< 時の流れに >

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、俺達の乗るナデシコは日本の港に入港している。

 まあ、コンテスト会場の資材が不足しているのが一番の理由だ。

 ・・・二番目の理由として、軍の会議にシュンさんが参加する予定があるそうだ。

 普通なら、この会議の方が優先されるんだろうな。

 

 ま、ナデシコは一応民間の戦艦(?)だし、どうでもいい事だ。

 

「班長〜!!

 ここ、どうします?」

 

「そこはパイロットを呼んで、一緒に微調整をしろ!!

 アイツ等も自分の命が掛ってるんだ、そうそう断らね〜よ!!」

 

「はい!!」

 

 俺は手元にある、「一番星コンテスト・スケジュール」を見ながら班員に指示を出す。

 さて、会場の準備は整った・・・

 明日は荒れるな。

 

    ニヤリ

 

 そして、様々な思惑を巻き込み「一番星コンテスト」は遂に開催されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 パンパカパ〜ン!!

 

「さあさあ、皆さんが待ちに待ったこの日が遂にやってきました!!」

 

「・・・うむ。」

 

「ナデシコが誇る、美女美少女のオンパレード!!

 さあ、この中で見事一番星に輝き!!

 テンカワさんとアイドルデビューを果たすのは、誰でしょうか!!」

 

「・・・うむ。」

 

「・・・解説のゴートさん、他に台詞は無いのですか?」

 

「ああ・・・問題無い。」

 

「それは作品が違います・・・」

 

 ・・・何をやってるんだ? あの二人は?

 

 コンテスト会場の脇にあるテーブルには、司会者をしているプロスさんと、解説のゴートがいた。

 というか、無口でムッツリスケベなゴートに解説なんて出来るのかよ?

 まあ、アカツキの奴が急な用事で不在だからな・・・他に適当な人物がいなかったんだろうな。

 シュンさんとカズシは、軍の会議に出席中だしな。

 

 俺が不安気に二人を見ていると、背後から小声で報告をしてくる奴がいた。

 声から判断するに、俺が擁する整備班影の三人衆の一人『赤(ピー)』だ。

 

「班長・・・例のギミックの設置は終りました。」

 

「よし、そのまま整備班は全員その場に待機。

 某同盟に最後まで気が付かれなければ、我々の勝ちだ。」

 

「はっ!! ・・それでは。」

 

 その言葉を最後に、背後の気配は消えた。

 どうやら残りの二人と合流をするつもりなのだろう。

 ・・・中々に、使えるようになったなコイツ等も。

 

 

「では!! エントリーナンバー1番、エリナ・キンジョウ・ウォン!!

 あ〜んど!! レイナ・キンジョウ・ウォン姉妹の登場です!!」

 

「うむ。」

 

 ウェートレスが「No.1」と書いてあるトレーを持って、ステージ上を移動してる。

 

 それにしても・・・ノってるなプロスさん。

 その金ラメのタキシードが、渋過ぎるぜ。

 それとゴート、お前は他に言葉を知らないのか?

 

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 そして、エリナとレイナちゃんが・・・黒のチャイナドレス姿で現れた。

 深いスリットから覗いている生足が堪らん!!

 

「では、お二人から一言をどうぞ!!」

 

「「テンカワ君、ちゃんと見ていてね〜〜♪」」

 

 瞬間的に、俺達の戦闘意識が急上昇する・・・・

 ちなみに、アキトの奴は舞台から一番離れた場所。

 壁際に俺の配置した整備班に囲まれている。

 その場所から一歩も動く事は出来まい。

 

 ・・・そう一歩も、な。

 

 そんな事を考えているうちに、ステージから歌声が聞こえてきた。

 

「「もぎたての果実の〜、良いところ〜・・・」」

 

 こ、この歌は!! 大昔にア○アの歌姫と呼ばれた某二人組の歌!!

 むむむ、さすがエリナだぜ、選曲に隙が無い。

 

「「それで〜は〜、さよう〜な〜ら〜」」

 

 ババッ!!

 

 最後のフレーズを歌い終わった瞬間!!

 その場に素早く一回転をしながら、黒のチャイナドレスを脱ぎ捨て。

 二人は赤と青のハイレグの水着姿を披露する!!

