自分の実力を疑うぜ。」

 

「・・・改造人間、みたいなものか?」

 

 それでも、多少は息を荒くしながら、俺に話し掛けてくるテンカワ。

 その右手に火傷をしているところを見ると、どうやら俺の攻撃も無効ではないらしい。

 

「・・・そんなダサい名前は御免だね。

 せめて、ブーステッドマンと呼んでくれ。」

 

 そう宣言しつつ、俺は右手に溜めていた炎の塊をテンカワに投げ付ける!!

 

  ゴォォォォォォ!! 

 

「早く俺達を倒さないと、連れの女が死んじまうぜ!!」

 

「くっ!!」

 

 俺の攻撃を紙一重で避け。

 インの攻撃を、勘で避けるテンカワ。

 その顔には、明らかに焦りの表情があった―――

 

 そう、2対1で対等なのだ。

 後ろで戦っている、3対1では圧倒的に女が不利だ。

 ましてや、Dが戦闘に参加しているのだ―――殺されるのは時間の問題だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 面白い―――――

 面白いわ、この娘と遊ぶのは。

 もっと私を楽しませてよね。

 その綺麗な顔が苦痛で歪むさまを見せなさい!!

 

「どうしたの、お嬢ちゃん?

 逃げ回る事しか出来ないのかしら?」

 

「くっ・・・」

 

  ビュン!!

 

 ジェイのタックルを、彼の肩に手を置いて飛び越えた所を―――

 私の糸が空中にいる少女に向かって、四方八方から襲い掛かる。

 

「はぁ!!」

 

 殆ど目視不可能な細さの糸を、勘と空気の流れで感じ取り輝く手で払いのける!!

 特殊鋼でさえ切り裂く私の糸も、目標に絡み付き引き寄せなければ斬れはしない。

 それを知っているこの少女は、絡みつく前に糸の軌道を変更させ、致命的な一撃を避けているのだ。

 

 さすがね、真紅の羅刹の名前は伊達ではないと言う事か。

 

 ―――だけど、着地する場所が最悪よ。

 

「・・・30%」

 

     ドゥン!!

 

 その呟きと共に張られたディストーション・フィールドに、着地間近の少女が弾かれる。

 

「ぐぅ!!」

 

    ズザザザザザ!!

 

 それでも空中で、何とか身を捻り足から着地する。

 お見事!! 本当に生身の人間とは思えないわね?

 私はフィールドに弾かれる寸前に、少女が自分の足でフィールドを蹴っていたのを見ていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

「流石に息が荒れてるな、お嬢ちゃんよ?

 まあ、俺達三人を相手にここまで粘れたんだ、尊敬をしてやるぜ。」

 

 息を整えている少女に油断を見せずに近づくジェイ。

 そして、私とDが左右から包囲を縮める・・・

 

「俺を・・・女と呼ぶな!!」

 

     ゴウッ!!

 

 足元から巻き起こる朱金の炎が、一瞬にして私達を弾き飛ばす!!

 まだ、これ程の余力があったのか!!

 本当に、楽しませてくれるわね!!

 

 弾き飛ばされた身体を、糸を使って地面に手繰り寄せる私。

 しかし、目の前に何時の間にかあの少女がいた!!

 

「・・・後悔させてやるよ、俺の事を「お嬢ちゃん」呼ばわりした事をな!!」

 

 朱金に包まれた拳が、私に辿り付く寸前に・・・

 

「不注意だな、真紅の羅刹よ。」

 

  ドガァァァァ!!

 

「何ぃ!!」

 

 先程の攻撃にも、その場から全く動く事が無かったDが放つ攻撃により、少女は後方に弾き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の放った攻撃により、弾き飛ばされた真紅の羅刹を。

 空中で受け止めたのは――――やはりこの男だった。

 

「・・・お互い、苦戦してるみたいだな。」

 

「が、はっ・・・馬鹿を言うな、まだまだ余裕だ。」

 

   スタッ・・・

 

 その言葉の通り、テンカワ アキトの手から離れ、自分の足でしっかりと立つ少女。

 どうやら先程の一撃も、ギリギリのところで自分から跳んで威力を殺したらしい。

 

 つくづく、やりがいのある仕事だ。

 

 しかし、カエンとインの二人掛りでは勝てん、か―――

 俺達のうち二人では対等以下、3人では勝ると言う事か。

 俺が全力で戦えば、このバランスも崩れるが。

 まだ、俺の機能は不完全なところが多い。

 無茶は禁物だろう。

 

 それを考えると、二人が合流したのは痛いな。

 

「・・・生憎と、俺は限界でね。

 どうだ、一時共闘と言うのは?」

 

「・・・いいだろう、アキトならまだしも。

 作り物の人形に負けるのは、自分が許せん。」

 

     ザワッ・・・

 

 その少女の台詞に、俺達の目の色が変わる。

 

「言ってくれるわね、お嬢ちゃん。

 ―――私達が望んでこうなったと思ってるの?」

 

「遊びは終わりだ、本気でいくぜ。」

 

「燃やし尽くしてやるよ、お前達の伝説ごとな!!」

 

     ダン!!

