< 時の流れに >

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラピス!! ルリ!! ユリカ!!

 俺を・・・信じろ!!」

 

 

 その叫び声が響き・・・

 私達はお互いに視線を向けます。

 そう、通信範囲内にアキトさんが拘った理由。

 それは―――

 

「ルリちゃん、準備は良い?」

 

「ユリカさんこそ・・・怖いのですか?」

 

 私は怖いです、凄く・・・

 

「まあ、ね。

 チハヤさんの無念を思うと、贅沢な悩みだと思う。

 ―――でも、私はアキトに無茶をして欲しくなかった。」

 

 悲しい微笑み。

 それが私達の顔に共通するものでした。

 そして、ラピスにも・・・

 

「時間が無いよ、ユリカ、ルリ。」

 

 震える声でそう呟くラピス。

 信じる事しか出来ない立場が、今はお互いにもどかしいですね。

 

「始め様か、ルリちゃん、ラピスちゃん。

 漆黒の戦神の、もう一つの神話を―――」

 

「はい・・・」

 

「うん・・・」

 

 私達が決心を固めている間、ブリッジのクルーは黙っていてくれました。

 もう、躊躇っている時間は無いのです。

 刻一刻とサツキミドリは地球に迫っているのですから―――

 

 そして、最後の儀式は始まりました。

 

「天に輝く星に『希望』を―――」

 

 ラピスがアキトさんから贈られたペンダントを握り締め、パスコードを唱えます。

 

「地に満ちる光に『未来』を―――」

 

 最後の一瞬まで見逃さない覚悟で、青い地球を背に浮かぶ『ブローディア』を見詰めつつ。

 私が自分のパスコードを唱えます。

 

「彼(か)の人の気高き想いに『夢』を―――」

 

 ユリカさんが毅然とした態度で、ご自分のパスコードを唱え。

 

「「「天・地・人の理をもて!! 目覚めよ漆黒の竜神!!」」」

 

 最後のパスワードを私達が声を揃えて唱えます!!

 

 そして、地球の一角に漆黒の炎が出現しました。

 それは全てを滅ぼし得る力を振るう存在の、誕生の瞬間―――

 

 

 

 

 

 

 

「「「天・地・人の理をもて!! 目覚めよ漆黒の竜神!!」」」

 

「最終パスコードクリア!!」

 

『ブローディア!! 最終戦闘モード『竜王顕現』発動!!』

 

 最終戦闘モード『竜王顕現』

 それは『ブローディア』に仕掛けてある、全てのセーフティを取り除く。

 通常の戦闘では、使う必要が無いと判断したモード―――俺の最後の手段だ。

 

 破壊をする事でしか、前に進めない自分を心の中で嘲笑う。

 だが、今はこの力が必要なのだ。

 

 過去で学んだ事―――それは力に正義も悪も無いという事。

 

 そして、振るうべき場面では躊躇わないという事だ!!

   

『・・・相転移エンジン、臨界を突破!!

 その状態を維持しつつ、第二相転移エンジン始動を開始!!』

 

  ドウゥン・・・

 

 鈍い衝撃と共に、『ブローディア』の第二の心臓が動き出す。

 そう、普段の戦闘で使用するのは第一相転移エンジンのみ。

 だが『ブローディア』には、第二の相転移エンジンが組み込まれている。

 

「第二相転移エンジンの始動を確認!!

 ・・・第一、第二共に出力100%まで上昇!!」

 

『『ガイア』の強制冷却装置の作動を確認!!

 もう直ぐ光翼の展開が始まるよ、アキト兄!!』

 

 『ガイア』は鎧として、外部からの攻撃を防ぐ事だけが目的ではない。

 『ブローディア』が全力を発揮する時、機体の内部崩壊を防ぐ為の鎧でもあるのだ。

 

「よし!! 『フェザー』をメビウス陣形で射出!!」

 

   バシュシュシュシュシュ!!