 

 うおうおおうおうおうおうおうおうおおうおうおうおう!!(解読不能)

 

 ・・・気が付くと、二人の姿は既にステージ上には無かった。

 ふう、ちょっと意識が跳んでたみたいだな。

 まあ、撮影は完璧のはずだ、今回のテープは高値で売れるだろうな。

 

 ステージでは看護婦がカルテに「No.2」と書いて持ち歩いている。

 さて、二組目は・・・

 

「次はエントリーナンバー2番!! ホウメイガールズの皆さんです!!」

 

「おおおおおおお!!」

 

 ホウメイガールズ達は・・・服装で言えば、袴、チャイナ、武道着、コート、花魁(?)姿だった。

 そして俺達に一通り頭を下げ、テンカワの奴に全員が笑顔で手を振った後、歌を歌いだす。

 

「「「「「走れ〜、光速の〜、帝国歌劇団〜」」」」」

 

 この曲を使うのか!!

 ・・・う〜む、一体誰が選曲をしたんだ。

 

 ゴートの奴が嬉しそうに頷いてる。

 いや・・・まさか、な。

 

 深く考えるのは止め様、そのせいでホウメイガールスの水着姿に集中出来なかった。

 むさくるしい大男を見るより、可愛い女の子の水着姿の方が100兆倍マシた!! 

 後でテ−プの編集が楽しみだな〜

 

 

 

 

 

 三組目・・・チャイナドレスの女性が、「No.3」と書かれた扇子を持って歩いて行った。

 

「ではでは、次の方はこちら!!

 エントリーナンバー3番!! パイロット三人娘です!!」

 

 そしてステージに上がってきた三人の姿は!!

 

「リョ、リョーコちゃんのスカート姿・・・それもピンクハウス系・・・

 こ、これは希少価値が高いぞ!!」

 

「おおおおおおおおお!!!」

 

「テ、テメー等!!」

 

「リョーコ!! 今日は大人しくしてないと駄目だよ!!」

 

「くっ!!」

 

 普段着からしてジーパンを愛用するリョーコちゃんだ。

 この映像は、後世に残る名作になる!!

 

「「「どんな―――、言葉に変えて――――

  君に伝えられるだろう――――」」」

 

 静かなイントロに合わせて、綺麗に声をあわせて歌う三人・・・

 普段の姿からは想像も出来ない、その大人しい姿に会場の男達は惹かれた。

 

 もっとも、この歌詞にある人物にはアイツの事を示しているんだろうがな!!

 

「「「Secret of my heart―――――・・・」」」

 

 最後のフレーズと共に、三人が着ていた衣装を外し。

 それぞれのイメージカラーでもある、赤、黄色、エメラルドグリーンのセパレーツだ。

 盛大な拍手の中、三人は舞台裏に消えていった。

 

 ・・・ふう、寿命が10年は延びたな。

 

 

 

 

 

 そしてステージでは、テニスルックの女性がラケットに「No.4」の紙を張って振り回している。

 ふふふ、この四組目は俺の入れ知恵がしてある。

 

 皆の者、驚くが良い!!

 

「次はエントリーナンバー4番!! ハーテッド姉妹です!!」

 

「「はぁ〜い!!」」

 

 プロスさんに呼ばれて、舞台に上がって来た二人は・・・

 やはり、セーラー服姿だった!!

 

「うおあおあおあおあおあおあおあおあおあおあ!!」

 

 二人の豊かな胸が強調されるその姿に、整備班一同は魂の叫びを上げる!!

 しかも、年齢的にもアリサちゃんサラちゃんは適齢だ!!

 そう現役の女子高生とも言えるのだ!!

 つまり!! 偽者ではなくモノホン!!

 

 そして流れでる音楽は、俺の指示通りのもの・・・

 

「「セーラー服を!! 脱がさないで〜〜〜〜〜!!」」

 

 そのフレーズが終ったと同時に!!

 

  クルクル・・・ババッ!!

 

 お互いに背中合わせになり、回転をしながらセーラー服を脱ぎ捨てる!!

 そしてアリサちゃんのイメージカラーにあわせた、白銀のビキニが露になる!!

 サラちゃんも同じ様なビキニだが、こちらは微妙に青色が混じっていて艶めかしい!!

 

「がぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!」(血涙)

 

 その見事な肢体に、整備班から悲鳴と勘違いしそうな叫びが上がる!!

 解る!! 解るぞその気持ち!!

