< 時の流れに >

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、本当・・・何処から湧いて来るんだろうな。」

 

『愚痴を言ってる間に倒す倒す!!』

 

 思わず呟いていた俺の愚痴を聞いて、ヒカルが笑いながら叱る。

 まあ、敵の戦艦が戦闘に参加してこないだけ、状況はマシなんだろうけどよ。

 

『ガイ、現在の舞歌様と草壁の戦力比は3:7だ。

 このまま押し通すには、決め手が足りないぞ。

 ・・・どうするんだ?』

 

「そんな事、俺に尋ねるなよ!!

 ・・・ま、アキトの奴に最終手段が無いわけじゃないけどな。」

 

『最終手段・・・何だそれは?』

 

「ん〜、まあ秘密だ。」

 

 まさか、前例に従ってボソンジャンプで逃げる・・・なんて言っても、何も証拠が無いもんな。

 

 そんな事を考えつつ六連を牽制し、襲い掛かってくる無人兵器を倒す。

 その繰り返しの中で、俺達は会話をしていた。

 実際、優華部隊が参戦してくれたお陰で、六連の動きにも少しは余裕を持って対処出来るようになった。 

 

 実は戦闘を開始した当初、俺の覚えているアキトの『記憶』にあった六連より遥かに速いその動きに驚いた。

 今の俺達ならば、確実に倒せると思っていただけに・・・思わぬ誤算だった。

 だが、それもお互いのチームワークで隙を補う事で、何とか盛り返す事ができたのだ。

 ・・・アリサやリョーコなどは果敢に六連を攻めているくらいだ。

 

 ・・・あの二人はやられたら、倍にしてやり返す主義だからな。

 

 それでも、現状が苦しい事に違いは無い。

 アカツキの奴は北辰と相打ちに近い格好で戦線離脱をした。

 そして、そのアカツキのエステバリスを抱えて、千沙と呼ばれる女性がナデシコに向かっている。

 言ってみれば戦闘リーダーが不在の状態で、俺達は戦っている訳だ。

 

 ま、俺達が好き勝手にやっても、どうにもならないのが今の現状なんだけどな。

 それに最優先事項は―――生き残ることだ。

 その為にはリスクを少なくし、出来るだけ相手に損害を与えるように戦わないと。

 俺らしくない考えだと、内心では笑っている。

 だが、身勝手な行動をして・・・大切な仲間を危険な目にあわせたり、アキトの信頼を裏切りたくなかった。

 

 絶対に全員無事で帰るんだ、地球に。

 

 

 

 

 

 

『でも白鳥さん・・・思いっきり全方位の回線で告白してたね?

 千沙さん大丈夫だったかな。』

 

『うん、それはまあ本人達の問題だし。

 私達には何も言う事が出来ないよ。』

 

 ・・・緊張感、無いよなこの会話。

 一歩間違えれば『死』が襲い掛かる激戦区で、こんな会話をしてるとは。

 まったく、女ってのはたくましいね〜

 

『ガイはこの事をどう思う?』

 

 万葉が何故か俺にそんな質問をしてきた。

 俺に何を答えろと言うんだ?

 

「俺か?

 どうもこうも、九十九の奴が決めた事だろうが。

 俺には何も言う事が無いさ。」

 

『いや、だからそう言う事じゃなくて・・・』

 

 俺の返事に何故か異議を唱えるヒカル。

 何が気に入らないんだ?

 

『つまりだな、二人の女性と一人の男性がいるわけだ。』

 

「ああ、そんな状態だったな。

 おっと、危ない・・・」

 

 万葉の説明を聞きながら、俺は六連の攻撃を避ける。

 ・・・なんか、六連の奴等が怒っている様に思えるのは俺だけか?

 さっきから、やたらと集中攻撃をされてるし。

 

 それに、何故か味方であるはずのヒカルと万葉からプレッシャーを・・・強く感じる。

 俺は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。

 

『そこでその三角関係の一角が崩れたわけなんだよ。

 危ういバランスと、優柔不断の男。

 ・・・こんな関係って、他に覚えが無い?』

 

 ヒカルが万葉の言葉に続いて説明をする。

 

「九十九以外に?

 ・・・アキトの奴か?」

 

 恐る恐る、尋ねるように二人の問いに答えてみる。

 

『『アレは論外!!

