< 時の流れに >
『皆さん!! アキト達は遺跡に突入をしました!!
このまま私達も遺跡に侵入して、演算ユニットごとジャンプで逃げます!!』
艦長の通信を聞いた私達は、一斉に予定されていたポイント・・・遺跡に向かいます。
ナデシコ自身も相転移砲の相殺を行ないながら、ジリジリと移動を開始しました。
『おい、アリサ!!
このままコイツ等を残していくと・・・今後が厄介だよな。』
「それは分かっています、リョーコ
ですが、今は我慢をしましょう。
・・・少なくとも、ナデシコが遺跡に突入するまでは。」
『分かってるじゃね〜か。』
私が微笑みながら、通信を入れてきたリョーコに返事をすると。
リョーコも嬉しそうに笑い返してきました。
ここまでいたぶってくれたんですからね・・・置き土産は盛大にいきますよ、六連さん達!!
私達の周囲を舞う彼等を睨みながら、私の闘志は燃え盛っていました。
ドウゥゥゥゥゥゥゥゥンンン・・・
『・・・ナデシコが遺跡のディストーション・フィールドに突入したみたいね。』
低く響き渡る破壊音に、イズミさんが独り言の様に呟きます。
・・・遺跡に入ってしまえば、嵯峨菊からの相転移砲をキャンセルする必要は無くなります。
つまり、私達が防御にまわらなくても、ナデシコには自衛手段が復帰した訳ですね。
そして、今の私達には優華部隊の皆さんの手助けもあります。
反撃するのは―――今ですね。
「リョーコ!!」
『おうよ!!
全機、全力攻撃の後にナデシコに帰還だ!!
今までの鬱憤を晴らすぜ!!』
『了解!!』 × エステバリス隊
リョーコの檄に呼応するように、全員がその場でフルバーストを実行します。
背中に光翼を纏い、最大の加速力を発揮してその場から飛び去ります。
そして、それぞれが目に付けていた六連に向け・・・全力攻撃を仕掛けました!!
『いくぜ!! 終の太刀『雷刃』!!』
バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンン!!
大上段に構えた赤雷に、通常より遥かに密度の高いDFSが発生します。
DFSの収束により、エネルギーフィールドが赤く染まり放電に似た現象が起こります!!
赤雷は正にその名の通り・・・赤い稲妻を纏った刀と化し六連の内の一機に襲い掛かりました!!
急速な加速と、神速の打ち込みにより―――
六連は纏っていた強固なディストーション・フィールドごと、見事に真っ二つにされました。
『へっ!! 本気を出せばテメーなんて相手じゃないんだよ!!』
背後で爆発する六連を見ながら、リョーコはそう言い残し。
最後の力を振り絞ってナデシコへと向かいました。
『おりゃぁぁぁぁぁぁ!!』
六連の一機の頭部を鷲掴みにし、そのままの状態でヤマダさんがブラックホールを発生させます。
バシュゥゥゥゥンン・・・
そして、一気に掴んでいた六連を縦に切り裂きました。
正に一蹴
ここまでブラックホール・フィストを使いこなすなんて。
思っていた以上に、ヤマダさんもレベルアップをされていたんですね。
細々になって爆発する六連には目もくれず、ヤマダさんは次の獲物を探します。
『ヒカル!! まだ俺は余裕があるぜ、サポート頼む!!』
『了解!!
それじゃあ、一機をそっちに追い込むね!!』
そしてヒカルさんが一気に周辺の無人兵器を無効化。
その隙に追い込んだ六連を、ヤマダさんが拳に宿った漆黒の輝きで消し飛ばしました。
・・・随分、コンビネーションが上手くなりましたね、このお二人。
『よっしゃ!! ノルマ達成!!』
『私達はナデシコに向かうね!!
イズミ!! イツキちゃんも無理しないでね!!
あ、アリサもね〜』
・・・私はついでですか?
まあ、場を和ませる為のヒカルさんなりの心使いでしょうが。
さて、私もそろそろ―――いきますか。
残された三機の六連を視界に捕らえ、私は微笑みました。
最後は私が決めさせて貰います!!
『イズミさん!! 前方三機のディストーション・フィールドを無効化してください!!』
『了解』
右隣を飛んでいたイズミさんに、私はそう頼みます。
『イツキさん!! なるべく三機がばらけないよう、射撃で牽制をお願いします!!』
『分かりました!!』
背後に居たイツキさんに、通信で牽制を頼み。
私はその場でヴァルキリー・ランスを回転させ、円の結界を作成します。
「はぁぁぁっ!!」
バシュゥゥゥゥゥ!!
前方でイツキさんの射撃に翻弄されていた三機が・・・
ヴァルキリー・ランスから打ち出された白い結界に包まれます。
懸命に結界を壊そうと暴れる三機に、私は一言呟き。
「無駄です・・・『アルテミス・ダンス』」
前方にヴァルキリー・ランスを構え、渦巻く程のディストーション・フィールドを纏い。
凄まじい勢いで結界を貫きつつ、その攻撃エネルギーを結界内で全て放出します。
この技はムーン・ストライクとシルバーウィンドウを合わせた、私の最終奥義です。
アキトさんの技からヒントを得て、必死に練習をして習得をしました。
ムーンストライクだけでは、強固なディストーション・フィールドを持つ相手には決定的なダメージは与えられない。
またリョーコの赤雷の様に一撃に全てを賭けるには・・・私の機体には向きません。
そこで考えついたのが、この技でした。
勿論、単体でそれぞれの技を使用するより桁外れの集中力を要します。
ですが、破壊力は―――
バゴォォォォォォォ・・・
ドゴォォォ・・・
ズゥゥゥゥゥゥンンン・・・
一瞬にして破壊された三機の六連を確認して、私は軽く溜息を吐きました。
本番で初めて使った技にしては、上手くいったみたいですね。
『お見事・・・と言っておこうかしら。』
「どうも、有り難う御座います。
ですが、私達はこれで当分は役立たずですから・・・」
私に通信を入れてきたのは、優華部隊の飛厘さんだった。
無人兵器の大半を受け持ってくれた優華部隊の皆さんのお陰で、私達は六連の相手に専念できました。
そして、現状が硬直状態に陥った今・・・
優華部隊の皆さんは、優人部隊と合流をして舞歌さんの援護をしています。
無人兵器は現在のところ新たに送り込まれていません。
実は、飛厘さんと零夜さんだけがその場に残り、私達のサポートをしてくれていたのです。
『後は私達木連の人間の問題ね・・・
舞歌様からの伝言です。
「次に会う時こそは、本当の和平を実現しましょう。」、です。
確かに伝えましたよ。
・・・貴方達なら、きっとこの場から無事に逃げ出せると信じてますから。』
軽く微笑みながらそう言い残して、飛厘さんの機体は飛び去っていきました。
そして最後に残っていた零夜さんは―――
『色々と迷惑を掛けると思いますが・・・北ちゃんをお願いしますね。』
通信ウィンドウ内で私に頭を下げて、飛び去っていきました。
あの人の事を頼まれても・・・対処に困るのですが。
まあ、一段落着いた事は確かですね。
後は、アキトさん達の無事を確認するだけです。
・・・大丈夫、あの人は帰ってきます。
私達も約束を果たして、全員無事にナデシコに帰るのですから。
「さあ、帰りましょうか?」
『疲れたわ・・・さすがにね。』
『か、肩が重いです・・・』
そして、私とイズミさんとイツキさんはナデシコへと向かって飛び立ちました。
―――この戦いの最後も近いです。
苦しく、長く、そして何物にも代え難い人を得た『戦争』の・・・