 

 軽い振動と共に、『ブローディア』の背後から全ての『フェザー』が飛び出し。

 メビウス輪を描きながら、『ブローディア』の周囲を取り巻く。

 

「・・・第一、第二相転移エンジン共に出力130%に到達!!

 光翼、出るよアキト兄!! 衝撃に備えて!!」

 

「解った!!」

 

   ドッゥン!!

 

 激しい衝撃と共に、アサルトピットが揺れる。

 この時点で、既に『ブローディア』のエネルギー総量はナデシコを軽く越えている。

 その過剰エネルギーの放出だ・・・

 ナデシコから見ている皆には、漆黒の8枚の光翼を持つ『ブローディア』が確認出来ただろう。

 

 そして一際巨大な振動が走り・・・

 

    ヴオォォォォォォォォォォォォ!!!!

 

 『ブローディア』が生まれて初めて、全力で戦える喜びに震え。

 全身から歓喜の声を上げた。

 

 それは、もしかすると俺の心の声だったかもしれない。

 

「最終戦闘モード『竜王顕現』・・・起動シーケンス完了。」

 

『第一、第二相転移エンジン共に出力150%

 使用武器の全チェック作業完了。

 ・・・何時でもいけるよ、アキト兄。』

 

「そうか・・・カオス・スマッシャー準備。」

 

「了解!!」『了解!!』

 

 

 

 

 

 

 

    ヴオォォォォォォォォォォォォ!!!!

 

「な、何よあれ!!

 ―――ルリルリ!!」

 

「落ち着いて下さいミナトさん。

 あれが・・・『ブローディア』の最終戦闘モードです。」

 

 漆黒の8枚の翼・・・・そしてその周囲を旋回する、『フェザー』が描くメビウスの輪

 『ラグナ・ランチャー』を正面に構え、静かに佇む。

 青い地球を背景にして、サツキミドリに立ち塞がるその姿は―――余りに禍々しく。

 ブリッジ全員の意識に、強い嫌悪感を与えています。

 しかし、『ブローディア』の本当の実力はそんな感情すら・・・

 

「ホシノ君、本当にアキトの奴はサツキミドリを止められるのかね?」

 

「オオサキ提督、止めるのではありません―――殲滅するのです。

 私達『ブローディア』の開発者は、一つだけ共通の認識を持っています。

 それは『ブローディア』の封印を解く事は、戦術兵器から戦略兵器へと存在を換える事です。」

 

「戦略兵器だと!!」

 

 シュンさんが驚きの声を上げると同時に。

 白い光が、私達の視界を埋め尽くしました―――

 

 

 

 

 

 目の前に迫るサツキミドリの大きさに暫し見惚れる。

 この岩石の塊が、今まで通ってきた広大な宇宙の道のりを思う。

 だが、その終着駅を地球にする訳にはいかない。

 ・・・気の毒だが、ここでその旅を終らせて貰う!!

 

 そして、準備は整った!!

 

「アキト兄!! 座標計算は終了したよ!!」

 

 ディアがVサインをしながら、俺の目の前に現れる。

 

『エネルギー充填も完了!!』

 

 殆ど同時に、ブロスの報告が入る。

 この一撃にどれだけ重要な意味があるのかは、勿論理解している。

 そして、俺の今後の人生が更に大きく変わって行く事も―――

 それでも、俺はこの一撃を放つ。

 一人の女性への冥福を祈って。 

 

「・・・カオス・スマッシャー、発射!!」

 

 

               キュオン―――

 

 

 そして、『ブローディア』の前方に白く広大な空間が出現した。

 

 

 

 

 

 

「なんて・・・事なの?」

 

 白い閃光が消え去った後には・・・

 サツキミドリの姿も一緒に消え去っていた。

 そう、消滅していた、あの巨大な隕石が。

 

「北斗、貴方はどう判断する?」

 

 私の背後にいた北斗にそう訪ねる。

 

「戦略兵器・・・そう言うしかないだろうな。

 もっとも、機動戦には使えない武器だ。

 あれだけの充填時間が必要なら、俺には通用しない。」

 

 多少興奮はしているが、何時もの冷静な口調を保ったまま北斗が応える。

 

「そう、まだ戦えるのね?」

 

「当たり前だ、俺の宿敵だぞアキトの奴は。

 それに・・・まだ、全ては終っていない。」

 

 北斗の眼差しの先には―――未だ落下を続ける隕石があった!!