 

 最初に動いたのは、一番血気が盛んなカエンだった。

 迂闊過ぎる。

 相手は生身で俺達の攻撃を捌いた存在だぞ。

 

「木連式柔――――」

 

 炎を纏ったカエンの一撃を、蒼銀に輝く右手の甲でテンカワが上空に弾き。

 背後にいた少女が、カエンの服の襟を掴み頭から床に叩き付け―――

 

     ドゴン!!

 

「―――ガッ!!」

 

 地面に突き立ったカエンの左右に、何時の間にか移動していた二人が背骨と鳩尾に蹴りを入れる。

 

「「二天 鍔破列戒(がくはれっかい)―――」」

 

         ゴシャ・・・

 

 特殊樹脂で構成されている、強靭でしなやかな骨格が砕ける音が辺りに響いた―――

 本当に、生身の人間に俺達の一人が倒されるとはな。

 

「貴様等!!」

 

「待って、ジェイ!!」 

 

 飛び出したジェイを、エルが止め様とするが、パワーだけで言えばジェイは最強だ。

 エルの力では止める事は出来ない。

 

 そのジェイのタックルを、またも見事に裁くテンカワ。

 殴りかかってきた片手を取り、肩に関節技を仕掛け一瞬で砕く、その一方―――

 

       ジュイン!! 

 

「!!」

 

「こそこそと、隠れるのが好きなようだな。

 人の背後にしか現れないとは――――臆病者が。」

 

 白い刃を構えた少女により、インの右腕が斬り飛ばされていた。

 あれは―――まさか、携帯型のDFSなのか?

 それでは、やはり天井の落下を防ぎ、脱出時に見せたあの技の正体はこれか。

 

 この二人だけが使えると言う、最強の武器―――不利だな、これは。

 

「引くぞ、エル。」

 

「だけど三人が!!」

 

 俺の言葉に、動揺を露にするエル。

 どうやら、ターゲットの予想以上の実力に驚いているようだ。

 

「見捨てはしない―――数少ない同胞だからな。」

 

 その言葉と共に、俺の放つディストーション・フィールドが全てを吹き飛ばす。

 

  ゴォォォォォォウウウウウウウウ!!

 

「何!!」

 

「くっ!!」

 

 迫り来るフィールドを、DFSで懸命に防御する少女。

 その後ろでは、テンカワが後ろからその身体を支えていた。

 

「ジェイ、動きに支障は無いだろう。

 カエンを連れてこちらに来い。」

 

「し、しかし!!」

 

「ジェイ――――俺の命令に逆らうのか?」

 

「くっ!!」

 

 フィールドによって吹き飛ばされたカエンを肩に担ぎ、俺達と合流するジェイ

 そしてその隣には、光学迷彩を解いたインも従っている。

 カエンの修理が今は最優先だ、ここは引くか―――

 

「テンカワ アキト―――正直に言えば、お前達を侮りすぎたな。

 この次は、殺す。」

 

「貴様!!」

 

 俺のフィールドに押されながらも、鋭い目で俺を睨むテンカワ。

 

「お嬢ちゃん、私達を人形呼ばわりした事―――必ず後悔させてあげる。」

 

「お前こそ、俺を「お嬢ちゃん」呼ばわりした事を後悔させてやる!!」

 

 お互いに火花を散らす女性。

 どうやら、次のターゲットはお互いに決まったようだな。

 

「・・・60%、耐えられるか?

 これを受けて生きていれば―――また会おう。」

 

   ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 俺の宣言と共に、倍に膨れ上がったフィールドが二人を襲う。

 それに伴い、デパートが崩壊を始める。

 

「ぐぅぅぅぅ!! アキト、ジェネレーターの出力は持つのか!!」

 

「無茶を言うな!!

 さっきの脱出時に使った「竜王牙斬」で殆どのエネルギーは使ったんだ!!

 そうそう、充電が出来るのなら今までの戦いでも、温存などするものか!!」

 

「もうちょっと使い勝手の良い武器を作れ!!」

 

「そんな事を俺に言うな!!」

 

 

   ガラガラガラガラ!!!

 

 

 その台詞を最後に、二人は崩れ去る床と共に消え去った。

 このデパートも、直ぐに崩壊するだろう。

 

「・・・帰るぞ。」

 

 隣のビルに向かって、跳躍しながら俺は全員に命令する。

 

「死んだかしら?」

 

「まさか―――その時はその時だが、多分生きてるだろうな。」

 

 俺達の顔見せは終った。

 ――――戦いはこれからだ、そうだろうテンカワ アキト?

 

 多分、俺の顔にも笑顔があっただろう。

 獲物を見つけた狩人の笑顔が。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・おい、生きてるか?」

 

「あれしきの事で死ねるか。」

 

「奴等―――やはりクリムゾンの―――」

 

「だろうな、アキトはつくづくトラブルに好かれているみたいだな。」

 

「言うな、悲しくなってくる。」

 

       ゴォォォォォォォォォ・・・

 

「迎え、か。」

 

「ああ、ナデシコだ。」

 

 

 

 

 

 

 

第十九話 Last Lessonへ続く

 

 

 

 

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