 

 そして、割れんばかりの拍手に送られて、二人は舞台裏に消えた。

 最後に、テンカワの奴にウィンクをしながら・・・けっ!! 

 

 

 

 

 

 

 ステージでは、バニーガール姿の女性がボトルに「No.5」と書いてある旗を刺して歩いていた。

 

 ・・・次の選手も、注目度は高いな。

 何しろ参加者中で唯一、本職を経験した者だ。 

 

「ではエントリーナンバー5番!! メグミ・レイナードさんです!!」

 

「皆さんこんにちわ〜!!」

 

 明るい挨拶と共に、メグミちゃんが可愛い感じのステージ衣装で現れる。

 

「は〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!」

 

 掴みはOKみたいだな、さすが場慣れをしてるぜ。

 そして例によって、例の如くある方向に笑顔を向けた後、静かに歌いだす。

 

「愛しさと――――、切なさと――――、心強さを――――――」

 

 伏目がちの瞳、小さく組まれた手。

 メグミちゃんの確かな歌唱力に支えられたその歌は、歌の実力だけでは確実にトップだった!!

 実際、騒がしかった整備班達も今は大人しくメグミちゃんの歌を聞いていた。

 そして俺も黙ってメグミちゃんの歌に耳を傾けた。

 

 ・・・歌詞が、どう考えてもアイツの事を連想させてくれて、腹が立ったのは秘密だ。 

 

 歌い終わり、素早く白のワンピースに着替えたメグミちゃんに盛大な拍手が送られた。

 ある意味、千両役者だよな。

 

 そう言えば、ジュンはどうした?

 

 

 

 

 

 秘書姿の女性が、書類に「No.6」と書いてある面を示して歩いていた。

 ・・・ん?

 

「ではエントリーナンバー6番!! アオイ ジュンさんです!!

 彼は一発芸として、「コスプレ女装」で参加されてます!!」

 

「うむ!!」

 

「何ぃ〜〜〜〜〜〜!!」

 

 一同の目が、何故かステージにまだいた秘書姿の女性に集中する。

 

「・・・ジュン、なのか?」

 

 コクン・・・

 

 俺が代表として質問をすると、黙り込んでいたジュンが無言で頷く。

 髪はカツラ、顔には女性陣による化粧が施されていたのだ(ちなみに優華部隊にやられたらしい)

 その完璧な女装に、俺達は声も無かった。

 いや、プロスさんに言われるまで全然気が付かなかったぞ?

 

 そして、赤い顔をしたままジュンは舞台裏に逃げて行った・・・

 

 癖にならなければいいのだが。

 

 

 

 

 

「さてさて、次はエントリーナンバー7番!!

 ラピス・ラズリさんです!!」

 

 未だ虚ろな眼差しだった俺達に、プロスさんの声が降り注ぐ。

 ・・・はっ!! 俺は何をしている!!

 今は、後世に残る映像を己の目に焼き付ける事が先決だ!!

 

「はぁ〜い!!

 オモイカネ!! プログラムスタート!!」

 

 ラピスちゃんの元気な声と共に・・・

 

 バシュゥゥゥゥゥゥゥ!! 

 

 勢い良く噴出すスモーク!!

 そして何処かの廃墟を思わせる景色が、映像で浮き上がり・・・

 

 そこにはラピスちゃんであって、ラピスちゃんじゃない薄桃色の水着を着た女の子がいた。

 

「残酷〜な天使のように――――

 少年よ神話にな―――――れ――――――」

 

 そして、透き通った声で静かに歌い出す!!

 この声はラピスちゃんの・・・だが、どう見てもルリルリと同じ年頃の女の子に見えるぞ!!

 

「「残酷な天使のテーゼ、窓辺からやがて羽ばたく――――」」

 

 そして、ラピスちゃんの声に合わせて、もう一つ聞きなれた声が!!

 

    バサッ、バサッ・・・

 

 映像の筈の景色・・・

 その奥から飛来するのは・・・天使!!

 

 俺にはそれが誰だか理解出来た。

 年齢は16歳前後だが、間違い無く天使の姿をした少女は・・・ディアだった。

 そして、上空で漂うディアとラピスちゃんの声が綺麗に唱和する。

 

「「少年よ――――、神話にな――――れ―――――」」

 

  バシュゥゥゥ!! 