 

「規模が小さくなったとは言え、その脅威に変わりは無い。

 さて、どうするんだアキト?」

 

 その隕石に向かって加速する漆黒の機体に向かい、北斗がそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「どう言うことだ!! ディア!!」

 

 周囲を取り囲む瓦礫を粉砕しながら、俺達は直径1km強の隕石に向かう!!

 全てが終ったと思った瞬間、その隕石は俺を嘲笑うかの様に飛び出してきたのだ!!

 

「カオス・スマッシャーが当たる寸前に、サツキミドリ内部からの爆発で剥離したの!!

 どうやらカズシ叔父さんが言ってた、内部の爆弾が大気圏突入時の熱で誘爆したみたい!!」

 

「何て偶然だ!!」

 

 信じられない事態がこうも続くと、自分の運の悪さが良く解る!!

 まったく、世の中は本当に思い通りにいかないものだな!!

 

「邪魔だ!!」

 

   ドゴァッ!!

 

 行く手を塞ぐ100m台の岩石を、右腕の一振りで砕く!!

 今の『ブローディア』にとって、これしきの芸当は容易い!!

 

「アキト兄!! 更に隕石が分離するよ!!

 このままだと・・・西欧方面全域に隕石の雨が降り注ぐ事になっちゃう!!」

 

『『ブローディア』は現在大気圏に突入!!

 以後の活動は大幅に制限されるよ、アキト兄!!』

 

 くっ!! 八方塞がりか!!

 ・・・いや、まだ手はある!!

 カオス・スマッシャーは流石に連続では使用不可能だが、今の『ブローディア』になら―――

 

「ディア、八竜皇の一竜・・・『劫』を使う。

 目標を選出してくれ。」

 

「そ、それは無茶だよアキト兄!!」

 

『そうだよ、今八竜皇の業を使ったりしたら。

 『ブローディア』の本体を守る、ディストーション・フィールドが消えちゃうよ!!

 幾ら『ガイア』を装備していても、アキト兄自身が大気圏の熱にやられちゃうよ!!』

 

 二人から否定の声が返って来る・・・だが、どうしてもこの隕石の落下を防ぎたいんだ。

 

「済まん、俺には謝る事しか出来ない。

 力を貸してくれ、ディア、ブロス。」

 

「本気・・・なんだね?」

 

 ディアが俺の顔を覗き込みながら、そう訪ねてくる。

 

「ああ。」

 

 俺も簡潔に返事だけを返し、ディアの顔を正面から見詰める。

 

「・・・もし壊れたら、責任とってよね!!」

 

『はぁ、やっぱりやるの?

 ま、僕だけ仲間外れにされるのは嫌だしね〜』

 

「終ったら好きなだけ遊んでやる、今はそれだけしか約束出来ないけどな。」

 

 本当に口約束が多いな、俺は・・・

 もっとも、俺自身も生き残る為に最大限の努力を惜しむつもりはない!!

 

「やった!! ラピ姉とルリ姉に自慢しよっと!!」

 

『約束だよアキト兄〜、絶対に無事に帰るんだからね〜』

 

「ああ、約束だ。」

 

 最悪の状況下の中、俺達は微笑みながら大切な約束を交わしていた・・・

 お互いにの存在がどれだけ大切なのかを、知っているから。

 

 

 

 

 

 

「『ブローディア』、剥離した隕石を追って大気圏に突入します!!」

 

「そんな、無茶だよアキト!!」

 

「オオサキ提督、アキトさんを止めて下さい!!」

 

「いや、あの大きさの隕石が落ちれば地上はただでは済まない。

 それが解っているからこその追撃だろう。

 ・・・アキトが出来ると判断したんだ、俺達に見守る事しか出来ない。

 止めて聞くような奴じゃ無いしな。」

 

「だからって!!