 だいたい三角関係にすらなってない!!』』

 

 と、ヒカルと万葉が叫んだ瞬間―――

 

『『何が論外ですか(だよ)!!』』

 

 その叫びと同時に遠方から、見事な射撃が行われた。

 俺達の機体を掠るようにして、背後の無人兵器達が撃ち落される。

 中には六連の奴に被弾しているのもあった。

 もっとも、六連は強固なディストーション・フィールドに守られていて、撃墜までは出来なかったが。

 

『ヒカル・・・後でゆ〜っくりと話をしような。

 勿論、付き合うよなアリサも?』

 

『そうですね、戦闘中なのに不謹慎な話をされてましたし。

 ・・・ついでに、万葉さんも御同行願いましょうか?』

 

 ・・・多分、ここで嫌と言えば今度は赤雷やヴァルキリー・ランスが飛んできそうだ。

 それを感じたのか、ヒカルと万葉は懸命に頭を上下に振っていた。

 ま、まあ現状を前向きに戦っていると解釈をしておこう。

 

 俺、全然関係無いみたいだし。

 

『それと・・・ヤマダ!!』

 

『一番の元凶なんですから、後でお仕置きです。』

 

「何故に?」

 

 二人の非常識な宣告に悲鳴をあげる俺だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

『皆さん、今からそちらの空域を、アキトさん達を乗せた連絡船が通過します。

 可能な限り援護をして下さい。』

 

 メグミからの通信を聞き、俺達は気を引き締めて周囲を警戒しだした。

 確かに、こちらに向かって高速で飛ぶ連絡船らしき反応がレーダーに映っている。

 どうやら目的は・・・遺跡か?

 

「了解した、何とか援護をしてみる!!」

 

『では、お願いしますね!!』

 

 メグミの声援を受け、俺達は連絡船の為に花道を作るべく更に奮戦をするのだった。

 そして問題の連絡船はと言うと・・・

 

 やはり、一番に目を付けられたのか六連の攻撃目標となっていた。

 三機の六連に囲まれ、一斉に攻撃を受ける連絡船!!

 一糸乱れぬその連携攻撃に、俺は連絡船が破壊される事を予感した!!

 

『・・・全部、避けちゃったね。』

 

『六連の動きもかなり無茶なモノなのだが、その上を行く機動だな。

 何なんだ、あの無茶苦茶な加速力は?』

 

「本当に連絡船かよ、アレ?」

 

 連絡船のその動きを、間近で見ていた俺達は思わず感嘆の声を出した。

 とても連絡船で可能な動きとは思えない。

 

 ・・・そう言えば、ゴートのおっさんとナオが乗り込んだとき、連絡船に改造がされてるって言ってたな。

 それならあの馬鹿げた加速力と機動力に納得がいく。

 ウリバタケが手を加えた機械は、ハイスペックが売りだからな。

 扱える人間が限られているのが問題だが。

 

 ―――せっかく出陣の場に立ち会ったんだ、一言挨拶でもしておくか。

 

「おい、アキト!!」

 

『死ぬ!! 絶対に死ぬ!!

 横からのGが〜〜〜〜!!

 俺の内臓が〜〜〜〜〜〜〜!!』

 

「・・・もしもし?」

 

『ナオさん!! 落ち着いて下さい!!

 暴れたりしたら余計に危ないですよ!!』

 

『おいアキト!!

 この男を船外に放り出していいか!!』

 

『ゴートさんの時と一緒や!!

 また障害物に向かって全力疾走なんや〜〜〜〜!!

 きっとまた天国が見えるんや〜〜〜〜〜!!』

 

「・・・」

 

 どうやら、船内はかなり凄い状況らしい・・・

 けどナオの奴、一体何があったんだ?

 普段の隙の無い立ち姿を見る限り、少々荒い飛び方をしたくらいで根を上げると思えないが。

 

『・・・てい。』

 

『うご!!』

 

『お、おい、北斗!!』

 

『大丈夫だ、少しの間気絶させただけだ。

 目的地上空で活を入れれば気が付くはずだ。』

 

 なんか、もうどうでもいいや・・・

 アイツ等ならきっと大丈夫だろう。

 北斗の奴も居るみたいだしな。

 何をしに遺跡に行くのかは知らないが。

 

 

 

 

 その5分後、アキト達を乗せた連絡船が撃墜された。

 もっとも、俺達はその連絡船にアキト達が乗っているはずが無いと確信をしていたがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二十六話 その6へ続く

 

 

 

 

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