 

 そして再び盛大なスモーク。

 煙が晴れた後には・・・

 

「イ、イネスさん?」

 

 白衣を着たイネスさんが、何時の間にかステージに立っていた。

 

「はい、イネス・フレサンジュです。

 それでは説明しましょう。

 皆さん気が付かれていると思いますが、先程の少女はラピスちゃんとデイアです。

 これはオモイカネによって、ラピスちゃんの5年後の姿をホログラフで投影したものです。

 もっともディアに限っては、自分で将来像を作成したようですが。

 また、普通のホログラフでは決められた動きしか出来ません。

 しかし、私とルリルリとラピスちゃんの弛まぬ努力により。

 本人の動きをトレースし、仮想で作られたホログラフも同期を取り動くシステムを開発したのです。

 もっとも、限りなく薄い肌着・・・水着でも着なければ、処理が追いつかないのが欠点ですが。

 普段着を着た時の複雑な表面の動きには、まだオモイカネ自体が把握しきれていないのが原因ね。

 以上、イネス・フレサンジュでした。」

 

 バッ!!

 

 その言葉と同時に、着ていた白衣を脱ぎ去る!!

 そこには、黒いビキニに何時も結んでいる金髪を解いたイネスさんの姿があった!!

 普段の白衣でも目立っていたが・・・やはりそのスタイルは際立っている!!

 何より成熟した大人の色気が・・・

 

 そして、俺達に軽く流し目を送り・・・最後にアイツに、最高に色っぽいウィンクをして舞台から消えた。

 

「お、大人の色香だな・・・自分の武器を最大限に生かしてやがる。」

 

 俺は何時の間にか握り締めていた拳を開きつつ、一人そう呟いた。

 

 

 

 

「はい、イネスさんはエントリーナンバー8番でした。

 それでは次は、エントリーナンバー9番!! ホシノ ルリさんです!!」

 

「うむ!!」

 

 ・・・実は、かなりヤバイ性格なのか、ゴートさんよ?

 そのニヤリ笑いはかなり怖いぞ。

 

 バシューーーー!!

 

 と思ってるうちに、またスモークが噴かれた。

 ・・・どうやら、ホログラムを投影する役割を果たしているらしいな。

 俺のメカニックの勘がそう告げている。

 ディアのホログラムですら、最新技術を使っても完全な立体感は出せないのだ。

 それを俺達が見間違うようなレベルの投射など・・・オモイカネの奴が泣き叫ぶわけだ。

 

 そして、俺達の前に・・・16歳と思われるルリルリの姿が現れた。

 

 凄く・・・良い

 

 その細く白い手足も、水色のカクテルドレスでさらに際立って見える。

 金の瞳は真っ直ぐ・・・まあ、例の方向を向いているが。

 

 それにしても、やはり美少女になるんだな。

 数年後が実に楽しみだ!!

 

「うむ!!」

 

 ・・・頼むから、大人しくしてろよゴートさん。

 

「Whenever sang my song ―――(歌う時は何時も)

 On the stage, on my own ――――(ステージで一人きり)」

 

 静かな声で、穏やかに歌い出すルリルリ。

 周りのスモークの流れにあわせて、ツインテールにした瑠璃色の髪が揺れる。

 実に幻想的な光景だ・・・

 そして背景には海の中を写している。

 揺れる髪と、その水色のカクテルドレスにより本当に海の底のいるように感じる。

 

 俺達は声も無く、一人の妖精に見惚れていた。

 

「Who pinches you softly but sure ――――――(ぎゅっと優しく貴方をつねるの)

 If frown is shown then ―――――――――(しかめ面をしたら)

 I will know that you are no dreamer ――――(あなたが夢を見ていないって解る)」

 

 最後に、笑顔を浮かべながら一礼をすると同時に。

 

 バシュウゥゥゥゥ!!

 

 再びスモークが噴出した。

 ・・・どうやら、水着は無いらしい。

 まあ、仮の姿である訳だからな。

 他の参加者に遠慮をしたのか?

 それともやはり・・・

 

「スタイルを気にして(ガシュ!!)」

 

「は、班長〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

 俺が再び意識を取り戻したのは、それから10分後だった。

 何故か頭上の照明が落下して、俺の後頭部に直撃したらしい。

 

 ・・・独り言も言えないのか、この艦は?

 

 

 

 

 

「さてさて、とうとう参加者も最後の一人!!

 そう、最後を締めるのはやはりこの御方!!