 どうしてアキトさんばかりが、苦しまなければいけないんですか!!」

 

「メグミ君、もう一つ俺達に出来る事があった。」

 

「・・・何ですか?」

 

「無事を祈ってやれ、それとアキトを信じろ。

 少なくともホシノ君とラピス君・・・それに艦長はそうしてるぞ。」

 

「解り・・・ました。

 私もナデシコの一員です、アキトさんの強さを信じます!!」

 

「ああ、それで・・・いい。」

 

「しかし、提督・・・勝算はあるのですか?」

 

「ミスター、俺達は何度アキトに驚かされた?

 そんな事を期待するのは、愚策の極みというものだがな。」

 

「・・・確かに、そうですな。

 なら、私も祈りましょうか―――あの、漆黒の戦神の無事を。」

 

 

 

 

 

 

 

 チャンスは一度だけ。

 狙いを外す事無く、全てを破壊してみせる。

 そう、この『ブローディア』と俺達にはそれが可能だ。

 

 そして―――

 

 数千、数万とも思える小さな隕石群の中で、俺はその景色に見惚れていた。

 この大きさの隕石ならば、地上に辿り付く前に燃え尽きてしまう。

 赤い色に染まった隕石が、メビウスの輪に当たり砕け・・・更に小さな破片と化す。

 『ブローディア』自身も、大気の摩擦に熱せられ赤く化粧をしているのだろう。

 もっとも、光翼が殆どの熱を遮断している為、熱さは感じないが・・・

 

「アキト兄、ターゲッティング完了したよ。

 マーカーを表示した場所をこれから2分以内に、誤差1m以内で貫いてね。」

 

  ピピピピピ・・・

 

 俺の目に前に8個のサイトが表示される。

 

「厳しいな・・・」

 

 その場所と残り時間を確認し・・・苦笑をしながら、『ブローディア』の両袖に隠されたDFSを取り出す。

 時間は本当に残り少ない。

 それでも無駄口が出るのは、俺も緊張をしている証拠だった。

 

「文句を言わないの!!

 こんな無茶をやるって決めたのはアキト兄でしょ!!」

 

『そうそう、本当に無茶なんだからね。

 カオス・スマッシャーの影響で、出力自体は80%にダウンしてる。

 それなのに、防御のエネルギーすら使用して八竜皇を使うんだから。』

 

「ええい、集中の邪魔だ黙ってろ!!」

 

「『は〜い』」

 

 俺を励まそうとしている二人の心遣いが嬉しかった。

 そして改めて、この二人を道連れにして死ぬ事など出来ないと思う。

 

「ふぅぅぅぅぅ―――」

 

 極度の集中により、視界が狭まってくる・・・

 今の俺の視界には8個の光点と、減りつづけるカウントのみが映っているのみ。

 騒がしいまでの音が―――消えた

 感覚が限りなくシャープになっていく。

 無意識のうちに『昂氣』を纏い、際限無く襲ってくる振動すら中和する。

 

 そして、両手のDFSに真紅の炎が宿る。

 

「いくぞ!!」

 

       ドウゥン!!

 

                 ギャオゥン!!   

 

 その場で両手を振り上げ、二匹の竜を解き放つ!!

 

「轟け二牙!!」

 

 右半身になり、振り上げた両手を振り下ろす!!

 

         ガォオォォォォンン!!

 

     グオォォォォォォ!!

 

「吠えろ四牙!!」

 

 そのままの勢いで半回転をしながら、腰に構えたDFSを正面に突き出す!!

 

       ゴアァァァァァァァァァァ!!!

       ヴアァァァァァァアアアア!

 

「飛翔せよ六牙!!」

 

 そして、最後の輝きを宿したDFSを頭上に掲げ・・・

 交差をしながら振り下ろす!!

 

「ラスト!! 切り裂け八牙!!