 エントリーナンバー10番、ミスマル ユリカさんです!!」

 

 バッ!!

 

 プロスさんの紹介と同時に、会場内の照明が全て消える。

 そして・・・

 

 カカッ!!

 

 ライトアップされたステージに、何時の間にか紫色のパーティドレスを着た艦長がいた。

 何時も下ろしている髪を、高く結い上げ。

 普段は付けていないイヤリングなどで、装っている。

 化粧も嫌味にならない程度に、薄く綺麗に施され・・・・

 

 要するにだ、実に魅力的に着飾ってるわけだ。

 下手な誉め言葉は不要だな。

 

「胸の奥で震えてる―――――、光と影を抱き締めたまま。

 捨てきれない夢を追い掛けて――――、誇り高く愛は蘇る―――――」 

 

 片手を上げて、アイツを指差す・・・

 その瞳は真っ直ぐにアイツだけを捉えていた。

 溢れる想いをのせた視線で。

 

 つくづく・・・羨ましい奴だぜ。

 なのに、本人はとことん奥手ときたもんだ!!

 

「祈る気持ちを忘れないで――――、いつも届けたい――――――

 信じてる――――、見えない未来を――――」

 

 最後の歌詞を歌い終え。

 髪を解きつつ、ドレスを脱ぎ去る艦長!!

 

   バッ!!

 

「おおおおおおおおおおお!!」

 

 ドレスの色に合わせた、薄紫色の光沢を放つビキニ姿が現れる!!

 スタイルに文句は無し!!

 優しい微笑を浮かべる顔立ちにも文句は無い!!

 正に、コンテスト最後の締めを行うには最適の人物だった!!

 

「先輩!! 最高です!!」

 

 カザマちゃん・・・何時の間に、最前列に来てたんだ?

 その潤んだ目には、流石に俺も引いたね。

 

 

 

 

 

 ・・・さて、用事は終った。

 コンテストの結果には・・・余り興味は無い。

 俺はその過程が楽しみたかっただけなのだ。

 

 というか、さっさと逃げる。

 

「では、全員の投票により一番星コンテストの優勝者を・・・

 って、皆さん何処に行かれるのですか?」

 

「プロスさん、後は任せたぜ。」

 

「はあ?」

 

「・・・うむ?」

 

 首を捻っているプロスさんとゴートを残して、俺達整備班は会場を後にする。

 

「ちょっと!! 何を考えてるのよウリバタケ班長・・・・えっ!!」

 

「どうしたの、姉さん・・・嘘!!」

 

 ちっ!! 気が付かれたか!!

 エリナとレイナちゃんがこんなにも早く、舞台に出てくるとは予想外だぜ!!

 

「全員駆け足!! 力の限り逃げつづけるんだ!!」

 

「おう!!」

 

 俺達は、テンカワを残して散り散りに逃げ出した。

 こちらの作戦は終了した!!

 今回は俺達の勝ち―――と言うことだ!!

 

「ちょっ、ちょっと!! どうしてテンカワ君が、上半身だけの人形なのよ!!」

 

「なんですって!!」 × 女性陣全員

 

 はははは!! その通りだよ!!

 そのテンカワ(上半身のみ)はキャストの魔術師、このウリバタケ セイヤ作だ!!

 しかも、その目の部分はビデオカメラに接続されている!!

 つまり、女性陣の熱視線は全てカメラ目線と変わっていたのだ!!

 

 ぐふふふふふ、売れる、売れるぞ!! このテープは!!

 

 勝利の雄叫びを上げながら、俺達は命懸けの逃走に入った。

 テンカワの奴も、今頃頭を抱えているだろうな・・・と思いながら。

 

 

 

 

 

「待ちなさい!! ウリバタケ班長!!」

 

「テンカワ君を何処に隠したの!!」

 

「「「「「あ〜ん、テンカワさんだと信じてたのに〜〜〜!!」」」」」

 

「「アキト(さん)は何処?」」

 

「アキトの奴が消えたって?」

 

「いえ、最初からダミーだったらしいです!!」

 

「ハーリー、貴方も一枚噛んでるね・・・絶対。」

 

「そうですね、私もそう思います。」

 

「「後で、お仕置きフルコース。」」

 

「アキト〜、何処に隠れてるのよ〜(涙)」

 

 

 

 

 

 

 

 

第十九話 LessonWへ続く

 

 

 

 

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