 奥義!! 八竜皇が一竜、『劫竜八襲牙陣』!!」

 

 俺の気合の声と共に、一際巨大な真紅の竜が二匹・・・大気を貫く!!

 

    ゴァァァァァァァ!!  

             ゴゥゥゥゥゥゥンンン!!

 

 八匹の竜は見事にディアが示したマーカー全ての中心を貫いた・・・

 それと同時に、俺の意識が遠ざかっていく。

 ディアの計算を俺は信じている。

 もう、俺に出来る事は無い・・・ 

 

 八竜皇は自ら禁じ手とした奥義。

 その中でも、特にコントロールが難しい技を振るったのだ。

 

 俺の精神力も無尽蔵では無かった―――

 

 

 

 

 

 

 

 私達の目の前では、八匹の真紅の竜が激しく踊り―――舞っています。

 その進行上にある巨大な隕石を、まるで張りぼての様に貫き破壊しながら・・・

 

「戦略兵器・・・か。

 確かに恐ろしいまでの威力だ、アキトや艦長達が躊躇うのも解る。

 これは―――個人で持つべき力ではないな。」

 

 悲しそうな顔でそう呟くシュンさん・・・

 どうやら私達の懸念に気が付いておられるようです。

 

「はい、これで確実に政治・軍の上層部では、アキトの排斥が始まります。

 彼等にとって御せぬ存在であるアキトは脅威でした。

 ですが、まだ個人の存在である認識が強かった筈です・・・

 その意識も、今回のサツキミドリの消滅を機に大幅に変更されますね。」

 

 ユリカさんが泣き笑いの顔で自分の意見を述べています。

 

 ・・・そう、アキトさんの本当の力を知った今。

 政治家と呼ばれる人達が黙っているとは思えません。

 ましてや、戦争が終局に近づきつつある今では、今後の保身に余念はないはず。

 きっと、あらゆる手を使ってアキトさんの行動を束縛するでしょう。

 

 ですが―――

 

「どちらにしても、アキトの今後の未来は―――」

 

「それは言わないで下さい!!」

 

「そうだな、悪かった・・・」

 

 ・・・監視、では済まないでしょうね。

 下手をすれば、一生何処かの牢獄に入れられるかもしれません。

 『ブローディア』を解体しても、彼等はアキトさんを恐れるでしょう。

 そして、歴史から消そうとするはずです、見えない影に怯える様に・・・自らの汚点を見ないために。

 世界平和の為と言う―――大義名分を掲げて。

 

 ですが、私は認めません。

 何者にもアキトさんの自由を奪う事は許しません。

 もしもの時は、例え世界中から非難されようとも―――

 

「『ブローディア』・・・西欧方面軍所属の宇宙艦隊に救出されます。」

 

「お爺様の部隊ね。」

 

 メグミさんとサラさんが、努めて冷静な声で方報告をしています。

 きっと内心ではかなり複雑な想いが渦巻いているでしょう。

 地球を救った英雄なのに・・・それでも非難をされる不条理な現実に。

 

「・・・アキトの無事を確認しました。

 しかし、衰弱が激しく意識が無い為。

 この後は一旦地上の軍施設に入院をさせるそうです。

 それと、自分達が―――命と名誉にかけて、この勇敢な男を守ります・・・と。

 Moon Nightの隊員一同から、つ、通信が・・・届きました。」

 

 最後は涙声でサラさんが報告をします。

 大切な人と故郷が守られた安堵・・・

 さらに不利な立場に追いやられたアキトさん・・・

 そして何も知らず、アキトさんにその苦難の決意をさせた、自分の言葉に・・・

 

 声を殺して泣くサラさんの肩を優しくメグミさんが抱いていました。

 ブリッジには大きな危機を乗り越えた高揚感など、微塵もありませんでした・・・

 

 

 

 

 

 アキトさん、私達はこの戦争の果てに何を求めていたのでしょうか?

 それは少なくとも―――『幸せ』の二文字だったと、信じたいです。

 

 

 

 

 

 

 

第二十話 エピローグ

 

 

 

 

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